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【倫理】名言を通して生き方を見直してみましょう


 顔がこわばり、吐く息が白く成ってまいりました。三年前も、そうであったなぁ、と感慨深くなりました。ちょうど三年前、「ふじの友 第二十二号」の「【道徳】 『論語』と道徳的発達段階」を書きました。「科学技術者の倫理」の講義の予習で、先日、読み返したのです。

講義での導入
 今回は、この講義でした話を書きたいと思います。また、読み返してみると、かた苦しい文章でしたので、具体的な例として結婚を入れて書いてみたいと思います。結婚にしたのは、大学生の皆さんが、関心が高いからです。講義自体は、倫理の基礎付けの話です。基礎付けというと難しいですが、

 「なぜ、善いことをしないといけないの?(倫理)」

 と他人(私は三歳の娘)に聞かれた時、その理由として説明する内容が、基礎付けです。

 ○日本人:「私はご先祖様から生まれた(基礎)」、だから、「善いことをしましょう(倫理)」。
 ○六割の人:「私は神が造られた(基礎)」、だから、「善いことをしましょう(倫理)」。

 ○アメリカ的:「誠実にすると得をする(基礎)」、だから「善いことをしましょう(倫理)」。

 と三つの基礎が出てきています。最後に「アメリカ的」と書いたのは、アメリカで主流の思想「プラグマティズム(功利主義)」の考えだからです。ただし、アメリカには多様な思想があるので「的」をつけました。加えて、プラグマティズムは、グローバリゼーションという名前のアメリカ化によって、日本やその他の地域でも幅広く見られるようになってきています。

生き方の考え方
 現代の日本は、もうお金がなければ生きていけなくなりました。自給自足の生活は成り立たなくなりましたから、お金=利益を大切にすることは生きていくことに直結しています。お金とどのように付き合うか、お金を使いこなすのか、お金に使われる人生になるのかは、大きな問題です。前置きが長くなりましたが、講義では五つの考え方を示しました。

 生き方の考え方
 一 何も考えない=直感
 二 利益と利益を比べて考える(利益を大きくするように考える)
 三 利益と損益を比べて考える
 四 損益と損益を比べて考える
 五 損益をゼロ(零)にするように考える

一 何も考えない=直感
 
 何も考えない、と聞くと、本当にそんな人はいるのだろうか?と思われますが、多くの人は何も考えずに結婚します。何も考えない、というのは行動を客観視して捉えないという意味で、言い換えれば「恋をしたから結婚したい」です。

 「イケメン(ハンサム)だから結婚したい~。」
 「美女だから結婚しよう~。」
 「あなたが好きだから結婚しよう。」

 というのは恋しているから結婚することです。恋とは自分で自分を制御できず、胸がドキドキ、その人のことを目で追ってしまい、近くに来るだけで「嬉しくなる~」です。自分の思想や信念も投げ出してしまうのが恋なのです。それはとてもすばらしいこと。けれども、「何も考えていないこと」でもあるのです。以下の諺を講義内容に付け加えます。

 有名な哲学者ソクラテスが結婚について聞かれて以下のように答えています。

 若者「ソクラテスさん、結婚すべきでしょうか、すべきでないでしょうか。」
 ソクラテス「どちらにしても後悔するだろう。」

 この言葉のやり取りを世間一般ではソクラテスは「結婚は考えることではない」、「人生の知恵を教えた」などと解釈されています。
 私は少し異なります。まず、若者が結婚に悩んでいます。つまり、意中の相手がいるのでしょう。悩む、ということは恋をしているのでしょう。親に従って結婚するならば悩むことはありませんから。恋に悩んで何も考えられない人に、考えなさい、というのはどだい無理な話です。ですから、悩むなら結婚しなさい、と言っていると解釈します。結婚した後の後悔を肥やしにして、自分自身で考える力をもっと身につけなさい、と言っているように聞こえます。ソクラテスは、孔子のように若者の教育に力を入れて、そして優秀な弟子がついていきました。説教をするだけのおじいさんではなかったのだと私は観ています。ですから、どちらでも後悔する。大切なのはその後悔を活かすかどうかだよ、と若者を包み込んでいるように読みました。何も考えていないことが、決して悪い結果だけを産み落とすのではない、という風にも考えられます。

