講義録2「福島原発事故克服のために、倫理の立ち位置、チャレンジャー事故、技術者の倫理的責任とその基準」
(文意不明、言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。何とかお読み下されば幸いです。)
第2回目、天候が快晴、体調も快調。
沢山詰め込み過ぎた感もありますが、それも終わってみると快適だったように感じられます。では早速。
目標:学生の皆さんのコメントにブログで返信する、というスタイルの周知
:「みんなのルール」として同じ、法律、倫理、気遣い、マナーと比較して倫理の立ち位置を浮かび上がらせる
:技術者倫理の最大の事例の1つチャレンジャー事故を伝え、難しさと面白さを伝える。
:技術者の倫理的責任の判定基準を伝える
:製造物が必ず壊れるというリスクをどのように対応しているか、を分かり易く伝える(詳しくは次回以降)
紹介した本:川口淳一郎 『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』 飛鳥新社 1300円
福島原発事故を克服ヒントがある、と考えて紹介しました。
配布したプリント:藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』 2,3Pと川口淳一郎 『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』14-15,42-43P
―講義内容―
まず、挨拶で始め、次にお礼を言いました。すべてのクラスで休み時間中からレポート用紙と配布プリントを自主的に持って行ってくれ、講義開始時間ピッタリに講義が始められるからです。
(会話調で) みなさん、私のブログは見てくれましたか? アクセス数は上がっているようですが全員ではないですね。そこで説明しておきます。皆さんのコメントをブログに載せています。もちろん匿名ですが、素晴らしいコメントを頂くので、本当は全て付けて返したいのですが、ブログで返すことにします。疑問は今年は全て返そうと思っていますので、質問をした人は是非、見てください。授業は残念ながら90分しかないので返事ができません。また、欠席した人も復習のために見ておいてください。さらに、ブログでは出典なども載せてきましたので、調べたい時に参考にしてください。今日は、最初ですのでコメントを多めに紹介して、どんな感じか見てもらいます(講義録1のコメントにプラスしてあります)。
・こういう話題は何が本当で何がウソなのかよくわからなくなっています。マスコミは嘘をついている!だとか、誰誰は本当のことをいっていない!だとか。まず先生が嘘なのかもしれないですし。みんなたぶん幸せにくらしただけなのにふしぎですね。
返答:いい視点ですね。日本のマスコミが偏っているというのは福島原発事故前から散々言われてきました。ですから、日本のマスコミではない情報源、例えばNEWSWEEKはアメリカの情報が入ってきます。「フクシマフィフティー」という言葉が聞いたことがありますか? これは福島原発事故後に残った作業員の人たちのことを指します。しかし、日本のマスコミには「差別が怖いから」という理由で出てきません。しかし、原発が安全かどうか?と考えるには現場に行った人の証言を聞くのも大切です。今の「再稼働は安全?」の議論は紙の上の話ばっかりになって、頭の中ばっかりの話になって現地に行った人の証言がないからどこか現実感がありません。日本のマスコミには出てきませんが、NEWSWEEKには沢山出てきています。(階が)上の図書館にありますがら見てみてください。こんな風にマスコミを含め他人の情報に完璧な真実はありません。ですが、より真実に近づくことは出来ます。公平さです。日本のマスコミとアメリカのマスコミを比較してみるのは大切です。マスコミは嘘をついているというのならその論拠や証拠を自分で調べてみて下さい。私も是非。ブログに情報源の多くが載っています。そしてみな幸せにくらしたいから戦争になるのです。かなしいですが、それが現実です。皆さんの親は皆さんにご飯をくれたでしょう。それと同じ量をアフリカの死にそうな飢えた人々にあげたでしょうか? あげません。近くの家族が大事で、遠くの人はそうではないのです。近くの人に幸せになってもらいたから、遠くの人から取ってくる。だから戦争になるのです。幸せになるためにエネルギーと食料がいるのです。中国も尖閣諸島に石油や天然ガスがあると発表してから「自分たちの土地だ!」と言い出しました。嘘は嘘です。でも、それは中国の人々が将来の中国人のためにエネルギーを確保しようとしたのです。幸せになって欲しかったのです。日本が大東亜戦争を起こしたのも最後は、エネルギーが欲しかったからです。みんなが幸せになりたいから戦争になります。深く考えさせられました。有り難う御座います。
