哲学8-2 学生コメント集

 学生が書いた感想などと高木の返信をまとめたものです。

 学生の書いた本文はそのまま(漢字への変換あり)、とします。高木が補足する場合は()を付けます。○は学生のコメント、★:は高木のコメントです。△は補足です。考察をつける場合もあります。

★:は高木のコメントです。△は補足です。考察をつける場合もあります。

○イデアはどの時代のどんな人にも理解できるものであることが分かった。それと同時、数学を始め多くの学問に、長い歴史が

あるのだなと感じた。理系の学問でも文系の学問でも、ものすごく多くの時間を掛けて、今日まで進んできたものを、学生の間

に一気に勉強できるのはすごいことだと思った。

★学問の蓄積への想い、よくぞ気が付いてくれました。嬉しいです。私達人間は、特に現代に生きる人間は決して孤独ではない

のです。電機やガスなどは学問の蓄積なくしては成立しないのですから。そしてその人々は名もなき人々です。その名もなき人

々がいたからこそ、現在の私がある。私達1人1人がある。素晴らしいことですね。これからの大学生活で、是非とも一気に勉

強できるすごさを味わっていってください。

○今まで、数学の授業でならった図形も、数字として表わせば正しいけれど、図形にしてみると、隅の方など、不完全な所が出

てきて、不完全な人間が描いたものだから不完全になってしまうのかな、と思いました。それでも不完全な人間が考えた数式を

完全なものとする、というのは、また違ってきてしまうのでは?と思いました。

★説明が良く呑み込めていないようです。前提が違います。不完全なものはこの世に存在しません。しかし、私達は頭の中での

みイデアという完全なものを想い描くことができるのです。数式を完全なものとする、のではなく、「完全なる数式を想い出す

」のです。その完全なるものは変化はありません。

○三角形や雨について哲学的に考えてみて、とても面白かった。

★別の観方が出来るようになること、が哲学の面白さである、と最初に述べたのを覚えているでしょうか。実感してもらえて嬉

しいです。これからもがんばります。

○問3で摩擦力と言っていたのですが、摩擦力は公式で表わすことができます。これは問4の答えにはならないのですか?

★鋭い指摘有り難う。摩擦係数と垂直方向の力を掛けたものを摩擦力と高校レベルでは呼びますね。しかし、答えにはならない

のです。なぜなら、実際上では、垂直方向の力には距離が入っていないからです。原理上では物体の長さがない、からです。次

回もう少し丁寧に説明します。当のブログの講義録もどうぞ。

○問2の正三角形を切り抜けば紙と空洞の境界で構成された正三角形が出来ますが、これも完全ではないのでしょうか?

★素晴らしい着想です! 工学のセンスに溢れた感覚です。完全ではありません。なぜなら、その紙の厚さは、材質等に左右さ

れ、かつ、時代や社会によって変化する物質だからです。具体例を挙げては次回やりますね。

○イデアが見えないけれども知っている、知っているから共通して皆が理解しているということが判りましたが、やはりイデア

にも矛盾などはあるのでしょうか? 気になりました。

★矛盾、ありますよ! 良い点に気が付きましたね。プラトンの弟子のアリストテレスが、同じ点が気になっていました。次次

回取り上げます。

○もっと早くに知りたかったと思うほどに面白い考え

★なんと! これは嬉しいです。今からでも遅くはありませんよ。むしろ、色々な知識を持った今からなら、さらに深めていけ

るのではないでしょうか。

○イデアっていう考え方がすごい。普通じゃ思いもつかない。プラトンは頭がいいから、こんなことを思いついたのでしょうか



★どうなんでしょうね。イデアを提出したから頭がいい、と言われるのでしょう。プラトンよりもIQが高い、記憶力が良い人な

どゴロゴロいたでしょうが、まとめあげた力が凄いのでしょうね。

○完全な正三角形が描けないという事を知り、この世に完全なものはあるのか、と疑問を持ちました。

★プラトンの考え=哲学、では完全なものはない、となっています。では、他の立場に立てば、どうなるでしょう。色々な思想

を学んで観て下さい。

○イデアは思想にも当てはまるのでしょうか?

