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講義録14-1 評価におけるモデル計算と戦略的嘘

 皆様、こんにちは。

 小正月に入っても爽やかな気候が続いております。講義も明日で最後になりました。最終講義を迎えるに当たって、充実した気持ちと同時に、もう少しこの問題を一緒に考えて欲しかった、という気持ちが交差しています。終わりが始まりでもある、というこの世の摂理を実感します。今日は、静岡浅間神社の裏の山を登って、「静岡市戰禍犠牲者慰靈塔」に甥や姪、息子と行ってきました。大東亜戦争で民間人を虐殺した戦争犯罪の空爆で一万人弱の死傷者が出たこと、そして爆撃をした米兵も慰霊されていることを、きちんと伝えました。

総務省のHPに写真があります。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/daijinkanbou/sensai/virtual/memorialsite/shizuoka_shizuoka_003/index.html
 
 その後は、楽しい朝御飯。おむすびとから揚げです。なんて美味しいかったことでしょうか。ご先祖様と私という過去、そして私と甥姪息子という未来があります。これがこの世の摂理だと実感しました。学生の皆さんもあと1回で旅立っていく、そのことも胸に去来しました。

 それでは本文に入ります。

配布プリント B4 4枚
期末テスト用 2枚
: マツダ社長金井誠太 インタビュー「リーダーは志を持て」  雑誌『致知』2016年1月号 致知出版社 10-17頁 
※期末テストの問題をこのプリントから出します。

意図 :技術者倫理はどうしても日本企業の悪い点をあげつらうことになってしまいます。学生の皆さんのコメントがそうした傾向が出てきました。しっかり経営して誠実な企業が殆どです。その中で経営陣の改革で成功した自動車企業マツダの金井誠太会長のインタビューを読んでもらい、明るい未来も見て欲しくて配布しました。

授業用
:「有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価(松尾雄司氏資料)」 第35回原子力委員会定例会議 平成23年9月13日 1,4-6P
:http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo35/siryo3-1.pdf
:『原子力発電の諸問題』 日本物理学会編 東海大学出版会 1988年 20-23P 大学所蔵なので「543.5 N71」
:『漠(ばく)さんの原発なんかいらない』 西尾漠 七つの森書館  1999年 30-33P 大学所蔵なので「543 N86」

紹介し回覧した資料
:「有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価(松尾雄司氏資料)」 第35回原子力委員会定例会議 平成23年9月13日 1-27P
:http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo35/siryo3-1.pdf


 --講義内容--

 前々回は事実確認の問題、前回は事実のデータ分析の問題、今回はデータ分析を評価する際の問題です。数々の問題が指摘されていますが、今回は以下の2点に絞ります。

①評価が善悪などの1つの場合は、政治的意図(社会背景)が原因である。=学問としては不完全である 

例:地球温暖化は悪である、原発は安全で推進すべき あるいは原発は危険で廃止すべき
これまでの関係:学問の公平性とその理由、公衆の福利の曖昧さ、工学的安全にはリスクがある

②評価を善悪の1つにするために戦略的嘘が使われ、その根拠としてモデル計算が度々使われる

例:原発は火力発電よりも安い 地球温暖化は必ずある

 戦略的嘘は、国際政治学のリアリストの中で良く出て来る言葉ですが、古代ギリシャ哲学やローマの時代から扱われてきました。特にプラトンの哲人王だけが嘘をつくことが許される、という指摘、孫子の「兵は詭道(きどう)なり」などが有名です。また、リアリストの中でお奨めの本は以下です。

ジョン・J・ミアシャイマー著 奥山信二訳 『なぜ リーダーはウソをつくのか 国際政治で使われる5つの「戦略的なウソ」 』 


 以上の点を技術者倫理に落とし込めば、原子力発電の社会構造全体の問題として観ることが出来ます。

1)食糧とエネルギー不足になり大東亜戦争を起し敗戦 (それ以前に外交上の失敗などもある)
 ↓
2)食料とエネルギーをアメリカに完全に握られ、憲法(戦力放棄を明記)を強制され再び戦争を起こさせないようにされる 
 ↓
3)エネルギーをアメリカから買うのが善いことだ→石油はメジャーから、原発はアメリカに完全に支配される
 ↓
4)原発のウラン濃縮はアメリカだけ、なぜならアメリカは石油が輸出する程採掘できないから
 ↓
5)原発は絶対に善い、という評価が1つ
 ↓
6)戦略的嘘で「原発は安い」、「原発は未来のエネルギー」、「原発は絶対にしなければならない」 =利益とリスクを比較しないというトレード・オフがなくなる
 ↓
7)「原発は安い」のではないので、嘘をつくために実際の値(発電量)ではなく、理想化された状態や数値の操作されたモデル計算をする
 ↓
8)「原発は安い」などが一般の人々に流れていく

 しかし、配布資料にあるように、1970年頃までは圧倒的に原発が高く、現在は原子力と火力がほぼ同じ発電コスト(実効値)になっています。この科学的結果を踏まえて原子力政策を推進せずに、モデル計算だけを用いて「原発は安いから」で推進しています。こういう科学的知見や結果に基づかない、という社会圧力で優秀な原子力技術がゆがめられてしまっているのです。アメリカでは電力自由化を本当に導入した結果、原発は新規が出来なくなりました。ある町では電気料金が6倍になったほどです。そのアメリカで日本の原発技術を導入することが決定しました。世界の最高の技術があるのです。それを実効値に基づいた正確な評価を下すことが、原発を考える第一歩だと思います。

 また、発電量の8割前後の工業や大企業などの節電を導入することを抑える電気料金体系がありますが、それも原発のベースロード発電を拡大したいための政策の一環と考えると、電力会社が原発に依存する構造になっていると言えます。しかし、今後は原発は4割前後の発電は出来なくなっているのですから、その依存の構造を見直す必要があると考えます。つまり、原発が無いのに電気料金等までも原発依存している電力会社などの体制を変えることです。こうした構造は、単に原発推進や原発廃止では決して捉えられないものですし、同時に改革できないものでもあります。しかし、それを矮小化してしまうことが、現実世界では往々にして起こります。

 以上の構造が、「二酸化炭素による地球温暖化は『悪である』」にも共通する。私は地球温暖化は科学的知見に基づかない、と考えている。が同時に、

 「地球温暖化は善である」

 と結論付けている。なぜなら、世界平和=大規模戦争回避になるからである。第2次世界大戦は食糧とエネルギー不足が根本原因である。第2次世界大戦以降、食糧は増産されるが現在、耕地面積は頭打ちで僅かに減少傾向にある。温暖化をすれば永久凍土がとけ出して耕作地が広がるであろう。エネルギーはメタンハイドレードや石炭の埋蔵は後1000年を超えてあるので問題ははない。

 地球温暖化は『悪である』

 といい出したのは当時のソ連のゴルバチョフで、米ソ冷戦でソ連が負けないようにアメリカに石油を使わせないようにするための戦略的嘘であった。現在は、二酸化酸素問題に注目していれば、それよりも危険な廃棄物である核廃棄物に注目が集まらないので、データの多くと学説を主張する(引退した)学者の多くはアメリカから出ている。そして地球温暖化はシュミレーションであり、簡単に言えばモデル計算である。モデル計算は入力数値と計算式をいじれば、入力者の意図に沿う結果を導き出すことが可能である。1つの指標にはなりえるだけのものである。

 さて、それでは以上を昨年度の講義録より抜粋していく。

 --(昨年度の講義録より抜粋)--

今回は、3次情報、評価についてです。評価は色々な視点で考察されてきましたが、技術者倫理の視点から切り取っていきます。原発と地球温暖化についてです。両方とも、社会背景が技術の目的を決定した好例になります。原発も温暖化も純粋な自然科学の、あるいは工学の結論で推進されている訳ではありません。ですから、原発にも温暖化にも社会背景による推進圧力が掛かっています。その根拠をモデル計算によって作られています。モデル計算は、数式や入力値を替えることで、どのような結果も導き出せます。原発では発電コスを半分以下にしています。温暖化では必ず温暖化になります。
 つまり、モデル計算は評価において使われると、そこに社会圧力が掛りやすい、のです。
 モデル計算をしている原発、地球温暖化は、物理学などの自然科学の学説とは全く異なる知識形式である、点を認識しなければなりません。
 これが今回の結論です。

