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講義録14-2 原発の実値計算

 前回は、「原発が高いから電力会社が推進する理由と特徴」を挙げました。

 総括原価方式は「電気事業法」と「一般電気事業供給約款料金算定規則」によって支えられ、

・高い方が電力会社が儲かる

・「停止中」=「建設中」=「運転中」の全てで儲かる

 という一般社会のビジネスと違う点を挙げました。私たち日本国民は美しき誤解によって原発に関する情報が錯綜していますが、法律に基づいて考えてみると、意外とすんなり行くものです。電力会社が最も(潜在的な)損をするのは「廃炉」なのです。原発反対!で「運転停止」であろうと、「運転中」であろうと電力会社は儲かる仕組みなのです。

 では、原子力発電が経済的に優れていない、つまり、原発が高いとされる根拠を示しながら技術者倫理の目的である「公衆の福利」を考えていきます。

 前の講義録14-1で引用した文章(『原子力発電の諸問題』20P)の上には、原発当初からの総括原価方式に基づかない計算が示されています。

 「(水力発電は殆ど黒字、火力発電は1970年代の燃油代上昇で赤字もある) これに対して日本原電は、毎年70%前後の高い設備利用率を誇る3基の原発を持つにもかかわらず、経営実績は著しく悪い。1957年の操業開始以来79年度に至る20数年間に累積赤字が一度も消えなかった。敦賀での事故隠しにより80年度には初めて黒字に転じたが、その直後に事故隠しが発覚し、81年度決算では大幅な赤字に転落した、」

 日本原電は、1957年に正力松太郎が「原発は民間で推進すべき」として作った会社です。東海村に日本発の商用原発を作るなど、日本の原発をリードしてきた会社です。現在は、3基の原発を持ち8500億円の資産を持つ巨大な会社です。海外に原発を輸出をしています。
 http://www.japc.co.jp/company/index.html
 後述しますが、平成23年度(24年度3月決算)の平均稼働率は4.6%ですが、発電量に関係なく同じ代金を受け取れる「定額制」のため、営業利益は89億円の黒字です。
http://www.japc.co.jp/news/press/2012/pdf/240525_1.pdf

 このように日本の原発を民間リードしてきた日本原電は、20年以上赤字で、しかも事故隠しによって黒字になるという赤字体質を逆に露呈してしまいました。一般社会では20年以上も累積赤字が消えない場合は、親会社から整理や倒産を求められますが、親会社である9つの電力会社(東京電力など)が必ず黒字になる構造なので支えられてきたと考えます。総括原価方式がここでも間接的に効いています。設備稼働率70%でも赤字というのは原発が全体として赤字である、という1つの証左になります。

 もう1つ原発が全体として高い、という証左を、電力自由化したアメリカの例で見てみます。
というのも総括原価方式がある限り、一般社会のビジネスが通じないからです。一般社会のビジネスを見るためには、電力自由化がされている(もちろん欠点もあります)アメリカの例が最適なのです。

 アメリカはスリーマイル島の事故以来、原発停止へと向かいました。それは情報公開と電力自由化によるものです。2012年オバマ大統領によって新しい原発建設に向かいました。

『アメリカ原子力産業の展開 : 電力をめぐる百年の抗争と90年代の展望 』 R.ルドルフ, S.リドレー著 岩城淳子 [ほか] 訳 御茶の水書房, 1991年 6,7Pを要約します。

「1968年に始まった原発5基建設は1970年代後半に建設費が高騰した。見積額が40億ドルから順々に240億ドルまで上がり、電気料金は2倍から4倍になった。そこで2基を撤回したが、6倍から9倍になっていくのである。」

 つまり、原発は他の火力発電などと比較した場合、明らかに高い、という結論がアメリカで出ている証左になる。日本ではアメリカはスリーマイル島の事故以来原発の熱が冷めた、という説がちらほら見えるが、実は経営的に高いから、という理由が大きいと考えられる。総括原価方式で「高いから儲かる」という構造になっている日本が原発を推進してきたのも、同じく「原発が高い」を示しているのではないだろうか。関西電力の株主総会で「原発を止めれば数千億円の損が出る」と述べたのも証左の1つであろう(どのような計算方式であるか1次資料が調べられなかった)。

