哲学4-2 学生コメント集

 学生が書いた感想などと高木の返信をまとめたものです。

 学生の書いた本文はそのままで、誤字脱字等は直します。高木が補足する場合は()を付けます。○は学生のコメント、★:は高木のコメントです。△は補足です。

○いろいろと日本人の女性の綺麗な話が聴けたのは良かった。ただ、ホテルへのアンケート結果を聞いた時に、「日本人はそんなに称賛される程のものなのか」と疑問に思えた。それが「当たり前」だからそうではない「欠点」に目がいってしまっているのだろうか。

★アンケート結果に疑問を持ったのはいいですね。是非とも調べて見て下さい。講義に限らず疑問に思ったことを直ぐに調べて見る癖をつけて下さい。また、今後海外に行く機会があれば、その疑問を現地の人に聞いてみて下さい。

○先生の家庭での女性優位の例え話が妙にリアリティがあって実話ではないかと感じた。

★(笑) 実話にも基づきますよ。ただ、物語と来歴です。かみさんにイラついた時に日本人の知恵(物語)を基準にして家族の基準(来歴)にして行くのが大切だと思うのです。そういう面からも観て下さい。

○日本語では、父なる~と比べて、母なる~の方が多いように思います(あくまで主観)。もしかしたら母の影響が大きいというのもあるのでしょうか。

★あると思います。「母なる~」の方が言われてみれば確かにそうですね。素晴らしい点に気が付きますね。長所です。

○日本古代、歴史上の男女の地位についていろいろ勉強しました。中国では昔からずっと男性の地位は女よりずっと高いから、日本の歴史を勉強して、ショックしました。

★そうでしたか。講義をして良かったです。「ショック」を是非とも大学で沢山受けて下さい。それが人生の糧になってくでしょうから。また、講義でしつこく話しましたが、「自国が素晴らしい。他国はダメだ」というのは学問の公平さを欠いていることを知っておいて下さいね。

○今まであまり母親に感謝する事はなかったのですが、改めて大切だと思いました。昔も今も差別は無くならないので無くすためにはどうしていけばこれから考えていきたいです。

★これからどうすべきか、ということを考えてくれて嬉しいです。何よりです。「哲学は日常生活が別の視点から観える」と言いました。お母様もこれまでと別の観点から観られるようになったのは嬉しいです。

○男女平等になったら男女対等にならなくなりますか?

★ならなくなります。男女平等とは、男も女も同じになる、という意味です。つまり、1つになるのです。対して対等は、男と女がそれぞれ別で良い、という意味です。つまり、2つで良いのです。

○良いということだけではなくそれを悪いと思う方も知りたかった。最近は日本を素晴らしい国という番組が多くあるが、反対の悪い面も知りたく思う。

★健常な精神だと感じました。私もTV番組の転換には同感です。講義は4回目ですが、これまで2つ、根本的に日本を批判してきました。今回は素晴らしい面を挙げましたが、講義は15回ですので、15回で見てみて下さい。また、「知りたい」という単語が出ました。是非とも自分で調べてみて下さい。『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』 (中公文庫)がお奨めです。

△「母親に感謝したい」というコメントを多くの学生が書いてくれました。感謝します。

哲学4-1 日本女性の素晴らしさ

 皆様、こんにちは

『古今和歌集』に

秋の月山べさやかに照らせるは落つる紅葉の数を見よとか  

意味:秋の月が皓皓(こうこう)とてらすのは、落ちる紅葉の数を数えなさいといっているつもりでしょうか

 という歌があります(巻第五 秋歌下289)。それほどの明るく、そして白いぼかしは紅葉の赤や茶色を囃し立てていました。千年前のご先祖様が感動し、そして私が感動する。同じく千年後の子孫たちが感動するのでしょうか。そう考えるとさらに趣深く感じ入ります。今回の講義も千年以上前の女性のご先祖様の素晴らしさを知ってもらいます。哲学は二千年以上前の異国である古代ギリシャの賢人を知ってもらうものです。こうした視点を学生の皆さんに持ってもらいたいと願っています。

 それでは4回目の講義を始めます。

配布プリント 
:ミレーの「種を蒔く人」の画像

  --講義内容--

 前回は、「物語(神話)+努力や苦悩=来歴」を示しました。代表例が、神武天皇の日本建国の詔にある内容が、国旗と国歌の来歴として結びついている点でした。今回は、日本女性の素晴らしさを国史(日本の歴史)から取り上げます。それは、物語で男女の役割の違いが示されていたように、日本では男女で一組、という考え方があります。対して『聖書』では、人は男性を指し、女性はその付属物という物語があるからです。日本の善は男性だけではなく女性が別の側面から互いに支えて初めて成り立つのです。
 古代、中世、近世、近代に分けて幾つかの具体的な例を挙げて説明していきます。
 最後に、何度も繰り返しになりますが、日本人が日本の善をもって他国の善や体制を批判するのは、学問ではないことを付け加えておきます。以下の内容は、静岡県袋井市でのミニ講話で使用した資料となります。

「日本の女性の素晴らしさを知ろう」

 皆様、こんにちは。今回は「日本の女性」です。大和撫子として世界で有名ですが、その本当の意味に迫っていきたい、と思います。
まず、前回に述べた推古(すいこ)天皇から、最後に明治期の女性を述べていきます。現在、日本の歴史は敗戦による影響から書きかえられています。まず、日本の歴史(国史)の本質を述べ、古代、中世、近世、近代における女性の素晴らしさを取り上げていきます。

一.日本を創り出した女性 推古(すいこ)天皇 (古代)

世界一永い国家のわけ:皇室が権力を遠ざけて、優秀な人に預けてきたから。

 言い方を換えれば「権威と権力の分離」です。これは、

物語としては、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の天孫降臨時の「国譲り神話」(信仰の自由)
政策としては、仁徳天皇(第十六代)の「民のかまど」(最古の堤防など大規模灌漑と無税)
制度としては、推古天皇(第三十三代)の聖徳太子の摂政政治 

