講義録12-3 大飯原発再稼働の8つのリスクの解説

 2つの観点について述べましたので、次に8つのリスクにもう少し言葉を足していきます。
 8つのリスクをもう1度挙げます。

○1)運転継続のための二次評価を行っていない
○2)検査、データ分析、評価などの全てを関西電力が行っていて、国は報告を許諾するか拒否するかだけである
○3)どの値から安全とするかの基準がない
○4)最も数値の高い項目だけを列挙する
○5)柏崎刈谷の原発事故の教訓が生かされていない
○6)福島原発事故の教訓が生かされていない-①ベント弁がない
○7)福島原発事故の教訓が生かされていない-②免震重要等がない
○8)福島原発事故の教訓が生かされていない-③津波対策がない

 次に推進側の原発を再稼働するために提出された一次評価の資料を挙げます。この資料を足場として検討していきます。

 まず、「福島原発事故から得られた知見」が、大飯原発の安全性に関する総合評価の中にありますので(配布プリント1枚目)書き出してみます。

 「福島第一原子力発電所事故から得られた知見」

地震による影響
 1)地震発生により原子炉は正常に自動停止
 2)地すべりによる送電鉄塔の倒壊等により外部電源が喪失
◎3)非常用ディーゼル発電機は全て正常に自動起動
 4)原子炉の冷却に必要な機器は正常に作動

津波による影響
◎5)非常用ディーゼル発電機、配電盤、バッテリー等の重要な設備が被水
◎6)海水ポンプが損壊し、最終ヒートシンク喪失(原子炉冷却機能喪失)
◎7)全交流電源喪失(外部電源と非常用ディーゼル発電機が喪失)

 以上です。分かりやすくするために、1)~7)を割り振りました。 また、◎は対策が必要な箇所を示しています。3)、5)、6)、7)です。成功した点は1)、2)、4)です。続いて、これらの原因に対する、安全確保対策が書いてあります。

 【安全確保対策】

 7)全交流電源喪失(外部電源と非常用ディーゼル発電機が喪失)    ⇒ 7)-対策) プラント監視をするために必要な電源設備を確保
 6)海水ポンプが損壊し、最終ヒートシンク喪失(原子炉冷却機能喪失) ⇒ 6)-対策) 蒸気発生器への給水設備を確保
 5)重要機器の被水防止                      ⇒ 5)-対策) 建屋の浸水対策を実施

 以上です。
 ちなみに、1)、2)、4)は否定側では案外論じられることがありません。これも公平性から捉えると偏っていると言わざるを得ません。また、現在でも、福島原発事故対策を考える際の基礎的な知識として、正確に持っている人は少ないのではないでしょうか。現在でも原発の話をする時に、1)、2)、4)の話をすると「へー!?本当?」と驚かれることが多いのです。この辺りは次に述べます。

 それでは文頭に戻って、8つのリスクに行きましょう。

○1)運転継続のための二次評価を行っていない

 判りやすい例を挙げます。自動車は製品になる前に、試作車を作ります。この試作車を鈴鹿サーキットなどで試運転をしてデータを取り、安全性を確認します。確認できたら申請をして製品化し、販売します。大飯原発再稼働の1次評価しかない、というのは、この試作車を公道ではないサーキットで走行させていいよ、ということです。けれども、大飯原発再稼働は、安全性を確認しないで、公道で走らせてしまった、ということなのです。運転継続の評価が2次評価です。継続の評価がないのに発電までしてしまっているのです。日本国民の安全を守るべき内閣府原子力安全委員会(当時)、経済産業省の原子力安全・保安院は、それでも再稼働し発電させてしまいました。野田総理(当時)は、「私を信じてください」と言いました。関西電力で安全性の確認が取れていない理由は、「作業量が多いから」だそうです。マスコミもきちんとこの事実を報道したのかと言われれば、全体としては否定的であると私は捉えています。このような理由があり、安全性の確認の取れていない試作車が堂々と公道を走っている、というのが実情なのです。
 もちろん、この点には重大なリスクがあります。もう1点加えれば、きちんと説明を加えていない、というリスクもあります。前に述べた原子炉の沸騰水型と加圧水型の違いがありましたが、加圧水型の方が本質安全を備えています。ですから、大飯原発は福島原発1号炉よりも本質安全を保持している点が幾つかあるのです。しかし、それをきちんと発表しないのです。この点には「国民には原発のことなど判りはしない」などのパターナリズムが見え隠れします。これには関西全力が業界最大手の東京電力への非難を含みうる加圧水型の優位性を発表したくない、という業界内の組織的要因があるのかもしれません。そのように指摘する識者はいますが、私は推測の域を出ていません。
 官僚組織(原子力安全委員会、原子力安全保安院)、業界(関西電力)、政治家(野田首相)、マスコミがリスクを増大させている、と指摘しました。しかしながら、「技術が社会背景に依存すること」という技術倫理の視点から捉えると、この指摘は通常ありうる形態であることが判ります。どのような社会体制、どのような歴史文化を備えた国家であっても、技術への社会背景が介入することは広くみられます。ですから、この点をイデオロギーから全否定する批判ではなく、このことによって再発事故のリスクが高まっている点を検討する必要があるのです。

