新年(平成24年)度の講義に向けて

 静岡まつり、が4月6日(金)~8日(日)まで開催されています。

 静岡市の駿府公園を通ると、温かい輝くような日差しの中を桜が満開でした。呉服町では大きな太鼓が、ドン! ドン! ドン!と体に響き渉ってきました。

 美しい風景に心と体が和み、沢山の人々の笑顔と賑わいが見れました。

 明後日、4月10日から新年(平成24年)度が始まります。

 シラバスにブログのアドレスを掲載しておきましたし、アクセス数も上がっています。新年度に向けて、ということで今、最も重要に考えている点を書いて行きます。

☆ 最も重要な点 「 原発を3つの問題に分けること 」

 3つの問題とは

①原子力発電技術の問題

②原子力発電が関わるエネルギー政策の問題

③原子力発電を支える軍事利用の問題

 です。

①だけが、原発事故の再発防止を考えていくことが出来ます。しかし、②や③が再発防止策を妨げています。

 以上が、最も重要に考えている点で、多くの人々に提案したい点です。


 以下に補足していきます。

 昨年の講義で明らかにしたのは、現在のウラン使用する原発は、米ソ冷戦構造の中で作られてきた、ということです(③)。例えば、ウランを使わないトリリウム原発は研究費が停止されてきたのがその一例でしょう。また、吉岡斉『原発と日本の未来』にあるように、原発は発電コストが合いません。同時に、軍事利用を目的としたから、発電コストの合わない原発を続けてきました。もう1点、発電量が多いのもあります。

 軍事利用の問題は、原子力発電所のテロ攻撃も含んでいますから、従来の技術者倫理の万能包丁、「情報公開と説明責任」は使えません。北朝鮮による100人を超える日本人拉致事件、尖閣諸島への侵攻とサイバーテロを繰り返す中華人民共和国にきちんと対応出来ない現状では、「情報公開と説明責任」は使用出来ません。また、日本だけが「原子力の平和利用」という幻想で軍事利用を切り離しています。その原因は、アメリカの原子力爆弾のイメージを和らげるため、というのは昨年説明しました。

 現在のウラン型原子力発電は、軍事利用と切っても切り離せないのです。いえいえ、切り離せないからウラン型をしているのです。

 原子力発電のエネルギー政策は、現在「原発がないとエネルギーが足りなくなる」という視点でしか語られていません。しかし、尖閣諸島近辺には、石油があり天然ガスもあります。また、さらに日本海側には豊富な天然ガス(日本の消費量100年分)がある、と言う人(青山繁晴氏)もいます。確かに、「原発が無ければエネルギーが足りなくる」のは当然です。
 その代わりとして、どうして発電量の少ない太陽光や風などだけにするのでしょうか?

 それは③と同じで日本が国際政治の中で歪んだ戦後を歩んできたからです。自衛隊は日本にしかありません。同じく戦争に負けたドイツ・イタリアにはありませんし、未だに政治家の事務所に行くのは選挙の時だけです。投票率も低く、政治の話をするのは、タブーに近いです。その結果、日本にある石油や天然ガスを使わずに、という歪んだエネルギー政策しかもてなくなっています。エネルギー政策をあらゆる観点から話し合うことが出来ず、

 「ああ、尖閣諸島の石油は考えていはいけない」
 「そっか、北方領土にある石油もダメだ。見てはいけない」
 「そういえば大韓民国が日本海の天然ガスを実用化するけれど、話してはいけない」
 「そうそう、ソ連では日本企業がその天然ガスを掘り出したけど、国民は聞いてはいけないことにしよう」

 などとなっています。
 ②については、技術者倫理の「情報公開と説明責任」を大切にしなければならない、と考えています。

 最後の①原子力発電技術の問題は、内部のテクニックの点については専門の技術者にお任せし、その判断を話し合うべきです。技術者倫理で問題になるのは、技術者の判断を企業全体や社会全体が聞かないことです。

 外部から考える場合は次のようになります。

 確かに、原子力発電は、放射能物質を出します。そしてその物質の処理がどのようになるのか、決まっていませんし、その掛かる費用を計算していません。ですから安い、のです。放射能物質は人体に有害とも無害とも言われています。ここからは私の判断ですが、外部被爆は無害、むしろ有益という情報もありますが、内部被爆については統計的に信頼できるデータがない、と考えます。特に現在問題になっている20ミリシーベルト以下は。これまでのデータは、外部被爆と内部被爆をきちんと分けて行った人体実験がない、と考えます。チェルノブイリはきちんと分けていないので、大まか過ぎる、と考えています。
 
 他方、原発技術は火力発電と同じで、熱でタービンを回すだけの単純な技術です。ですからエネルギー効率も良い(4割くらい利用できます)。しかし、大都市周辺に作れないので送電ロスが大きすぎます。ただ、巨大な発電量とベースになる安定供給は大きな利点です。

 さらに、現在世界の最先端の原発はフランスと日本しか出来ません。それだけ日本の企業と技術者は頑張ってきましたし、そのコストを日本国民は払ってきました。最先端の技術は経済を潤しますし、資源が少ない(石油や天然ガスが出てきてエネルギーはありますが、レアメタル等々を含めた資源)日本を支えているのは、まさに技術です。
 国公立大学の独立行政法人化で、自然科学者や技術者を保護しない方向に舵をきり、研究費や教育費を削減することで日本の首を絞める方向に向かっています。また、理系離れは先進国の中で最も酷いレベルにあります。社会の中でも文系の方が理系よりも5000万円も生涯賃金が低いのです。
 こうした問題を見渡した上で、原発技術をどのように位置づけるのかを考えていくことが重要だと考えます。

 補足が、本文のように長くなりました。

 昨年、福島原発近辺の桜は、誰もいない中で咲いていたそうです。

 西行の云う山野の中でひっそりと咲くのではなく、人々との関わりの中で育ち、愛され続けてきた桜。

 その桜が悲しみの象徴になってしまいました。

 希望の象徴となる日を目指して、一歩一歩を、ささやかながらブログに踏みしめていきたいと思います。

 新しい学生諸君に合うのが、緊張を感じながらも楽しみです。

 皆様がよきスタートとなりますよう、願って筆をおきます。

                                  高木 健治郎
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