・それなりに面白かったけど、ちと中身がうすいかなと思ったけど、うすいから面白くかんじだのかもしれない
返答:鋭い指摘ですね。この授業はどうしても真ん中の人がちょっと難しい、に合わせて作っていますから物足りない人が出てくるのは当然です。正直に書いてくれて嬉しいです。ですから、是非とも紹介した本を読んでみて下さい。優秀な人はどんどん伸びていって欲しいです。
・テレビとか新聞で言われないようなウラ話にとても興味を引(惹)かれた。少し黒板を消すのが早い気がした。
Q.電通の韓流ゴリ押しについてどう思いますか。
返信:「フジテレビなどによる韓流ごり押しを知っている人!」と挙手してもらった。クラスによってばらつきはあるが、20~50%くらいの挙手だった。警察発表で3万人の日本人のデモがあってもテレビは殆ど無視など都合が悪いことは報道しない、という問題があります。それと、韓流ゴリ押しは子会社が著作権をもっていてフジテレビが儲かる、という欧米では法律違反の行為が行われています。こんな現状ですが、福島原発事故と同じで要因は複雑です。
①ジャニーズ事務所の独占による弊害、中年女性を相手にしないとなども含めて
②日本のTV局の独占による弊害、自分たちで番組を作らなくなったなど
③電通の独禁法で取り締まらない問題
④法律違反でも罰がなければまかり通る行政や司法の弱さ、持ち株など
⑤大韓民国のデマ宣伝の成功体験の弊害、竹島やポッキーなど
⑥日本国民の外交、軍事は政治家に丸投げする無責任
⑦日本政府がマンガ等を支援しない弊害、よいコンテンツに価値をつけないこと
⑧新聞等が自分の都合の悪いこと、悪い結果を報じない問題
以上が主な要因です。
原発もそうですが、どこか1つが悪者ではなく、関係する人々がどこかに責任を負っています。もう1度根っこから考えるいい機会だと思います。個人的に言えば、カン・ヘジョンは名優だと思います。映画「殺人の追憶」は名画だと思います。しかし、今、韓流のコンテンツは価値が低くとてもつまらないです。レベルが低すぎます。と思っています。なんというか良いものがあるのに勿体ないです。
・先生は性善説派なのか性悪説(派)なのかを知りたいです。
返信:政治・経済・軍事では性悪説を基準とし、教育や私個人では性善説を基準とします。どこまで行くか、というと日本国憲法まで行きます。日本国憲法に「諸国民の公正と信義を信頼し」と書いてあります。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html の上から6行目です。
これは性善説ですね。しかし、敗戦後、ソ連に北方領土を取られ拉致され殺され、大韓民国に竹島を取られ殺され、北朝鮮に拉致され、中国にサイバーテロ受け、尖閣諸島を取られそうになっています。諸国民の公正と信義を信頼したから、の結果です。ですから私は政治などでは性悪説でないといけないと思います。今回の北朝鮮のミサイル(衛星?)発射でも「自衛隊が来ると戦争になる」とデモをした人々がいました。彼らは性善説ですね。
他方、教育では性善説をとります。一生懸命教えれば全員に伝わる、と考えますし、「給料分働けばいいや」とは考えません。家族や友人関係でも性善説で生活しています。そうすると楽ですしね、結果的に。
私が最も尊敬するのは墨子(ぼくし)の考え方です。大学時代に背伸びをして読んでみました。半分もわかりませんでしたが、彼の人間の現実を踏まえた上で愛し、平和を追及する姿勢が感じられました。「はやぶさ」の本の中で川口さんも背伸びをしよう、と言っています。良ければ心に留めておいて下さい。
・まわりとの相談というか話し合いの時間が少し欲しいでと思った。
返信:一応考えています。「どうしても話し合いはしたくない」という人の挙手を願うと、7名前後であった。議論や話し合いは訓練が要りますが、話を伝えるだけならできるかもしれないので検討してみます。
・北朝鮮のロケット問題に対して何か出来ることはないのか疑問になりました。
返信:①選挙の時にロケット問題に対応すると言っている政治家を選ぶこと、②首相官邸に電話やメールをすること、③防衛省に電話をすること、くらいでしょうか。②、③は案外簡単ですよ。そういう権利を与えられています、日本国は。私も福島原発事故後、思っていることを伝えたりしていますが、案外簡単です。パソコンが壊れた時のオペレーターみたいな人が出てきて、要件を聞いてくれて終わり。やってみると拍子抜けします。
・疑問:倫理に善悪の考えを持ち込むのは、宗教的ではないのか。本来倫理は、宗教的な物かどうか。