 シェイクスピア(イギリス劇作家 十六世紀文学者)

 「若くして妻をめとる。わが身の災難である。」

 こちらは結婚の悪い面だけに注目します。さすが、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「リア王」など悲劇の天才です。劇とは限られた時間で観客に分かりやすく提示しなければならないので、一面だけを取り上げる才能が必要なのです。

 武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ 小説家、画家、貴族院勅撰議員 昭和五十一年没)

 「馬鹿な者は、独身時代には結婚の喜びを想い描き、結婚すると独身の時の喜びを想い描く。」

 小説家は、人間の複雑な内面性を見なければ書けません。そこには矛盾があり、悲哀があり、喜劇も悲劇もあります。

 トーマス・フラー(イギリス聖職者 十七世紀歴史家)

 「結婚前には眼をひらき、結婚してからは眼を閉じることだ。」

 人間の欲を抑えなさい、と説教するのは、やはり、聖職者の役目です。

 ①何も考えない、で結婚することを、それぞれの立場で見ています。逆から見れば、立場が判るような言葉だからこそ、名前が残っているのでしょう。それにしても多様な立場の人が取り上げている結婚は、人間社会で大きな主題の一つなのが伝わってきます。

二 利益と利益を比較する考え方

 結婚というのは楽しいものです。少なくとも初日は。ですから、結婚する楽しみ(利益)と結婚しない楽しみ(利益)を比べてみる、という考えです。一時期、プラス思考、という言葉が流行りましたが、その前向きさには長所と同時に、大きな落とし穴があります。
 つい先日、ホームセンターにどんぶりを買いにいきました。そのホームセンターの前には宝くじ売り場があり、宣伝文句が聴こえてきました。

 「買わなければ当たらない!!」

 なるほど、これは利益と利益を比べた考え方で、巧い宣伝文句だと感心しました。つまり、こういうことです。

 「買わないと利益はゼロ円。買うと利益は(最大)十億円。」

 「利益ゼロ円と利益十億円を比較して、さあ、買ってください!!」

 という訳です。一歩踏み込んで考えてみましょう。十億円当たる確率は一千万分の一、人工衛星から水滴を垂らして地上の上にいる自分の掌(てのひら)に落ちるくらいの確率です。しかも、当たった人全員に払われるお金を合わせると購入した金額の約半分なのです。つまり、三百円の券を買うと、その瞬間に百五十円になってしまうのです。宝くじに「平均」して「当たる」として五年間買ったと考えてみましょう。

 三百円の宝くじ券 → 五年後、九円の宝くじ券

 になるのです。五年後には九十三%損をするのです。十万円購入すると、五年後には約三千円になってしまいます。当たれば確かに大きいお金をつかめます。この事実を乗り越えるのが、利益と利益を比べる考え方なのです。
 言葉を替えてみましょう。自分が神様に愛されているから自分だけが当たるのだ、と考える人は少ないでしょうが、宝くじを買うということを損益(リスクを含めた)から見ると、自分だけは特別な存在者だ、と考えている人の行動になります。もちろん、神様、仏様はあなただけを特別に愛してくれてはいますが、お金を増やしてくれはしないでしょう。神様は特定の個人の経済上の利益を与えては下さらないからです。しかしながら、特別にお金を与えて下さると考えないと、宝くじを買い続けられないのです。これは、利益と利益を比較して考える人の大きな落とし穴になるのです。
 結婚も同じです。

 結婚する利益:好きな人と一緒に居られる 子供を作れる 世間から一人前と認められる
 世間から一人前として認められる、ことは私自身の強い経験に基づいています。両親に「仕事を一所懸命しても結婚しないと人は認めてくれないぞ」という言葉を聞き続け、結婚しただけで「お前もやっと大人になったか」と親の両方から聞きました。三十五歳まで結婚しない、と自分で決めていて周りの誰にも言っていなかった私は特に印象深かったです。ただ、両親は長年の不仲を通して、六十を過ぎて仲が良くなった時期でしたからかもしれません。