 で結実します。

 前回、「皇室は権力を放棄し、権威だけの存在になっていった歴史」を述べました。日本は皇室の下に皆一緒に暮らすのですが、皇室が権力を放棄する、という世界でも誠に珍しい制度を採っています。藤原の摂関政治から鎌倉、室町、江戸幕府の征夷大将軍の任命、明治政府、現在の日本政府でも天皇陛下の任命に基づいています。逆に、天皇陛下による任命がなく日本全体の権力を握った者は、日本の歴史上存在しません。これに反対しようとしたのが平将門で自ら「新しい天皇=新皇」を名乗ります(第六十二代村上天皇の御代)。僅か2年で打ち取られました。

 この「皇室が権力を放棄する制度」は、推古天皇が始められたのです。御存知、聖徳太子を初めての摂政に任ぜられました。これ以降、日本の歴史は権力者を天皇が命ぜられる制度が、現在まで続きます。ただ、第14代仲哀(ちゅうあい)天皇の摂政が神功(じんぐう)皇后であったとの説もあります。その後、摂政は制度として継続しませんでした。初の女性天皇であらせあれる推古天皇が、思い切った改革をされました。まず、歴史から見ていきましょう。

神武天皇即位紀元(皇紀):日本建国から始まる暦 敗戦前まで使用「紀元」
キリスト教暦      :キリスト誕生から始まる暦 敗戦後は「紀元」になる

第1代  神武天皇:皇紀元年  2674年前 キリスト教暦B.C660年 
第16代 仁徳天皇:皇紀973年 1701年前 キリスト教暦A.D313年
第33代 推古天皇:皇紀1252年 1422年前 キリスト教暦A.D592年

推古天皇の偉業を世界史の中で見ていきましょう。世界の歴史は戦争の歴史です。つまり、民族の生き残りを掛けた戦いの歴史であり、現在もそれが続いています。そのような多民族地域で民族を生き残らせるためには、3つの方法があります。

ア)上下の階層化 :力が強い場合は支配層に、弱い場合は被支配層に入る 
例) 地域で印度、支那、欧米、イスラムなど大多数
イ)専門への特化 :土地や軍隊を持たず教育や金融に特化して生き残る 
例)ギリシャ人、ユダヤ人など少数
ウ)権力の放棄 :権力と権威の分離で一体化、優秀な指導者の輩出 
例)日本のみ

 権力の放棄によって優秀な聖徳太子は、当時、ローマをも凌(しの)ぐ世界最強最大の帝国隋(ずい)から完全なる独立を世界で初めて勝ち取ります。鎌倉時代の元寇(げんこう)の際には、北条時宗という優秀な指導者が日本を守ります。皇室自体は血統で継承されますから、たまたま、凡庸な天皇陛下の時代に外敵の襲来があると日本が滅びてしまったでしょう。新羅(しらぎ)など支那や朝鮮の国家と争いながら国内では物部氏による権力闘争が行われていた時代です。聖徳太子はそういう危機感を乗り越えたのです。「外交関係の安定(遣隋使)」、「才能による人材採用(冠位十二階)」、「法治主義の導入(17条憲法)」などを成立させました。現代の日本を支える制度を導入しました。これが推古天皇の下に行われたのです。男系で女性天皇は西暦6世紀から8世紀に集中しますが、「皇室が権力を放棄する制度」に基づいて優秀な指導者に権力を渡していく時代でもあります。日本国の存続を守った時代であり、その根本制度を創造したのが推古天皇なのです。
 日本が現在のような「皇室は権力を放棄し、権威だけの存在になっていった歴史」を作り出す最初に、女性があったのです。女性の素晴らしさには感謝しきれません。

二.日本の教養の高さを示す女性 紫式部など (中世)

 江戸時代(18世紀末)の江戸の識字率は70%を超えている、という説があります。世界で最も反映していた国家であったフランスやイギリスを見て見ましょう。パリ10%、ロンドン20%でした。70%ですから、当然女性の識字率が高かったのです。証拠として江戸時代と現代日本は、世界で最も印刷物の多い国家が日本という客観的な事実があります。江戸時代、ヨーロッパ諸国は世界を支配しようと覇権を争っていました。その世界で覇権を争ったヨーロッパ諸国全てを合わせたよりも日本一国の方が出版物の量が多かったのです。また現在まで新聞の発行部数世界No1(読売),2(朝日),4(毎日)、6(日経)、9(中日)です。3位はインドの「The Times of India」で5位は中国の「参考消息」です。識字率の高さと共に読書の質の高さが判ります。
それを支えたのが寺子屋でした。寺子屋は男女関わりなく入れました。江戸では女性でも文字を読めないと結婚などに不利であったと言われています。西欧のように女性が文字を読めると結婚に不利ではなかったのです。女性の教養の高さは世界史の中で輝いています。日本は幼少の頃から礼儀正しく、清潔な国家であると戦国時代から現在まで評価されています。幼少時の教育は何と言っても母親の教育が大きいのです。日本女性は日本の美点を創り出してくれているのです。

その原点を探ってみましょう。まず、女性の教養の高さが世界で断トツでした。御存知、紫式部の『源氏物語』は約1000年前の文学です。ヨーロッパで女性が王位を継承できた数少ない英国とスペインです。他国は100年前まで女性が王位に就けませんでした。この英国で女性による長編小説で『源氏物語』に匹敵する作品は、約160年前(西暦1847年)まで待たなければなりません。エミリー・ブロンデ著『嵐が丘』です。他国はさらに遅くなります。

