哲学8-2 学生コメント集

 学生が書いた感想などと高木の返信をまとめたものです。

 学生の書いた本文はそのまま、とします。高木が補足する場合は()を付けます。○は学生のコメント、★:は高木のコメントです。△は補足です。考察をつける場合もあります。

 全体の傾向
:ソクラテスが今の日本には必要
:アルキビアデースは私である
:ソクラテスは可哀想

考察:講義内容を理解できていないと推測されるコメントが3割。私の稚拙な講義と学生の欲望が原因と推測される。

感想は、「ソクラテスについて」としました。ですから、ソクラテスに関するコメントが多いです。


○ソクラテスのような人が今の日本にはひつよう(必要)なのではないかと感じた。

★その通りです。ソクラテスは50歳頃から活動を開始しました。それまで○○くんの心の中で温めていて下さい。私は後10年で50歳を超えます。また、表立っては少ないですが地道に活動している人々が今の日本にいますよ。気になるのであれば探してみて下さい。

○理解されるに終わっていく人もいる。なにか発見しても認められない、死んでから認められる公式や研究はむ(?)なしい。その時理解してくれる者がいないことがいけない。

★そういう気持ちは自然(フュシス)ですね。しかし、ソクラテスはそれを否定したのです。ソクラテスはアテナイの民衆に、あるいは多くの知識人に理解されなくとも良い、と考え、むなしさを捨てさりました。そういう生き方があることを知っておいて下さい。

○ソクラテスは、社会性のない人物だと感じました。意志薄弱、というかまわりに阿(おもね)るのが社会でもっても生きやすいのであるのに対して、そんな行動をとるというのは、狂っていると思います。ただ、そのように生きることができるのは、自らを捨ててまで国家のために生きられるのは、何よりもとうと(尊)いものだと思いました。

★ソクラテスの両側をきちんと捉えた意見でした。嬉しいです。自衛隊や警察官、消防官の方々など現代の日本でも自らを捨ててまで国家のために生きられている人々がいるのが視界に入っているでしょうか。ここにも尊さがありますね。また、意志薄弱は社会で最も生きやすい生き方とは私は考えません。「強い奴に尻尾を振り、弱い奴を虐げる生き方」だと思います。

○問1解答:バーゲンセールに群がる女性 高速道路で無駄な進路変更を繰り返すドライバー

★具体的ですね! 全く共感します! バーゲンセールで自分に合う服を見つけられるのでしょうか。得をしたくて損をしている実に的確な例でした。

○祖国愛が強いのに弟死(弟子)の代わりに祖国に殺されるのは悲しいことだと思った。

★悲しさで国家は出来ているのかもしれませんね。ただ、ソクラテスの半分を理解してくれました。ソクラテスは自ら進んで死を選びました。そこには「悲しさ」はありません。彼は死を「選べること」に満足していたのではないでしょうか。これもまた高木の欲望をつけた誤解かもしれませんが。

○ノモスのような人を、見極め、つるまないようにしたいです。

★ノモスのような人は多分、7割を超えて身の回りにいるのではないでしょうか。ただ、大切な時にノモスにするかロゴスにするかだと思います。孔子が○○くんにアドバイスをしてくれます。

「自分の家や服が貧しいことばかりを恥じている人とは友達にならない方が良い」

意味はお分かりでしょうか。

○ソクラテスは国のために死んでいったということは、きっと今の日本人にはできる人がほぼ0に等しいと思います。こういう行動をするためには、もっと日本のことを知っていく必要があるのだと感じました。

★後半はまさにその通りです。そのように感じてくれて嬉しいです。前半は、そんなことはありませんよ。○○さんの周りにいないだけかもしれませんが、私の周りには十人前後そういう人がいます。祖国のために身を削っている人に合うと、私は心の中で尊さに手を合わせてしまいます。さて、では1人、祖国のために身を削った人をご紹介しましょう。
 尖閣諸島中国漁船衝突事件で国民に、世界中に真の情報を流した人がいます。彼は結局自衛隊を辞めました。自分の経歴を捨て家族に迷惑を多大に掛けても、祖国日本のために身を削ってくれました。
 現代でも尊い人がいます。そういう人との巡り合いを大切にして下さい。

○自分は哲学にすごく興味がありますが、いつも問題を上手に答えられないです。でも正解とか不正解ではなく、考えることが大事なのかなと思いながら授業を受けています。しかし、今回の話を聞いて、ソクラテスはかわいそうだと思いました。大してかわいがっていた弟子でもないアルキビアデースの戦争の失敗を押しつけられなければならないのかが全く分かりません。今も昔もいつだって、責任感がない人のせいばかりにしているのは自分を含む民衆だと思います。何か改善されればなと思いました。

★まっすぐ真ん中から考えてくれて嬉しいです。この言い回しは青山繫晴さんの言い回しです。青山さんの動画はYoutubeやニコニコ動画で見られますから観てみて下さい。次にソクラテスですが、確かに○○さんは可哀想と思ったでしょう。しかし、ソクラテスは充分承知の上で毒杯を飲みました。何故でしょうか。時間がある時に是非『ソクラテスの弁明』を読んでみて下さい。一生の宝になる大切なことが見えてくることでしょう。