★哲学的な鋭い指摘ですね。プラトンのイデア論は具体的な政治改革で失敗しています。ですから、不完全な思想しか人間には

持てない、というイデアの思想通りになっている、と言えるかもしれません。考えてみて下さい。

○なぜ、プラトンの思想をキリスト教は捻じ曲げて伝えたのでしょうか。

★キリスト教に神様とはどういう存在であるか?という理屈がなかったからです。その理屈を作るために使用されました。

○ロゴスの意味が前回と少し違うものになっていて、どちらが主なのか、疑問に思った。

★言葉に対する健全な感覚を持っているのですね。定義に戻ってみて下さい。講義では「ロゴスは多義的」としました。多義的

、とは色々な定義がある、という意味です。もう少し踏み込みたい時は、『反哲学史』などをどうぞ。

○理想を見ているのに、なぜ戦争(互[誤?]差)があるのでしょうか。それをすべて思い出したら人間はどうなってしまうのか見

てみたいです。

★前半ですが、次回やります。具体的にはこの世には不完全なものしかないから、になります。後半ですが、もう、それは人間

ではない、と言えるでしょう。どんな存在でしょうか。私は漫画『超人ロック』に出てくる幾つかの永遠の生命体が具体例にな

る、と想っています。

○(大勢の意見)哲学の視点から見る他教科が今まで見えていたことと違って見えることに面白さを感じました。ずいぶん前に

おっしゃっていた哲学がすでに終わったというのはどういう理由で終わったのでしょうか。

★講義を理解した上での的確な疑問ですね。今後の講義の中で明らかにしていきますが、イデア世界を上に持ってくるという価

値観の意味で終わっと述べています。先に知りたい場合は、『反哲学史』などの本を読んでみて下さい。私は今月本を読むの疲

れました。20冊読みましたよ。

○プラトンは学習は思い出すことと言ったが、それは人は死んだときに完全なものになれるというエイドス?イデア?があった

からですか?

★そうです。死んだ後に永久不滅の魂だけが残り、それがイデアの世界を見てくるからです。次次回に具体的にやります。

○この世のものは全て不完全とあったが、もし完全なものがあったら、そのものは神と等しいような存在になるのか、それとも

神もまた完全ではないのだろうか、と考えていたら色々と訳が解らなくなってしまった。哲学では、神は完全な存在として定義

されているのかどうか気になった。

★まず、こうした深い、複雑な問題は言葉の定義をしっかりしないと、訳が判らなくなってしまいます。神を例にとりましょう

。神は不完全な神がいます。日本の神様やギリシャやローマなど神様、世界の多くの神様は多神教の不完全な神様です。対して

エジプトに始まる唯一神は、完全なる神を想定しました。その完全なる神も、有からの創造と無からの創造(ユダヤ教)などの創

造で2つに分かれます。さらに、完全なる神を人間が理解できるのか? や、神の完全性は善だけなのか? など色々な問題が出

てきます。この際に重要なのは、理性神、創造神、善なる神などが異なる、という点です。詳しく知りたい場合は、カレン・ア

ームストロング著『神の歴史』をどうぞ。大学の時に苦労して読んだ懐かしい本です。

○イデアの見えない形は生まれる前で、死後じゃないのはなぜでしょうか?

★いい疑問ですね。イデアは「想い出す=想起」ですので、現在より前に見たものを想い出すのです。つまり、死後という未来

ではなく、生前という過去になる訳です。

○ちょっとした疑問なんですが、学習=想起ということは、もとより知らなかった場合が在るのにそれ自体は学習ではないので

すか? 始まりって何ですか?

★なるほど。プラトンの定義では、もとより知らなかった場合はない、のです。宿題のレポートで出ているので考えて観て下さいね。

○見えないものがわかる→前にも見てきたもの(を)想い出すという説明がなぜかとても納得できた。何故だろう。

★当たり前に感じたことに疑問を持つ、ソクラテスのような鋭さを感じました。なぜでしょうね。実はプラトンに似た考え方は、阿弥陀仏信仰にあります。「なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」。どうしてこの言葉が日本で流行っているのでしょうか。考えて下さいね。また、疑問をぶつけて下さい。

○兄に、イデア界に昔説明をされたことがあります。実際にはありえないと思うが理論値だけの世界を見てみたい。

★仲の良い兄弟がいらっしゃって微笑ましいです。なるほど、私も理論値だけの世界を見てみたいです。数学者や天才的プログ

ラマはそのように世界が見えているのかもしれませんね。そうそう、もししかしたら、死後、見られるかもしれませんよ。

○赤子はどうして平等と言えるのか。正三角形が現実には存在しないものに定義されただけで、例えば、メートル基器を1メート

ルとして定義すれば、メートル基器のみは完全な1メートルではないのか。1メートルはロゴスであるとすればどうして正三角形

はフュシスと言えるのか等について疑問に思った。

★3つ質問がありますね。それぞれ答えていきます。
 最初の質問:赤子が平等なのは、赤子が生まれた時、裸で財産を持っていないからです。さらに赤子は本能のままに泣きわめき、糞を垂れ、寝ます。その点が平等です。
 真ん中の質問:完全な1メールではありません。物質の性質として、温度や周りの密度によって伸長します。ですから、物質があるものはイデアである完全性がないのです。
 最後の質問:ロゴスとフュシスとイデアの用語の定義がぶれています。ロゴスは自然の秩序、フュシスは自然、イデアはこの世にない完全なもの、です。もう一度見直してみて下さい。それでも浮かび上がってくる疑問があれば、一緒に考えていきましょう。

○見える物、見えない物、完全・不完全などのエイドスとイデアの仕組みがあまり良く分からない。肉体と精神で見分けている

のでしょうか。現実と理想なのか、どちらか知りたい。

★エイドスは見える形、肉体の目でみます。イデアは見えない形、魂の目で見ます。次回、もう少し具体的に述べますので、それでも分からない場合に、また疑問を下さいね。

 以上です。
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