講義録10-2 「公平な捉え方と見えてくる事実」

 さて、新聞記事が終わりましたので、黒板に板書となります。

 まず、今回は、動画①と②を本日は考える、ということです。実は1回の講義で①から③まで行こうとプランを作ったのですが、最初の講義でプラン通り行かなくなり、①と②にしました。学生の皆さんにじっくり考えてもらいたいと考えました。

 それでは、板書です。

 「青山氏の主張」と書き出しました。

 「青山氏の主張」→原因は人災だ、と書き、その後で、矢印を→から←に書き直しました。

 「「青山氏の主張」←原因は人災だ」 ということです。

 青山氏が撮影してきた動画ですから、皆さん青山繁晴氏がどういう人がちゃっとで良いので調べてきて下さいね。これから色々な人生の場面で必要になります。この人は、日本で初めて日本国や企業から独立した研究所を作りたいと考えて作った人です。日本では研究所、と言いながら国や企業からお金を沢山出してもらい、自由に分析や提言出来ない現状があります。それを憂(うれ)いて「独立総合研究所」を作った人です。現在、社長であり主任研究員です。ですから、公平な立場、と考えられる訳です。この人が今回の事件は人災だ、とニュースの中で述べていました。ですから、私は2,30本ある、皆さんに見せたい動画の1本にしました。
 もう1度言います。

 青山氏が公平な立場だから採用したのではありません。「原因は人災だ」と言っているから採用したのです。

 次に、「原因は人災だ」と言う人は多いですね。その中で青山氏の主張を採用したのは、「現場で事実=動画」を撮ってきたからです。日本のマスコミは政府の発表するデータだけを示していますね。自分たちでは「50キロ圏内に入らない」という協定を何故か作って入らない。そして政府の言う事だけを発表しています。以上の2点で採用しました。
 私は個人的に青山氏の行動や思想に共鳴する部分があります。しかし、青山氏が「今回の原因は天災だ」や「今回の原因は調査中である」と言えば採用しませんでした。何故なら、それは現在の政府の「今回の原因は調査中である」と同じ立場になるからです。もう1度板書を書きます。

・否定からの事実:青山氏の主張←原因は人災だ

・肯定からの事実:政府の主張←原因は調査中だ
         (マスコミの主張)

 講義録9では論拠では自分VS他人をしなければ公平にならない、としました。
 講義録10では事実で肯定VS否定をしなければ公平にならない、と提示します。
 
 つまり、事実を捉える際も、肯定側と否定側から捉えないと全体像が見えにくいということです。
私は現在のマスコミは偏っていると考えます。何故なら政府の発表をそのまま新聞に載せるだけで自分で現地に入り情報を殆どとってこないからです。とってくるのは避難所などの安全な場所が多いです。と同時に日本国政府も偏っていると思います。今日の新聞でも、首相、大臣、保安院が矛盾していました。その際に「だから政治家は駄目なんだ」とか「日本の政治は期待できない」というのでは学問的ではありません。その際は、政府と反対側の主張をしている人から事実を集めればいいのです。小出先生は否定側の人ですが、自分で現場に行って事実を取って来ていません(もちろん、だから駄目という訳ではありません)。そしてもう1つ最も大切なのは、金銭的に独立している(実際には青山氏の個人借金が数億円で支えられるそうである)青山氏であっても偏る、のである。これは前回の講義で示した「新聞は膨大な事実から編集者が選別する」という意味も含んでいる。この

 「事実を選ぶ際の偏り」は何人も避けられない

 のである。この前提を受けれると「肯定側と否定側の両方から事実をとる方が良い」という結論が出てくる。なので青山氏の動画を数ある動画の中から選び出した。

 その上で両側から観た事実確認をしてみましょう。

①地震で鉄塔が倒れ電気OFF(新潟の柏崎刈谷原発と同じ)
  ↓
②津波で発電設備や燃料タンクなどが破壊
  ↓
③原発特有の、冷却が出来なくなる
  ↓
④水素爆発、メルトダウン