 私達はそうした社会圧力=恣意を非難することは出来ますが、無くすことは出来ません。それが3次情報、評価が必ず抱える問題だからです。ですから、学問として出来るのは、そうした恣意性を注意しながら、情報源を増やし、なるべく現場に向かい、反対の立場に耳を傾け、自らの頭で考えることです。
 
 -原発の要点
A) 電力会社は原発導入に反対であった
B) 電力会社に原発をさせるために絶対に損しない法律等々を作った
C) 原発は失敗を隠した方が(ばれても)得をする構造にある
D) 福島原子力災害があっても電力会社が絶対に損しない法律等は変わっていない
E) しかし、福島原子力災害の法律無視の事故対応で損をする可能性が出てきた
F) 原発を推進するためにモデル計算が使われてきた
G) 実際の発電量から計算すると火力発電よりも少し高い程度である(最終処理費は除く)
H) モデル計算は太陽光発電等にも使われている
I) 原発導入の社会背景は反米感情の緩和と日本をアメリカ側につなぎとめるため

-二酸化炭素による地球温暖化要点
J)「地球温暖化が悪である」という結論はソ連のゴルバチョフが米ソ冷戦で生き残るために主張
K)その後、アメリカが核廃棄物に注目しないようにと宣伝するようになった
L)温暖化によって海面上昇はしない。ツバルは人口増加による地下水汲み上げやビル等の構造物などによる
M)北極の氷は溶けても海面上昇しない。南極の中心点の平均気温は低下している
N)10万年で平均気温の上下は12度、6000年前は現在より5mから10m高かった。現在の学説の1,2度上昇や、0.5mの上昇は自然科学的には誤差値でしかない。
O)温暖化ガスの約90%は水蒸気であるが、どのような動きをするか解明されていない。
P)もし、地球温暖化するとして、耕作地が増える可能性がある。現在の地球規模の問題は、食糧問題(飢餓問題)である。世界の人口は爆発しているか、耕作地面積は増えていない。シベリアの凍土が氷解し、水蒸気が増えて砂漠化が止まれば耕作地が増えるだろう、
R)地球温暖化はモデル計算でされている。4つのモデル計算では日本は寒冷化する結果の方が多い。
S)異常気象や日本温暖化は地球温暖化と自然科学的因果関係が証明されていない(マスコミはそのように報道するのは評価の問題である)。

 以上です。
 また、事故を隠した方が得をする社会構造が原発にあるのですから、メタンハイドレード、地熱発電、ガス・コンバインド方式の火力発電(発電効率60%-70%の新技術)を、放棄する圧力が働くのも当然である、と述べました。

 前年の引用から入ります。

 倫理絶対主義は「倫理が判断基準である」→「国民の避難生活を強いる原発は停止、または否定」です。
 倫理相対主義は「倫理や安全、経済が判断基準」→「原発の経済性を考えてみる」→「公平に見る」です。

 高木は「倫理相対主義」ですから、原発の経済性を考えます。そうすると原発の経済的弱点が4つ出てきます。吉岡斉著『原発と日本の未来』からの要約です。

①発電時は火力と同等かやや優位(後で数字を出します)。しかし、インフラコストが高い。
 原発1基3000億円、長距離送電、立地対策、揚水発電など。

②原子炉の高騰
 火力発電所は1基数百億円で、数倍から十数倍 現在の高い石油天然ガスでも発電時原子力発電より安いガス・コンバインドサイクル方式も同様。

③最終処分のコスト不透明
 1000年以上の管理維持費は数兆円を超えるであろう。アジア各国は50~60年、ヨーロッパも200年程度。1000年に迫るのは、日本2673年、イングランド約1000年(イギリスは300年)、スウェーデン約900年くらいです。最終処分賞も世界中でフィンランドのオンカロだけです。

④高い経営リスク 
 初期コストが高い。住民反対運動が必ず起こる(インドや中国でさえ)。事故、災害、政治的変化に弱い。40年間の発電期間を設定しているが、資本が回収にリスクがある。
  
 ↓
 ①~④によって民間企業(電力会社)は原発を忌避(きひ)すべきと判断する
 ↓
 そこで、日本国政府は、手厚い法律を含む支援、指導を行った。その理由は潜在的核保有国と技術保持のためである。
 ↓

A)法律上の支援:原子力事業法:総括原価方式
 「原発は建設中でも費用が掛かれば、その分だけ必ず儲かる」という総括原価方式
○原子炉が高ければ高いほど利益が出る→原発をするように仕向ける

B)法律上の支援:原子力損害賠償法
 原発が事故を起こしても100億円(当初)だけで後は国(民)が全て負担する
○原発の10~20倍以上の高いリスクは国民が負担するので民間企業はリスクをほぼゼロに→原発をするように仕向ける

C) 各種支援制度の充実
 1)立地支援:原発の時は国が支援をする。TOYOTAの自動車工場を取得する際に日本国政府が立地を探すだろうか?
 2)研究開発支援:原発の研究は国がして成果は全て民間企業が得る。
 3)安全規制コスト支援:安全規制のお金を国が出す。
 4)その他諸々

 以上のA)~C)という原発だけの特別な支援を行うことで民間企業は以下の点を手に入れる

D)原発は必ず儲かる
E)原発は費用が掛かる方が儲かる

 このD)とE) によって原発は官民一体となり、民間企業の官僚主義が強まっていく
 ↓
 それゆえ、電力会社は事故の初期予防防止策や再発防止策を後回しにしていってしまうのである。

 法律などの手厚い保護と指導によって官僚主義に染まった他の業界としては、旧国鉄(現在のJR)や道路公団、前回指摘した自動車業界の半官半民などの業界が挙げられる。原子力発電だけが特別なのではなく、特別になってしまう社会制度がある。

 提言:原発の再稼働問題を考える時、エネルギー政策や安全保障だけでなく、法令の体系から観る社会制度全体を考える必要がある(講義録14-1)。

 提言:原発の歴史から学ぶことは、政治的介入が事故防止策を軽んじてきたことにあるのに、現在の原発再稼働の両方の議論も実値計算に基づかない政治的要因だけで考えている。実値計算に基づいて考えるべきである
☆原発のポイントは、「廃炉」なら利益が出ない 「建設中」や「運転中」や「検査停止」なら全て利益が出る

 それではまず、最初に静岡新聞 平成24年6月30日 第1面 「5つの提言 本社取材班」表(①~⑤の項目)のみ と③6号機計画について、の全文を読み上げて、問題を出しました。

 問1 原発より高効率で安価、環境も優しい発電方式があるが、採用しない理由がある。それは何か?

先に回答を書くと上のポイントを引用して「電力会社が儲かるから」です。

 ③には以下のように書いてあります。

「(浜岡原発6号機の)建設計画を撤回し、代わりに熱と蒸気で2重に発電できるガス・コンバインドサイクル方式など、環境に優しく高効率の最新鋭火力発電の建設を検討してほしい。ガス・コンバインドサイクル方式の火力発電は出力100万キロワット級(原発一基分)の建設費が原発の数分の1~10分の1程度。発電効率は原発の約30%に対して60%近い。CO2(本当は"2”は小文字)排出量も抑えられる。福島の原発事故後、原油や天然ガスの価格高騰を考慮しても、原発が最も低コストの電源とは言えなくなった。中電はすでにガス・コンバインドサイクル方式の火力発電を所有している。浜岡への建設も可能なはずだ。」(高木がタイプしました)

 つまり、原発よりも高効率で安価で環境にも優しい発電方式を採用せずに、中部電力は津波対策が終わり次第原発を稼動させ推進したい、と述べています。何故でしょうか?