○2)検査、データ分析、評価などの全てを関西電力が行っていて、国は報告を許諾するか拒否するかだけである

 :原子力安全・保安院 「ストレステストの進捗状況(発電用原子炉)」H24.6.18    「添付 :東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた大飯発電所(3号機)の安全性に関する総合評価(一次評価)に係る報告書(概要)(PDF形式:1,116KB)」の全て。「添付資料1-1」と「添付資料1-2」

 この「添付資料1-1」の右上に「関西電力会社」とあり、その下に「添付資料1-1」とあるのです。

イ) 「1.はじめに(ストレステスト導入の経緯)」があります。その最後の2行を引用してみます。
「それ(前行より:国民・住民に十分な理解が得られていないので、新たな手続き、ルールで安全評価を実施すること)を受け、原子力安全・保安院は、平成23年7月22日に電力事業者に対し、福島第一原子力発電所事故を踏まえた、安全性に関する総合評価(ストレステスト)の指示を出しました。」

 よく見て下さい

 「原子力安全・保安院は、電力事業者に対し、安全性に関する総合評価(ストレステスト)の指示を出しました。」

 とあります。

 原子力政策では、主に原子力発電所関係では、これまで内部告発が多数あり、偽造データが数多く出て来ています。
 
 その根本的な原因は、「電力会社(事業者)が製造物の計画、検査、報告を担当している」という点です。

 この点からすれば、現在検討されている「原子力規制庁が出来るかどうか?」が問題ではありません。

☆「原子力規制庁が、実際に安全性を確認する、計画、検査、報告を担当するかどうか?」

 が問題なのです。
 バスの運転手さんに事故を起こしたバスの安全性を任せずに、バスを作った会社が国が責任をもって検査すべきなのです。そうしないと、データを偽装しても、電力会社に検査を任せるしかないから、何にもなりません。

 もう1つ構造的な問題は、電力会社が地域独占をしている、という点です。ですから、もし、電力会社がデータ偽装をしても、他に検査できないなら、しょうがない・・・もう1回任せるか、となってしまうのです。

 これは、技術者倫理の基本の1つである、情報公開と説明責任を危うくする要素の1つです。

 もちろん、他国の原子力発電は軍事利用に直結しており、全ての情報と説明責任を果たしているケースは高木の知る限りありません。他方、独占によって優位な地位を利用して、偽造データ事件の他にも多数の問題があります。

 最も近い例は、公正取引委員会(独立性の高い委員会)から、電力会社への注意が出ました。大飯原発事故ではなく、発電事業全体での注意です。

「東京電力株式会社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について 平成24年6月22日 公正取引委員会」
:http://www.jftc.go.jp/pressrelease/09.march/09033104-01-tenpu.pdf

「公正取引委員会は,東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)に対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,次のとおり,東京電力の行為は,同法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当し同法第19条の規定に違反する行為につながるおそれがあるとして,本日,次のとおり文書で注意を行った。」

 とあります。これは、

「適正な電力取引への指針 平成21年3月31日 公正取引委員会」
:http://www.jftc.go.jp/pressrelease/09.march/09033104-01-tenpu.pdf

