講義録15 技術者倫理のまとめ 福島原発事故の教訓を現在でも活かせていない例 事実を見ていくと出てくる闇 理系の社会的リスク 武士道と公共心と倫理 民のかまど、日本の民主主義の出発点 ポーランドと日本の親交の物語 国歌の意味 各国の国歌の意味 国旗の意味 皇室という倫理の淵源(えんげん) 

 皆様、こんにちは。

 大暑を迎え、空気が一段と濃密になりました。室内にいると空気中の湿度がそのまま汗になるかのような感覚を持ちます。8月7日に秋が現れるまで、夏を楽しめます。ソーメンや冷やしうどん、熱々のラーメンも良いですね。先週末、静岡市を流れる安倍川の河川敷で、軽いジョギングをしました。30分ほどで大汗をかきましたが、帰ってシャワーを浴びて、クーラーの入った部屋でごろん、と寝っ転がった時、至福を感じました。今年の夏は、火力発電所の再稼働などによって節電はほぼ必要なくなり、心置きなくクーラーを使えます。日本人の素晴らしい所は、一部の国民が困っている時に、皆が同じであるかのように痛みを感じられる所です。本日の講義ではそれらの淵源(えんげん)についてお話が出来るので、ワクワクしていました。その気持ちが夏バテを吹き飛ばしてくれ、充実した講義が出来ました。
 振り返れば、15回の講義でしたが、アッと言うまでした。まだまだ伝えたい内容がありました。昨年の講義内容に5~6割の内容でした。プリントも少なくしました。その意味でもっともっと講義をしたかったです。けれども、伝えたいメッセージを振り返ると20以上伝えられたと思います。もし半分でも覚えておいてくれれば充分です。終わった後に充実感があるという体験を学生の皆さんお陰ですることが出来ました。感謝しております。
 この暑い夏も1回1回を大切にして、生き切れば、充実感が訪れることでしょう。人生も同じではないでしょうか。死ぬ前にこの講義をやって良かった、と思えるのではないか、と感じています。話が広がりました。

 それでは本文に入ります。

 昨年の講義録15を元に述べていきます。

紹介し回覧した資料
『歴史の「いのち」』 占部賢志著 モラロジー研究所 平成20年 1700円+税
『理系白書-この国を静かに支える人たち-』 毎日新聞科学環境部 講談社 2003年 1500円+税

配布したプリントB4 2枚

1枚目
:宿題の模範解答4名分
宿題内容は、「科学技術者の倫理」 平成25年6月25日宿題
http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-288.html

2枚目
:「世界の国歌」 ワニマガジン社刊を引用しました。
:「ショパンの国ポーランドと大正日本 ●名もなき日本人たちによる孤児救出の物語」 158-161頁
『歴史の「いのち」』より抜粋

3枚目
:「ショパンの国ポーランドと大正日本 ●名もなき日本人たちによる孤児救出の物語」 164-169頁
『歴史の「いのち」』より抜粋 2枚目と合わせて全文。


 --講義内容--

 要点は以下の通りです。

 技術者倫理のまとめ

①客観的事実を観ると闇が出てくる→感情に惑わされ嫌悪や絶望で留まらず、学問の持つ公平さが大切にする→新しい視点や解決策が見えてくる

②倫理の淵源(えんげん)は、歴史や文化にある→歴史や文化を知ることが大切→皇室が大切にしてきた文化や歴史を知る

 
 最初に、これまでのプリントを返却しました。14回(5回分は前回)+宿題2回分=16回分 約220名×出席率90%=約200名。16×200=3200回分です。ちなみに宿題の1回分は3枚ですので、18×200で3600枚です。学生の皆さんが協力してくれ、講義の冒頭10分から15分で返却できました。最後の5分は、私の出席確認一覧表を回して、出席しているのにチェックされていない学生さんが申し出てくれました。約15名も漏れがありました。申し訳なかったです。

 次に、宿題を出してくれた内の素晴らしい内容、4名分をプリントで確認してもらいました。それぞれ素晴らしいものでした。下に概略を書きます。

Aさんは、「予見可能」から福島原発事故の技術的要因を書きあげてくれました。内容も良くまとまっていましたし、当時の「想定外」や「天災」などの言葉を「予見可能」から捉えてありました。

