講義録15-5 国歌の意味 各国の国歌の意味 国旗の意味

 国歌の意味は講義録15-4で詳しく述べました。次に他国と比べて見てみましょう。

 復習です。

「君が代は」: 皇室を戴く国に生きる私達の時代が
「千代に八千代に」:末永く続きますように。

「さざれ石の巌(いわお)となりて」:女も男も違うのは当たり前、あなたも私も違うのは当たり前、けれども一緒に仲良くしましょう
「苔のむすまで」:そして新しい生命がでてくるまで。

 意味を高木が訳します。

「1人1人違うけれど皆で仲良く、今日は新しい出発としましょう。」

 この歌は、1000年以上前の古今和歌集の歌で、誰が詠んだか判らない歌です。明治まで結婚式などお祝いの時に民が歌ってきたので、国歌としたのです。歌詞をもう1回見てみてください。

 結婚して男女は違うけれど仲良くして新しい命を授かりましょう。という意味が込められているのが解るでしょう。

 さらに、他国の国歌と比較してみましょう。(株)ワニマガジン社刊 『世界の国歌』を抜粋し補足を入れました。

☆英国

 神が私達の慈悲深い女王を守らんことを願う
 神が高貴な女王を長生きさせることを願う
 神が女王をお守り下ることを願う
 女王に勝利を送れ、幸福で栄光を与え
 末永く私達の上の統治へ、神が女王を守らんことを願う!
 おお主なる神よ、立ちあがれ私達の敵を追い散らし、彼らを倒せ!
 彼らの悪辣(あくらつ)な企みを失敗させ、彼らの政治を混乱させたまえ!
 あなたの上に私達の希望を私達は据(す)える 神が女王を守らんことを!

考察:まず、全知全能のキリスト教の神への願い、という点に留意して欲しいです。国歌の前提として神が存在しているのです。次に、この国歌の意味は女王礼賛、エリザベス女王万歳!です。日本の国歌の中には皇室の権力を肯定する言葉はありませんでしたが、イギリスの国歌は女王の権力の肯定そのものです。さらに敵を倒せ!という敵を前提としています。日本のように「仲良くしましょう」ではないのです。以下の①~③は日本の国歌にはありません。
 要点は、①キリスト教の神の肯定 ②女王万歳と権力の肯定 ③敵を攻撃


☆アメリカ

 おお、あなたは見ることが出来るだろうか、夜明けの日によって、
 あんなにも誇らしく、私達が黄昏の最後の輝きで歓呼して迎えたもの(星条旗)を?
 広い縞(しま)と明るい星(星条旗)が、危険な戦いを通して、私達が見る城壁の向こうに、
 あんなにも雄々しく翻(ひるがえ)っていたの(を見ることができるだろう)か?
 (中略)
 彼ら(敵)の血は彼らの不潔な足跡の汚れを洗い流した。
 避難所は彼らの雇われ人と奴隷を助けられなかった。

考察:戦いに勝ったぞ!という歌です。星条旗万歳!そして敵をやっつけました。の意味です。(中略)の後の2行は「敵をやっつけたぞ、ざまあみろ!」の意味です。さらに重要なのは、白人は奴隷と傭兵を助ける必要がある、という意味です。つまり、国歌の中で奴隷制を認める発言をしているのです。どうしてこの国家は、人権侵害などで廃棄しないのでしょうか? 日本のように「時代に合わない」とか差別を助長するとか述べている人々はどのように解釈するのでしょうか。アメリカ礼賛の人々は、この国歌の意味を知らないのでしょうか。要点です。
 ①戦争で勝利! ②星条旗万歳! ③奴隷制が書かれている

☆フランス

 立ち上がれ、祖国の子供よ、栄光の日が来た。
 私達に対して、専制政治の血染めの旗が掲げられる。血染めの旗が掲げられる。
 聴け! 野原で! 獰猛な兵士達が叫ぶのを!
 彼ら(敵)が私達の腕の中までやってくる
 私達の息子達と配偶者達の喉を切るために

 部隊へ進め、市民達よ! あなたたちの大部隊を形づくれ!
 行進だ! 行進だ! 不潔な血が私達の溝(みぞ)を潤(うるお)さんことを!