 を受けています。この中で望ましい行為や禁止の行為などが挙げられています。しかし、東京電力はこれらを受け止めずに注意を受けました。

 高木は、大飯原発再稼働は、「電気が足りないから仕方がない」という考え方に反対です。それは、この注意にあるように、

☆「使える電気が増えるを、電力会社が邪魔をしている」

 のだからです。これは上の公正取引委員会の注意を根拠にしています。

 これも電力会社が独占をして優越的な地位を占めている1つの欠点です。もう1つ挙げたいのは、東京都の猪瀬副知事が近年発言して注目されているように、

☆「電力会社が、情報公開をしていない」

 からなのです。果たしてどのようなものが、電気料金に入っているのかが情報公開されていません。これらのように、電力会社は、送電線の独占や検査計画報告等の独占によって、情報公開や説明責任を欠いた企業になっているように考えます。長所と短所の是非はありますが、組織的問題として指摘します。

○3)どの値から安全とするかの基準がない

 ○2)でも述べましたが、安全基準の数値がありません。ですから、先ほどの資料では「安全性が何%上がった」と表記されています。本当に大切なのは、マグニチュード7が来ても平気、という数値基準なのです。
 極端な例ですが、マグニチュード3に耐えられます、という鉄塔があるとします。マグニチュード4まで耐えられるようにすると(エネルギーは約32倍)安全でしょうか? エネルギーは3200%も安全性が向上しました。では、安全でしょうか? どこからを安全とするか、技術者倫理の用語では「許容可能なリスクとするか」が定まっていない限り、安全とは言えないのです。

○4)最も数値の高い項目だけを列挙する

 さらに、リスクを増加させる行為があります。原発が数万の部品で数十の装置で構成されていますが、その内の1つの装置の耐震性が増しました、と述べていて他の個所の、全ての箇所の耐震性が向上したかどうか、について述べられていないのです。大切なのは、全体の耐震性です。これは鉄塔の耐震とも関係します。これまでは原子炉だけを考えてきたのですが、原子炉を含め外部の電源確保も含めた原発全体の耐震性を考えなければならないのに、一分の装置の耐震性だけを述べているのです。ここに手法としてのリスクも存在します。

○5)柏崎刈谷の原発事故の教訓が生かされていない-送電鉄塔の耐震対策がない
○6)福島原発事故の教訓が生かされていない-①ベント弁がない
○7)福島原発事故の教訓が生かされていない-②免震重要等がない
○8)福島原発事故の教訓が生かされていない-③津波対策がない

 以上は全てまとめて述べます。以下、平成24年度の講義録11-3からの抜粋です。

「津波」の項目

[約4倍(11.4m)を超える津波の高さに対しては、全ての冷却手段が喪失するとの評価結果となったが、今後、建屋への浸水防止効果を維持していくため保守点検を確実に実施すると共に、順次水密扉への取替えを行い、さらに信頼性を高めていくことにしている。]

 この文章も目を疑いました、最初。まず、「11.4m」を超えると全ての冷却手段が喪失するのです。福島原発事故は15mを超えています。浜岡原発の予想される津波は「11.4m」を超えています。どうして、大飯原発だけが、この状態で安全と言えるのでしょうか? この点も福島原発事故を踏まえていません。

☆「11.4m」で全ての冷却手段が喪失する ⇒津波の高さ対策が不十分である

 さらに、驚くのは「浸水防止効果を維持していくために保守点検を」です。
 福島原発事故の津波は、浸水ではありません。建物を一気に破壊する力を持っているのです。しかし、それが「保守点検」で安全が確保されるのでしょうか? 空から爆弾が落ちてくる時、皆さんの家では、「保守点検」をすれば安全が確保されるのでしょうか? それは夢物語でしかありません。少なくとも、技術者倫理で求められる本質安全が全く確保されていません。
 さらに、「順次水密扉への取替えを行い」です。現在でも「水密扉」ではないのです。建屋の中に津波が水だけでも入り込む可能性が書いてあるのです。原子炉の中の「全ての機器、配管等々は全て耐水性」なのでしょうか?

 どうして海辺に原発を作って、せめて原子炉建屋だけでも水密扉にしなかったのでしょうか?