もう1人の中世の女性を取り上げましょう。

太田道灌(どうかん)と関東平野の農家の娘の話をご紹介します。
太田道灌(おおたどうかん)という室町時代(西暦1432~1486)の関東の武将は、江戸城の基礎を作った人です。太田道灌に山吹のお話があります。落語になっているので御存知の方も多いかもしれません。
鷹狩をしていてにわか雨に合い、道灌は農家にいって蓑(みの:カッパのような雨よけ)を借りようとします。すると少女が出てきて山吹の花を一輪出したのです。道灌は山吹の花ではなく蓑を借りたいのだ、と帰ってしまいます。道灌がこの話をすると近臣(部下)は『御拾遺和歌集』(第七十二代白河天皇の御代、西暦1089年完成)の歌を紹介しました。

「七重八重花は咲けども山吹の(実)みのひとつだになきぞかなしき」

意味:山吹の花は、沢山の花弁があるのに実をつけないのが悲しい
農家の小女の意味:蓑(みの)がないのが悲しい、ので申し訳ありません。

みのひとつだになきぞ ⇒実が1つもない ⇒蓑が1つもない と変換したのです。
この歌は太田道灌の四百年以上昔の本です。400年前の本をしっかり読んで変換したのです。

○おもてなしの心

その変換をする理由があります。それは「ありません」というのは相手に申し訳ない、恥ずかしい、から直接言葉にしないためです。このような奥床しさは、日本の心です。現在では東京オリンピックで「お・も・て・な・し」という言葉が少し前に流行りましたが、その根本になる日本の心です。道灌は己の不明を恥じて歌道に精進したそうです。日本女性の奥ゆかしさ、美しい心が1000年を超えて変わっていないのが判ります。
もう1点、同時の首都京都から遠い農家の娘が文字を読めた、ということです。しかも、農家の娘は本をきちんと読み、意味を正確に理解し、武士という支配階級と知識を共有していたのです。
当時、文化の中心は京都、権力も室町という京都でした。その中心から歩いて何日も掛る関東、支配層ではない農民、男性ではない女性が、これだけ立派に文字を読むことが出来たのです。識字率がどれ程に高かったか、が判るでしょう。私(高木)はヨーロッパ史やアジア史などに詳しくないですが、中世に当時の支配層の持つ知識水準を首都から数日離れた場所の、街ではない、女性が持っていて自在に使いこなしていた、という話を聞いたことがありません。日本女性の教養の高さ、同時に奥床(おくゆか)しさに、ただただ感動するだけです。
対して西欧の19世紀の農民を見てみましょう。「落ち穂拾い」や「晩鐘」などが有名なミレーが「種を蒔く人」を出展して賛否両論の渦を巻き起こしました。ミレーは農民の労働の尊さを絵にしただけでしたが、賛否両論から、19世紀の農民の扱われ方が見えてきます。農民は美の対象になることはけしからん、というのです。フランス革命(1789年)で民衆が主役になった150年後でも、農民は美の対象として扱われていなかったのです。日本では道灌のお話が残っているようい、1400年代から、農民も女性も美しい話の主役だったのです。

三.堂々と生きる見事な女性 :戦国時代の女性たち (中世から近世)

次は戦国時代に移ります。戦国時代、ヨーロッパからイエズス会の神父たちが来て、日本を記録しました。世界支配とキリスト教に基づく奴隷化を目指していましたが、日本は無理である、と結論付けています。道徳心が高く清潔で素早い技術習得や独自の文化があるためです。日本は世界の中で特別な国として記録されています。その中で見事に生きる女性について書き出してみます。

○乗り物と服装
「ヨーロッパの女性は横鞍(よこぐら)または腰掛に騎(の)っていく。日本の女性は男性と同じ方法で馬に乗る。」(ルイス・フロイス『日欧文化比較』)

 江戸時代に女性は横鞍や腰掛の騎乗方法になりますが、男性と同じく正面を向いた騎り方でした。この時代の小袖(こそで:和服の元)は幅がゆったりとしていました。そのため馬乗りも可能でしたし、堂々と生きていました。同じくフロイスから引用します。

○歩き方
「ヨーロッパでは夫が前、妻が後になって歩く。日本では夫が後、妻が前を歩く。」
○外出
「ヨーロッパでは妻は夫の許可が無くては、家から外へ出ない。日本の女性は夫に知らせず、好きな所に行く自由をもっている。」
○財産
「ヨーロッパでは財産は夫婦の間で共有である。日本では各人が自分の分を所有している。時には妻が夫に高利で貸付ける。」(例えば、フランスでは1965年まで妻は共有財産の管理権は認められなかった。つまり、結婚すると全て夫の財産になる、の意味)
○離婚
「ヨーロッパでは、妻を離別することは、罪悪である上に、最大の不名誉である。日本では意のままに幾人でも離別する。妻はそのことによって、名誉も失わないし、また結婚もできる。汚れた天性に従って、夫が妻を離別するのがふつうである。日本では、しばしば妻が夫を離別する。」(注:妻の離婚権を認めていた、の意味です。イエズス会を含むカトリックでは死別以外の離婚を認めないので布教の大きな妨げとなりました)

ちなみに、日本における離婚の割合が最も高いのは統計を取り出した明治16年、明治39年~41年で4割前後に達します。その後、離婚率は低下しますが、離婚しても女性は家長制度によって経済レベルを落とさずに済みました。「働かない男、女と何時までも一緒にいるのは子供のためにならず、早く離婚しなさい」という道徳がありました。現在の日本では「離婚すると養ってくれる人がいないので子供のために我慢して離婚しない」という女性は多いのではないでしょうか。
戦国時代は、○乗り物と服装、○歩き方、○外出、○財産、○離婚、など現在の女性とほぼ同じ生き方が出来ていたことが判ります。また、結婚も女性から言い出すことが出来たという記録もあります。堂々と生きる見事な女性たちが日本に居たことが伝わってきます。(菅原正子『日本人の生活文化』参考)

四.世界の一等国を生み出した女性:明治時代の女性(近代)

