講義録13 原発停止側から推進理由を見つける 自動車事故のデータに2つの考え方 失敗利益額と失敗損失額 組織的原因と官僚制とその克服方法 

 皆様、こんにちは。

 ムワッと熱気がやってきました。週末の土曜日、7月6日のことです。小暑(しょうしょ)が7月7日でしたから、ぴったりでした。強い日差しと共に梅雨明けを迎えるのが小暑、とありますが、その説明通りの天気になりました。熱中症が急激に増えていく季節です。皆様お気をつけ下さい。また、蓮の花が咲き始める頃でもあります。家の側に大きな蓮の池がありますので、見に行きたいと思います。夕暮れに気品あふれる蓮の花を眼に移すのは、想像するだけで嬉しくなってきます。
 とはいえ、この季節は体調を崩される方も多い季節でもあります。そして悲しい訃報は耳に入りました。福島第一原発事故当時の所長であった吉田昌郎氏が亡くなられました。謹んでお悔やみ申し上げます。親交のあった青山繁晴氏は吉田氏のメールを公開し、世のため人にために生きたい、という志が書いてありました。私も続きたい、と深く心に刻みました。祖国日本は、多くの人々が命を掛けて守って来てくれました。それは過去の話ではなく、現在も続いていることを実感したのが吉田所長が、海水注入を止めようとする東電本社の指示を独断で継続させ、福島原発事故災害の拡大を食い止めましたことです。素晴らしい日本人が居たことを胸に今後も頑張って行きたいです。

付記:福島原発は現在も「仮設」の防潮堤のままです。配電設備も「仮設」です。
付記:内閣府に「吉田氏の顕彰をお願いします」と意見投稿しました。

 それでは本文に入ります。

 昨年の講義録13を元に述べていきます。

紹介し回覧したた資料
 『失敗百選 : 41の原因から未来の失敗を予測する』 中尾 政之著 森北出版 2011年(大学所蔵は2005年:講義参考図書)
 『~放射能と共に暮らすために~ 地域安心マップ』 静岡放射能汚染測定室・他環境資料測定 健やかな命を実現するスペース“プラムフィールド”・静岡放射能汚染測定室 代表:馬場利子 2013年6月 600円

紹介した資料
 『自動車事故の科学 こうすれば事故をなくすことができる』 林 洋著 大河出版 1994年

配布したプリントB4 2枚

 1枚目
 :『~放射能と共に暮らすために~ 地域安心マップ』
  5頁:松葉による静岡県内の放射能調査結果
 21頁:静岡県磐田市 試料採取一覧表
 22頁:静岡県磐田市 マップとセシウム合計濃度

 :『失敗百選 : 41の原因から未来の失敗を予測する』
 まえがき ⅷ,ⅸ

 2枚目
 :『失敗百選 : 41の原因から未来の失敗を予測する』 
 14,15頁:41の失敗の原因一覧表
 38,39頁:失敗利益額と失敗損失額のグラフ
 338-341頁:原子力船「むつ」の放射線漏れ:失敗の原因39 企画変更の無作為


 --講義内容--

 宿題の提出日でした。皆さんがきちんと調べてきてくれたことが、直ぐに察せられる厚さがありました。内容の検討にはまだ入っていませんが楽しみです。200名の宿題と本日のレポートを合わせると30センチを超えました。
 さて、今日の講義ですが、原発停止側の資料から推進理由を探してみよう、という試みです。これは前回の、原発推進側の資料から停止理由(リスク)を探してみよう、と対になっています。この両方を合わせて考えてみて、あなた自身の考え方が出てくる、というのが講義を貫くテーマです。単語でまとめると「公平」です。
 また、今回の資料は、普通の主婦の方が始められたグループが出されている資料です。しかし、測定の機器、レベルなどは秀でています。私は、代表の馬場利子さんと顔見知りですが、このような科学的にきちんとした資料を提出される点に、日本人の誇りを感じています。福島原発事故後、主婦の方々が関東地方を中心に自分たちの住む場所を計測しましたが、一般の人々の知的水準の高さに驚きました。そしてそれが国会を行政を動かしていったのです。その動きの中でも、静岡放射能汚染測定室にある機器は群を抜いています。
 詳しくは、静岡放射能測定室のHPを
http://sokuteisitu.plumfield9905.jp/

 プリント1枚目:『~放射能と共に暮らすために~ 地域安心マップ』 5頁:松葉による静岡県内の放射能調査結果を見てもらいました。
 静岡県下の測定データが載っています。東は熱海や駿東郡小山町から富士宮市、静岡市まだ御前崎、西は湖西市、浜松市北区三ケ日までです。監修・測定は京都大学大学院工学研究科原子核工学の河野益近氏です。河野氏に直接お会いしてお伺いしたのは、松葉を使うのは毎年新しくなっており、しかも計測データがとり易く、かつ広範に観られるからだそうです。まさに、科学的知見に基づいています。
 私の住んでいる静岡市葵区を見てみましょう。