 付記:東京電力は千葉県内の千葉「火力」発電所をガス・コンバインドサイクル方式に変更することを決めました。しかし、「原子力」発電所ではありません。

 ここには東京電力や中部電力と一般国民との認識のズレがあるのではないでしょうか?

 そのズレを巧みに利用してきた、として電力会社を非難することは出来ますが、しかし、それは公平ではありません。そして東京電力を始めとする電力会社を一方的に否定することは、真の意味での事故の再発防止につながらないという点からして、技術者倫理の視点ではありません(もちろん、政治的視点としては有効です)。それでは1つ1つ見ていきましょう。

 前回の講義録で書いた図式でもう1度出してまとめ直してみましょう。

×一般社会のビジネス :「原発は安い」→「だから、電力会社は原発をする」

○電力会社のビジネス :「原発は高い」→「だから、電力会社は原発をする」

 「原発が一般社会のビジネスである」と誤解するから「原発は安い」→「だから、電力会社は原発をする」と考えがちですが、実際は、「原発は高い」からするのです。それは法律によって守られている特殊な構造だからです。それを見ていく前に、最初の一歩からはじめましょう。まず一般社会のビジネスについて説明します。

 一般社会のビジネス :売値-費用=利益
          
 外食で具体的に考えて見ましょう。   

ラーメン :とんこつらーめん800円 - 費用550円(材料費300円+バイト代100円+家賃光熱費など)=利益250円
スパゲティ:ぺペロンチーニョ800円 - 費用350円(材料費100円+バイト代100円+家賃光熱費など)=利益450円

 ラーメンは競争が激しく、またインスタントも普及しているため材料費を下げることは出来ません。スパゲティは麺が大変安いため、グラム当りなら、そばやうどん、ラーメンよりも大変安いので、材料費が安くなります。これは店の造りに差が出てきます。スパゲティ屋さんは一般にテーブル席やゆっくり座れる向かいになるテーブル席が多く、ラーメン屋さんは背もたれの付いていない回転する丸椅子があります。これは費用の割合(原価率)が高いので、お客さんに直ぐ食べてもらい新しいお客さんになるべく沢山入ってもらう(回転率を上げる)ためです。同じラーメン屋さんでも駅ビルなど地価が高いと家賃も高くなるので、そうしたお店は回転する丸椅子があり、郊外のお店は、ゆっくり座れるテーブル席が多いのも、こうした利益によって決定されます。決定されていないお店は、「幾ら美味しい食べ物を出してもつぶれる」という風になってきました。また、ラーメン屋さんはラーメンの原価率が高いので、餃子(300円の内250円が利益)をお客さんに食べてもらうと儲けが大きくなります。ラーメンだけなら250円の利益ですが、餃子を食べてもらうと500円の儲けになります。餃子セットにして50円値引きしても、450円の儲けになります。ですから、多くのラーメン屋さんに餃子セットがあるのは利益率からすると当然なのです。留学生にオープンキャンパスで餃子を出すので1個いくらか聞いたら、普通に一般人が買う場合でも1個9円だそうです。お店で大量に仕入れるのならもっと安くなるでしょう。これはサイドメニューで儲けを出す方法で、「講義余談「マクドナルドについて」」で取り上げたマックを始めとするファーストフード業界(店舗数ではモスバーガーが一番です)は、このサイドメニューで儲けを出す代表的な業界です。例えばフライドポテトやドリンクの原価率は20%前後です。ハンバーガーは80%以上です。

 このように一般社会のビジネスは「売値-費用=利益」で、費用をいかに抑えるか、あるいは売値をいかに増やすか、で考えています。

 これに対して電力会社の原子力発電は、

 「費用×8%=利益」

 という全く別のビジネスです。この方法を「総括原価方式」と言います。また8%は4.4%など変動しています。

 つまり、原発は「費用が高い」→「利益が大きい」のです。電力会社は民間企業ですから、「利益が大きい」原発を推進したいのです。これは批判もあると思いますが、民間企業は「利益を目的として出来た集団」ですから、当然のことです。具体的な数字で原発とガス・コンバインドサイクル方式を比較してみましょう。

 原子力発電 100万キロワット 建設費3000億円 × 8% =240億円の利益 
 ガスの発電 100万キロワット 建設費600億円 × 8% = 48億円の利益 (仮定)

 つまり、ガス・コンバインドサイクル方式にすると200億円の(潜在的な)損をすることになるのです。ちなみに、浜岡原発の津波対策費は1000億円から1400億円に増えました。これによって8%とするならば、112億円の儲けが出ることになります。東京電力が、関西電力が、原発を止めても発電量が十分足りることが証明されている中部電力が原子力発電を推進する理由は、法律に基づく「総括原価方式」にあるのです。これは民間企業として当然の行為です。それでは「総括原価方式」を詳しく見ていきましょう。

法律の根拠は「電気事業法」です。

これを具体的に定めるのが「一般電気事業供給約款料金算定規則」という経済産業省の出している「令(れい:命令)」です。
:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11F03801000105.html#1000000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

「第二章 認可料金の算定  第一節 原価等の算定

(認可料金の原価等の算定)
第二条  法第十九条第一項 の規定により定めようとする、又は変更しようとする供給約款で設定する料金を算定しようとする一般電気事業者(以下「事業者」という。)は、四月一日又は十月一日を始期とする一年間を単位とした将来の合理的な期間(以下「原価算定期間」という。)を定め、当該期間において電気事業を運営するに当たって必要であると見込まれる原価に利潤を加えて得た額(以下「原価等」という。)を算定しなければならない。 」

 とあります。最後の一文を見てください。「必要であると見込まれる原価に利潤を加えて得た額」とあります。これが原発のビジネスを支えているのです。この後、詳細に続くので、配布プリント1枚目 (裏)『原子力発電の諸問題』20,21Pを見ていきましょう。学生の皆さんにはアンダーラインを引いてもらいながらです。

「総括原価とは適正原価と適正利潤の和であり、後者はレートベースの8%と定められている。」20P

 これが「総括原価」を意味します。先ほどの「費用×8%=利益」は、単純化した式です。この図式の「費用×8%」=「適正利潤」であり、「総括原価」ではない点に留意してください。適正原価が常に100%です。掛かった営業費が100%認められるのです。「役員給与、給料手当、給料手当振替額(貸方)、退職給与金、厚生費、委託検針費、委託集金費、雑給、燃料費、使用済燃料再処理等発電費(第三条より)」などは100%認められます。東京電力の給料が高くなればその分、関東圏の人々の電気料金が必ず上がるのです。これだけでは民間企業としての儲けが出ません。それが適正利潤になります。原発一基作れば適正利潤は240億円、ガスの発電所なら48億円となり少なくなります。この費用=レートベースについて、続けて『原子力発電の諸問題』を見ていきましょう。ちなみに出版は1988年、20年以上前の本です。

「レートベースは電気事業固定資産、建設中資産、装荷中および加工中等核燃料その他の和と定められている。このため、発電量が実際にどうなるかにかかわりなく、なるべく資産価値の高い設備を保有ないし建設し、核燃料の買い付け契約額を増やせばレートベースが膨張し、その8%と定義された適正利潤が増大する」

