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哲学10-2 学生コメント集

 学生が書いた感想などと高木の返信をまとめたものです。

 学生の書いた本文はそのまま、とします。高木が補足する場合は()を付けます。○は学生のコメント、★:は高木のコメントです。△は補足です。考察をつける場合もあります。

 全体の傾向

:イデアは難しい
:イデアは面白い
:洞くつの例え話は納得

 などが多かったです。今回は多彩な意見がありました。


○僕はテレビなどを家族と見ていて、「この情報や統計はおかしい」と僕が根拠を述べながら言っても軽くあしらわれてしまいます。どうしたら家族の手の縄をとけますか。

★真摯な質問有り難う。嬉しいです。武士道の真髄が書いてある『武士道』には以下のようなことが書いてあります。
「まず、その人の信用を得ることである。そのためには実績を積み重ねる必要がある。信用を得ない助言や意見はどのように素晴らしいものでも受け入れてもらえない。」
 如何でしょうか。これを援用するとテレビを見ていて説明をして軽くあしらわれたら、その後の結果をご家族に示すことです。私は安部総理誕生前に「安部総理が誕生すれば円安になる。官僚の人事権を握り、日銀の人事にも介入できればさらに円安になる」と言っていました。家族やビジネスの授業でです。そしてその通り、75円から115円まで行きました。私の予想は「100円位」でした。しかし、内閣法制局長官の人事権、日銀の人事権、官僚の一定以上の人事権を握りました。特に最後は静岡県選出の議員が頑張ったのですが、そのことで100円を超えたと思います。私はこれで信用を得ました。如何でしょうか。
 もう1点、以上のような人間社会の理(ことわり)を無視したプラトンからすれば、否定されるべき方法かもしれません。信用が意見よりも重要なのではなく、意見(イデア)の方が信用よりもプラトンは重視したのです。この点もプラトンがなぜ政治改革に二回も大失敗したか、の原因として覚えておいてもらえれば嬉しいです。

○今回の講義を聞いてイデアについて思ったことは、先生が哲学のかんたん(簡単)な例えを話した時に、僕はその話をあまり、すんなりとう(受)け入れられませんでした。そんな僕もやっぱり、どうくつ(洞窟)の例えの、普通の民衆なんだと思いました。イデアは、全ての学問のもとになっているのには、なっとく(納得)しました。

★正直な誠実なコメント有り難う。○○くんは民衆かもしれません。しかし、縛られていることに気がつかない民衆ではなく、今回の講義で「自分が縛られていることに気がついた民衆」になったのです。恥ずかしながら私は25歳を過ぎても自分が縛られていることに気がつきませんでした。「自分が縛られていることに気がついた民衆」から、その後、どうするか、は○○くんが考えて下さい。ソフィストになることも出来ます。民衆に戻ることも出来ます。哲学者のように祖国を思うことも出来ます。あるいはソクラテスのように警鐘をならす哲学者になることも出来ます。民衆は自分が民衆であることに気がつきません。指摘されると怒り出します。○○くんは素直に受け入れてくれました。私はそこに正直さと誠実さを見出しました。講義をやって良かったです。有り難う。

○あらゆる事は全て神が造ったものなのではないかと思った。

★そうですね。神が全てを創った、という神話を信じている人が世界の70%です。それは仏教の中にもあります。「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」とは「この世界の全てを創った阿弥陀様は凄いなぁ」という意味です。「宇宙はなぜあるのか?」、「物質を集めただけの人間になぜ命があるのか?無くなるのか?」という問いを真剣に考えてきた人々の多くが○○くんと同じ感覚、意見を持ったのです。そこから深めて行ってください。私は○○くんと同じ感覚になった、JR南武線の踏切を20年以上経っても覚えています。恐ろしくて体が震えて乗っている自転車から落ちそうになりました。

○なぜ、哲学をもっと世間に広めないのだろうか

★根源への問いですね。次回、アリストテレスで図式化しますが、日本には、日本人の根底には哲学と同じレベルの思想、あるいはそれ以上の思想があるからです。20世紀を代表する哲学者が日本の仏教思想に感銘したり、宗教家が(伊勢)神宮に感服したりしています。それからも、日本思想の奥深さ、を推測できます。哲学をもっと世間に広めないのは、日本人が哲学と同じ(あるいはそれ以上の)思想を持っているからだと思います。講義の最後に扱いますので一緒に考えましょう。