 西欧列強がほぼ世界を支配する中で、独立した数少ない国であり、最も大きい国でした。そして世界史で始めて西欧列強の最強国ロシア帝国を打ち破り、西欧列強の世界支配を終わらせた国として世界史に記録されています。その原動力はどこにあったのでしょうか。日本人の言葉ではなく、西欧列強の人々の言葉に耳を傾けてみましょう。
スコット南極探検隊の映像記録を残した写真家ポンティングは、明治34年から35年に日本で写真撮影を行っています。その時の回顧録が『英国人写真家の見た明治日本 この世の楽園・日本』として出版されています。この本の「第八章 日本の婦人について」などから引用してみましょう。ちなみに彼の写真は西欧列強で大盛況でした。

「中国やインドを旅行すると、何か月も婦人と会話を交わす機会のないことがある。それは、これらの国では召し使いが全員男で、女性が外国人の生活に関与することは全くないからだ。しかし、日本ではそうではない。これははるかに楽しいことである。日本では婦人たちが大きな力を持っていて、彼女たちの世界は広い分野に及んでいる。家庭は婦人たちの領域であり、宿屋でも同様である。」

 戦国時代と同じく明治時代、女性の社会進出が進んでいたのが判ります。社会進出が世界一進んでいましたが、今後は家庭に目を向けてみましょう。ポンティングの「家庭は婦人たちの領域であり」の言葉を追ってみましょう。

「彼女(注:妻)は独裁者だが、大変利口な独裁者である。彼女は自分が実際に支配しているように見えないところまで支配しているが、それを極めて巧妙に行っているので、夫は自分が手綱を握っていると思っている。そして、可愛らしい妻が実際にはしっかり方向を定めていて、彼女が導くままに従っているのだけなのを知らないのだ。」

 お釈迦様と孫悟空のようです。もちろん、女性がお釈迦様です。現在でも日本では妻のことを「かみさん」と呼びます。では次に「彼女たちの世界」を追ってみましょう。

「過去の日本において、男子と婦人の相対的地位がどうであったにせよ、いろいろな職業で婦人たちが男子と完全に匹敵することが実証されているので、近い未来にはほとんど他の国と同じように、男子と婦人とは同等の立場に立つことになるだろう。」

 この文章を読むと、ポンティングは一見、「敗戦後のフェミニスト(男女同権主義者)」のように見えます。しかし、次の一文を見てみて下さい。女性の賢さが日本を一等国に押し上げた原因とします。

「(日露)戦争のとき日本の婦人たちが、国家のために男子に決してひけとらないほどの重要な奉仕をしたことを、全世界に示すことが出来た時代になったにもかかわらず、日本の婦人たちが選挙権を要求して騒ぐようになるのは、ずっと先のことではあるまいか。
 日本の少女が近代的な教育方法の下で、控え目な態度をいくらか失ったとはいえ、女性としての優雅さと愛嬌まで失うことは決してあり得ないだろう。」

 日本国の国運を掛けた日露戦争に勝ったのは男子の力だけでなく婦人の力が同じくらいであった、と述べ、その後に、女性に適した役目に徹することを述べています。日本が西欧列強の人種差別植民地主義の中で、人種差別放棄の法案を世界で初めて提出し、植民地を唯一持たなかった国であったのです。このように世界の例外中の例外なのに、世界史で習ったように世界の3大大国として認められた原因が、「婦人(女性)である」とポンティングは述べています。
さらに、ポンティングは、日本女性の優雅さや愛嬌が日本の魅力であり、素晴らしさであると述べています。

「日本の婦人は賢く、強く、自立心があり、しかも優しく、憐(あわ)れみ深く、親切で、言い換えれば、寛容と優しさと慈悲心を備えた救いの女神そのものである。」

 絶賛です。

 先ほどの日本の婦人は救いの女神だ、という一文に「憐み深く」が入っていたのが思い出されます。婦人の抑制した態度には賢さが見られます。女性の素晴らしさは英国人だけでなく日本の男性も褒め称えています。「母親の賢さが日本を強くした」という黒木陸軍大将(日露戦争の第一師団団長)はポンティングに述べています。ポンティングはこの言葉を聞いて「今まで見た日本を思い出した」と記します。黒木大将の言葉です。

「日本の兵隊の挙げた業績について話すときに忘れてはいけないのは、これらの行為を成し遂げたのは決して日本の男子だけではないということです。もし我が国の兵隊がその母親から、義務と名誉のためにはすべてを犠牲にしなければならないという武士道の教育を受けなかったら、今日の成果を挙げることはできなかったでしょう。日本の婦人は非常に優しく、おとなしく、そして謙虚で、これからもつねにそうであって欲しいものだと思います。また、それと同時に大変勇敢であり、我が国の兵隊の勇気は、大部分、小さいときにその母親から受けた教育の賜物(たまもの)です。一国の歴史の上で婦人の果たす役割は大きく、どこの国でも、もし婦人たちが、何にもまして勇敢で優しく謙虚でなければ、真に偉大な国民とは言えません。兵隊と同様に、日本の婦人は国に大きな貢献をしているのです。」
 この黒木大将の言葉のすぐ後にポンティングは言います。

「老将軍の静かな声で、婦人の雄々しさを讃(たた)える言葉を聞いていたとき、私の心の中には日本で見た色々な光景が甦(よみがえ)ってきた。・・・(中略)・・・『日本の婦人は世界一です。皆で乾杯しましょう』。私はラフカディオ・ハーンがこれと同じことを言っているのを再び思い出した。」

 帝国陸軍は世界一の軍隊でした。規律正しく勇猛で、世界を平等と平和に導く戦果を挙げました。そのため日本は世界の一等国になったのです。戦闘が強いだけで理想を持たない国家は一等国として認められません。その原動力に婦人の力が大きかった、とポンティングは述べています。現在まで続く日本の高い評価にも、婦人の力が大きいことが推測されます。英国の実施するホテル業界のアンケートでは「最も礼儀正しい国民No.1」や「最も来て欲しい国民No.1」などに選ばれ続けています。日本の女性は日本の善さの原動力だと思います。