 先ほどの、原子力発電所の方が高いので、原発を推進する、という法的な根拠を表しています。この問題点として3つ続けて挙げられています。

①原発のない電力会社まで核燃料を保有している。

②契約するだけで電気料金が高くなる。建設中であれば利益が出る 

③高くなれば高くなった分だけ最終的に払うのは日本国民(人)である。

 それぞれについて書いていきます。

 -①について-

法律(本講義では実態を重視して法と令を合わせて法律と表記します)をその通り解釈すれば、在庫を抱えれば抱えただけ儲けが出来るのですから、当然だと思います。一般社会では在庫を保有すれば、その分だけ経費が増大して赤字が増えていきます。最終的に会社を倒産させるのが当たり前にあります。例えば、洋服には流行があり翌年に同じように売れないので、在庫を抱えると最終的に倒産に結びつきやすいのです。ですから、「春のバーゲン」や「夏のバーゲン」などを頻繁(ひんぱん)に行って在庫を抱えないようにします。
 しかし、電力会社は「在庫を抱えればその分、日本国民が払ってくれる」と法律で保障してくれているのですから、在庫を抱えた方が良いことになります。原発を持っている電力会社は「著しく大きく(同本20P)」核燃料を持ち、原発を持っていない電力会社も持つことになるのです。これは倫理的観点ではなく、経営判断からすれば当然のことになります。この点は次の問2で争点の1つになります。

 -②について-

 自動車を購入する時、自動車そのものがきちんと納車され終わった後、お金を払います。これは一般社会のビジネスでは当然です。他方、総括原価方式では、「自動車を買いますよ」と契約書にサインしたら、お金をもらえるのです。サインをすればお金が入ってくる、のですから、将来使いますよ、あるいは原発をもっと作りますよ、だから核燃料がいるんです、ということになれば、もっとサインが出来ることになります。これが原発を毎年2基ずつ増やしてきた根源的理由の1つです。

 「原発が必要だから増やす」のではなく「核燃料などはサインをするだけで利益が出るから増やす」のです。

 先ほど「建設中」でも利益が出る、と書いてありました。浜岡原発6号機は数千億円の大規模なプロジェクトです。しかし、「建設中」でも「建設完了」でも同じ利益なのです。ですから、「原発はやりたい」と言えば利益が出るのです。だから焦って原発を再稼動させる必要はないのです。全ての原発が止まり、再稼動に向けた動きが電力会社で遅いのは、「建設中」=「検査中」=「営業中」だからです。しかし、一般社会では例えば、駅ビルの中で、服屋さんが「建設中」=「検査中」=「営業中」でしょうか? お客さんに服を買ってもらわなければ、利益が出ません。しかし、原発は、

原発:「建設中」=「運転中」=「検査停止」 →全ての場合で日本国民がお金を払ってくれる

一般:「営業中」のみ →日本国民がお金を払ってくれる

 となるのです。ですから、「電気が足りない」と言いながら再稼動に向けた電力会社の申請は、原子力委員会や保安院に直ぐに出されないのです。その意味で、東京電力を始め多くの電力会社の経営陣判断は会社の利益を求める上で合理的、と言えるでしょう。

☆原発のポイントは、「廃炉」なら利益が出ない 「建設中」や「運転中」や「検査停止」なら全て利益が出る

 ということです。

 -③について-

 「③高くなれば高くなった分だけ最終的に払うのは日本国民(人)である」については、独占禁止法が適用されない点と、電気が基本インフラになった点が挙げられます。『原子力発電の諸問題』では「電気料金を最終需要家に請求できる」としていますが、以上の2点から「日本国民(人)」としました。また、原子力発電に関しては関連予算が年間4000億から5000億円前後が税金の中から使われますから、家のない人や職のない人であっても、自動販売機でジュースを買うだけで関係者になるという点も含んでいます。補足ですが、どうも電気やガスでは「需用家」という言葉を使っています。

 総括原価方式は「電気事業法」と「一般電気事業供給約款料金算定規則」によって支えられ、

・高い方が電力会社が儲かる

・「停止中」=「建設中」=「運転中」の全てで儲かる

 という一般社会のビジネスと違う点を挙げました。私たち日本国民は美しき誤解によって原発に関する情報が錯綜していますが、法律に基づいて考えてみると、意外とすんなり行くものです。電力会社が最も(潜在的な)損をするのは「廃炉」なのです。原発反対!で「運転停止」であろうと、「運転中」であろうと電力会社は儲かる仕組みなのです。

 では、原子力発電が経済的に優れていない、つまり、原発が高いとされる根拠を示しながら技術者倫理の目的である「公衆の福利」を考えていきます。

 前の講義録14-1で引用した文章(『原子力発電の諸問題』20P)の上には、原発当初からの総括原価方式に基づかない計算が示されています。

 「(水力発電は殆ど黒字、火力発電は1970年代の燃油代上昇で赤字もある) これに対して日本原電は、毎年70%前後の高い設備利用率を誇る3基の原発を持つにもかかわらず、経営実績は著しく悪い。1957年の操業開始以来79年度に至る20数年間に累積赤字が一度も消えなかった。敦賀での事故隠しにより80年度には初めて黒字に転じたが、その直後に事故隠しが発覚し、81年度決算では大幅な赤字に転落した、」

 日本原電は、1957年に正力松太郎が「原発は民間で推進すべき」として作った会社です。東海村に日本発の商用原発を作るなど、日本の原発をリードしてきた会社です。現在は、3基の原発を持ち8500億円の資産を持つ巨大な会社です。海外に原発を輸出をしています。
 http://www.japc.co.jp/company/index.html
 後述しますが、平成23年度(24年度3月決算)の平均稼働率は4.6%ですが、発電量に関係なく同じ代金を受け取れる「定額制」のため、営業利益は89億円の黒字です。
http://www.japc.co.jp/news/press/2012/pdf/240525_1.pdf

 このように日本の原発を民間リードしてきた日本原電は、20年以上赤字で、しかも事故隠しによって黒字になるという赤字体質を逆に露呈してしまいました。一般社会では20年以上も累積赤字が消えない場合は、親会社から整理や倒産を求められますが、親会社である9つの電力会社(東京電力など)が必ず黒字になる構造なので支えられてきたと考えます。総括原価方式がここでも間接的に効いています。設備稼働率70%でも赤字というのは原発が全体として赤字である、という1つの証左になります。

 もう1つ原発が全体として高い、という証左を、電力自由化したアメリカの例で見てみます。
というのも総括原価方式がある限り、一般社会のビジネスが通じないからです。一般社会のビジネスを見るためには、電力自由化がされている(もちろん欠点もあります)アメリカの例が最適なのです。

 アメリカはスリーマイル島の事故以来、原発停止へと向かいました。それは情報公開と電力自由化によるものです。2012年オバマ大統領によって新しい原発建設に向かいました。

『アメリカ原子力産業の展開 : 電力をめぐる百年の抗争と90年代の展望 』 R.ルドルフ, S.リドレー著 岩城淳子 [ほか] 訳 御茶の水書房, 1991年 6,7Pを要約します。

「1968年に始まった原発5基建設は1970年代後半に建設費が高騰した。見積額が40億ドルから順々に240億ドルまで上がり、電気料金は2倍から4倍になった。そこで2基を撤回したが、6倍から9倍になっていくのである。」

 つまり、原発は他の火力発電などと比較した場合、明らかに高い、という結論がアメリカで出ている証左になる。日本ではアメリカはスリーマイル島の事故以来原発の熱が冷めた、という説がちらほら見えるが、実は経営的に高いから、という理由が大きいと考えられる。総括原価方式で「高いから儲かる」という構造になっている日本が原発を推進してきたのも、同じく「原発が高い」を示しているのではないだろうか。関西電力の株主総会で「原発を止めれば数千億円の損が出る」と述べたのも証左の1つであろう(どのような計算方式であるか1次資料が調べられなかった)。

 このような「原発は高い」から、電力会社は既得権益となり「原子力ムラ」を形成していったと考える。それが単純に悪いと切り捨てることが出来ないのは、「技術が社会背景と相補的(講義録9-2)」と考えるからである。大量の資金が安定的に使用できる環境で日本の原発技術は世界トップレベルになったのである。このように善悪ではなく、原発の構造をさらに述べていく。