結婚しない利益
 結婚サイトには載っていませんが結婚しない利益は、確実にあります。英国のオックスフォード大学やケンブリッジ大学には、教授が大学に住むという制度がありました。「学問と結婚する」ような制度です。人生の時間の全てを真実に注ぎ込むという生き方です。日常の食事、雑事や家事炊事などは大学の雇用した人がやってくれます。通勤時間も掛からない見事な生き方の一つだと思います。日本では僧侶の生活がこれに近いでしょう。
 結婚する利益と結婚しない利益を比べると、前向きさと同時に大きな落とし穴があるのです。詳しくは次にまとめて述べます。

三 利益と損益を比べて考える
 利益と損益を比べるのは、一般にトレード・オフと言われます。講義で使用した技術分野での説明します。飛行機の翼を大きくすると以下のようになります。

 翼を大きくする利益:航続距離が伸びる
 翼を大きくする損益:速度が落ちる

 翼が細すぎると上昇しなくなり、翼を胴体と同じくらい幅広くすると重すぎて飛ばなくなります。ある範囲で翼の大きさが決まります。戦闘機は速度がいるので、翼は小さめです。対して、ジャンボジェット機は航続距離が必要なので翼は大きめになります。ある行為による利益と損益が同時に生まれる状態のことを指します。

 結婚する利益:先ほど挙げましたように、好きな人と一緒に居られる 子供を作れる 世間から一人前と認められる

 と同時に

 結婚する損益:自分の時間が無くなる 金銭が余分に掛かる 親戚づきあいが増える 世間からの負担が増える

 一人前に認められると同時に、世間からの負担が増えます。私が学生時代にアパートに住んでいた時、町内会は遠いものでした。町内会費を払ったことは大阪時代しかなく、回覧板も回ってこず、町内の行事に参加しませんでした。しかし、結婚して子供ができると、町内会費は必ず払いますし、本年度は班長のお役目が回ってきました。ご不幸があれば班内でお葬式の受付のお願いにかみさんが回ってくれました。回覧板を回さなければなりません。結婚して一人前と認められれば、それから生じる損益も同時にあるのです。この損益を感謝として受け入れることは修養であり、論語の目指すところでありますが、肉体の負担は増加するのに換わりありません。
 かみさんと結婚する時、私の苦手な親戚づきあいが増えることも、町内会等の負担が増えることも、自分の時間が減り、お金が自由にならなくなることも覚悟したうえで結婚を決断しました。
 昨日(平成二十九年十二月十日日曜日)は、息子七歳のミニバスケットの公式戦でした。二回戦で負けてしまいましたが、一回戦目の相手チームの代表が、なんと!、私が所属していた社会人チームの仲間でした。気が強く仲間思いの素晴らしい選手だったのです。試合前に話しかけてくれて、驚き、そして幸せでした。五年も所属したそのチームは、かみさんの妊娠が判ったので辞めたのです。その前に、辞める覚悟をした上でかみさんに結婚を申し込んでいたからです。

 「結婚をして損をした」、「結婚は人生の墓場である」という考え方は、結婚する損益を考えていなかったからです。これは②利益と利益を比べて考える際の大きな落とし穴にはまったことを意味しています。
 では、有名人の言葉を引いてみましょう。仏教を西欧に紹介し、ニーチェ、フロイトなどに多くの影響を与えた十九世紀のドイツ哲学者ショーペンハウアーの言葉です。

 「結婚とは、男性が自己の権利を半減し、自己の犠牲を倍加させることである。」

 彼はこの言葉で何を言いたかったのでしょうか。結婚の利益と損益を比べて考えなさい、でしょうか。つまり、

 「結婚は権利の半減、自己犠牲の倍加」だけど「結婚はいいものだよ。」
 でしょうか? それとも、逆でしょうか。
 「結婚は権利の半減、自己犠牲の倍加」だから「結婚は悪いものだよ。」

 読み解くのは三つあります。
 一つは、母親が女流作家で自己顕示欲が強かったこと(彼は大いに反発していました)。
 二つは、生涯独身であったこと。
 三つは、以下の言葉です。