○私も夕暮れ見ました。今までで見た中で一番きれいでした。

★講義冒頭でお話しした厳しい寒気が生み出した美しい夕暮れの話ですね。哲学でいえばロゴスの美しさです。そうしたものに、自らの命の時間を蕩尽(とうじん)するのか、想起されるイデアに一身を掛けるのか。人のこのような問いも吹き飛ばすかのような絶景でした。

○哲学者がソフィストなどに真善美を伝えて死刑されるのはなぜか理解できない。人それぞれだと思う得る心があればいいのに。

★全くその通りですね。人間は心の根本で「人それぞれでいい」と思っているでしょう。しかし、人は生物です。食べて、糞をして、性交をして、寝ます。食べるためには人の食べ物を奪わなければならない時もあります。性交は相手を獲得しないとできません。寝るためには安全な場所が要ります。現在の日本ではこれらは全て提供可能です。そういう前提に立って、食べて、糞をして、性交をして、寝るのが不十分な人々を批判するのは、不十分です。「なぜか理解できない」ことを民衆はするのでしょうか?民衆の立場に立って考えてみてください。

○イデアとは人類の歴史の中では善だと思いますか? 悪だと思いますか?

★切り口の面白い質問ですね。少し考えてみました。善です。もちろん、イデアは悪に利用されました。しかし、本質は善です。なぜなら、イデアによって数学が基礎づけられ物理学が提出され、数多くの発展に寄与しています。この点を自然(フュシス)としてみると有用であります。それゆえ善、と私は考えます。もちろん、宗教と結びつき殺戮や戦争、人種差別に結びつきました。しかし、人類の人口は二千数百年前から確実に増えています。もちろん、哲学と関係の無かった日本の小麦や米の改良を含めた技術貢献も大きいですが、それを引いてもイデアは善、と考えます。面白い質問を有り難う。

○実体がある物が不完全で、実体の無い物の方が完全だとは思ってもいませんでした。

★そうなんですよね、そこに気がつき、体系化した点がプラトンの凄さです。講義を自分の言葉で要約できる、その点も凄いと思います。

○イデアの世界とは、具体的にどのような世界なのか、知りたいです。

★良い心意気です。是非ともプラトンの『国家』を読んでみて下さい。このブログに私が書くことよりも、よっぽど面白く、楽しいと思います。

○今回の授業を受けてやっとつながったと思った。哲学は面白いものだと思う。本なども読みたいと感じた。課題もがんばりたいと思う。

★嬉しいです。やる気が充実していますね。大学に入って良かったな、と思ってもらえれば教員としてこれ以上の喜びはありません。

○摩擦や空気がない空間は宇宙空間にあると思いますが、非現実的でしょうか?

★口頭で返答しましたが、こちらでも返答します。「宇宙空間に何もない」というのは少し前の認識で、宇宙線などの発見によって色々な粒子(波動性を含む)が宇宙空間に存在していることが判っています。純粋に何もない空間=宇宙空間ではないのです。
2002年ノーベル物理学賞受賞者の小柴 昌俊(こしば まさとし)先生は、カミオカンデで自然発生したニュートリノの発見をしました。地球も簡単に突き抜けるニュートリノと他の物質との衝突を観測したものです。この前提として地球を簡単に突き抜ける宇宙線(ニュートリノ)がある訳です。口頭で出来なかった補足も入れました。また、質問があればどうぞ。

○イデアの世界にいって、また川に入り忘れて(肉)体と一体になるというが、では、始まりはどこ? どこから生まれてどこで死ぬのか。一番最初の生命に入ったものは何?(漢字等の補足を行いました)

★プラトンを理解したうえで根源を問うコメント、嬉しいです。考えてみましたが、これは私の答える範疇を越えています。というのもプラトンが輪廻転生の前提としているギリシャ人が受けいれていた神話の詳しい分析が判らないからです。申し訳ないです。ただ、哲学の範疇からの推測は出来ます。プラトンは魂が永く輪廻していると言っていますから、最初はない、という考えだったでしょう。一番最初に生命が入ったのは大昔過ぎて判らない、と答えるでしょう。実際に世界の多くの国々が魂はどこから来て、最初に肉体と結びついたのは何時か、という規定をしていない神話を持っています。一応以上が解答になります。ただ、○○くんの質問は貴重な質問です。是非とも調べて行って見てください。何か判ったら教えて下さい。

