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【隨筆】哲学とーちゃんの子育て ―シャトルランとヒザの痛みと夫子の道―


 平成三十年十月十四日(日曜日)、午後七時二十分ごろ、家に着きそうな車の中で、

 「じゃあ、おとーちゃん、こう思うことにするね。シャトルランで学年一位になったお祝いと、バスケをがんばっているから、くつ(靴)とくつした(靴下)を買ってくれたって。」

 「うん、そうだね、よく頑張ったもんね。」

 シャトルランは二十メートルの間をドレミファソラシドの音の間に行ったり来たりする体力測定の方法です。新スポーツテストで導入されました。

 とっくん(八歳二カ月)と私は午後五時を過ぎて、靴を買いに出かけ、家に帰ろうという車の中での会話です。心の中では、

 「長い文章を自分で言葉にできるようになったなぁ。」

 と感じました。靴は運動靴と中敷き(ソール)を、靴下は五足買いました。帰宅すると、とっくんはかみさんに、

 「おかーちゃん、すっごい良いくつとくつしたを買ってもらったよ。テーピングのくつしたなんだ。」

 と自慢しました。二人が会話をしている間に晩御飯を作り、食べ終わって片づけをしている時にかみさんに言いました。

 「ぼくは、部活で親に最低限の道具しか買ってもらっていなくて・・・だから、その想いをとっくんに買ってあげることで、解消できる機会をもらえた。とっくんに感謝だなぁ、と思ってついつい買いすぎてしまったよ。だってね、本当はぼくの靴を買おうと思っていたけど、壊れかけのバスケットシューズを直す道具を買ってきた。二千円もしない。でも、とっくんは全部で一万五千円以上したんだ。だから、それが嬉しいなぁ、と思ったんだ。」

 離れていたとっくんに呼びかけるように、

 「とっくんありがとう。じゃあ上に行くね。」

 と言いました。かみさんは、続けて、

 「とっくんは恵まれているよ。とっくんはね、恵まれているよ。だってね、・・・」

 と話しかけていました。私は二階にいる二人の娘の歯磨きをするため、かみさんととっくんの会話の続きを聞かずに、階段を上っていきました。

シャトルラン
 シャトルランは正式には「二十㍍シャトルラン」と言うそうです。小学校二年生の平均は約三十回。小学校六年生男子の平均は約六十回です。女性は中学校二年生が平均の最高で五十五回です(平成十二年度)。ですから、とっくんの六十六回は小学校六年生の平均を超えていることになります。小学校二年生の上位二パーセントに入るそうです。ただし、ミニバスの二つ上の先輩に九十九回がいます。四年生の一位は百十五回だそうです。その四年生の先輩はとっくんを褒めてくれました。

 「とっくんすげーじゃん。おれは二年生の時、六十回だよ。三年生で六十六回。今年は九十九回だけどね。来年はすげー記録になるんじゃない?」

 と。素直にチームメイトの記録を褒められる先輩がいることが嬉しい、と聞いていました。とくは、先ほどの自動車の中で続けていいました。

 「来年はシャトルラン、百回! で、六年生になったら五百回いくんだ!」

 「そうだね~がんばろうね。」

 と言いました。ちなみに世界記録はサッカーの長友選手の三百五十七回と読んだことがあります。それを持ち出して「何言ってんの?」と客観的事実を押しつけるのではなく、本人のやる気を認めることにしました。

ヒザの痛み
 とっくんに靴を買おうと思ったのは、ヒザの痛みが出たからです。十月六日(土曜日)のミニバスの練習の時でした。体育館を五分五十秒以内に全員で一緒に十五周する練習があります。ちなみに、ミニバスの選手たちはこの練習が嫌いです。その十五周走で初めてビリになりました。ヒザが痛いというのです。しまった、と思いました。ヒザ下の脛(すね)の横の前脛骨筋(ぜんけいこつきん)が固くなっており、走る衝撃がヒザに直接言っていたのです。コーチにもお聞きしました。ヒザ下のマッサージを直ぐにして、帰宅後は痛くなるまでマッサージしました。根本原因は、偏平足(へんぺいそく:足の裏がまっすぐなこと)です。私も偏平足です。

 翌日には、ロフト(お店の名前)のフットマッサージコーナーに行って、フットマッサージ器具を4つ買ってきました。自分で足裏のマッサージをするためです。かみさんは農業高校で青竹ふみを2本いただいてきました。
 私の足裏マッサージは痛くて痛くて、

 「いててててて!!! しにゅぅうううう!!!」

 と涙をためました。珍しく反対の足で私のマッサージをしている手をけり飛ばすほどでした。私は強くもみながら、ここまでミニバスを頑張ってきたことを誇りに思いました。私は中学卒業まで、足が固くなってヒザが痛くなるほど練習をしたことはありませんでした。フォームが悪いからではなく、練習と偏平足でヒザが痛くなったのです。
 とっくんは未熟児寸前で生まれ、運動能力は中の中です。保育園の時の足の速さは真ん中くらいでした。それが一年半のミニバスケットを一所懸命やったので持久力だけですが学年一位になったのです。よくやりました。
 そういう想いを持ったからこそ、すぐに対策をとりました。日曜日は午前八時半から十二時半まで練習し、午後二時から五時まで昼寝。週末に空いている時間は、午後五時半からしかありませんでした。私自身も疲れていましたが、靴とテーピング機能付きの靴下の購入となりました。

夫子の道は
 翌日の月曜日の練習開始に、ミニバスの選手に聞いてみました。足の裏やヒザは痛くないのか?と。すると二人が、痛い、というのです。 
 練習後に、親御さんに偏平足のこと、足首から固くなって最後にはヒザが悪くなることをお伝えしました。すると、「あ、うちもそうだ。」や「お兄ちゃんが偏平足って言われた」と返して下さいました。ですので、足の裏の固くなる位置をお教えし、とっくんの実物の靴と中敷き(ソール)をお見せしました。足首や足の裏の痛みで苦しむのを和らげて差し上げたい一心でした。
 若い頃の私は、こうした知識があっても相手にお伝えするのを戸惑うこともあり、中途半端に早口でお伝えすることがありました。けれども今回は、なるべく丁寧に、分かりやすく、何回もお伝えしました。それは、以下の言葉を思い出したからです。

 「曽子曰く、夫子(ふうし)の道は忠恕(ちゅうじょ)のみ」      里仁第四 十五章抄
          『仮名論語』 四十三頁

 伊與田覺先生訳
 「曽先生が答えられた。「先生の道は忠(まこと)と恕(おもいやり)だと思うよ。」

 ミニバスの監督になって、ミニバスの選手たちに忠と恕を伝えたい、と思うようになりました。若い頃の気恥ずかしさがない訳でないのですが、『仮名論語』を読み、少しでもお役に立ちたい、と考えられるようになりました。変わっていけることに感謝の意を表したいです。
 今後もミニバスの選手たちとの関わりのの中で、『仮名論語』で学んだことを身に付けていきたいと思っています。


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