 このような「原発は高い」から、電力会社は既得権益となり「原子力ムラ」を形成していったと考える。それが単純に悪いと切り捨てることが出来ないのは、「技術が社会背景と相補的(講義録9-2)」と考えるからである。大量の資金が安定的に使用できる環境で日本の原発技術は世界トップレベルになったのである。このように善悪ではなく、原発の構造をさらに述べていく。

 それでは、日本政府や電力会社は、「原発全体では高い」→「原発発電時は安い」と主張をずらした。では、次に発電時に限って原発を経済的に見ていきたい。
 次は、「発電時で」原発が高い根拠を見ていきます。

 原発導入の歴史を振り返れば、アメリカ支配という国際政治が決定的であったこと、日本も潜在的核武装をしたいこと、そして発電業界が既得権益化していったことが上げられます。その中で、技術、あるいは経営として原発を-トータル-で高い、ことは先ほど述べた通りです。原発の民間部門をリードしてきた日本原電が赤字になると、原発全体が非難にさられてます。その中で、「発電時で」という大幅なすり替えが行われました。このすり替えは、現在太陽光発電でも行われています。

 「ソーラーパネルによる太陽光発電は10年、20年で元が取れる」→「太陽光発電は自然に優しい」

 この大ウソが判るでしょうか。

 ソーラーパネルは当然、半導体で光エネルギーを電気エネルギーに変換します。それは「発電時で」の話だけです。半導体は製造する段階で環境を汚染します。ヒ素を使うと安いソーラーパネルが出来ますが、製造時と廃棄時に環境を汚染します。つまり、「トータルで」自然に優しい、という言葉を意図的に隠しているのです。このようなすり替えが、太陽光発電で行われています。同様に風力発電も同じです。建設時と使用期限、廃棄時の環境負荷を含めずに「発電時で」考える、というのは、高木を一種の詐欺的なすり替えと考えます。

 これと同じことが、当然原子力発電でも行われています。

 「原子力発電では発電時に火力発電などよりも優しい」

 「原子力発電では発電時に二酸化炭素を出さないから環境に優しい」

 どちらも、「トータルで」を「発電時で」に置き換える手法です。まず、原子力発電は「廃棄時」のコストがどれだけ掛かるのか判りません。というのも方法が決まっていないからです。最終処分場がない、からです。これでは費用がどれほど関わるか判りません。であるからして電力会社は儲かる、のは言うまでもありません。どれだけ掛かるか判らないけど、費用がかかれば儲かる、あるいは保証されるのが、講義録14-1で述べた「総括原価方式」でした。電力会社は1万年はつぶれないでしょう。原発が出す核廃棄物は10万年~1万年くらい管理が必要と言われていますから。

 それでも、「発電時で」安い、というデータを検証してみましょう。

ポイントは2点です。

1)モデル計算ではなく実績計算(ちょっと高くなる)

2)実績計算に実際の費用を含める(含めると大分高くなる)

 これまでも述べてきたように、肯定側のデータから引用して「公平さ」を担保したいと思います。配布プリント:1枚目 (表)

・「有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価(松尾雄司氏資料)」 第35回原子力委員会定例会議 平成23年9月13日 5,6P
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo35/siryo3-1.pdf

 原子力委員会は内閣府にある「原子力を推進する担当部署」です。この定例会議に発電時の計算の資料があり、引用します。
 
 資料2P抜粋 「試算の概要(1)」
・ 電源別の発電コスト推計方法には、モデルプラントによる方法と有価証券報告書による 方法がある。

 資料3P抜粋 「発電コストの評価方法」
・モデルによる方法-概要-電源ごとにモデルプラントを想定し、適切な建設単価・燃料費・運転維持費・割引率等を想定して、kWh当りの発電コストを試算。(コスト等検討小委員会(2004)など)
・有価証券報告書による方法-概要-電力各社が公開する有価証券報告書(財務諸表)の中に記載のある情報(水力・火力・原子力別の営業費用、固定資産など)から各年度において実績値としての発電コストを評価。{電中研(1999),大島(2010)}