 「女は子供を育てるのに適している。なぜなら女というもの自体が子供っぽく、愚かしく、身近な物事しか見ない子供に過ぎないからである。」

 彼は結婚しない、という自身にとって最良の選択をしたのです。さすが哲学者です。結婚の大きな落とし穴にはまりませんでした。
 同じ哲学者でもソクラテスは「落ちた上で考えなさい」と言い、ショーペンハウエルは「落ちる前に考えなさい」と言っています。古代人と近代人の違いなのでしょうか。都会人ソクラテスと都会に出てきた田舎者のショーペンハウエルの違いなのでしょうか。それとも太陽の日差しがあふれる南ギリシャ人と、北海道の稚内(わっかない)のように冬に大雪の降る北部ポーランド人の違いなのでしょうか。

四 損益と損益を比べて考える

 今度は、結婚する損益と結婚しない損益の比較です。リスクトレード・オフといいます。

 結婚する損益:自分の時間が無くなる 金銭が余分に掛かる 親戚づきあいが増える 世間からの負担が増える

 結婚しない損益:平均寿命が約十年短くなる 仕事の成果などが認められにくいなど

 結婚が語られるとき、「結婚しない損益」は語られることは少なく感じます。また、統計事実はさらに少なく感じます。かみさんに結婚前に話すと知らなかったのですし、結婚を学問の対象とさめて見ないと浮かび上がって来にくいのでしょうか。良い悪いを考えてみます。

 「結婚すると自分の時間は減る」だけど「寿命は十年延びる」から「結婚は良い」、という判断です。同時に、「結婚すると自分の時間は減る」そして「寿命は十年延びる」けれども「結婚は悪い」という判断です。

 「なるべく自分の時間を減らさない人」や「健康になる食事を作れる人」や「家の中を清潔に保ってくれる人(清潔だと寿命が延びます)」が判断基準になります。加えて、ストレスは寿命を縮めますから、「一緒にいてストレスのたまらない人=相手の短所を私が許せる人」を選ぶことになるでしょう。長所を見るのではなく、短所をみる、が④損益と損益を比べて考えることなのです。ここまでくると、顔の良い人と結婚したい、や好きになったから結婚したい、という①から遠くまで来たように感じます。
 つまり、前向き、言い換えれば欲望全開の生き方は、「若者だからこそできる無鉄砲さ」、「清水の舞台から飛び降りる」、という風に観えてしまいます。「欲を抑えてコントロールする=仏教の小欲知足(しょうよくちそく)」、「すべてが心穏やかになるように、という心境」に近しい気がします。諺を見ていきましょう。

 ラ・ロシェフーコー(フランス貴族、十七世紀文学者)

 「良い結婚はある。しかし、魅力的で楽しい結婚はない。」

 良い、の中に魅力、楽しいが入っていない、というさめた態度が見て取れます。さらに、「ない」と言い切っている点で、客観視しており、チャレンジ精神や前向きさが失われています。彼がどんな文章を書いていたのか、少し推察できるような気がしてきました。

五 損益をゼロ(零)にするように考える

 リスクヘッジと言います。これはトレード・オフとリスクトレード・オフと少し異なります。二つは「何かの行為を自分でする際」の利益や損益を考えていました。対して「リスクヘッジ」は「何かをしない場合も含めた際」の損益を考えるのです。
 言い換えると、お金持ちの人の考え方です。資産が百億円の人をお金持ちとします。総務省統計局の平成二十六年度の調査によると、

 「世帯の家計資産は平均三千四百九十一万」

 となっています。百億円の人は平均的な人の約三百倍の資産を持っていることになります。ですから、このリードを続けたいと思わなければリードは保てません。それは「利益はなくても良いから損をしたくない。」という考えです。ちょっと聞くと「損をしないなら楽じゃないかな?」と思われるかもしれませんが、これが中々難しいのです。なぜなら、モノの値段(物価)は通常上がっていきます。ですから、お金を銀行に貯金しているとお金の価値は減っていくのです。たとえば、十万円で買えた車が、十年後に三十万円になってしまいました。すると、買える車の台数は三分の一になります。つまり、お金の価値(=モノと交換できる価値)が三分の一になってしまうのです。「金があればあるで、金に縛られる」と聞きますが、