【168】推定値 
 50.2(’10年葉) 
 1.9(’11年葉)

 とあります。
上の【168】はチェルノブイリ事故後の測定における推計最大値を示しています。
私は放射能汚染測定室の公平なデータの扱いに驚くとともに知的態度を尊敬しました。もし、放射能汚染特定室が、ソ連の手先で単に「原発はアメリカ支配だから反対」と主張するだけなら、【168】の値は表記しなかったでしょう。私がどこからか入手しなければならなかったでしょう。放射能汚染測定室は、自らの頭で考え科学的手順を踏んで行こうとする態度を大切にしているのが伝わってきました。なぜならば、測定結果は

「静岡県では、チェルノブイリの方が被曝していました」
「静岡県での、福島原発の汚染は心配する必要がありません」

 をはっきりと示しているからです。
ちなみに、50.2などの単位はベクレルです。チェルノブイリ事故のあったベラルーシでは厳しい基準で「飲料水2ベクレル・野菜40ベクレル・牛乳100ベクレル」です。日本では厳しくなって「飲料水10ベクレル・野菜(一般食品)100ベクレル・牛乳50ベクレル」です。また、野菜等は土から何分の一かで吸収します。
政府広報オンライン:http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201204/3.html

 学生の皆さんに自分の住んでいる場所の土壌汚染を見てもらうために冊子を回覧してもらいました。
 冒頭の日本全国の汚染状況がありますが、静岡県は1000ベクレルを超える関東地方の各県とは異なり、汚染が軽度です。その中でも、注目すべき点が計測結果から読み取れます。

 磐田市ではスポット汚染が計測されていました。
 磐田市壱貫地(いっかんじ)168-1にある公園では3か所の採取を行い、セシウム合計「6.3」、「37.2」、「181.9」という結果が出ています。20か所に及ぶ磐田市の計測データの中で最低値と最高値が1箇所で出ているのです。このように一部だけが高い汚染があることをスポット汚染と言います。
 放射能汚染測定室では磐田市に問い合わせをし、「国の除染基準が8000ベクレルだから何もする必要がない」との回答を載せています。

 以上の結果から、福島原発事故では放射性物質が福島県内と海洋の大量に流出しましたが、チェルノブイリよりも約3分の1以下であり、しかも11年にはさらに5分の1以下になっていることが分かります。これらを合わせて考えると、福島原発事故での放射能汚染は軽度であったことが判ります。
 前回述べたように東日本大地震で原子炉は自動停止しました。その他、非常用装置は正常に作動しました。これらが放射能汚染を軽度に押しとどめた原因でしょう。さらに、その後の決死の作業が流出を少なくしました。自衛隊、警察、消防、作業員の皆様のお陰です。これらの教訓を今後に活かしていきたいと思います。

 そして、これらを想う時、吉田所長が海水注入を止めようとする東電本社の指示を独断で継続させたことを振り替えらざるを得ません。もし、吉田所長が東京電力の官僚体質に染まった幹部であったのなら、チェルノブイリ級の汚染に近づいていたことでしょう。福島を始め、日本全体がアベノミクスで景気回復を喜ぶ現在の事態に至ることは出来なかったでしょう。有り難う御座いました。

 次は、自動車事故のデータに2つの考え方です。

 
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資料を利用して下さり、ありがとうございます

ブログの講義録を拝読いたしました。
いつも、私たちの測定活動を一緒に支えて下さり、ありがとうございます。
安心マップの測定データを、引用して下さった文章を読み、私たちが続ける測定の意味を、また1つ、教えていただいた気がします。
2012年~2013年の地域の状態を記録する事は、時間の経過でしか、放射能を減らす事が出来ない現実を再確認し、その上で、放射性物質は移動している事を生活者として共有したいという願いで作ったマップです。
これからも、観察を続けたいと思っています。
今が最大の汚染状況である事を、真に願います。
いつもありがとうございます。

Re: 資料を利用して下さり、ありがとうございます

ご多忙の中、直ぐにご覧下しまして誠に有り難う御座います。

きちんとした科学的データをお示しくださり、学生の皆さんも高い意識で見てくれました。講義最後の学生の感想でも「素晴らしい人が居ることに驚いた」や「自分の身近なデータで真剣にみた」や「すごい!」などがありました。

講義中、このコメントも紹介致しました。特に
「今が最大の汚染状況である事を、真に願います。 」です。正にその通りだと紹介しました。また全体を通して日本のことを想い、謙虚な姿勢に感銘を受けた、との私の感想も付け加えました。

これまでも沢山のことをご教授下さり有り難う御座いました。
今後ともご活躍の程、願っております。


付記:返信が遅れましたこと申し訳ありませんでした。
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