 以上になります。これに、論拠を幾つか加えてみましょう。青山氏、武田氏、新聞に基づく首相や経済産業大臣です。

①地震で鉄塔が倒れ電気OFF(新潟の柏崎刈谷原発と同じ):A)「漏れない→漏れても平気にすり替えた(武田氏)
                           B)「先例があったのに対策を取らなかった」(武田氏)
                           C)「安全対策は「適切」である」(経済産業大臣)
                           D)「安全対策は「適切」ではない」(首相)
  ↓
②津波で発電設備や燃料タンクなどが破壊 :A)「国会で指摘されていた(が対策が取られなかった)」(国会答弁)
                    :B)「不備が内部告発されていた(が対策が取られなかった)」(前回のプリントNo.13⑤)
                    :C)「訂正できないでいる」(武田氏)
                    :D)「安全対策は「適切」である」(経済産業大臣)
                    :E)「津波が再び来る対策をとる必要がある」(吉田所長)
  ↓
③原発特有の、冷却が出来なくなる  A)「(事前に指摘していたが)対策が取られなかった」(別の動画で青山氏)
                  B)「対応が遅れたから起こったのであって人災である」(青山氏)
                  C)「対応が遅れたかも含めて調査中である」(日本政府)
  ↓
④水素爆発、メルトダウン

 以上のようになる。
 事実確認の上に論拠をそれぞれの人々が付け加える。数々の論拠を参考にしてもらいたい。ただ、その前段階の事実確認を踏まるのが前提になる。さて、以上の論拠で新しい希望が指摘できる。それは吉田所長の言葉である。「防潮堤が再発防止=津波の再来に備えるためには必要である」という発言は、この動画が放映された後、大反響を生んだ。その後、これまで入っていなかった工程表に、小さくではあるが「防潮堤」という言葉が入り対策がとられた。それまでは土嚢(どのう)など、今回の津波を現場で観ていない人々が考えた案であった。しかし、現場で客観的事実を捉えたことによる主張が、工学的安全に一歩寄与したのである。希望として指摘したい。さらに、希望を探りたいので、問1を出した。

 問1 今回の大地震や大津波で倒れなかった建物は何ですか?(ひびはOKとする)

 学生の皆さんは動画をきちんと観てきてくれて、またプリントも熱心に読んでくれ、「免震重要棟(めんしんじゅうようとう)」を殆どの学生が書いてくれた。課題動画①民放TV - A)免震重要棟内部の映像 の途中に「免震重要棟は新潟県中越沖地震の教訓として建設された。」(Weblio辞書 新語時事用辞典より)とある。つまり、新潟柏崎刈谷原発事故の教訓が生かされいたのである。これは大きな希望である。東京電力の中にも国民の安全を考え、地震対策を取ってきたことが分かる。さらに続ければ、前回の講義で述べたようにアメリカの原発は地震や津波に耐えられない設計であったのにも関わらず、原発導入から約50年間、今回のような事故がなかった。これは事実である。つまり、日本の技術者が欠陥炉と分かっているにも関わらず、なんとか地震や津波対策を行ってきた結果とも言える。また、多重防御である原子炉建屋そのものは破壊されなかった。この点も希望が持てる。
 
 他に倒れなかった建物は、原子炉建屋(水素爆発で吹き飛んだが、大地震や大津波で倒れなかった)、集中廃棄物処理施設、第一原発5号機6号機、第2原発が挙げられる。ヒビは入ったけれども、倒壊しなかった建物がこれだけあった。この点も希望が持てる。さらに、青山氏の動画で観たように現場の作業員の正確な作業手順と士気の高さも加えられる。

 以上の希望を箇条書きにしたい。
1)新潟柏崎刈谷原発事故を受けて免震重要棟が建てられていたこと
2)アメリカ製の欠陥炉を使用して約50年間で1回の広域災害となったこと
(本来は1回も許されるべきではないが、これは製造物の性質上不可能である。これは講義で「工学的安全」=「許容可能なリスクであること」を挙げた)
3)多重防御とされた原子炉建屋は震度6と大津波に耐えた
4)原子炉周辺の建物も幾つか倒壊しなかった
5)現場の作業員の作業手順の正確さと士気の高さ


 
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