返信:倫理は本来宗教の一部です。「世界全体はどのようになっているか(宗教)」があり、初めて「何がみんなで守るルールか(倫理)」が決まります。「世界はどのようになっているか」は国や時代によって違いますが、「何がみんなで守るルールか」には共通点があります。
自動車は何のためにあるか(宗教)は「人間のため」なので、人がいっぱいるとことでは、最高速度は低く(倫理)、人とぶつかる危険のない高速道路は最高速度が高くなります。あるいは最低速度も決まっている(倫理)であったと記憶しています。この「人間のため」がないと「何キロにするかきめる」のは難しいです。
ここで、宗教を超えて倫理は1つにまとまる、と考える人もいますし、私のように、宗教が違うのだから倫理も少しづつ違っていい、という人もいます。今後述べていきます。
こんな感じで、コメントをブログで返していきます。
さて、では、前回の宿題にしたプリント(福島原発事故独立調査委員会 調査・検証報告書』5-8P 北澤宏一委員長のメッセージ)を出してください。これをたたき台にして後に福島原発事故について踏み込んでいきますから、とって置いてください。今回はまず、私のコメントを聞いてもらって、はやぶさの川口さんの意見とすり合わせて、今後の再発防止をアイディアを明らかにしたいと思います。
ではまず。
5Pですが、上から5行目「使用済みの燃料プールに同時に注意を払わなければならくなり」とあります。現在、浜岡原子力発電所では燃料プールがそのままです。ここに気がつきました。福島原発事故で放射性物質が外に出たのは、1つにこの燃料プール、もう1つは原子炉からです。燃料プールから出たのは判っていて、原子炉からはどのように出たのかまだ分かっていません。原子炉を開いて中に入っていないからです。ですからこの報告書でもその部分は書いていません。それでよいのですが、この燃料プールは原因が分かっています。さて、浜岡原子力発電所は運転停止していますが、燃料プールはどうなっているでしょうか? そのままです。さらに燃料プールの耐震データを中部電力は公開していないのです。
今、安全性が騒がれているのは、原子炉の冷やすほうだけですね。何重にも冷やすことが出来るから大丈夫、と。しかし、この燃料プールの耐震の方は騒がれていません。問題にされていません。原因が分かっている方が注目されず「安全です」と言っているのです。
次に、下の段落にいって太字を読みます。「危機管理の情報共有・・・」とあります。実は、福島原発事故時、首相官邸に回線がつながっていなかったのです、3日くらい。驚きますよね、誰も首相官邸に現場の情報が直接伝わっていなかった。そしてその発表が行われたのが最近です。ですから、危機管理の情報共有という初歩ができていなかった訳です。「対応を強化する」のように述べていますが、「どうして出来なかったのか?」や「担当は誰だったのか?」などの改編をする必要がありますし、これまで明らかにならなかった理由も説明して欲しいです。これは後でまた述べます。その下、1行目、「東日本大震災に連動して東南海大地震が起きる可能性が高いとする地震学者たちの警告もあって、・・・」。これ、今もありますね。インドネシアで大津波で22万人が死にました。スマトラ沖地震(2004年 M9.1)、その後チリで2010年にも(M8.8)、そして東北地方で2011年(M9.0)です。今、太平洋プレートでは活動期に入ってきています。スマトラ沖では2010年にM7以上の地震が3回も起こっています。日本でもチリでも再度大地震が起こる可能性があります。太平洋側ばかり騒がれていますが、現在の福島原発は再度、大津波が来たら耐えられるのでしょうか?その備えは十分なのでしょうか? 癌で福島原発所長を退いた吉田所長は政府や東電や官僚に対して訴えてなんとか仮の対策にこぎつけました。こういう視点もマスコミ報道からかけていますし、福島原発の事故対策が済んでから、再稼働なのではないでしょうか。
めくってください、6頁、上から2行目「行政の各階層が情報を伝えないという情報操作があったことも分りました」とあります。驚きですね。これは今もあるんじゃないでしょうか。そしてこれが幅広く見える原因を、私は川口さんの「はやぶさ」の本ました。川口さんは「はやぶさは、研究者で調べるべき」との意見ではなく「国民に広く公開すべき」と考えて公開しました。大ブームになりました。その理由は国家の税金を使っている以上、国民に還元する義務が生じる、と考えているのです。これは福島原発でも同じですね。国民の税金を年間数千億円投入しているのです。はやぶさが毎年何機も飛べるお金です。情報を伝えない、という情報操作は、民間企業のTVや新聞社やNHKの公共放送を始め、多くのマスコミで見られ、今回の福島原発事故の大きな特徴の1つです。それが、事故調査委員会の報告書でもはっきりと書いてあります。3行下に