○アルキビアデースの一生を見ると、卑きょう(卑怯)な人間だと見られますが、そういう人間が今の僕らだと理解しました。意志が弱い、または無いという人間が、社会にはまずいんだなど分かりました。ソクラテスのように狂人に見えても実は一番の愛国心を持っている人が社会には必要だと理解しました。晋でも意志を続けていくように、他の人に影響されないのが大切だと分かりました。

★嬉しい意見です。自らを振り返り反省し、社会という広い視点から捉え、最後に自分の生き方を考えている。嬉しいです。有り難う。

○祖国を救う為にロゴスを捨てて理想を追い求めても良かったのでは? 意志を貫く強さはあったかもしれないが、世渡り下手な印象を受けました。

★少し誤解があります。ロゴスに立ち返ることがソクラテスの理想なのです。しかし、その理想の具体的な表現が出来ない、のです。それはソクラテスの年齢によるものかもしれません。一回り以上若いプラトンは、ソクラテスから学び、理想を具体的に語れたのです。最後に、「世渡り下手」であることは、ソクラテスの理想です。「世渡り上手」はノモスそのものなのですから。

○なぜ、ソクラテスは国家にはロゴスの側面があると信じられたのか、分かりませんでした。

★何故でしょうね。鋭い質問です。ただ、日本人も栄枯盛衰と言って『平家物語』で氏族全体について語っています。そこには四季の運行と同じ動きがあります。両者ともロゴスです。詳しくは講義録を見るか、ご自身で本を読んでみて下さい。疑問を持ちながら本を読むと面白いですよ。

○結極(結局)は何もせず死んでいってしまったが、それで良かったのか。国のために自分をかえりみないのは美しいが、それで満足していたのかと思う。

★深い疑問ですね。このような疑問を抱かない人もいますから、この疑問は○○くんの心の声ですね。私の考えでは、それで良かった、と言い切れます。これ以上の死に方はない、とソクラテスは考えたでしょう。どうしてか、『ソクラテスの弁明』を読んでみて下さい。

○ソクラテスは賢いのに、人々の反感を買うような行動をとっていることを考えると私は、そんなに彼が頭がいいとは思わなかった。平和にいきていればいいのに。

★○○くんの疑問は当然だと思います。現代の日本は「平和」のための犠牲が見えないで保たれているからです。しかし、一歩海外へ出てみると「平和」であることの犠牲の大きさに驚くでしょう。アメリカは「平和と言えば平和になる」という奴隷の考えを私達に教え込みました。アメリカが平和を与えてやるから何も考えるな、という平和です。ソクラテスは自身で軍隊経験があります。実際に殺戮行為に参加して、このままではアテナイという国家が滅びる、と思ったのです。この点を伝え切れなかったかな、と思いました。現代日本とアテナイの国際状況の違いを振り返ってください。

○ソクラテスの死の場面で、市民に責任があるのにおしつけられてかわいそう(可哀想)だった。おしつけられた時は、批判はしたのか気になった。

★心の中で思い描いたからこそ出てくる疑問ですね。では、どうであったのか。是非とも『ソクラテスの弁明』を読んでみて下さい。ソクラテスは・・・毒杯を自ら進んで飲みました。逃亡も出来たのにしなかったのです。そうなって彼は批判したでしょうか。

○問2 ヒトラー

★素晴らしい解答です。私の解釈ではヒトラーはアルキビアデースと同じく意志薄弱の人格です。経済政策に自信が無いので専門家に押し付けました(大成功)。軍略等を理解できずにドイツ軍参謀本部とずっと対立し続けます。第二次世界大戦末期彼は自室に篭りっぱなしです。彼は民衆の心を捉える演説が上手かった。専門外ですが、ヒトラーを私はそのように見ています。

○ソクラテスはとても可哀想な最後を向(迎)えたので、自分は最後を向(迎)えたくないと思った。

★ソクラテスの最後は確かに一般常識からすれば、可哀想な最後だったでしょう。しかし、彼は数十年考え続けてきたことを実際に行動に移すことができ、そして貫き通しました。彼自身からすれば、幸せな一生だったでしょう。これ以上の死はないのではないでしょうか。私を含め多くの人間は、考えていることを行動にすることが出来ない、のです。世間体や一般常識などで結局縛られてしまうのです。ソクラテスは祖国のために死にました。自分の我侭のために死んだのではないのです。その志はプラトンの引き継がれ、二戦数百年後の異国の私達にも感動を与えてくれます(他の学生のコメントをどうぞ)。人は必ず死にます。それまでどう生きるのか、考えてみて下さい。死ぬ間際にどういうことをしていれば幸せか、どういうことをしていたら不幸せか、ということをです。

 以上です。ソクラテスが私達に多くのことを考えさせてくれたのが伝わって来ました。


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