 「なんとか持っているお金の価値を減らしたくない。」

 というリスクヘッジを意味しているのです。
 これまでの流れに沿って結婚で考えてみます。結婚というのは、そもそも安定した生活やそれによる社会上、精神上の保全を目的としています。ですから、国家による法律の担保が必要になるのです。人の心は揺れ動き、どのように変化するか判らないものです。遺産問題、兄弟のいがみ合い、仲が良かったのに、今では口もききたくない関係になってしまうのはよくあることです。この様に、人は揺れ動いてしまうのです。その揺れを何とか安定させようというのが結婚の婚姻制度です。私の家でも幼いころは仲が良かったのに、顔も合わせたくない、という関係になってしまった家族関係があります。損益で考えるとこれも損益になります。先ほどのリスクトレード・オフでは観えなかった損益を挙げてみます。

 離婚するときに掛る大変な苦労=結婚することで生じる損益

 二回、離婚している友人がいますが、「結婚はもうこりごりだ。だって、離婚する時に仕事は手に付かなくなるし、色々な問題を話し合わなければならない。もうしたくない。恋人関係で十分だよ。」と話してくれたことが、だいぶ前にあります。離婚は結婚の何倍もの労力と時間が必要である、と聞きますが、そうかもしれません。なぜなら、

 「好き合っている者同士でするお金の話」
  と
 「二度と遭いたくない者同士でするお金の話」

 だからです。さらに、両家の親類が関わってきましたら、目も当てられません。

 「相手の親とは絶対に合わないなら、結婚しない。」

 というのもリスクヘッジの一つと言えるでしょう。結婚することによる損益(未来の可能性も含めて)は、他にもあります。結婚して相手が浪費癖、酒乱等の場合もあるのです。このような損益も計算しなければなりません。もしそこで多大な金銭を使ってしまうと、老後に優れた老人ホームに入って手厚い福祉が受けられなくなってしまうのです。このようにマイナスを数え上げていくと、結婚相手には「真面目が一番、普通が一番」、「当たり前が当たり前にできる人が一番」のように判断でしょう。リスクヘッジは考えなければならないことが数限りなくあり、また、マイナス思考になりがちです。さて、それでは日本以外の人の言葉を探してみましょう。

 モンテーニュ(フランス貴族 十六世紀哲学者)

 「美貌や愛欲によって結ばれた結婚ほど、早く紛争を起こして失敗するものはない。結婚には、一定して変ることのないしっかりとした土台と、堅実にして慎重な行動が必要である。沸き立つような歓喜は、何の役にも立たない。」

 フランスのモラリスト(深い洞察で人間の生活を分析する人)と呼ばれる分野を切り開いた彼らしい言葉です。情熱や愛欲という前向きさは無価値であり、深い洞察に、慎重な行動にこそ価値がある、と書いています。同じ内容でも海を隔てたイギリスでは、皮肉っぽい言葉が残っています。

 モーム(イギリス小説家、軍医、スパイ、孤児、昭和四十年没)

 「なぜ、美人はいつもつまらない男と結婚するんだろう?
 賢い男は美人と結婚しないからさ。」

 スパイや小説家というモーム自身の要素も強いでしょうが、「リスクヘッジしている男=賢い男」という意図は読み取れます。言い換えれば、①のように外見だけで恋にのぼせあがり、結婚する男は愚かであるという文意です。モンテーニュと同じ文意でありながら、皮肉を込めています。つまり、「美人と結婚するのは愚かな男だ」という皮肉です。
 先に母を亡くし、十歳で父を癌で失った彼には「リスクヘッジ」という考え方が染みついていたのでしょうか。それでもモームは、ゴーギャンをモデルにした『月と六ペンス』や自伝的小説『人間の絆』を書き残してイギリス文学の傑作を生み出しています。私は彼の小説の根底にある深い洞察が、「リスクヘッジ」の要素を抱えているように読めます。そしてその深い洞察がイギリス文学の傑作とされる理由なのでしょうか。少し寄り道しましたが、⑤損益をゼロ(零)にするように考える は以上になります。

まとめ
 どのように考えて生きるか、を五つに分けて述べてきました。利益を中心にして、色々な名言を入れてみました。書き上げてみると、十分検討していないことが多いことに気がつきました。結婚をしてみて、考えるべき余地に気がつきましたし、改善をしていきたい点も出てきました。毎回、ふじの友の原稿を書くことが大変だと感じるのですが、こうして考えをまとめる機会を下さっているも感じます。読者の皆様、編集の藤田先生のお陰さまに心より感謝致します。

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