 これまでの「発電時で」というのは、モデル計算だったのです。そしてモデル計算は、想定に基づいた計算方法であり、計算方法や採用データをいじることが出来、安くすることが可能なのです。次に「二酸化炭素による地球温暖化モデル」で具体的に説明します。
 対して、有価証券報告書は罰則規定があり、虚偽データの出にくいデータが出ている可能性が高いのです。この有価証券報告書を元にして、立命館大学・大島堅一教授は計算をしました。以下の結論が出て来ます。

①※ 1970年~2007年平均の発電単価は、原子力8.64円/kWh、火力9.80円/kWh、水力7.08円/kWh、
水力(揚水除く)3.88円/kWh、原子力+揚水10.13円/kWh。

②※ 更に、「開発単価」(原子力について1.64円/kWh)、「立地単価」(同0.41円/kWh)を加算。
原子力で10.68円/kWh、原子力+揚水で12.23円/kWhとなり、1970~2007年平均で原子力が最も高くなると結論。

 つまり、開発費と立地単価を入れ実際に原子力のサブシステム揚水発電を入れるとと、

☆火力発電  9.80円/kWh
☆原子力+揚水12.23円/kWh

 ポイントは、発電所での発電量ではなく、実際に家庭などに売った発電量という点です。原発は大都市から遠く電力ロスが結構あるのです。また、火力発電コストを下回ったのは1970年台後半でそれ以前、つまり開始から10年以上はダントツに高かった点、現在は火力発電と発電時はそろってきた、という点です。ただし、揚水を除く水力発電は3.88円/kWhと安いです。詳しくは、『再生可能エネルギーの政治経済学』 大島堅一著 東洋経済新報社をどうぞ。また、要点は以下で観れます。「原発の本当のコスト─公表データから見えてくるもの─」立命館大学国際関係学部大島堅一
http://www.foejapan.org/infomation/news/110419_o.pdf

 実績で計算し、さらに使われている税金を入れると、明らかに原発の方が高くなります。
 これに対してモデル計算している「資源エネルギー庁/総合エネルギー調査会による発電コストの試算値」では、

・火力発電10.7円/kWh
・原子力 5.9円/kWh

 となっています。さて、大島教授が明らかにしたのは、ポイントの2点です。繰り返しましょう。

1)モデル計算ではなく実績計算(ちょっと高くなる)

2)実績計算に実際の費用を含める(含めると大分高くなる)

 です。では税金などは何に使われているのでしょうか?原発だけが極めて高い6000億円を超えるのですが。例えば静岡県に浜岡原発がありますが、地元に立派な道路や図書館が作られました。これは原発による地域交付金差別だと考えますが、実態としてあります。青森県六ケ所村では、「文化交流プラザ スワニー」が30億円以上の交付金、福井県敦賀市には温泉を作って「きらめき温泉リラ・ポート」に24億円以上が出ています。
「文化交流プラザ スワニー」:http://www.jomon.ne.jp/~pulaza97/
「きらめき温泉リラ・ポート」:http://www.relaport.com/

 また、ある国会議員がその他のコストについて問い合わせた所、経済産業省や電力会社からデータが公開されていません。福島原発事故以後でも変わらないそうです。つまり、実は、大島先生のデータ以上に高くなる可能性がある、ということです。

☆原発の「発電時で」のコストは、12.23円/kWhになる可能性がある

 のです。さらに、今回の福島原発事故を含めて考えてみましょう。

       発電時 + 開発費や税金 + 最終処分費 +事故対策費  = トータル
☆火力発電  9.8円 + 0.12円    +   0.1円?+0.1円?   =10円?

