哲学14-2 学生コメント集

 学生が書いた感想などと高木の返信をまとめたものです。

 学生の書いた本文はそのまま、とします。高木が補足する場合は()を付けます。○は学生のコメント、★:は高木のコメントです。考察をつける場合もあります。

 全体の傾向
問3 今日の講義の中で最も共感した人は誰ですか?
:カント と ニーチェ が最も多かったです。次にプロタゴラスです。
:各人の感想が多様化しています。

 です。
 

○ニーチェ:神は死んだ ←聞いたことはあったが、今日はじめてこの言葉の本質にふれ、そんけい(尊敬)できるとおもった。

★正確に理解してくれ良かったです。プラトンは祖国アテナイを救おうとし、ニーチェはキリスト教なき西欧人を救おうとしました。どちらも祖国、同国人を救おうという意図が込められています。講義では触れませんでしたが、ニーチェは敬虔な牧師の息子です。ニーチェは現実の目の前のキリスト教とは決別しましたが、キリスト教の本質である救済の精神は受け継いでいたのかもしれません。私が哲学の講義で、祖国日本を取り扱うのも、このプラトンやニーチェの祖国、同国人を救おうという意図を込めたかったからです。他にも多くの学生の皆さんがニーチェを尊敬してくれて何よりでした。有り難う御座いました。

○ニーチェ 大学に入ってから自分は、積極的ニヒリズムに従って行動していると感じたから。

★そうでしたか!それは素晴らしいです。文章を読むと、ニーチェを読み自らを省みた、と読めました。講義がそのお役に立てたのなら幸いです。

○なぜ神は善と決めつけているのか

★鋭い質問です。素晴らしいです。西欧神学でも問題になっています。まず、神の本質として、創造神、理性神、善神、唯一神、絶対神と偏在神などの色々な要素に分解できます。善なる神、という立場は主に道徳の肯定から出てきます。つまり、「神が善なる世界を作ったのだから、あなたも善なる行為をしなければならない」という道徳の肯定です。この裏には、「どうしてこの世には悪いことが蔓延(はびこ)り、悪人だけが得をするのか?」という悲しい現実があります。この悲しい現実を宗教の世界で乗り越えようというのが、「悪人は数十年の目先の得だけ。善人は死後に永遠に天国で得をする」という説明です。仏陀などが「死後の世界を語ってはならない」と言ったのに、仏教に入り込んだ理由がこれです。「善人が死後に永遠に天国で得をする」ために「神(仏)は善である」と決めつけないとならないのです。詳しい歴史は以下の本をどうぞ。

カレン アームストロング著 『神の歴史―ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史』  

○マルクス 日本は資本主義だけれど、共産主義という全員を幸せにしようという考え方が良かったから

★その通りですね。共産主義の理想は現在の資本主義の先進国の国々に取り入れられています。修正資本主義と言います。例えば、全員が公平に受けられる医療、介護、年金等々です。素晴らしい考え方ですね。ただし、共有の財産にすると人間は幸せになるでしょうか? 現実には「幸せでない」という結論が20世紀の歴史です。理想と現実は違う。当たり前すぎる言葉が、共産主義の教訓です。マルクスの言葉、素晴らしい点が幾つもあります。私も全て読んだわけではありませんが、これを機会に幾つか読んでみて下さいね。

○カント 人の理性は矛盾があるという考えが私の考えに最も近かったからです。

★そうですね、その点はカントの素晴らしい点ですね。ただ、日本人は「理性には矛盾があるから、理性的態度で話し合いましょう。1人で決めるのは止めましょう」という主張を1000年以上前に、カントの500年以上前に、日本で最も大切な規則として残しています。聖徳太子の十七条憲法です。聖徳太子の言葉を理性的態度という視点から見ると、なるほど、と納得するのではないでしょうか。一度目を通して見て下さいね。もちろん、カントの深さも素晴らしいものです。こちらもお薦めします。

○キルケゴール もっと彼の生き方を知りたい。彼にとって「悪」とはを解きたいと思った。

★「解きたい」が的確な言葉遣いです。伝わってきました。キルケゴール、凄い人ですよ。是非とも読んでみて下さい。尊い魂に是非とも触れてみて下さい。

○質問 wikiは間違っていることが書かれていると言っていましたが、先生が言っていることが正しいと何故言えるんですか? 少し疑問に思いました。

★嬉しい質問です。鋭くそして的確な質問ですから。情報の授業で「wiki」はダメ、という理由は誰でも改編できるから、と習ったことでしょう。この点は割愛します。まず、「正しい」とは何でしょうか。「学問的に正しい」とは、過去の学問の蓄積に即している、から正しい、ということが出来ます。私は私の考えを出発点にしている訳ではなく、参考書に示したように何冊かの本を出発点にしています。その本も学問的な検証を積み重ねられてきた本です。木田元著『反哲学史』やシュヴェーグラー著『西欧哲学史 下巻』などです。また講義で紹介したようにプラトンやアリストテレス自身の著書を出発点にしています。しかし、wikiにはその学問的な検証の積み重ねが保証されていません。そこに「正しいと何故言えるか」の答えがあります。もし、○○くんがプラトンやアリストテレスの本を読み、それを元にして幾つかの解釈を検討した結果として、御自身の考えを出されるのなら、そこに同じ「正しさ」があります。これが大学の研究です。そして次は学会で、その「正しさ」同士を比較して、さらに深めていく作業をします。
 素晴らしい質問を有り難う御座いました。またあれば、是非コメント下さい。

○ニーチェ 高校のころ世界は無意味だと思っていたから。あのころにニーチェと出会えていればなぁと思ったから。

★そうでしたか、そういう内容をお伝えできて嬉しいです。人生で遅い、ということはありません。研究で遅くなればノーベル賞を逃しますし、遅ければ会社は損をします。しかし、人生で遅い、ということはありません。ニーチェを読んでみて下さい。最近、ニーチェの言葉を分かり易く、明るく解釈した本が出ています。心に響くことばがあることでしょう。私の過去を振り返ってみれば、多くのことばに明るくしてもらってきました。

 以上です。

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