Bさんは、「本質安全」「制御安全」「注意安全」と分けて、圧力抑制プールや冷却機能喪失、原子力政策の規制側と推進側が同じ役所にある点などを整理して述べてくれました。その上で、木村逸郎先生の意見を引用しながら、法改正や機器改善などについて提言をしてありました。

Cさんは、原発に電力を供給していた6系統の送電線のうち鉄塔が倒れた点に注目し、爆発などをした1~4号機だけではなく5,6号機の外部電源喪失を上げてくれました。次に東京電力の公式見解で「倒壊した受電鉄塔は津波が及ばなかった場所にあったことを認めた」と肯定側からのデータを上げてくれました。(高木補足:東京電力ではなく原子力安全・保安院かもしれません。) さらに幾つかの技術的な重要な点を上げてくれました。

Dさんは、日本だけが国際標準の5層の防御を3層までしか対策を取らないにも関わらず、先送りをしてきたことを上げてくれ、さらに自分の考察を深めてくれました。住民の安全保護を今後の課題にしなければならない、としました。事実や論拠などの整理もきちんと出来ていてまとまっていました。

 私は、それぞれに言葉を足しました。例えばDさんの言う「住民の安全保護」ですが、東日本大震災を経て2年半経っても充分ではありません。全く進んでいない、と言っても過言ではありません。学生の皆さんに聞いてみました。

「浜岡原発には使用済み核燃料があります。停止中でも漏れ出す可能性がありますが、では東海地震の際の避難訓練をしていますか?」

「次に、東海地震の震度、いくつが来たらこの大学の場所では避難しなければならないか知っていますか?」

 学生の皆さんに聞くと「地震の避難訓練はしているが、原発の避難訓練はしていない」と「震度いくつかはしらない」と答えてくれました。昨年度、他の大学で聞いてみた所「いや~避難計画作らないといけないんだけどねぇ・・・」で終わりでした。

 つまり、現在でも住民の安全保護は、なにも進んでいない=福島原発の教訓を生かしていない、ということなのです。

 福島原発では最大震度マグニチュード9でした。最初はマグニチュード7~8と報じられました。そして現在30キロ圏内(学術的には同心円は間違いですが)に住居制限地区があります。そして福島原発はマグニチュード6でした。つまり、

「東海地震のマグニチュード6が起これば、30キロ圏内の住民は直ぐに避難しなければならない」

という教訓を福島原発事故から得られたのです。どのように住民が逃げるか、という計画をしなければならないでしょうし、住民に周知徹底することが必要です。ニューヨーク近くには原発がありますが、マグニチュード幾つならこの地区は避難しなければならない。原発で火災が起これば・・・という避難計画と周知徹底が行われています。さらに、10キロ圏内、あるいは5キロ圏内の家には水溶性のヨウ素剤を配布しておかなければなりません。福島で要素による甲状腺がんの疑いが通常時より高いというデータが国内の調査、国際機関の調査でも出ているからです。しかし、配布はされていないのが現状です。
 このように福島原発事故の教訓、特に東京電力と日本国政府が「絶対事故は起こしません、原発ですから」と言ってきたのは嘘であった、という教訓を、現在でも活かせていないのです。事実をきちんとある観点から観ていくと闇が見えて来ます。ここで感情に走ってしまい「だから、官僚はダメだ。電力会社は人間の心がない。政治家は汚い。全員死ね」と言ってはなりません。どのような事実であっても深く知って行けば行くほど、闇は見えてくるものです。そして日常生活では、この闇を見ないようにして生活していっているのです。