 推古天皇の「権力を放棄する制度」の創造に始まり、教養の高さ、活き活きとした生き方、礼儀正しさや勇敢さなど日本の善さを作りだしてくれた大勢の女性がいたのです。そしてその素晴らしさを私達が受け継いでいるのです。御先祖様に感謝致します。
以上が「日本の女性の素晴らしさ」です。ご拝読有り難う御座いました。

更に詳しく知りたい方に

菅原正子 『日本人の生活文化』:活き活きと生きる女性の姿が見えて来ます
ハーバード・G・ポンティング 『英国人写真家の見た明治日本』:写真が美しいです

 をどうぞ。

 過去の講演録にはなかった、ミレーの「種を蒔く人」を入れるなどしました。
 日本の来歴に女性が大きな役割を果たしてくれていることを示せたと思います。

 最後に問ですが、

問1 江戸時代末期の江戸の識字率はどのくらい? →70%以上
問2 商家は5人の長男、長女、次男、次女、三男の誰に財産を譲る? → 長女
問3 感想 →各々で「哲学4-2 学生コメント集」に
 
 となりました。

 以上です。

講義録4-2 学生コメント集

 学生が書いた感想などと高木の返信をまとめたものです。

 学生の書いた本文はそのままで、誤字脱字等は直します。高木が補足する場合は()を付けます。○は学生のコメント、★:は高木のコメントです。△は補足です。

○=(イコール)が「は」のことだと言っていたけど、死ぬは人以外は死なないみたいだけど、B=Aは成立するから違うと思った。

★なるほど。事前に説明したように、論理学の三段論法を簡単に説明しているので、幾つかの条件を外しています。是非ともしっかりしたものを本で読んでみて下さい。

○だがしかしにツインテールは居なくないですか?

★えーと・・・サヤ師がいいですね~。遠藤ヤサ氏です。

○もう少し字を大きく書いてほしいです。

★次回から気を付けます。助言、有り難う御座います。

○メシマズなんですか?

★いや、めっちゃ旨いですよ~。幸せです。

○私は倫理的な恋がしたい。もう中身の無いやり取りはつかれました。

★深いですね。その経験から人生の味わいを感じ入って下さい。素敵な人を見つけて欲しいです。

講義録4-1 技術の基本要件の2つの矛盾 三段論法

 皆様、こんにちは。

 前回、道徳の根源についてお話をしたので、もう少し深めるためにクラス全員で3回声を出しました。

 「子曰く 性相近し、習相遠し」

「孔子先生が仰った。人は生まれた時は似たり寄ったりで近い。しかし、習慣によって性格が遠く離れるように違ってくる。」

 『論語』からのことばです。福沢諭吉が『学問のススメ』を書き、森信三が『修身教授録』を、古くは孔子が『論語』に掲載される言葉を残しています。学生の皆さんにかけらでもお伝えしたい、そんなことを考えて帰宅しました。

 それでは本文に入ります。

 講義連絡

配布プリント なし

 --講義内容--

 前回は、「冗長性」、「フール・プルーフ」、「フェイル・セイフ」と本質安全、制御安全、注意安全を説明しました。そこで出てきたのは、「フール・プルーフ」の本質安全と「フェイル・セイフ」の本質安全の矛盾でした。これは技術の基本要件の矛盾です。これにもう1つ矛盾があります。社会と技術との矛盾です。今回、丁寧に説明します。
 また、文章の書き方として、アリストテレスの三段論法を簡略化したものを提示します。単語のつながりと文章の広げ方などへと説明を広げていき、コミュニケーションの苦手な人の傾向も説明します。

 前回、意外にも高山正之著『変見自在 習近平よ、「反日」は朝日を見倣え』 「JR福知山線事故の真犯人は労組だ」 が好評価でしたので、今回の内容に沿うものを探しました。同著に「英語を話す人たちの程度を知ろう」があり、これを読み上げました。要点は以下の通りです。

1) 技術者が間違いのない製品を作っていても社会が罰金を科すことがある。トヨタへ1200億円
2) 技術者が欠陥品を作り死者が19人出ていても、社会が35億円で済ますことがある。GM社
3) 人の命の値段が国際政治によって7200億円にもなり、同時に99.5%も減って30億円に減額されることがある。TPPと武田薬品

 以上のように社会と技術の相克が現実世界なのです。事実を知ることが学問の第一歩ですから、出発点としておいて欲しいです。

 -技術の基本要件の2つの矛盾

①技術内の矛盾 : 「フール・プルーフ」の本質安全と「フェイル・セイフ」の本質安全 :効率上の矛盾 :如何に燃料が少ないか
②技術外の矛盾 : 社会と技術の矛盾                             :経済上の矛盾 :如何に安いか、如何に儲かるか
③思想上の矛盾 : 心理と技術の矛盾                                        :幸福とは何か

 と2つの矛盾があります。この場合、社会を排除することを想いつくかもしれませんが、社会を排除することは出来ません。なぜなら、「予見可能な事象」が社会によって決定されるからです。この場合の社会とは、地域、文化、歴史などであり、これらが変化することで「予見可能な事象」も引っ張られて変化するのです。

 --(昨年度の講義録より抜粋)--

-技術の基本要件の矛盾-

 私が3つではなく、6つに分けた理由があります。それは製造物の特性を安全対策に活かすためです。
例えば、回転ドアのドアですが、フール・プルーフの本質安全からすると、当然「軽い方が良い」ことになります。しかし、フェイル・セイフの本質からすると、「当然、強い方が良い」ことになります。
 結論として、軽いと強いは相矛盾します。軽い素材ならプラスティックを、しかし強度が弱くなります。他方、強い素材なら合金なら重くなります。このように、「フール・プルーフとフェイル・セイフは時として相矛盾します」。この材質選びの問題は、製造物を製造する場合に欠かせない問題であり、かつ、相矛盾する要素を取り込んで製造する製造物の相矛盾がぶつかり合う問題です。さらに、材料の価格などなど多くの要素が絡み合ってきます。つまり、技術の基本要件は、「フール・プルーフ」と「フェイル・セイフ」で根本的に矛盾しているのです。安全を6つに分け、それぞれ丁寧に要素を抜き出して検討する、というのが技術者倫理の価値ある議論ですし、最も重要な点の1つです。