 それでは、日本政府や電力会社は、「原発全体では高い」→「原発発電時は安い」と主張をずらした。では、次に発電時に限って原発を経済的に見ていきたい。
 次は、「発電時で」原発が高い根拠を見ていきます。

 原発導入の歴史を振り返れば、アメリカ支配という国際政治が決定的であったこと、日本も潜在的核武装をしたいこと、そして発電業界が既得権益化していったことが上げられます。その中で、技術、あるいは経営として原発を-トータル-で高い、ことは先ほど述べた通りです。原発の民間部門をリードしてきた日本原電が赤字になると、原発全体が非難にさられてます。その中で、「発電時で」という大幅なすり替えが行われました。このすり替えは、現在太陽光発電でも行われています。

 「ソーラーパネルによる太陽光発電は10年、20年で元が取れる」→「太陽光発電は自然に優しい」

 この大ウソが判るでしょうか。

 ソーラーパネルは当然、半導体で光エネルギーを電気エネルギーに変換します。それは「発電時で」の話だけです。半導体は製造する段階で環境を汚染します。ヒ素を使うと安いソーラーパネルが出来ますが、製造時と廃棄時に環境を汚染します。つまり、「トータルで」自然に優しい、という言葉を意図的に隠しているのです。このようなすり替えが、太陽光発電で行われています。同様に風力発電も同じです。建設時と使用期限、廃棄時の環境負荷を含めずに「発電時で」考える、というのは、高木を一種の詐欺的なすり替えと考えます。

 これと同じことが、当然原子力発電でも行われています。

 「原子力発電では発電時に火力発電などよりも優しい」

 「原子力発電では発電時に二酸化炭素を出さないから環境に優しい」

 どちらも、「トータルで」を「発電時で」に置き換える手法です。まず、原子力発電は「廃棄時」のコストがどれだけ掛かるのか判りません。というのも方法が決まっていないからです。最終処分場がない、からです。これでは費用がどれほど関わるか判りません。であるからして電力会社は儲かる、のは言うまでもありません。どれだけ掛かるか判らないけど、費用がかかれば儲かる、あるいは保証されるのが、講義録14-1で述べた「総括原価方式」でした。電力会社は1万年はつぶれないでしょう。原発が出す核廃棄物は10万年~1万年くらい管理が必要と言われていますから。

 それでも、「発電時で」安い、というデータを検証してみましょう。

ポイントは2点です。

1)モデル計算ではなく実績計算(ちょっと高くなる)

2)実績計算に実際の費用を含める(含めると大分高くなる)

 これまでも述べてきたように、肯定側のデータから引用して「公平さ」を担保したいと思います。配布プリント:1枚目 (表)

・「有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価(松尾雄司氏資料)」 第35回原子力委員会定例会議 平成23年9月13日 5,6P
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo35/siryo3-1.pdf

 原子力委員会は内閣府にある「原子力を推進する担当部署」です。この定例会議に発電時の計算の資料があり、引用します。
 
 資料2P抜粋 「試算の概要(1)」
・ 電源別の発電コスト推計方法には、モデルプラントによる方法と有価証券報告書による 方法がある。

 資料3P抜粋 「発電コストの評価方法」
・モデルによる方法-概要-電源ごとにモデルプラントを想定し、適切な建設単価・燃料費・運転維持費・割引率等を想定して、kWh当りの発電コストを試算。(コスト等検討小委員会(2004)など)
・有価証券報告書による方法-概要-電力各社が公開する有価証券報告書(財務諸表)の中に記載のある情報(水力・火力・原子力別の営業費用、固定資産など)から各年度において実績値としての発電コストを評価。{電中研(1999),大島(2010)}

 これまでの「発電時で」というのは、モデル計算だったのです。そしてモデル計算は、想定に基づいた計算方法であり、計算方法や採用データをいじることが出来、安くすることが可能なのです。次に「二酸化炭素による地球温暖化モデル」で具体的に説明します。
 対して、有価証券報告書は罰則規定があり、虚偽データの出にくいデータが出ている可能性が高いのです。この有価証券報告書を元にして、立命館大学・大島堅一教授は計算をしました。以下の結論が出て来ます。

①※ 1970年~2007年平均の発電単価は、原子力8.64円/kWh、火力9.80円/kWh、水力7.08円/kWh、
水力(揚水除く)3.88円/kWh、原子力+揚水10.13円/kWh。

②※ 更に、「開発単価」(原子力について1.64円/kWh)、「立地単価」(同0.41円/kWh)を加算。
原子力で10.68円/kWh、原子力+揚水で12.23円/kWhとなり、1970~2007年平均で原子力が最も高くなると結論。

 つまり、開発費と立地単価を入れ実際に原子力のサブシステム揚水発電を入れるとと、

☆火力発電  9.80円/kWh
☆原子力+揚水12.23円/kWh

 ポイントは、発電所での発電量ではなく、実際に家庭などに売った発電量という点です。原発は大都市から遠く電力ロスが結構あるのです。また、火力発電コストを下回ったのは1970年台後半でそれ以前、つまり開始から10年以上はダントツに高かった点、現在は火力発電と発電時はそろってきた、という点です。ただし、揚水を除く水力発電は3.88円/kWhと安いです。詳しくは、『再生可能エネルギーの政治経済学』 大島堅一著 東洋経済新報社をどうぞ。また、要点は以下で観れます。「原発の本当のコスト─公表データから見えてくるもの─」立命館大学国際関係学部大島堅一
http://www.foejapan.org/infomation/news/110419_o.pdf

 実績で計算し、さらに使われている税金を入れると、明らかに原発の方が高くなります。
 これに対してモデル計算している「資源エネルギー庁/総合エネルギー調査会による発電コストの試算値」では、

・火力発電10.7円/kWh
・原子力 5.9円/kWh

 となっています。さて、大島教授が明らかにしたのは、ポイントの2点です。繰り返しましょう。

1)モデル計算ではなく実績計算(ちょっと高くなる)

2)実績計算に実際の費用を含める(含めると大分高くなる)

 です。では税金などは何に使われているのでしょうか?原発だけが極めて高い6000億円を超えるのですが。例えば静岡県に浜岡原発がありますが、地元に立派な道路や図書館が作られました。これは原発による地域交付金差別だと考えますが、実態としてあります。青森県六ケ所村では、「文化交流プラザ スワニー」が30億円以上の交付金、福井県敦賀市には温泉を作って「きらめき温泉リラ・ポート」に24億円以上が出ています。
「文化交流プラザ スワニー」:http://www.jomon.ne.jp/~pulaza97/
「きらめき温泉リラ・ポート」:http://www.relaport.com/

 また、ある国会議員がその他のコストについて問い合わせた所、経済産業省や電力会社からデータが公開されていません。福島原発事故以後でも変わらないそうです。つまり、実は、大島先生のデータ以上に高くなる可能性がある、ということです。

☆原発の「発電時で」のコストは、12.23円/kWhになる可能性がある

 のです。さらに、今回の福島原発事故を含めて考えてみましょう。

       発電時 + 開発費や税金 + 最終処分費 +事故対策費  = トータル
☆火力発電  9.8円 + 0.12円    +   0.1円?+0.1円?   =10円?