考察:ここでも戦争をするぞ!というのが国歌で歌われている。フランスは対外的に戦争が下手だったせいか、やや国内戦争的である。そして敵は専制政治=王制などとしている点は時代が感じられる。最後の「不潔な血が私達の溝を潤さんことを」はアメリカ国歌の「彼らの血は彼らの不潔な足跡の汚れを洗い流した」に共通する点がある。敵の血を沢山流すことを喜ぶという点である。
 ①戦争での勝利! ②国民の戦争参加呼びかけ ③敵を殺すことを喜ぶ

 イングランドが約1000年、アメリカは約150年(あるいは300年弱)、フランス約140年(王制打倒から約220年)の全てが戦争によって樹立された政権である。それゆえ、国家にとって戦争の鼓舞、礼賛が必要であった。日本は建国2673年、建国時に戦争は行われていない、という奇跡がある。しかも、国歌は民がお祝いの時に歌い続けてきた歌を採用する、という極めて異例な事例なのである。戦争賛美がない国家も珍しい。最後に中華人民共和国を見てみよう。

☆中華人民共和国

 立ち上がれ! 奴隷になりたくない人々よ!
 われたの血と肉でもって築こう、われらの新しい長城を!
 中華民族は、最大の危機に直面し、一人一人が最後の雄たけびをあげる時だ。
 起て! 起て! 起て! われら皆の心を1つにして、
 敵の砲火をついて前進しよう! 敵の砲火をついて前進しよう! 前へ! 前へ! 前へ!

考察:「奴隷になりたくない人々よ」とは同時の支那人が西欧諸国に奴隷化させられていたことを伺わせる。欧米の国家には「奴隷になりたくない人々よ」との台詞はない。細かい点だが建国当時がしのばれる。戦争で戦おう!という鼓舞の歌であることは言うまでもない。この点は欧米と共通する。また、国歌は中華民族のための歌である。満州民族や朝鮮民族などが入るのかどうかは疑問を持った。この点は民族という視点での切り取であり、民族主義の肯定の視線が読み取れる。
 ①奴隷からの脱出 ②戦争での鼓舞 ③民族主義の肯定視点

 以上が各国の国家の意味です。他の国家の意味をお知りになりたい方は、(株)ワニマガジン社刊 『世界の国歌』をどうぞ。講義では、オーストラリア連邦の国家も説明しました。


 国旗の意味

 国旗「日の丸(日章旗)」の意味を探って行きます。その前に歴史的事実を。「日の丸」が国旗になったのは、国歌と同じく明治時代です。源平合戦で那須与一が「日の丸」の描いてあった扇を弓で射たのは有名ですが、いつから使われていたのかは不明です。また、皇室の旗は平安時代には金と銀の日輪でした。長く使われてきた「日の丸」ですが、意味は国歌と同じく幾つかの説明が併存します。

 まず、「日の丸」は天照大御神を象徴すると言われます。これは単に太陽である=「日の丸」である、という意味だけでは捉えられない意味があります。

 1つは天照大御神が、日本人の皇祖(こうそ)であるからです。つまり、日本人は元を辿(たど)れば同じだよ、という意識を意味づけている点です。よく「話し合えば理解できるよ」というのは日本人だけだ、と言われます。その意識を形成した物語が込められています。
 もう1つは、天照大御神が「白地に赤」で表記されている点です。世界を見渡せば太陽は、黄色や白で表記されることも多いのです。教え子のネパール人に直接聞きました。また、太陽を光を付けて表すことも多々あるのです。実際、お祝いの時に使う「旭日旗(きょくじつき)」は、太陽から光が出ています。漁師さんが大漁の時などに使います。こうして観ると、国旗の意味を考えるには、以下の3点が重要になってきます。

①白地の意味
②赤の意味
③丸の意味

①白地の意味
 白は清き心、あるいは晴れの心を現すと言われます。お正月の時など、お祝いごとや大切な晴れの行事に白を使うのを想い浮かべてください。晴れ晴れとした澄み渡る心を意味しているのです。

②赤の意味
 赤は、明(あか)き心を意味すると考えます。『古事記』に、天照大御神と須佐之男命の「うけひ(受日)」の場面が出て来ます。須佐之男命が姉の天照大御神に「私は穢(けが)れた心がありませんよ」と示すために、新しい神を産んで示す「うけひ」をしたのです。その後で、「清き明(あか)き心」がある、との記述が出て来ます。つまり、
 赤とは、心の底から穢れ無き心を意味するのではないでしょうか。

③丸の意味
 丸、とは「角が立たない」という言葉がある通り、皆で違う点を強調して喧嘩をしない、という意味でしょう。これは聖徳太子に「和(やわらぎ)を以って貴しとなす」の意味に通じます。「丸く収める」という言葉もありました。英語やフランス語では「丸く収める」に「to bring a matter to an amicable settlement」と言うそうですが〈Weblio英和対訳辞書〉、これでは③丸の意味にはなりません。丸の形が平和を意味する、という前提がないのです。

 ①~③をまとめて見ると国旗の意味は

 「心の底から澄み切った真心で仲良くしましょう」

 という意味になります。
 私達が話し合いをする時、「相手の善意に期待する」というのは、国旗と国歌に込められた御先祖様の想いを素直に受け取っているからではないでしょうか。

 現在の日本が国際関係で根本的に躓(つまづ)くのは、「相手の善意に期待する」から、と言うのはよく言われる所です。御先祖様もさぞ苦労されたことでしょうが、それをも乗り越えて現在の日本があるのでしょう。この「相手の善意に期待する」が高潔な日本人の行動の原点にあることは、これまで述べてきた通りです。
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