-技術の基本要件と効率(経済)との相反

 もう1つ見逃せないのは、技術の目的「人類の繁栄への寄与(ベーコン)」があります。簡単に言うと、効率や経済のことです。電車の開閉ドアはアルミになりました。アルミは高い素材です。しかし、「フール・プルーフ」の軽い、と「フェイル・セイフ」の強いを多少兼ね備えている素材です。ですから、工学的安全を満たすためによく使われる材料です。しかし、高いので効率・経済とは相反します。この指摘は他の識者や議論に取り上げられます。ただし、技術者倫理からすればそれは本質の議論ではないこと、上の議論で述べました。
 
 -自然科学の基本要件は矛盾しない

 もう少し補足します。自然科学は基本要件が1つに絞られています。逆に言えば、基本要件が1つに絞られていないものは、自然科学の対象とはなりません。例えば心です。例えば1回性の事象です。しかし、事故予防を考える場合、事故は1回1回であり、さらに人間の心が大きな要素であるのは間違いありません。それは前の記事で述べたように、製造物には社会の関わりが不可欠だからです。そして社会の判断が人間の心に依存している以上、技術の基本要件に心が入りこむのです。ですから、自然科学とは異なり、基本要件に矛盾があるのです。もちろん、心理学や経済学などの方法論的要件が緩やかさよりは厳しいものですが(この点にはさらに説明が必要です)。

ー科学哲学における1回性の事象と理論

 科学哲学では、自然科学の扱う事実と普通に存在者としてある人とを分けます。というのも1回性の事象というのは、事実ですが、自然科学の対象ではないからです(認めない科学哲学者もいますが)。1回性の事象を理論的事実に置き換えて、その上で数学的関係を求め、法則化します。それを実験で確認するのです。これが自然科学です。別の言い方をすれば、1回性の事象から「時間」なり、「長さ」なり、「重さ」なりを切り取るのが理論的事実です。これを次元の限定と言います。これが方法的には近似値や誤差によって支えられています。高校以上の理科実験をやったことがある人なら理解できるでしょう。高校の物理では、物を押すときに長さを考えませんでした。しかし、実際のものには長さがあります。物から「長さ」ではなく「重さ(質量)」だけを切り取ったのです(次元の限定)。長さがあれば回転偶力(モーメント)が生まれます。これらを合わせなければ実際の動きを考えることは出来ません。さらに、材料の性質(弾性、展性など)も考えなければならないのです。それゆえに、自然科学の扱う理論的事実とは1回性の事象を理論化することで生まれる、実際には存在していない理想的事実を対象としているのです。それゆえに、自然科学の基本要件では矛盾がないのです。具体的に言えば、自然科学の実験は、まず実験の意図(理論)があって始めて成立するものです。めったやたらに実験することなど不可能です。というのも次元の限定が出来ないからです。
 速足の説明になりました。詳しく知りたい方は、科学哲学のサーチ理論とバケツ理論を調べてみて下さい。

 -マクドナルドのドライブスルー

 話しは元に戻ります。有名な話があってマクドナルドのドライブスルーでコーヒーを買った人が熱くてこぼして太ももにこぼれてしまった。それで熱さ対策をしていなかったとしてマックを訴えた。それで結局1億円(実際は64万㌦の判決後、60万ドル以下の和解金)を払うことになった。
 マックのホットコーヒーを紙コップにそのまま入れると、人は愚かな行為をする、つまり、自分で注文しておいて、さらに熱いと解っていてもこぼす。さらにそれは「予見可能」なのである。だから裁判でお金を払うことになった。アメリカの行きすぎた裁判の現状もあるが、判断基準は日本でも同じく「予見可能」である。そしてその中に「人は愚かなことをする」と「物は壊れる」は入れなければならない。これから、マックなどは熱い飲み物を入れる紙コップにプラスティックのコーティングをするようになった。また、アメリカの電子レンジには「猫を入れないでください」などの注意書きもある。説明書が異様に分厚くなり、むしろ消費者のためになっていない、と考えて、アメリカの行きすぎた裁判の現状と述べた。
 身の回りを見渡してみると、例えば、静岡県にあるハンバーグ屋チェーン店「さわやか」では、ハンバーグに紙が巻かれ出てきて「鉄板がお熱いのでお気をつけ下さい」と言ってくれる。あれは親切でいうのではなく、言わないと訴えられるなどの問題があった時に困るからである。同じようにペットボトルにも色々と注意書きが書いてある。それも、ここ10年前後のことで、「予見可能」という技術者倫理の考え方が社会の中に具体的に浸透していっている一例と考えられる。同じような例が身の回りに沢山あるので探してみて下さい。

 --(昨年度の講義録より抜粋終了)--

 以上から、技術の基本要件の2つの矛盾が示せたと思います。他の例として挙げたのは、洗濯機へ子供が指を突っ込んで怪我をした場合です。昔ならば、大人の不注意が原因とされましたが、子供が指を洗濯機に突っ込むのは「予見可能な事象」である、と社会が変化すると、製造者は対策を講じなければならなくなるのです。