☆原子力発電10.13円 + 2.0円     +    X  + Y      =12円+X円+Y円

 このX円が1基19兆円以上、Y円が福島原発事故の処理費で20兆円以上になります。1人当たり40万円以上です。発電単価がどの程度になるか判りませんが、X円、Y円が今度どれだけ膨らむかも判りません。

19兆円は「総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会(2004)「バックエンド事業全般にわ
たるコスト構造、原子力発電全体の収益性の分析・評価」」からです。

 以上の計算からすると、「発電時で」という条件をつけても原発が安い、ということは出来ないのです。主張するためには、「モデル計算にすること」と「税金等の関連費を削除」と「最終処分費を削除」と「事故対策費を削除」と「補助システムである揚水発電を削除」などがつかなければなりません。

 ちなみに、「事故対策費を削除」は、法的に支えられていました。つまり、「Y円=0円にする」という法律がありました。原子力損害賠償法(原賠法)では、現在「1基当たり100億円(現在1200億円)を超える分の賠償を政府援助による」としています。
配布プリント 1枚目(裏)『原子力発電の諸問題』21Pと「原子力損害の賠償に関する法律」です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html

 政府援助とは、つまり税金から支払われます。今回東京電力に3兆円近い資金が日本政府から援助されていますがそれも全て税金からです。電力料金も上がりますが、1人当たり3万円の税金が投入されることとなりました。実態としては、「電力会社の失敗を国民が支払い、しかも節電などの不利益を被る」という構図は変わりません。

 他方、電力会社から観てみましょう。
 日本国政府が国際政治という理由で採算性の合わない原子力発電を押しつけてきました。民間企業は儲けを出すのが目的の集団です。しかし、いくら頑張っても儲けが増えない、という構図を押しつけられました。独占と必ず利益が出る、という構造を押しつけられた中で、組織が腐敗するのを止めるのは困難なのではないでしょうか。社員がやる気を失ったり権威的になったりするのを止めるのは不可能なのではないでしょうか。であるから、給与を高くして社員のモラルを保ってきたのでしょう。それに、1200億円を超える保証については日本国政府が援助する、と法律で約束していたのに、今回の政府はその法律を遵守しませんでした。それであるのにも関わらず電力会社は一方的に非難され続けています。

 どうでしょうか。高木の推測が多分に入っていますが、電力会社が自らの経営判断として原子力発電を導入していない点に、企業努力で儲けが出ない構図だった点に留意して下さい。そうすると一方的に悪い、と報道されがちな電力会社を、一方的に非難するのは偏っているのではないでしょうか。

 また、原子力発電はコストが非常に高かったのですが、それを「発電時で」だけでも、火力発電と同等に引き下げてきた電力会社の企業努力、技術革新等に気がつくのではないでしょうか。データの偽造やデータ隠しなどの可能性は否定できませんが、少なくとも火力発電の2倍程度に抑えてきたのではないでしょうか。もちろん、それには廃棄費用や事故対策は日本国政府が主導する、という前提を含めてなのですが。

(平成25年度加筆)

 他方、原子力発電は12円+X円で、火力発電は10円です。この値はむしろ原発を推進する理由にもなります。数円のコストならばエネルギーの安定供給という視点からは十分肯定されると考えられます。例えば太陽光発電は42円(下げられましたが)でしたから、「原発を太陽光に」という主張は実測値を無視した主張に過ぎません。
 もちろん、日本の自前の資源メタンハイドレートやガス・コンバインドサイクル方式は原発よりも安全保障上の問題も少なく、さらに低コストの場合もあります。

 現在の原発再稼働の論じられ方を、あるいは報じられ方を観るに、こうした実測値の計算に基づく主張が、多くの場合行われていないことに危さを感じてしまいます。それは倫理絶対主義の危うさであり、原発問題を米ソ冷戦構造という政治的主張だけで考えてしった危うさです。福島原発事故から学ぶ、ということは、こうした政治的主張だけで原発問題を考えてしまう危うさを認識することから始まるのではないでしょうか。

 「二酸化炭素による地球温暖化モデル」も「原発が発電時で安い」も、「モデル計算」です。

もう1つは、政治的に結論が決まっている、点が共通の問題点です。


・モデル計算は、想定に基づいた計算方法であり、計算方法や採用データをいじることが出来、安くすることが可能なのです。

 実は初期の地球全体の気温をコンピュータシュミレーションで計算した時に、4つのモデルがありました(高木がNEWSWEEKで観たモデルです)。この4つのモデルでは、10度温暖化、3度程度の温暖化、殆ど変わらず、寒冷化の結論でした。この4つのモデルは、後に計算式やデータ処理を通され、全て温暖化となりました。ソ連のゴルバチョフ書記長の右腕シュワルナゼ外相が、「地球温暖化は地球全体の問題だから石油を使わないようにしよう」と言ったのは、米ソ冷戦構造でアメリカに負けないように、つまりアメリカの経済発展を押さえるための発言でした。これに二酸化窒素などの酸性雨で困っていたヨーロッパが飛びつきました。ドイツは緑の党が、この追い風で躍進していきます。つまり、「二酸化炭素による地球温暖化」という問題は、国際政治の問題が出発点なのです。
『地球環境問題とは何か 』 米本 昌平著 岩波新書

 このように政治によって結論が決められました。

「二酸化炭素による地球温暖化がある」→「温暖化は悪い」

 なぜ、温暖化が悪いのでしょうか?

温暖化は人間が住む居住地域を増やします。温暖化は単純に考えれば降雨量が増え、食糧増産になります。温暖化で北極の氷は解けず(水に浮いているので)、南極は中心部が冷えて来ています。ですから海水面は上がりません。

 日本以外の国で環境問題と言えば「人口爆発」や「食糧増産」です。それが解決方向に向かうのですから、なぜ悪いのでしょうか? 

 結論が決められているという点で、これはこれまでの「二酸化炭素による地球温暖化モデル」の会議で専門家から散々指摘されています。専門家の中では温暖化派と寒冷化派と慎重派に分かれていますが(当然ですが)、結論は毎回「温暖化は悪い」なのです。

 具体例を1つだけ挙げましょう。

「地球温暖化→海面上昇」で取り上げられるのは太平洋諸島の島々です。その1つにツバルという国があり、「ツバル水没問題は政治社会問題」という小林泉先生がいる。
『国際開発ジャーナル』「水没国家 スバつの真実 第1回温暖化キャンペーンで沈む島」 AUGUST 2008 36,37P

 1973年871人から5300人へと6倍に増えた人口、さらに警察、消防や行政機関や同トなどの社会インフラが入ってきた現状を述べた後で、

「これだけで(人口6倍)だけで十分に重量オーバーだから、それらが織りなす社会的圧力(行政機関など)でこの島はいまにも沈みそうなのだ」

 と述べる。「社会的圧力」とはツバルのような基本条件の危うい集団をヨーロッパモデルの国民国家に合わせようという圧力である。つまり、行政機関や警察や病院などを指す。さらに、地球温暖化による水没をキーワードに群がる環境団体の問題などに触れていく。次に号では「日本の東京都知事がツバルに視察に来て、この点を指摘したのにも関わらず、相変わらずツバルの水没は温暖化である」という指摘もある。つまり、政治的に結論が決まっているものによる観方で固定化されている、というのである。ツバルの島はサンゴ礁で出来ており、日本国の土地のように岩や土で出来ておらず隙間があいているので容易に地盤沈下するのである。なた、引用文の前文には「大潮の時に水が噴き出すの、わしらの子どもの時からだ」という70歳代の現地の老人の証言が乗っている。原因は「アメリカ軍により地下層が破壊されたからだ」と書かれている。

 政治的な結論ありき、を根本的に批判したのは、科学哲学者のカール・ポパーでこれまでも挙げたように『歴史主義』である。現在は、こうした政治的な結論ありき、にコンピュータによるモデル計算が使われるようになった。その先駆けは「ローマクラブ『成長の限界』」であろうか。

 「二酸化炭素による地球温暖化モデル」に戻る。

 4つの全てが幅あるものの温暖化する、という結論に合うようになった点まで述べた。では、その4つの温暖化のモデルで、日本はどのようになるのであろうか? 1つは温暖化、1つは寒冷化、2つは殆ど変わらず、であった。どのモデル計算が正しい、ということは出来ない。何故なら、地球温暖化の気体の内、諸説あるが90%は水蒸気と言われている。この90%の動きが理解できていないのであるから、どのようになるか分からない。であるから、

 地球温暖化、とは言うが、日本温暖化、とは言わない。

 言えない、のである。4つの計算モデルでどのようになるか、バラバラになってしまうからである。全体の結論を求めるために、計算式とデータ処理を変えることで、下部の結論がバラバラになる、という例は沢山あるが、それは厳密な意味での学問とは言うことはできない。地球全体が共産主義革命が起こる、が日本では何時起こるか判らない、キューバでは直ぐ起こったけど、フランスでは直ぐに起こりそうだかわからない、というのと同じである。政治的に全体の結論ありき、と決めてしまうと下部で不都合が生じるのである。

 ちなみに、人間が二酸化炭素を出す前、現在より海面は100メートル以上低かったし、平均気温も10度以上上下している。本当に二酸化炭素だけ、と結論付けることが自然科学的合理性があると言えるのだろうか?