☆原子力発電10.13円 + 2.0円     +    X  + Y      =12円+X円+Y円

 このX円が1基19兆円以上、Y円が福島原発事故の処理費で20兆円以上になります。1人当たり40万円以上です。発電単価がどの程度になるか判りませんが、X円、Y円が今度どれだけ膨らむかも判りません。

19兆円は「総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会(2004)「バックエンド事業全般にわ
たるコスト構造、原子力発電全体の収益性の分析・評価」」からです。

 以上の計算からすると、「発電時で」という条件をつけても原発が安い、ということは出来ないのです。主張するためには、「モデル計算にすること」と「税金等の関連費を削除」と「最終処分費を削除」と「事故対策費を削除」と「補助システムである揚水発電を削除」などがつかなければなりません。

 ちなみに、「事故対策費を削除」は、法的に支えられていました。つまり、「Y円=0円にする」という法律がありました。原子力損害賠償法(原賠法)では、現在「1基当たり100億円(現在1200億円)を超える分の賠償を政府援助による」としています。
配布プリント 1枚目(裏)『原子力発電の諸問題』21Pと「原子力損害の賠償に関する法律」です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html

 政府援助とは、つまり税金から支払われます。今回東京電力に3兆円近い資金が日本政府から援助されていますがそれも全て税金からです。電力料金も上がりますが、1人当たり3万円の税金が投入されることとなりました。実態としては、「電力会社の失敗を国民が支払い、しかも節電などの不利益を被る」という構図は変わりません。

 他方、電力会社から観てみましょう。
 日本国政府が国際政治という理由で採算性の合わない原子力発電を押しつけてきました。民間企業は儲けを出すのが目的の集団です。しかし、いくら頑張っても儲けが増えない、という構図を押しつけられました。独占と必ず利益が出る、という構造を押しつけられた中で、組織が腐敗するのを止めるのは困難なのではないでしょうか。社員がやる気を失ったり権威的になったりするのを止めるのは不可能なのではないでしょうか。であるから、給与を高くして社員のモラルを保ってきたのでしょう。それに、1200億円を超える保証については日本国政府が援助する、と法律で約束していたのに、今回の政府はその法律を遵守しませんでした。それであるのにも関わらず電力会社は一方的に非難され続けています。

 どうでしょうか。高木の推測が多分に入っていますが、電力会社が自らの経営判断として原子力発電を導入していない点に、企業努力で儲けが出ない構図だった点に留意して下さい。そうすると一方的に悪い、と報道されがちな電力会社を、一方的に非難するのは偏っているのではないでしょうか。

 また、原子力発電はコストが非常に高かったのですが、それを「発電時で」だけでも、火力発電と同等に引き下げてきた電力会社の企業努力、技術革新等に気がつくのではないでしょうか。データの偽造やデータ隠しなどの可能性は否定できませんが、少なくとも火力発電の2倍程度に抑えてきたのではないでしょうか。もちろん、それには廃棄費用や事故対策は日本国政府が主導する、という前提を含めてなのですが。

(平成25年度加筆)

 他方、原子力発電は12円+X円で、火力発電は10円です。この値はむしろ原発を推進する理由にもなります。数円のコストならばエネルギーの安定供給という視点からは十分肯定されると考えられます。例えば太陽光発電は42円(下げられましたが)でしたから、「原発を太陽光に」という主張は実測値を無視した主張に過ぎません。
 もちろん、日本の自前の資源メタンハイドレートやガス・コンバインドサイクル方式は原発よりも安全保障上の問題も少なく、さらに低コストの場合もあります。

 現在の原発再稼働の論じられ方を、あるいは報じられ方を観るに、こうした実測値の計算に基づく主張が、多くの場合行われていないことに危さを感じてしまいます。それは倫理絶対主義の危うさであり、原発問題を米ソ冷戦構造という政治的主張だけで考えてしった危うさです。福島原発事故から学ぶ、ということは、こうした政治的主張だけで原発問題を考えてしまう危うさを認識することから始まるのではないでしょうか。

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