☆現在も浸水防止効果の完全でない原子炉建屋でも安全 ⇒浸水防止効果が不十分である

☆海辺なのに水密扉ではない原子炉が安全である ⇒本質的な安全設計が出来ていない

 以上のような点で、ストレステストは安全基準を満たしているとは言い難いと考えます。

ただし、「電源確保の対応状況」と「水源確保の対応状況」の項目でソフト対策とし体制の確立や訓練の実施が行われています。上記に述べた本質安全は欠陥がありますが、制御安全は対策が取られています。この点について高木は、講義録「「技術倫理」から「関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働を決定」を考える」
http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-149.html
  
 で
「福島原発事故の事故原因の特定がされていないのが明らかです。細かい点を述べますと、A)全電源喪失時の訓練を行っているのか? B)電源車配備の手順と作業員の配置場所、常時予備の作業員はどのようになっているのか? などがあります。そして決定的なのは、」
 と書いています。この点、高木の資料読み込み不足でした。お詫びと合わせて訂正致します。本文にも平成24年6月26日午前1時42分記入しました。

 以上がストレステストの問題です。

 次に、ストレステストと福島原発事故です。

 まず、肯定側の原子力安全・保安院のデータを使うと、安全確保となっています。ただし、ストレステストは2次評価まであり、その1次評価しか出ていない、という根本的な欠陥はあります。この欠陥を補ったのが、日本国政府の野田総理です。

 次に、否定側から原子力安全・保安院のデータを使うと、以下の点が福島原発事故を踏まえていません。講義録11-1の分は抜きます。

①福島原発事故で大活躍している免新重要等がない

②福島原発事故で備え付けられていたベントがない

③津波を弱めた堤防と原子炉の間の設備がない

④福島原子力事故災害が30kmに及ぶのに防災指針が決まっていない(避難訓練やヨウ素剤配布がされていない)

 以上の4点が、福島原発事故後に判明した事実を無視して、「安全である」と述べている大飯原発再稼働の安全基準です。

 この4点が大飯原発再稼働の安全基準に入っておらず、政治的理由で再稼働が決まったのです。この辺りの「政治的理由」は次の「講義録11-4 安全基準の構造的問題」で述べます。

 この4点は、高木独自の解釈ではなく、多くの新聞などでも書かれています。原発事故のニュースは多すぎますし、整理されていない情報が垂れながされ、専門用語も多いので、しかも本も沢山出ているので、消化不良になっていると見つけにくいですが、専門の記者を置いている新聞などでは書いてあります。そこで引用したのが、

2枚目(裏):「原発運転再開 安全上の課題は」6月16日 15時49分 -NHK NEWSWEB-
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120616/k10015877341000.html

 です。対策完成年度も書いてあります。

平成27年完成←①福島原発事故で大活躍している免新重要等がない

平成27年完成←②福島原発事故で備え付けられていたベントがない

平成25年完成←③津波を弱めた堤防と原子炉の間の設備がない
 :堤防を5mから7mにする工事

見通し立たず←④福島原子力事故災害が30kmに及ぶのに防災指針が決まっていない(避難訓練やヨウ素剤配布がされていない

 さらに、書かれているのは、

見通し立たず←⑤ストレステストの提出を関西電力が「作業量が多い」ので提出していない

見通し立たず←⑥原発の外で原発災害の中心となるオフサイトセンターの設置場所

 福島原発事故の教訓の6つを踏まえず、しかも、4つは今後の対応の期限がはっきりしません。(もちろん、教訓を踏まえて冷却水対策と非常用電源対策は取られました。)

 NHK NEWSWEBには担当記者名がありませんでしたが、「福島第一原発の事故を踏まえた長期間かかる原発の安全対策は先送りされているほか、住民の避難計画といった重要な防災対策は道半ばです」と冒頭に書かれています。終わりには、