 高木は、自然科学の合理性の誤解、あるいは政治要因による偏向と「二酸化炭素による地球温暖化モデル」を考えている。そして、そこにモデル計算が使われている、と考える。最後に、それが「原発は発電時は安い」という結論にも使われている、と考えている。

 以上が、モデル計算にある問題点です。もちろん、モデル計算は有効な方法であることは間違いありません。しかし、実測計算との違いが明確にされないまま、あるいは恣意的に隠されるのならば、弊害が大きくなる、と考えます。
 この点で、「二酸化炭素による地球温暖化」と「原発」は共通していると考えます。

原発の運転上の、あるいは復旧作業や廃炉作業における計画被爆の問題です。

 原発は停止中、運転中、検査中、廃炉作業など全てで、作業員が被曝します。

 「被曝(ひばく)」と書くそうですが、それは「被爆(ひばく)」が「爆(ばく)弾」を受けたわけではないからだそうです。しかし、自然科学的には「放射線を受ける」点で同じなのです。こういう、高木の独断で申しますが「小手先の誤魔化し」は、敗戦後のアメリカ支配の中で矛盾が生まれ、その解消として沢山出てきた、と感じています。例えば、反原発のデモの参加者水増し、一時期までの大相撲やプロ野球の「満員御礼」などなど。自衛隊は「軍隊ではない」なども、です。逆に、憲法9条を守りたい、というとっくに崩壊したソ連を有利にするための人々も同様です。原文を読んでみましょう。

1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあります。警察官の拳銃などは一切保持できないことになります。さらに、包丁やバットなど武器になり殺傷能力のあるものも保持できないことになります。どうしてそれらに反対せずに、「自衛隊」だけに反対するのでしょうか? 機動隊には現在反対していないようですが、明らかに警察力(武力)による鎮圧を想定し訓練しています。「小手先の誤魔化し」だと考えます。
 もう1つ、補足すれば、憲法原文の中に『これ』が多くないでしょうか? もう1度読んでみてください。不必要な『これ』が沢山あります。これも原文が英語、つまりアメリカ人が書いた証拠である、と高木は感じます。

 日本人が書いた「大日本帝国憲法」は、

「第1条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス」に始まり、
「第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リテ之ヲ行フ」で「この(此ノ)」が出てきます。
「第6条 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス」の「其ノ(その)」が次の指示代名詞です。

 高木は古文と漢文が大の苦手でしたが、ゆっくり読むと読めます。


 さて、この「小手先の誤魔化し」が、福島原発事故後にはっきりとしたのが、「放射線の被曝」ではないでしょうか。福島原発事故前から取り上げていましたが、法律で一般国民は、1mSv(ミリシーベルト)までOKですが、原発構内の作業員は、20mSv、あるいは50mSvまでOK、というのです。作業員も一般国民なのです。もちろん、危険なので集まらず、外国人や騙して作業をさせるなどの被害が指摘されていましたが。しかも、作業員の被爆は、被爆ではないそうです。何故なら、

 「被爆することが前提で作業をしているから、被爆ではない」

のだそうです。これが「小手先の誤魔化し」でなくてなんでしょうか。しかも、その総量が、原発推進側の資源エネルギー庁によってまとめられています。この資料を原発反対派の本で取り上げているので公平さであると考え引用しました。
 
 配布プリント 1枚目 (裏) 『漠(ばく)さんの原発なんかいらない』 32,33P 大学所蔵なので「543 N86」も

 この図を見ると、社員の被曝は、5~15%程度(80年以降)で、社員外が95~85%の被曝をしていることが判る。

 電力会社の社員は危険な作業は下請け、孫受けの協力会社に任せる、という実態が明らかになる。また、この本の中にには「電気事業事業連合会(:電力会社の集まり)の委託で行われた労働者アンケート調査でさえ、「働かされる者は、ゴキブリ以下だ」といった回答があったのです。」32P  と述べられています。

 協力会社で働く人は年間5万人、次から次へと渡り歩く人が1万人以上いるそうで、「床にこぼれた放射性廃液をチリトリですくってバケツに入れ、ボロ布でこすって放射能汚染を取り除くといった作業に従事しているのです」33Pとある。

 そして、事故前から原発反対派から指摘されていたのは、先ほどのデータそのものが信頼できない点です。内部告発で「放射線計測器を切る」などが事故前からありました。今回それがはっきりと福島原発事故で出てきました。この点も是非、改善して欲しい点です。

 静岡新聞平成24年7月22日 31面 「線量計に鉛カバー 福島原発9人使用 被ばく隠しか 下請け役員指示」という記事です。

 タイトルが判りやすくそのままです。高木が推測するのは、

①鉛という重金属を加工して計測器に被せる、というのは個人で出来ることでない
②鉛という重金属を加工して計測器に被せる、というのは1回限りでは出来ない

 という点です。つまり、この事件は氷山の一角に過ぎない、という意味です。前々から金属加工されていなければ鉛カバーはつけられないでしょう。しかも、9個も同じ大きさに作ってあったのです。これには、組織性と継続性を疑わざるを得ません。

 また、カバーをつけた会社は「作業を請け負った福島県の建設会社「ビルドアップ」」とありますから、協力会社です。今後「ビルドアップ」を東京電力は出入り禁止にするのでしょうか。

 福島原発事故前の講義では、他に「原発を止めても真夏の暑い数日だけ電力危機になるだけ」、「原発があると予備の火力発電所を作る」、「原発は廃炉を含め長期の安定利益が得られる」、「原発は安いのモデル計算の問題」、「放射能測定のダブルチェックの問題」、「原発の安全解析をする際に正確なデータが出ない問題」、「原発は通常運転時のリスクは極めて低いが事故、災害時には極めて危険(20~40兆円の損害)」、「原発におけるフェイル・セイフ、フール・プルーフ、冗長性」などを挙げてきました。
 今回、特に重要と考えて「計画被曝」を取り上げたのは、福島原発事故による廃炉作業で協力企業の作業員が、つまり日本国民が被曝にさらされるからです。

 また、もう1つ「エコキュートで二酸化炭素が増える」、「企業が節電対策をしない定額制」についてです。
一番下に「サイゾー」6月号(2008年)の記事の全文を載せておきます。
 
 要約すると「オール電化の目玉エコキュートで朝にお湯が作られ追い炊きが苦手なので二酸化炭素は増える」と「3年で元が取れる省エネ設備を導入しないのは基本料金が高くて単価が一定。使えば使うほど割安になるから」である。田中優氏(足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ代表)のインタビューを基にする。このインタビューが公平なのは、東京電力広報担当に問い合わせをして、「データの用意がない」という回答をもらった点にある。

インタビュー記事:http://www.cyzo.com/2008/05/post_543.html

東京電力の企業向け定量制に関する1例(500kw未満)
:http://www.tepco.co.jp/e-rates/corporate/data/decision/index-j.html

ここに以下の文章がある

「お客さまがご使用された電力を30分毎に計量し、そのうち月間で最も大きい値を最大需要電力といいます。この値は、同時にお使いになる負荷設備が多いほど、大きくなります。」

