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【學問】経済システムから観る米中貿易戦争

冒頭付記:時事問題「香港での大規模デモ」について
 令和元年六月に「逃亡犯条例」改正案の撤回などを訴えるデモが香港で起こりました。700万人の人口で100万人を超えるデモとなりました。現在の報道されている視点に1つ加えたいと思います。それは、

 「イギリスの介入が不可欠である」という点です。

 一国二制度を脅かす中華人民共和国の政策に対するデモです。一国二制度を約束した相手国はイギリスです。今回のデモの方々は、トランプ米国大統領が中華人民共和国に強気の姿勢を示していることを頼りにしているように見えます。例えば台湾を国として格上げする政策を六月一日に取りました。(丁度、文章末の追記につけていました。アメリカ国防総省は「二千十九年インド太平洋戦略報告書」)
 ですから、香港のデモの方々はイギリスに働きかけ、そのイギリスからアメリカのトランプ大統領に依頼する、という形にしないと香港内だけでデモが終わってしまいます。そうなると、このデモは沢山の人数を集めても失敗に終わるでしょう。こうした戦略性を含んだ国際政治の視点を持たないと、デモは単なるデモで終わってしまいます。戦略性を含んだ国際政治の視点は、本文の内容と重なりますので、冒頭付記としました。令和元年六月十七日 高木健治郎

       --------------   本文   --------------ーー

 先月の「富士論語を楽しむ会」でお話した内容を文章にまとめます。多くのご質問を頂き、また、新しい刺激となりましたようで、何より嬉しいことです。今月は経済システムから中華人民共和国と大韓民国が成功した理由についてお話致します。同じ視点となりますので、お役に立てれば、とも考えます。

経済システムの視点
 「経済システム」という視点は、抽象性が高い視点、高度な視点となります。大統領や首相よりも高度な視点です。この視点からは、「経済システムが親中国のオバマ大統領から反中国のトランプ大統領を誕生させる」という現象を説明できます。
 もう少し身近な例で説明します。日本は大東亜戦争に敗れました。なぜなら、視点がもっとも高いのが「同盟」、その下に「戦争」、その下に「戦闘」があります。「戦闘」でいくら勝っても、「戦争」には勝てない。「戦争」にいくら勝っても、「同盟(外交)」には勝てない、という歴史の真実があります。
 日本は真珠湾攻撃という「戦闘」に勝ちました。しかし、「戦争」には負けました。なぜなら、日本には「同盟」がなかったからです。日独伊三国同盟は遠すぎました。兵力や物資の供給があるという実際上の同盟ではなかったのです。ですから、日本はアメリカ、イギリス、オランダなどの多くの敵と戦い、最後には「戦争」に敗れたのです。

 経済システムの話に戻しましょう。
 「同盟」が「戦争」や「戦闘」の結果を決めるように、「経済のシステム」が「大統領」や「法律」の結果を決めます。その意味で、もっとも抽象性が高い、高度な視点ということになります。

アメリカの経済システム
 アメリカが世界の覇権を握って百年が過ぎました。その間には、無能な大統領、無駄な戦争、決定的な敗北などが積み重なってきました。しかし、アメリカがナンバーワンであることは変わっていません。なぜなら、「経済システム」が「大統領」や「法律」や「戦争」や「戦闘」よりも上であり、かつ安定し一貫しているからです。
 そのシステムとは、

 ① 世界中に武器をばら撒き、戦争を引き起こす。
 ↓
 ② 経済の法則「インフレーション」によりお金持ちが資産保
   全のためドルを買う。
 ↓
 ③ 世界中の資金がアメリカに集まる。
 ↓
 ④ 資金によって武器を生産し、資金から株システムを利用し
   てアメリカの富を増やす。
 ↓
 ①に戻る

 アメリカは「経済システム」として世界中を範囲にしています。そして武器や株を使い、金融資本主義による覇権国となっています。その前のイギリスは間接統治による植民地主義による覇権国となっていました。イギリスは世界の四分の一の土地を間接統治し、アメリカは金融の四分の一以上を支配しています。第二次世界大戦直後は約半分を支配していました。
 アメリカがソ連を打ち倒したのは、この「経済システム」がソ連より優れていたからです。ソ連は核兵器ではアメリカと同等でしたが、経済の差によって敗北したのです。

アメリカの株の利用法
 アメリカは世界中の資金が流入してきます。日本では土地に多くの資金が投資されましたが、アメリカでは株に多くの資金が投資されています。
 株を買う主体は大きく分けて三つです。
 A)個人投資家 個人の判断で購入
 B)企業投資家 一企業が判断して購入
 C)機関投資家 保険会社や年金基金など巨額の資金を用いて購入

 問題はC)の機関投資家です。第一生命は個人の保険契約だけで百兆円を超えています。ですから、株を運用すると、損益で一兆円を超えてきます。この判断を格付会社(スタンダードアンドプワーズ と ムーディーズの二社が寡占しています)に任せます。個人では一兆円の損益の責任が取れないからです。C)は格付会社の判断に従って、株の売買をしています。そして格付会社は公開前の二週間前にC)に格付を知らせることで成り立っているのです。
 ここに最重要のポイントがあります。格付会社は株を購入できる、ということです。倫理的問題として長く議論されてきましたが、格付会社は株を売買し、保有できるのです。
 ですから、格付会社は理論上、先に株を購入し、格付を上げた情報を機関投資家に売ることが可能です。機関投資家は格付会社の情報を元に売買をしていますから、巨大な資金がその株を売買することになります。すると、格付会社はリスクが極めて低い状況で儲けられるのです。
 たとえば、私が先にトヨタの株を買っておきます。そしてトヨタの株の格付を上げるという情報を第一生命に売ります。すると第一生命は私の情報を元に株を買いますから、1兆円くらい、するとトヨタの株はほぼ百パーセント上がることになります。上がったら私は売ればいいのです。
 二週間後、トヨタの格付を上げました、という情報を企業投資家や個人投資家などに公開し、テレビではニュースとして流れるのです。
 倫理の問題としては、議論がかなりされてきましたが、現在でも続けられています。
 この構造は、「経済のシステム」の視点から見ると判りやすいものです。世界中から資金がアメリカに流れてきて、その資金をアメリカ国内にとどめるための必要不可欠な構造だからです。だから、アメリカの国益に適うので倫理問題では扱われないのです。