「このため自治体からは、国が自治体との調整を進め、早急に具体的な仕組みを作るべきだとして不満の声が上がっています。」

 とあります。

 高木は「NHK WEBNEWS」の記事とは異なる立場をとります。

壱)「NHK WEBNEWS」の記事とは異なる立場-壱-大飯原発以外のさらに安全な原発を探すべき

 「ベント」は日本の原発の中でついている発電所があります。ですから、技術的安全から考えるなら大飯原発である理由が、見当たりません。「ベント」は放射性物質を外気、つまり、福井県や琵琶湖などにまき散らす際に、放射性物質を軽減させるフィルターのことです。この「ベント」がなければ、福島原発事故と同じように直接、排出しなければならなくなります。他方、肯定側は、原子炉から蒸気を通しての外気(大気)へ放出する設備がある、としますが、原子炉格納容器と蒸気を外気に放出する管の耐震性や管の厚さなどはどのようになっているのか不安です。
 本質安全ではない点が技術的安全が低い、と考えられます。というのも、「蒸気が外気に放出できる」という制御が成り立った上で、原子炉内の圧力が一定に保てる、という本質安全が確保できるからです。比較すると以下のようになります。

安全性が低い:制御安全が成り立った上で支えられる本質安全=蒸気による外気への放射性物質放出

安全性が高い:本質安全=原子炉から直接外気への放射性物質放出

 なのです。

弐)「NHK WEBNEWS」の記事とは異なる立場-弐- 安全対策は道半ばではなく、不十分

 自治体と同じく、オフサイトセンターの設置場所の決定は直ぐに出来ると考えます。細野原発事故担当大臣の仕事ではなく、野田首相と経済産業省のトップ枝野大臣の仕事だと思います。

 例えば、小学校の夏休み明けに、防災訓練をしたと思います。一部イメージ化しています。日本国政府が言っているのは、

 「火事が起こっても、どこに逃げていいか決めていない」けど「安全」です。…④
 「火事ための防災訓練をしていないけど、「安全」です」…④

 高木は、こうした校長先生がいたら、教育委員会や子供の親に怒られると思います。さらに、

 「火事が起こった場合どうなるか、考えているけれど検査に忙しいからまだです」けど「安全」です。…⑤
 「火事が起こっても消防員さんが作業できない」けれど「安全」です。…①
 「火事が起こって周りに火の粉が飛ばないようにしない」けど「安全」です。…②
 「火事が起こって燃えにくいと判った素材を入れていない」けど「安全」です。…③

 ということです。「安全」です、と信じて下さい、と言われました。原発になると問題が複雑になりますが、この事例だと解りやすいのではないでしょうか。もちろん、火事は燃えたら終わりですが、放射性物質は長い間、その土地に留まります。

 高木は、以上のような指摘から、大飯原発再稼動の安全基準は、技術的安全ではなく政治的理由から採択された、と考えます。

 ただし、だから、「野田首相が悪い、やめろ」や「枝野経済産業大臣が悪い、とんでもない」と主張しません。もちろん、政治的責任はあります。しかし、そのように、個人攻撃、個別の政党攻撃をしても、この原子力発電の根幹の問題が変えられないからです。むしろ、個人攻撃や個別の政党攻撃によって、原発の根幹の問題が残り続けてきた、というのが歴史的な事実ではないでしょうか。原子力政策を進めてきたのは自由民主党です。マスコミでは、読売新聞や、同じ系列の日本テレビなどが協力したのです。そして敗戦後に日本の根幹の問題でもあります。
 福島原発事故を起こした、あるいは安全事故対策を怠った東京電力の責任はあります。しかし、東京電力だけを攻撃しても、本当に問題は見えて来ませんし、今後の、再発防止策も出来ません。

 大飯原発再稼働の安全基準が、政治的理由で安全と判断されたことは、

 「技術的安全が蔑(ないが)ろにされ、政治的理由で製造物の再発防止策が蔑ろにされてしまったのです」

 ですから、

 「政治的理由(社会背景)を理解しないと、技術的安全が確保できず、技術者倫理の目的である「公衆の福利」が担保できない」

 と考えます。
 このように多大なリスクが存在します。日本では原子力発電は国際政治によって導入され、現在では国内政治を含め政治的要因によってリスクが増大しているのが現状です。原子力発電を見直すならば、この政治的要因の関わりも見直さなければならないと考えます。平成25年度の再稼働問題に、その影が見受けられるのは気がかりです。新基準と申請と判断が下されておらず、事実確認が不十分と考え、このような曖昧な表現となります。ご了承ください。

 以上が、大飯原発再稼働の8つのリスクの解説、でした。
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