「「情報はだれのもので。国民に知る権利はあるのか、それとも各段階での担当者が自分たちの判断で秘匿してかまわないのか」という疑問が政府や東電に突きつけられました。」
これは技術者倫理を考えていく上で大きな論点ですから覚えておいてください。
次の節の3行目、さっきの文からは7行下にいきましょう。
「安全神話はもともと立地地域住民の納得を得るために作られていったとされますが、いつの間にか原子力推進側の人々自身が安全神話に縛られる状態となり、「安全をより高める」といった言葉を使ってはならない雰囲気が醸造されてしまいました。電力会社も原子炉メーカーも「絶対に安全なものにさらに安全性を高めるなどということは論理的にあり得ない」として彼らの自身の中で「安全性向上」といった観点からの改善や新規対策をとることができなくなっていったのです。」
とあります。恐るべきことですね。先週もやったように「物は必ず壊れます」から危険です。しかし、「危険がない」や「危険を考えなくていい」というのです。これはで事故対策はできません。さらに驚くのは、
「地域住民=国民には嘘をついていい」
と書いてあることです。「国民はどうせ安全などわからないのだから、でしょうか?」「国民はどうせ原子炉などわからない、でしょうか?」 ずっと嘘をつかれてきた訳です。もちろん、原発事故前から述べているように原発には軍事利用の側面がありますから全ての情報を公開する訳にはいきません。他方、「絶対安全だから」と核テロ対策を怠って、技術の流出が現在の北朝鮮による危機を生んでいるのも確かです。「原発は絶対安全」が石油価格の高騰という結果を生みだしました(他に要因はたくさんありますが)。
「人を呪わば穴二つ」のことわざを思い出すエピソードですね。国民に嘘をついて騙したら、いつの間にかその嘘に自分が騙されてしまったのです。何とも悲しいですが、現実から出発しなければなりません。下から5行目に「『間違っていた』として訂正することはほぼ不可能でした」と語っています、とあります。一度決まると他のう可能性やリスクを考えられないのは公平性に欠けています。この点も気になりました。
次のページ、上から2行目、「世界平均の何十倍もの高い確率で巨大地震が発生する国」とあります。今回の事故を起こした炉の欠陥は80年代にアメリカで指摘されていました。しかし、アメリカで「大丈夫」と出ると専門家も東電も国民の代表で安全を考えるべき原子力安全委員会も「アメリカ様がOKならOK」という風になってしまったのです。川口さんが巨大なアメリカと交渉する際にこう書いています。
「この(NASAとの共同作業の)交渉過程で、1つだけ私が肝に銘じていたことがあります。それは卑屈にならないこと。NASAは宇宙開発の大先輩であり、巨人ではあるけれど、私たちも国家プロジェクトとして日の丸を背負っていました。
何かをお願いするだけだと頭を下げ続けることになります。そうではなく「私たちはこういう提供ができるから、この部分で力を貸してほしい」という姿勢を貫きました。私たちが心の底から「はやぶさ」の成功を誇れる所以(ゆえん)です」
素晴らしい姿勢です。同じ軍事利用を含む分野で巨大な差がある(あった)アメリカとの関係において、希望が見出せる姿勢だと考えます。
下から2行目、前回読み上げた部分です「この「原子力ムラ」というコミュニティは、空気を読み合いつつ惰性によって動く利益共有型の集団と言えます。」は、これも川口さんが希望を書いてくれています。今、皆さんは理系の大学で研究室に入れば上は先生、その下に学生がつき、先生を見上げるようになります。理系も文系も大学の先生が学生の将来を握っています。というのも先生が拒否すれば学生は、公平に選抜が行われる大学院に入るのさえ難しいのです。川口さんの先生は「ヒラメ」になるな、という言葉を使います。そして、各研究室にいる学生を、あるいは研究員をバラバラにピックアップしてプロジェクトチームを作るのが良い、と教えてくれます。研究室制度には良い点もありますが、プロジェクトチーム式にすると皆がばらばらの分野なので新しいアイディアが生まれやすく、上下関係も固定化しにくいというメリットがあります。現在福島原発事故の検証が行われていますが、こうした方式を採用したこの本は素晴らしい成果をあげました。他方、政府の中で安全基準を作ったプロジェクトチームはどうでしょうか? 福島原発事故に全力で取り組む、という東京電力はどうでしょうか? 日本国民の安全を考える原子力安全委員会のメンバーはどうでしょうか?