○授業は黒板に書いてあることと先生の言っていることをメモしていますが、なるべく話を集中してききたいので図や大切な文はプリントでもらいたいです。

★前向きの意見嬉しいです。プリントで配布はしませんが、ブログに講義録が載っています。ですから、そちらを見て下さい。黒板の板書も私の話もブログも結局、○○くんの頭の中の理解のための手段にすぎません。ですから、一番覚えやすいもので結構です。例えば、講義中は私の話と問いだけに集中し、予習、あるいは復習段階でブログを書き写す、があります。そういえば、大学生の時に「この先生は凄い」と思った先生がいました。予習で読んだ先生のご著書で判らない部分を先生の講義の終了後に、質問していました。先生はきちんと答えて下さいました。嬉しいコメント、有り難う。

○人を「可愛い」とか「かっこいい」と外面で判断するのではなく、「優しい」とか「面白い」とか内面で判断するのもイデアですか?

★違います。講義中の話の内容は「可愛い」とか「かっこいい」とは人間世界の基準(ノモス)に過ぎない。イデアはそれらを否定して、完全なる人間を設定する、と言いました。ですから、外面でも内面でも人間世界の基準である限り、イデアではないのです。次回、美人コンテストの例で少し説明をします。

○すいません。プラトンさんは、永遠不滅の世界に住みたいと思うのですか? 住みたくないと思うのですか?

★どっちでしょうね。プラトンに聴いてみないと・・・。ではなくて、永遠不滅の世界は住むことができません。何故なら魂だけの世界だからです。この世と同じように肉体を持ったまま住めない世界なのです。けれども、キリスト教にその点を巧く利用されて「永遠不滅の世界=天国」という構図が出来上がりました。その意味では深い問いだと思いました。プラトンの目的は決してあの世(永遠不滅)の世界を目指すものではなく、あくまでも目の前の祖国アテナイを救うことでした。ただ、直ぐにアテナイは滅びでしまいますが(占領)。また、質問があればどんどんしてください。

○見えない世界が存在し、本当に実存しているのはイデアだと理解した。これで合っているのかいまいち心配だ。

★心配なら質問してくださいね。お節介にもこうして返信します。理解は合っています。特にこの世の存在(現実存在)よりもあの世の存在(本質存在=イデア)を優位に置いた点はプラトンを正確に理解しています。ただ1点気になります。漢字のミスか、あるいは用語を知らないためだと思いますが、「実存(じつぞん)」とは「現実存在」を指す言葉です。そして「本質存在」よりも「現実存在」を優位に置く言葉です。ですから、最初のコメントの一文は正確には「見えない世界が存在し、本当に存在しているのはイデアだと理解した。」となります。「存」→「在」です。

○人の見方によって色々かわる?

★人の見方によって色々変わるのはノモスです。人の見方によってお金の価値、人の優しさ、愛らしさは変わります。しかし、人の見方によって変わらないものもあります。春が来て夏が来る、という四季の運行(ロゴス)です。また、宿題の問いに出しましたが、数学が万人共通であることがあります。人の見方で数学が変わるでしょうか。国によって数学の内容が変わるでしょうか。変わるものと変わらないもの、の区別を認識して下さい。


○理想と完全を現実と結びつけて証明すること?

★違います。完全なる理想がイデアです。現実と結びつくと不完全になるのです。自然科学はその不完全さを誤差や近似値などで完全に結びつけるのです。

○問2はちがうと思う。ソクラテスが死んだからこそ哲学者にな(っ)た人もいると思う。

★○○くんはそういう思いの強い人なのでしょうか。次回のアリストテレスの個と種についてでお話しますが、「自分がそう思うこと、と、全員がそう思うこと は違う」という点を弁(わきま)えて下さい。では、ソクラテスが死刑になった後、アテナイは祖国愛に燃える哲学者が市民のなかの多くを占めたでしょうか? 残念ながらそうではなくアテナイは滅ぼされました。その後の東欧の歴史の中で哲学者が市民の多くを占めた国があったでしょうか? 西欧では? 日本では? 残念ながらありませんでした。人は欲望や快楽におぼれ、それしか考えられない人が多いのです。道徳的発達段階を提唱したL・コールバーグの分析でも同じような結果であると言っています。○○くんの言うように哲学者になった人もいるでしょう。しかし、ごく少数なのです。私の講義の真意を理解してくれる人も少ないでしょう。でも、それでいい、種を撒くのが大切、という話をしました。覚えているでしょうか。これも「哲学者(=①事実から考える人、②自分で判断する人)になる人」が少ないのだ、という前提があります。これからも先生の意見に堂々と反論して下さい。返信が欲しい場合は必ず冒頭に「質問」と書いて下さい。返信しますので。

 以上です。

 


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