岡潔先生に学ぶ「人治主義」と「法治主義」について


 岡潔 『春宵十話』 から引用して「人治主義」と「法治主義」について考えてみます。
 別のブログにUPしたもので文意は多少、技術者倫理から遠い場合もあります。

①根本としての道義心

87頁
「(1901年から日本の変動の多い世相を見せてもらった)
 ところで、それでもどうにか社会の秩序は保たれて来た。この秩序を保ったのは何か。それは道義心にほかならない。法律などが社会の秩序を保てると思うのはひどく無責任な人で、法律の網の目は荒いからかいくぐれるが、道義の網はくぐれない。日常安心して暮らせるのは、人が法律的な責任を持つことに信頼しているのではなく、道義的な責任を持つことに信頼しているからなのだが、しかしそれを人々はどこまで考えているだろうか。


 私はこれまで技術者倫理で、「人治主義」よりも「法治主義」を、と主張してきた。組織の腐敗、組織的な体制のミスが起こった時、トップは辞任や刑事罰の対象となる、という法律の制定をすべきだ、と考えてきた。特に、発電、配電、ガスなど公的な責任を負担し、その代わりとして独占的な権益を認められている企業については一般よりも厳しい基準を適法とすべきだと考えてきた。その根拠には日本の「ムラ社会」があるからで、これを否定的に捉えている。「ムラ社会」は古くは、財閥の軍需製品の独占(例えば、時代遅れの戦艦大和建造)であり、最も最近では20年も粉飾決済が見抜けなかった証券業界である。原子力村は言うまでもなく、教育界も独占的な権益が認められている。近年は特に顕著で、「学生の教育中心ではなく、教職員の都合中心」がはびこっている。
 良く分らない二学期制、学期末のテストなのに終了式の2週間も前に行われるテスト。学生の安全確保、授業確保と言いながら数々の行事の中止。

 しかし、岡先生の文章を読んで反省した。
やはり最終的には道義心が必要である。技術者倫理の最終目標が「初期予防と再発防止」にあるのだから、道義心がその根源になければならない。もちろん、その道義心の現れとして、法律の制定によるサポートは必要との考えは変わらない。しかし根本的な地点を教えて頂いた。


②知性の自主性としての倫理
43頁
「知性に、他のものの制約を受けないで完全に自由性を与えたのはギリシャだけだった」

この言葉を「人治主義」と「法治主義」(後に言葉を修正しようと考えている)に引きよせて考えると、「知性の自主性」とは、「人治主義」に因らないこと、つまり、「あの人が言ったからいい、悪い」ということである。それゆえ万人の批判に耐えるものが出てくる。
 ここまで書いてきて「人治主義」と「法治主義」はもう少し分解して行った方が詳しく議論が出来ると考えてきた。要検討。


③社会的道義心を求めるために
92頁
「 社会に正義的衝動がなくなれば、その社会はいくらでも腐敗する。これがいちばん恐ろしいことである」

 このために岡先生は情緒を大切にすることを述べられる。その手段として現在の教育の改革も主張されている。疑問符のつく所もあるが、例えば111頁、情緒から発する正義的衝動の大切さは慧眼である。技術者倫理を育てるためには、まずもって幼少時からの教育の成果が大切である。私は学校教育だけでなく、地域社会での、例えば祭りや正月参拝、の行事や、盆や先祖に手を合わせること、家庭で出産や死を迎えることなどの家庭内行事を通して情緒を育てることが大切だと考える。

 岡先生の名文を最後に引用して終わりたい。

110頁
「 いま、たいていの中学、高校では答案があっているかどうか生徒にはわからない。先生が合っているといえば合っているというだけで、できた場合もできなかった場合もぼうっとしている。本当は答えが合うことよりも、自分で合っていると認めることのほうが大切なのに、それがわかっていない。こんなことが大きくなったら大事故が起こることは当たり前だと思う。惨事があればそんな教育であることが連想され、また教育をみれば惨事が連想される。
 答案などというものは、生徒に書かせるよりも本当は先生に書かせ、それが合っているかどうかを生徒が調べるほうがよいと思う。そうすれば自分で判断する訓練になるに違いない。答案は書けなくても意味はわかるという子供ができればそれでよいのだ。」

 なんとか今後も工夫して取り入れていきたい。
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