「原子力ムラ」は官僚を頂点として下へ下へと天下りながら利益を共有する集団です。それはプロジェクトチームのような方法がないからできるのかもしれません。この点でも川口さんの指摘には希望があると考えます。
また、情報封鎖があった当時の担当者、枝野大臣や細野大臣は、現在も続行中です。情報封鎖の責任などを取らずに新しい政策に入る。さらに、その政策を支えるのがこれまでの「原子力ムラ」の人々です。北澤先生のご指摘は誠に的確である、と言わざるを得ません。
次の8ページです、「安全な国づくりのために」の1行目後半、「原発事故による直接の死者は出ていませんが、」とあります。放射性物質については今後考えていきましょう、ただ、現実として死者がないことも認識しておいてほしいのです。自動車は年間1万人の死者を毎年出しています。
長くなったので「講義録2-1」に続きます。
次は川口淳一郎氏の本についてです。
第2回目、天候が快晴、体調も快調。
沢山詰め込み過ぎた感もありますが、それも終わってみると快適だったように感じられます。では早速。
目標:学生の皆さんのコメントにブログで返信する、というスタイルの周知
:「みんなのルール」として同じ、法律、倫理、気遣い、マナーと比較して倫理の立ち位置を浮かび上がらせる
:技術者倫理の最大の事例の1つチャレンジャー事故を伝え、難しさと面白さを伝える。
:技術者の倫理的責任の判定基準を伝える
:製造物が必ず壊れるというリスクをどのように対応しているか、を分かり易く伝える(詳しくは次回以降)
紹介した本:川口淳一郎 『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』 飛鳥新社 1300円
福島原発事故を克服ヒントがある、と考えて紹介しました。
配布したプリント:藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』 2,3Pと川口淳一郎 『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』14-15,42-43P
―講義内容―
まず、挨拶で始め、次にお礼を言いました。すべてのクラスで休み時間中からレポート用紙と配布プリントを自主的に持って行ってくれ、講義開始時間ピッタリに講義が始められるからです。
(会話調で) みなさん、私のブログは見てくれましたか? アクセス数は上がっているようですが全員ではないですね。そこで説明しておきます。皆さんのコメントをブログに載せています。もちろん匿名ですが、素晴らしいコメントを頂くので、本当は全て付けて返したいのですが、ブログで返すことにします。疑問は今年は全て返そうと思っていますので、質問をした人は是非、見てください。授業は残念ながら90分しかないので返事ができません。また、欠席した人も復習のために見ておいてください。さらに、ブログでは出典なども載せてきましたので、調べたい時に参考にしてください。今日は、最初ですのでコメントを多めに紹介して、どんな感じか見てもらいます(講義録1のコメントにプラスしてあります)。
・こういう話題は何が本当で何がウソなのかよくわからなくなっています。マスコミは嘘をついている!だとか、誰誰は本当のことをいっていない!だとか。まず先生が嘘なのかもしれないですし。みんなたぶん幸せにくらしただけなのにふしぎですね。
返答:いい視点ですね。日本のマスコミが偏っているというのは福島原発事故前から散々言われてきました。ですから、日本のマスコミではない情報源、例えばNEWSWEEKはアメリカの情報が入ってきます。「フクシマフィフティー」という言葉が聞いたことがありますか? これは福島原発事故後に残った作業員の人たちのことを指します。しかし、日本のマスコミには「差別が怖いから」という理由で出てきません。しかし、原発が安全かどうか?と考えるには現場に行った人の証言を聞くのも大切です。今の「再稼働は安全?」の議論は紙の上の話ばっかりになって、頭の中ばっかりの話になって現地に行った人の証言がないからどこか現実感がありません。日本のマスコミには出てきませんが、NEWSWEEKには沢山出てきています。(階が)上の図書館にありますがら見てみてください。こんな風にマスコミを含め他人の情報に完璧な真実はありません。ですが、より真実に近づくことは出来ます。公平さです。日本のマスコミとアメリカのマスコミを比較してみるのは大切です。マスコミは嘘をついているというのならその論拠や証拠を自分で調べてみて下さい。私も是非。ブログに情報源の多くが載っています。そしてみな幸せにくらしたいから戦争になるのです。かなしいですが、それが現実です。皆さんの親は皆さんにご飯をくれたでしょう。それと同じ量をアフリカの死にそうな飢えた人々にあげたでしょうか? あげません。近くの家族が大事で、遠くの人はそうではないのです。近くの人に幸せになってもらいたから、遠くの人から取ってくる。だから戦争になるのです。幸せになるためにエネルギーと食料がいるのです。中国も尖閣諸島に石油や天然ガスがあると発表してから「自分たちの土地だ!」と言い出しました。嘘は嘘です。でも、それは中国の人々が将来の中国人のためにエネルギーを確保しようとしたのです。幸せになって欲しかったのです。日本が大東亜戦争を起こしたのも最後は、エネルギーが欲しかったからです。みんなが幸せになりたいから戦争になります。深く考えさせられました。有り難う御座います。