 それでは次に、三段論法に行きましょう。

 --(昨年度の講義録より抜粋)--

  3段論法は、アリストテレスによって整備されました。これを高木が松本道弘先生のディベート教室で学んだ経験や本等を参考にして以下のようにしました。

① 3段  = 事実、論拠、結論の3つが論理的文章には必要であること

② 論理性 = 事実と論拠と結論をそれぞれ結ぶ単語が必要であること

③ 方法  = 結論は、問いに対する回答、と考えて、結論⇒論拠⇒事実という順で探していく

 アリストテレス等が示した細かい要件がありますが、例えば格や型、時間の関係上、また実用上から省略しました。詳しく知りたい方は是非とも調べてみて下さい。

 それでは具体的に行きましょう。

 就職活動で必ず聞かれるのは「なぜ、わが社に入りたいのですか?」という問いです。

 この問いに、「給料が高いから」と述べてしまっては、ミスです。何故なら、論理的な説明がされていないからです。まず、聞かれていることに答えていません。答えていると回答者は考えるかもしれませんが、私はコミュニケーションが苦手な人は、自分の考えや事実だけを述べて回答している気になっている人が少なからずいると考えています。
 聞かれたことは、「なぜ? 入りたいのですか?」ですから「~だから、入りたいのです」という文が必要です。
 
 そして私は①結論から逆に発想していきます。

結論 :だから、社員を大切にするので御社に入りたいのです

 次に、②論理性は、単語がつながっていることですから、

論拠 :私は、給料が高いのは「社員を大切にすること」だと考えます。

 次に、②論理性は、単語がつながっていることですから、

事実 :御社は「給料が高い」です。

 結論と事実をひっくり返して並べてみましょう。

事実:御社は給料が高いです。
論拠:私は給料が高いのは社員を大切にすることだと考えます。
結論:だから、社員を大切にする御社に入社したいです。

 日本語は省略の多い言語の1つですが、きちんと順を追って説明すると少々言葉が多いですがこのようになります。
 次に1つ1つ解説します。

 事実は、「客観的事実」や「万人共通」を探します。 新聞や官報や本を引用したり、実験系がデータを出すのは事実を探すためと考えます。

 論拠は、私の考えを持ってきます。私の考えですから特殊なものですし、他の意見も併存する可能性があります。理論系は実験系の出したデータを元にしてアイディア勝負をしますが、この論拠の争いになります。また理系の論文が多くの研究者が連名で提出しますが、実験系と理論系を大勢で担うからです。現在の論文提出はスピード勝負になっていて大勢で担うことで1秒でも早く出せるのです。

 結論は、聞かれたこと、を意識するのが良いのではないか、と最近考えるようになってきました。聞かれたことは、誰か、もありますが、現在の日本の状況や専門分野の現状などから、導き出される聞かれたことがあると思っています。現在、私はポパー哲学研究会という科学哲学者ポパーの日本の専門家たちの集まりに論文を提出して、審査を受けています。1人目の方には「現在の状況にあっている」とコメントを頂きました。それは福島原発の事故対策に何とかポパーの考え方を生かせないか、と考えたからでしょう。そうしたものが現在の日本の状況で聞かれていると考えています。

 少し踏み込みましょう。論拠は私個人の考え方になりますから、以下のようにもなります。

事実:御社は給料が高いです。
論拠:私は給料が高いと大変やる気が出ます。
結論:だから、やる気が持てる御社に入社したいです。

 「やる気」以外にも「両親を安心させたい」や「家族を養える」などでもOKです。事実は万人共通ですが、論拠は私個人の考えを書く。それによって自分の気持ちを表現できます。そこに主張者の個別性が出て来ます。また、就職の面接官なら、「じゃあ、他にやる気が持てるケース(事実)はありますか?」などと広げていくことが出来ます。

 先ほどコミュニケーションのことを素人考えで書きましたが、それは私自身のオタク仲間との会話を振り返った方です。

 「このアニメ、モー最高なんだよ!」
 「めっちゃ、このキャラ可愛いよなぁ~!!」

 という言葉は、私の感想であり論拠です。しかし、万人共通の事実がなければ説得性にかけますし、何より感情の投げかけで共感できない場合は、コミュニケーションが成立しません。「このアニメの、あのシーンのあのセリフは、例えば文学でいえば、誰誰の本と共通しているよね」という万人共通の事実を上げていくと会話も広がりやすいのではないでしょうか。
 また、結論が無いことも指摘できます。つまり、「聞かれたこと」になっていない。相手が聞いてもいないのに、聞かれたこと、を言ってしまうとコミュニケーションが成立しないのです。相手との会話の中で聞かれていることは変化しますが、大体の方向性は決まっています。その方向性から聞かれたことが出てくるのに、自分の思いつき(論拠)をバッ!!と出してしまう。結論を意識していないからこそ、起こってしまうコミュニケーションの不成立。流行っている音楽の話をしているのに、「アニメの音楽はすっごく良いのがあってみんな聞かない。どうしてなんだろう」という風に音楽の話から連想した、社会的問題=みんな聞かないという理由に置き換えてしまうのです。
 以上が素人考えですが、3段論法から考えてみました。

さて、3段論法②単語のつながりを記号にしてみましょう。
事実:論拠:結論:。


事実: A = B : 「御社(A)」は「給料が高い(B)」です。

論拠: B = C : 私は「給料が高い(B)」と大変「やる気(C)」が出ます。

結論: C = A : だから、「やる気(C)」が持てる「御社(A)」に入社したいです

 この説明をした後で問題を出しました。

 問3 結論を書きなさい。

事実: 人は死ぬ     
論拠: 私は人である  
結論: 

 回答:人は死ぬ

事実: A = B : 人は死ぬ     人(B)=死ぬ(A)

論拠: B = C : 私は人である   私(C)=人(B)である

結論: C = A : 私は死ぬ     私(C)=死ぬ(A)

 となります。次に何でも良いので3段論法で書いてもらいました。

 問4 3段論法で文章を書きなさい。

 ヒントとして出したのは、以下の文章です。

あなたは、ツインテールである。

私はツインテールが好きである。

だから、私はあなたが好きである。

 少し笑いが起きました。先ほども書きましたが私はアニメ「らきすた」では「かがみん(キャラ名)」が大好きなので、ツインテールの話をしました。自己紹介をしていないのですが、高木は漫画やアニメやゲームが大好きです。この点から強引に学問につなげてみましょう。