アメリカの「経済システム」のポイント
 この株システムを含む金融資本主義のポイントは、情報のコントロールにあります。株の売買そのものが情報のみで決定する、という点でも明らかですが、株に資金が流入するためには情報のコントロールを確保していなければなりません。偽情報で株が増えてしまっては、株システム全体が弱体化してしまうからです。例えば、アメリカのドルは偽札が横行していますが、高額紙幣を出さないことで何とか安定しています。
 アメリカの金融資本主義による覇権を支えてきたのは、CIAやFBI、軍の諜報機関などを含めた情報のコントロールです。
 スノーデン氏は、アメリカが、日本、ドイツ、イギリスを始めほぼ全ての国の首相クラスを含めて膨大な情報スパイの実態を暴いて世界に大ショックを与えました。しかし、これは覇権国であるための生命線であるのです。現在情報のコントロールはインターネット上に移っています。そのインターネットの根幹である、パソコンの中心のOSは、ウィンドウズとアップルですが両社ともにアメリカの会社です。
 日米貿易戦争が勃発した西暦千九百八十年代後半、アメリカ政府がホテルや電話などの盗聴を行っていると疑われてきました。日米貿易交渉で日本側の情報が相手に筒抜けだったからです。日本人は、同盟国のアメリカがスパイをするはずがない。正々堂々交渉するはずだ、と思い込んでいました。
 他方、アメリカは国際法上の縛りがあってもスパイをするのはアメリカの国益に適うからスパイすべきである、としてきたのです。アメリカの覇権が成り立ってこそ、日本の安全があるし、世界の貿易が安定する、という理由です。

米中貿易戦争
 アメリカの金融資本主義のポイントは情報のコントロールでした。この情報のコントロールを握ろうとする国が出てきました。それが中華人民共和国です。具体的にはファーゥエイという新世代の通信システムで世界支配を目指す会社です。この会社は人民解放軍出身の社長が中国の指導部とべったりくっついて成長してきました。欧米や日本、アメリカでも地域でナンバーワンの通信会社になろうという勢いがあります(日本企業はシェア2%以下です)。
 このまま、第五世代の通信を中国に握られると情報のコントロールが中国に移ってしまうことになります。第四世代の通信では、アマゾンやフェイスブック、グーグルなどが巨大な富をアメリカにもたらしました。第五世代の通信が中国に握られるというのは、イメージとしては、アマゾン、フェイスブック、グーグルが全て中国企業になる、ということです。どれほど、中国の影響力が大きくなるか、が想像できるでしょうか?
 そして決定打となるのは、アメリカの「経済システム」の根幹が、機器のレベルですが完全に中国に握られる、ということです。
 アメリカは現在、

 「ファーウェイ製品からスパイウェアが検出されて、中国本土に全ての情報が定期的に送られている」

 と主張しています。ただ、その証拠ははっきりと示していません。「経済システム」からすると、証拠を示す必要はないのです。第五世代を握られるとアメリカの金融資本主義の根幹が揺らぐ、からです。その根幹の揺らぎはアメリカにとって決して許せない行為だからです。日本が日米貿易戦争で、欠陥がないのに日本車に火をつけられ、バットでたたかれ、裁判で証拠もないのに負けまくった事例が参考になります。アメリカの世界覇権を邪魔する国に対してアメリカは、全力でつぶしにかかってきました。ソ連、日本、次は中国なのです。
 ですから、親中国のオバマ大統領やヒラリー候補から反中国を鮮明に打ち出したトランプ大統領が、人種差別、女性差別主義者でも当選したのです。

まとめ
 以上にように「経済システム」から米中貿易戦争の原因を観てきました。このように観ますと、米中貿易戦争は、単なる関税の掛け合いではなく、世界覇権の問題として映ります。
 また、アメリカの大手メディアや日本のメディアの論じている単なる関税の報復、著作権保護の問題という抽象度の低い問題ではないことがご理解いただけると思います。
 一歩踏み込むならば、中国で習金平国家主席が変わっても、貿易戦争は終わらないと考えますし、同時に、トランプ大統領が中国と和解をしたら、次の選挙は落選するのではないか、とも考えます。なぜならば、「経済システム」が「大統領」よりも抽象度が高いからです。
 米中貿易戦争が明確になったのは、昨年の夏、バイデン副大統領の演説からです。現在の所、いつまで継続するのかは不明確です。関税による両国の国民へは損害が出てきていますが、今後もこの流れは変わらないことでしょう。

 今月は、日本、中華人民共和国、大韓民国、ブラジル、インドなどを「経済システム」から触れていくつもりです。よろしくお願いいたします。

 参考書としてはきりがないのですが、「経済システム」については、エドワード・ルトワック氏の各著書をお読みください。

 追記:アメリカ国防総省は六月一日の「二千十九年インド太平洋戦略報告書」で台湾を国として認めました。国際機関への台湾の出席等も推進していくと書かれています。

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