・それなりに面白かったけど、ちと中身がうすいかなと思ったけど、うすいから面白くかんじだのかもしれない
返答:鋭い指摘ですね。この授業はどうしても真ん中の人がちょっと難しい、に合わせて作っていますから物足りない人が出てくるのは当然です。正直に書いてくれて嬉しいです。ですから、是非とも紹介した本を読んでみて下さい。優秀な人はどんどん伸びていって欲しいです。
・テレビとか新聞で言われないようなウラ話にとても興味を引(惹)かれた。少し黒板を消すのが早い気がした。
Q.電通の韓流ゴリ押しについてどう思いますか。
返信:「フジテレビなどによる韓流ごり押しを知っている人!」と挙手してもらった。クラスによってばらつきはあるが、20~50%くらいの挙手だった。警察発表で3万人の日本人のデモがあってもテレビは殆ど無視など都合が悪いことは報道しない、という問題があります。それと、韓流ゴリ押しは子会社が著作権をもっていてフジテレビが儲かる、という欧米では法律違反の行為が行われています。こんな現状ですが、福島原発事故と同じで要因は複雑です。
①ジャニーズ事務所の独占による弊害、中年女性を相手にしないとなども含めて
②日本のTV局の独占による弊害、自分たちで番組を作らなくなったなど
③電通の独禁法で取り締まらない問題
④法律違反でも罰がなければまかり通る行政や司法の弱さ、持ち株など
⑤大韓民国のデマ宣伝の成功体験の弊害、竹島やポッキーなど
⑥日本国民の外交、軍事は政治家に丸投げする無責任
⑦日本政府がマンガ等を支援しない弊害、よいコンテンツに価値をつけないこと
⑧新聞等が自分の都合の悪いこと、悪い結果を報じない問題
以上が主な要因です。
原発もそうですが、どこか1つが悪者ではなく、関係する人々がどこかに責任を負っています。もう1度根っこから考えるいい機会だと思います。個人的に言えば、カン・ヘジョンは名優だと思います。映画「殺人の追憶」は名画だと思います。しかし、今、韓流のコンテンツは価値が低くとてもつまらないです。レベルが低すぎます。と思っています。なんというか良いものがあるのに勿体ないです。
・先生は性善説派なのか性悪説(派)なのかを知りたいです。
返信:政治・経済・軍事では性悪説を基準とし、教育や私個人では性善説を基準とします。どこまで行くか、というと日本国憲法まで行きます。日本国憲法に「諸国民の公正と信義を信頼し」と書いてあります。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html の上から6行目です。
これは性善説ですね。しかし、敗戦後、ソ連に北方領土を取られ拉致され殺され、大韓民国に竹島を取られ殺され、北朝鮮に拉致され、中国にサイバーテロ受け、尖閣諸島を取られそうになっています。諸国民の公正と信義を信頼したから、の結果です。ですから私は政治などでは性悪説でないといけないと思います。今回の北朝鮮のミサイル(衛星?)発射でも「自衛隊が来ると戦争になる」とデモをした人々がいました。彼らは性善説ですね。
他方、教育では性善説をとります。一生懸命教えれば全員に伝わる、と考えますし、「給料分働けばいいや」とは考えません。家族や友人関係でも性善説で生活しています。そうすると楽ですしね、結果的に。
私が最も尊敬するのは墨子(ぼくし)の考え方です。大学時代に背伸びをして読んでみました。半分もわかりませんでしたが、彼の人間の現実を踏まえた上で愛し、平和を追及する姿勢が感じられました。「はやぶさ」の本の中で川口さんも背伸びをしよう、と言っています。良ければ心に留めておいて下さい。
・まわりとの相談というか話し合いの時間が少し欲しいでと思った。
返信:一応考えています。「どうしても話し合いはしたくない」という人の挙手を願うと、7名前後であった。議論や話し合いは訓練が要りますが、話を伝えるだけならできるかもしれないので検討してみます。
・北朝鮮のロケット問題に対して何か出来ることはないのか疑問になりました。
返信:①選挙の時にロケット問題に対応すると言っている政治家を選ぶこと、②首相官邸に電話やメールをすること、③防衛省に電話をすること、くらいでしょうか。②、③は案外簡単ですよ。そういう権利を与えられています、日本国は。私も福島原発事故後、思っていることを伝えたりしていますが、案外簡単です。パソコンが壊れた時のオペレーターみたいな人が出てきて、要件を聞いてくれて終わり。やってみると拍子抜けします。
・疑問:倫理に善悪の考えを持ち込むのは、宗教的ではないのか。本来倫理は、宗教的な物かどうか。
返信:倫理は本来宗教の一部です。「世界全体はどのようになっているか(宗教)」があり、初めて「何がみんなで守るルールか(倫理)」が決まります。「世界はどのようになっているか」は国や時代によって違いますが、「何がみんなで守るルールか」には共通点があります。