古代ローマの繁栄を決定づけたユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)は、

 「人間は、自分が信じたいと望むことを喜んで信じるものである」

 という言葉があります。
以下のサイトに詳しい解説があります。http://www.kitashirakawa.jp/taro/latin25.html

 事実を客観的に見続けていくと、自分か信じたいと望むことが徐々に剥(は)がれてくるのです。例えば「東京電力が大きい会社だからしっかりやってくれるはずだ」、「日本の政府がウソとつくはずがない」、「あの人は家族同然だから悪いようにはしない」などなどです。そのウソが剥がれたのが、福島原発事故ではないでしょうか。政府の調査委員会でも、もちろん国会事故調でも「人災」が原因である、とはっきり書いてあります。先ほどの3つの「」の中は、自分が信じたいと望むことだったのです。静岡県に住む皆さんは、「国や政府が原発対策きちんとしてくれているはずだ」や「やるのが仕事なんだから当然だろう」などと思っていないでしょうか。そう考えれば考える程、「闇」が客観的に観ることで見えてきた時、「裏切られた」や「嫌悪」や「不信」が出てくるのです。

 実はそこが学問の出発点なのです。知の独立性を持つ学問こそが公平に考えることが出来るのです。

 恋人でもそうではないでしょうか。付き合うまでは相手の良い所しか見えませんが、つまり、自分が信じたいと望むことを喜んで信じているのです。付き合ってみると、相手の食事の仕方が気になる。お金の使い方が気になる。掃除しないのが気になるなどなど、客観的に観ると嫌悪が出てきます。それを「好きだから何でもいい」と「嫌悪」を覆ってしまうことも出来ます。しかし、後でドカーン!!と溜まって出てこないでしょうか。
 家族もそうでしょう。小さい時は親が世界一で格好良く見えたものです。しかし、小学校高学年から高校生くらいになると他の大人と比較して自分の親の欠点や情けない所が見えてきます。その時に自分の内面的成長も重なって親への嫌悪が出てくるのです。その嫌悪が出てくるのは思春期でも当然のことですし、それがなければ子供は大人になっていけないのです。
 学問における成長も同じでしょう。知識だけを暗記するだけでは学問とは言えません。ましてや大学や社会で通じません。必ず内面的成長と共に闇や嫌悪が出てきます。それを受け止めた時、質的な成長が現れることでしょう。
 現在、学生の皆さんにとっての就職も、現在は良い点ばかりが見えているかもしれませんが、実際に働きだして事実を客観的に見続けていくと闇や嫌悪が見えてきます。どの会社でも必ず問題があり、触れないようにしている部分があります。また、会社の将来性や仕事の面白さ、人間関係などに嫌悪することでしょう。そこで、「金もらうだけだからから、私は「闇」は見たくない。しらない。」という態度を取れば、仕事が出来ない人になります。日本社会は仕事の結果を出すには、人格的成長が不可欠と考えられています。この辺は一昨年度の講義録15~講義録15-3にあります。

・講義録15「倫理は統一かそれぞれか 工学的倫理の可能性と限界 個人主義と集団主義 法治主義と人治主義 原発と地球温暖化説の共通点 技術とは」 http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-67.html
・講義録15-1「個人主義と集団主義」 http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-68.html
・講義録15ー2「法治主義と人治主義」 http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-70.html 
・講義録15-3「日本の倫理 「法治主義」と「人治主義」の中間」 http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-71.html

 素晴らしい学生の宿題で、こうした解説に届くことが出来ました。

 最後に皆さんにお考え頂きたいのは以下の点です。

☆「世界一厳しい」と誇る原子力規制員会は、住民の安全保護を「原発再稼働」の基準に入れているでしょうか?






スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

    名前:高木健治郎

書いたもの(平成29年度)
哲学(平成28年度)
科学技術者の倫理(平成28年度)
書いたもの(平成28年)
科学技術者の倫理(平成27年度)
哲学(平成27年度)
書いたもの(平成27年)
哲学(平成26年度)
「科学技術者の倫理(平成26年度)
講義録「哲学」
書いたもの(平成26年)
書いたもの(平成25年)
論文(高木健治郎の)
講義録「科学技術者の倫理」(平成25年度)
高木ゼミ『銃・病原菌・鉄』
高木ゼミ全6回『ぼくらの祖国』
教養講座6回分(平成24年度)   講義録21~
講義録「科学技術者の倫理」(平成24年度)     講義録1~15
最新記事
講義録「科学技術者の倫理」(平成23年度)
石上国語教室で行われた講演のレジュメです。哲学が足りなかったのが、福島原発事故の原因の1つではないか、と考えています。

「哲学のススメ2」レジュメ

最新コメント
カテゴリ