 -論理の問題と意味の問題-

 私が「らきすた」の「かがみん」が好き! 「ツインテールが好き!」

 と言うと教室がざわつきました。ざわつくのは当たり前だと思います。しかし、それは意味の観点から文章を読み、説明を聞いているからです。冒頭に述べたように論理=言葉のつながり、として観れば、「ツインテール」を「優しい」に置き替えても何ら問題はありません。論理とは文章同士の単語のつながりを意味します。ですから、単語の意味内容、単語の持つ社会的内容には関わりがないのです。

 現在の日本では、「ツインテールが好き」というとヲタクに分類されます。ヲタクとはサブカルチャーであり、あまり一般的ではなく社会にそのまま受け入れられていない文化、という社会的内容を含んでいます。また、社会現象になり神社の参拝客が増える、キャラグッズが神社で売られるなどを引き起こしたアニメである「らきすた」は社会の主流の文化とアニメ文化との懸け橋となる存在でもあるのです。
 いくら論理の問題を説明しているとはいえ、社会的内容を考慮してしまうのは社会に適応する上では重要なことです。しかし、だからこそ、誤解を生じやすいのです。それゆえ、敢えてヲタクのキーワードを出しました。講義に関係ないことである、と私の趣味を隠しても良いのですが、教育的効果があると考えたのです。
 もちろん、私はアニメや漫画が大好きで、個人ブログでそうした趣味について色々と書いています。今期は「波打際のむろみさん」というアニメが好きで、毎週土曜日深夜が待ち遠しいです。

 また、補足を2点入れました。

ーヲタクのコミュニケーションの不味さ

 ヲタク、と言われている人々は、私もそうでしたが、自分の考えだけを語る人が多い。3段論法の「論拠」だけを語るのです。「かがみんは可愛いよなぁ。最高だよね。あの性格が大好き」と。しかし、それを万人共通の事実を付け加えないのです。そもそもアニメを観ていない人には「らきすた」? 「かがみん」?と言われて、「可愛い」と言われても会話にならないでしょう。例えば、「源氏物語の紫の上とこの場面に現れる性格とよく似ていて可愛い」と言えば、「源氏物語」を知っている人と会話が広がるのです。私は「源氏物語」は後半の自立した女性が描かれているのが最も素晴らしいと思いますが、それを現在の男女対等(平等ではなく)に結び付ければ、面白い会話が出来るのではないか、と考えています。ヲタクの人のコミュニケーションの下手さの原因の1つは、論拠=私の考えだけを主張し、万人共通の事実で話の広がりを持たせない点にあるのではないか、と言いました。

ー人は外見を大いに気にするのでコミュニケーションを大切にするのなら、まず外見を

 私は髪の毛の色を赤、青、白、黄、緑、ピンク、紫としました。日本全都道府県を旅行していた時に、緑の髪の毛で緑っぽい全身の服のことがありましたが、驚かれて話しかけられたことがありました。静岡では真っ赤な頭でありました。東京では、スーッと流されるか写真を撮られるくらいです。地域性があるのですが、やっぱり外見が重要なことを体験を通して知りました。ちなみに、日本人に一番似合うのは緑色だと思います。色々な人に写真を見せて見比べてもらいましたが、同意してくれる人が多いです。
 心の中を他人は決して見えないものです。他人が見えるのは行動だけ。ですから、外見は大切な第一歩ということで、コミュニケーションを大切にするなた、外見もきちんと整えて、計算して言って欲しい、と言いました。

 三段論法は初回でした。学生に板書してもらったものを、直して説明しました。多くの学生が興味を持ってくれたことが、感想で判りました。今後も続けていきたいです。

 以上です。

哲学3-2 学生コメント集

 学生が書いた感想などと高木の返信をまとめたものです。

 学生の書いた本文はそのままで、誤字脱字等は直します。高木が補足する場合は()を付けます。○は学生のコメント、★:は高木のコメントです。△は補足です。

○先生はどのようにして本を選んでいますか? いつも紹介して下さる本がおもしろいので、教えて頂きたいです。

★有り難う御座います。大学時代はなるべく文字の少ない本を読んでいました。乱読は良いですよ。それと現在は3つの基準で選んでいます。①勧められた本は必ず読む。年を取ると自分が偉いと思ってしまいますから特に。また、乱読で幅広い視点が持てます。②信頼する識者の紹介している本を読む。故伊與田覺先生、中村勝範先生、占部賢志先生、青山繁晴先生などです。③気に入った人の本は全て読む。著者も人間ですから、素晴らしい本からちょっとこれは、という幅があります。全部読むと最もいい本が判ります。司馬遼太郎氏、海音寺潮五郎氏、米澤穂信氏、江藤淳氏、吉村昭氏、青山繁晴氏、塩野七生氏などです。多すぎるので半分くらいは河合隼雄氏、ひろさちや氏、銀色夏生氏などです。今、最も大切にしているのは、①の勧められた本は必ず読む、です。授業で勧めた本で1冊読んでもらえれば嬉しいです。

○自分の家の母は外でも内でも父より上です。先生も同じような感じになりそうな予感がする。

★(笑) そうですね、そうですよ。もーかみさんの頭あがりませんよw

○高校の頃から歴史が大の苦手ではありましたが、事実から述べていくこの授業において、どれだけ来歴が現在に影響しているかを知りました。改めて歴史を勉強したいと思います。

★嬉しいです。講義を聴いて新しい視点や疑問を持ってくれること、それが私の講義の最も良き理解者だと考えています。時には私に直接聞きに来てくださいね。

プロフィール

    名前:高木健治郎

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哲学(平成28年度)
科学技術者の倫理(平成28年度)
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科学技術者の倫理(平成27年度)
哲学(平成27年度)
書いたもの(平成27年)
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「科学技術者の倫理(平成26年度)
講義録「哲学」
書いたもの(平成26年)
書いたもの(平成25年)
論文(高木健治郎の)
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