自動車は何のためにあるか(宗教)は「人間のため」なので、人がいっぱいるとことでは、最高速度は低く(倫理)、人とぶつかる危険のない高速道路は最高速度が高くなります。あるいは最低速度も決まっている(倫理)であったと記憶しています。この「人間のため」がないと「何キロにするかきめる」のは難しいです。
ここで、宗教を超えて倫理は1つにまとまる、と考える人もいますし、私のように、宗教が違うのだから倫理も少しづつ違っていい、という人もいます。今後述べていきます。
こんな感じで、コメントをブログで返していきます。
さて、では、前回の宿題にしたプリント(福島原発事故独立調査委員会 調査・検証報告書』5-8P 北澤宏一委員長のメッセージ)を出してください。これをたたき台にして後に福島原発事故について踏み込んでいきますから、とって置いてください。今回はまず、私のコメントを聞いてもらって、はやぶさの川口さんの意見とすり合わせて、今後の再発防止をアイディアを明らかにしたいと思います。
ではまず。
5Pですが、上から5行目「使用済みの燃料プールに同時に注意を払わなければならくなり」とあります。現在、浜岡原子力発電所では燃料プールがそのままです。ここに気がつきました。福島原発事故で放射性物質が外に出たのは、1つにこの燃料プール、もう1つは原子炉からです。燃料プールから出たのは判っていて、原子炉からはどのように出たのかまだ分かっていません。原子炉を開いて中に入っていないからです。ですからこの報告書でもその部分は書いていません。それでよいのですが、この燃料プールは原因が分かっています。さて、浜岡原子力発電所は運転停止していますが、燃料プールはどうなっているでしょうか? そのままです。さらに燃料プールの耐震データを中部電力は公開していないのです。
今、安全性が騒がれているのは、原子炉の冷やすほうだけですね。何重にも冷やすことが出来るから大丈夫、と。しかし、この燃料プールの耐震の方は騒がれていません。問題にされていません。原因が分かっている方が注目されず「安全です」と言っているのです。
次に、下の段落にいって太字を読みます。「危機管理の情報共有・・・」とあります。実は、福島原発事故時、首相官邸に回線がつながっていなかったのです、3日くらい。驚きますよね、誰も首相官邸に現場の情報が直接伝わっていなかった。そしてその発表が行われたのが最近です。ですから、危機管理の情報共有という初歩ができていなかった訳です。「対応を強化する」のように述べていますが、「どうして出来なかったのか?」や「担当は誰だったのか?」などの改編をする必要がありますし、これまで明らかにならなかった理由も説明して欲しいです。これは後でまた述べます。その下、1行目、「東日本大震災に連動して東南海大地震が起きる可能性が高いとする地震学者たちの警告もあって、・・・」。これ、今もありますね。インドネシアで大津波で22万人が死にました。スマトラ沖地震(2004年 M9.1)、その後チリで2010年にも(M8.8)、そして東北地方で2011年(M9.0)です。今、太平洋プレートでは活動期に入ってきています。スマトラ沖では2010年にM7以上の地震が3回も起こっています。日本でもチリでも再度大地震が起こる可能性があります。太平洋側ばかり騒がれていますが、現在の福島原発は再度、大津波が来たら耐えられるのでしょうか?その備えは十分なのでしょうか? 癌で福島原発所長を退いた吉田所長は政府や東電や官僚に対して訴えてなんとか仮の対策にこぎつけました。こういう視点もマスコミ報道からかけていますし、福島原発の事故対策が済んでから、再稼働なのではないでしょうか。
めくってください、6頁、上から2行目「行政の各階層が情報を伝えないという情報操作があったことも分りました」とあります。驚きですね。これは今もあるんじゃないでしょうか。そしてこれが幅広く見える原因を、私は川口さんの「はやぶさ」の本ました。川口さんは「はやぶさは、研究者で調べるべき」との意見ではなく「国民に広く公開すべき」と考えて公開しました。大ブームになりました。その理由は国家の税金を使っている以上、国民に還元する義務が生じる、と考えているのです。これは福島原発でも同じですね。国民の税金を年間数千億円投入しているのです。はやぶさが毎年何機も飛べるお金です。情報を伝えない、という情報操作は、民間企業のTVや新聞社やNHKの公共放送を始め、多くのマスコミで見られ、今回の福島原発事故の大きな特徴の1つです。それが、事故調査委員会の報告書でもはっきりと書いてあります。3行下に
「「情報はだれのもので。国民に知る権利はあるのか、それとも各段階での担当者が自分たちの判断で秘匿してかまわないのか」という疑問が政府や東電に突きつけられました。」
これは技術者倫理を考えていく上で大きな論点ですから覚えておいてください。
次の節の3行目、さっきの文からは7行下にいきましょう。