つまり、「ずーっと一定額で使ってください」という料金なのである。昼の暑い時期に合わせて、他の時間は節電する必要が無い、というシステムになっている。他のケースもある点に留意が必要。同時にどの程度の会社が節電向きの選択しているかの「データの用意はない」と提供してくれない点にも留意が必要。

 以上で、講義は終わりました。

 最後は、学生コメント集です。ただし、学生の皆さんに返却する時期が迫っていたので、掲載したのは大分前になります。右側の一覧では順序をそろえます。

 念のため「学生コメント集」のリンク先です。
http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-179.html


 「サイゾー」6月号(2008年) の記事

「オール電化はエコじゃない!? 東京電力「企業優遇」の商魂(前編)
http://www.cyzo.com/2008/05/post_543.html

ガスを使わないオール電化住宅。ガス会社との間にも、激しいシェア争いが繰り広げられている≪「オール電化」は、キッチンや給湯などの生活エネルギーをすべて電気でまかなう賢いライフスタイルです(中略)エコロジー&エコノミーな快適が簡単に実現します≫(東京電力のHPより)
 従来のガス併用住宅では、料理したり風呂を沸かすたびに、CO2の排出を目の当たりにしていたが、オール電化住宅ではそれもない。しかもその電気が、発電時にCO2を排出しない原子力発電によって供給されているとなれば、地球温暖化の歯止めにも期待が高まる。また、給湯や暖房に使用する熱の蓄積を、電気料金の安い夜間に行うので経済性も魅力的だ。そんな、いいことずくめのオール電化が、着実にシェアを伸ばしているらしい。
 
 ところがどうも、厳密に計算していくと、オール電化はエコではないらしいのだ。
 「足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ(足温ネット)」代表の田中優氏は、オール電化の環境への影響について次のように語る。
「オール電化で、夜間に増えた分の電力需要は、発電時にCO2を排出しない、原子力や水力も含めた発電で賄われるという言い方をされていますが、実は火力発電で賄われています」
 原子力発電は、出力を強めたり弱めたりすると不安定になるため、常にフルパワーで回し続けなければならない。こうした電源は「ベースの電力」と呼ばれ、電力供給の底上げに使われる。一方、電力需要の波に合わせた発電量の調整は、出力の調節ができる火力発電によって行う。すでにどの時間帯でも、電力需要は原子力発電の発電量を上回っているので、オール電化で増えた分の夜間の需要は、火力発電によって賄われることになる。
「なので、オール電化住宅のCO2の排出量を計算する時は、火力発電単独で計算しなければなりません」(田中氏)
 火力単独で計算すると、オール電化によって、家庭で抑えられるCO2の排出量を上回る量のCO2が、発電時に排出されることになるというのだ。
 それでは、オール電化の目玉のひとつ、エコキュートはどうだろう。これは、空気中の熱を集めて圧縮しお湯を温めるヒートポンプという技術を取り入れ、電気温水器の5倍の効率で熱を生み出すという給湯設備だ。
「エコキュート自体は、とても効率がいいです。でも、夜間の安い電気でお湯を沸かすので、最も温められるのは朝方。たいていの人はお風呂に入るのは夜ですから、その頃には冷めてしまう。エコキュートは追い焚きが苦手なので、冷めた場合は、結局、効率が悪くなります。オール電化で、電気料金が安くなることはあるでしょう。でも、CO2の排出量は逆に増えます」(同)
 実はかえってCO2の排出量を増やしていたオール電化。これでもエコと言えるのか? 東京電力に聞いてみた。
(逸見信介/後編へ続く)

 「オール電化はエコじゃない!?東京電力「企業優遇」の商魂(後編)」
http://www.cyzo.com/2008/05/post_560.html

東京電力HPより。確かに料金は安くなるようだけれど……
「私どもの見解としましては、ベストミックスというのですが、火力・水力・原子力の3つを組み合わせて発電しているということを前提としています。結果、10%の省エネルギー効果、25%のCO2の削減効果が期待できるため、(オール電化住宅は)省エネ性、環境性に優れた住宅であると考えています」(東京電力・広報担当)
 東電の見解は、あくまでオール電化の電力は、水力、原子力からも持ってきているというもの。しかし、解釈がどうであれ、全体として排出されているCO2の量が減っているということはないのだ。
大口客=企業に優しい料金体系
 田中氏は、家庭のせいにばかりする現状にも疑問を投げかける。
「そもそも、家庭のCO2排出量は全体の5分の1程度で、大半は産業なんです。でも、大口の顧客である産業界からの、『こっちに目を向けさせるな、消費者のライフスタイルのせいにしろ』という圧力があるので、家庭のせいにされています」
 CMで、「電気を大切に」などと、さかんに宣伝されているため、電気の無駄遣いを反省する人も多いだろう。それ自体は非常に有益なことだ。しかし一方で、消費の大半を占める事業者の省エネ対策は、さほど進んではいない。その大きな原因のひとつに、電気料金の設定が挙げられる。
「今、企業は、3年で元が取れる省エネ設備すら導入しません。なぜなら、企業向けの電気料金は、基本料金が高くて単価が一定。使えば使うほど割安になるのです。だから、設備を導入して省エネするメリットがないんです。みんな省エネ製品を導入すれば、それだけで(CO2排出量を)約4割減らせる。仮に3割減らせば、それだけで京都議定書をクリアできますよ」(同)
 家庭では、使用した量が多ければ多いほど、単価が上がり、割高になる。このため、消費者は省エネ家電を導入するメリットがある。企業に対しても同じことをすればいいのだ。
「そうしないのは、電気を使ってもらいたいからでしょう。そうすれば、発電所をもっと建てられる。産業界での地位が、もっと高まりますから」(同)
 そうして増えに増えた日本の発電所。発電所は、電力需要のピーク時に電気を供給できるだけの数を用意しておく必要がある。日本はピークとそれ以外の時の差が大きく、発電所の稼働率が低く無駄が多いのだという。
「電気事業便覧というデータ集を見ると、日本の発電所の稼働率(負荷率)は60%程度。ドイツや北欧の72%に比べると、非常に効率が悪い。電力需要の波が大きすぎるのです。日本も同じように、稼働率を72%まで上げた場合、4つに1つの発電所を止められます」
 では、その電力需要の波を穏やかにし、稼働率を上げるためには、どうすればいいのか?
「実は、ピークははっきりしています。夏の平日、気温が31度を超えた日の午後2時から3時にかけてだけなんですよ。だから、この時だけ電気料金を高くすれば、ピークを分散することができます」(同)
 この点については、電力会社も対応を進めているようだ。
「大口のお客様の需要を抑制すべきだ、という指摘はごもっともな話です。ですので、すでにそうした取り組みは実施しております。たとえば時間帯別料金メニューなどを用意して、負荷の下がる時間帯や季節に応じて、ピークが分散されるように努めております。そうした契約【筆者注:使えば使うほど割安になる契約】もありますが、ほかにも省エネに繋がるような選択肢を増やして、お客様に選んでいただいている、という状況です」(東京電力広報担当)
 そうした料金設定を選ぶ企業がどの程度いるのかについては「(データの)用意がない」として回答を得られなかったが、田中氏によれば「全体の2%しか契約していません」とのこと。もう少しピンポイントに料金の値上げを行い、省エネ設備の導入メリット(あるいは浪費のデメリット)を大きくすれば、さらなる効果が期待できるはずだが、強く出られないのはやはり「大口のお客様」に対する配慮だろうか。
 環境への配慮をPRはするものの、結局、企業が最重要視しているのはコスト。省エネ=省コストではない現行システムのひずみが、環境への負荷を高めているといえるだろう。省コストと省エネを一致させるためにも、電力会社には、さらなる工夫が望まれる。
(逸見信介/「サイゾー」6月号より)

 --(以上、昨年度の講義録より引用終了)--

 以上です。
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