「安全神話はもともと立地地域住民の納得を得るために作られていったとされますが、いつの間にか原子力推進側の人々自身が安全神話に縛られる状態となり、「安全をより高める」といった言葉を使ってはならない雰囲気が醸造されてしまいました。電力会社も原子炉メーカーも「絶対に安全なものにさらに安全性を高めるなどということは論理的にあり得ない」として彼らの自身の中で「安全性向上」といった観点からの改善や新規対策をとることができなくなっていったのです。」
とあります。恐るべきことですね。先週もやったように「物は必ず壊れます」から危険です。しかし、「危険がない」や「危険を考えなくていい」というのです。これはで事故対策はできません。さらに驚くのは、
「地域住民=国民には嘘をついていい」
と書いてあることです。「国民はどうせ安全などわからないのだから、でしょうか?」「国民はどうせ原子炉などわからない、でしょうか?」 ずっと嘘をつかれてきた訳です。もちろん、原発事故前から述べているように原発には軍事利用の側面がありますから全ての情報を公開する訳にはいきません。他方、「絶対安全だから」と核テロ対策を怠って、技術の流出が現在の北朝鮮による危機を生んでいるのも確かです。「原発は絶対安全」が石油価格の高騰という結果を生みだしました(他に要因はたくさんありますが)。
「人を呪わば穴二つ」のことわざを思い出すエピソードですね。国民に嘘をついて騙したら、いつの間にかその嘘に自分が騙されてしまったのです。何とも悲しいですが、現実から出発しなければなりません。下から5行目に「『間違っていた』として訂正することはほぼ不可能でした」と語っています、とあります。一度決まると他のう可能性やリスクを考えられないのは公平性に欠けています。この点も気になりました。
次のページ、上から2行目、「世界平均の何十倍もの高い確率で巨大地震が発生する国」とあります。今回の事故を起こした炉の欠陥は80年代にアメリカで指摘されていました。しかし、アメリカで「大丈夫」と出ると専門家も東電も国民の代表で安全を考えるべき原子力安全委員会も「アメリカ様がOKならOK」という風になってしまったのです。川口さんが巨大なアメリカと交渉する際にこう書いています。
「この(NASAとの共同作業の)交渉過程で、1つだけ私が肝に銘じていたことがあります。それは卑屈にならないこと。NASAは宇宙開発の大先輩であり、巨人ではあるけれど、私たちも国家プロジェクトとして日の丸を背負っていました。
何かをお願いするだけだと頭を下げ続けることになります。そうではなく「私たちはこういう提供ができるから、この部分で力を貸してほしい」という姿勢を貫きました。私たちが心の底から「はやぶさ」の成功を誇れる所以(ゆえん)です」
素晴らしい姿勢です。同じ軍事利用を含む分野で巨大な差がある(あった)アメリカとの関係において、希望が見出せる姿勢だと考えます。
下から2行目、前回読み上げた部分です「この「原子力ムラ」というコミュニティは、空気を読み合いつつ惰性によって動く利益共有型の集団と言えます。」は、これも川口さんが希望を書いてくれています。今、皆さんは理系の大学で研究室に入れば上は先生、その下に学生がつき、先生を見上げるようになります。理系も文系も大学の先生が学生の将来を握っています。というのも先生が拒否すれば学生は、公平に選抜が行われる大学院に入るのさえ難しいのです。川口さんの先生は「ヒラメ」になるな、という言葉を使います。そして、各研究室にいる学生を、あるいは研究員をバラバラにピックアップしてプロジェクトチームを作るのが良い、と教えてくれます。研究室制度には良い点もありますが、プロジェクトチーム式にすると皆がばらばらの分野なので新しいアイディアが生まれやすく、上下関係も固定化しにくいというメリットがあります。現在福島原発事故の検証が行われていますが、こうした方式を採用したこの本は素晴らしい成果をあげました。他方、政府の中で安全基準を作ったプロジェクトチームはどうでしょうか? 福島原発事故に全力で取り組む、という東京電力はどうでしょうか? 日本国民の安全を考える原子力安全委員会のメンバーはどうでしょうか?
「原子力ムラ」は官僚を頂点として下へ下へと天下りながら利益を共有する集団です。それはプロジェクトチームのような方法がないからできるのかもしれません。この点でも川口さんの指摘には希望があると考えます。
また、情報封鎖があった当時の担当者、枝野大臣や細野大臣は、現在も続行中です。情報封鎖の責任などを取らずに新しい政策に入る。さらに、その政策を支えるのがこれまでの「原子力ムラ」の人々です。北澤先生のご指摘は誠に的確である、と言わざるを得ません。
次の8ページです、「安全な国づくりのために」の1行目後半、「原発事故による直接の死者は出ていませんが、」とあります。放射性物質については今後考えていきましょう、ただ、現実として死者がないことも認識しておいてほしいのです。自動車は年間1万人の死者を毎年出しています。
長くなったので「講義録2-1」に続きます。
次は川口淳一郎氏の本についてです。
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