スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

講義録7-2 福島原発事故賠償を製造物責任法から考える

 平成25年6月2日現在、損害賠償については請求権を3年にしないこと、精神的な苦痛に対する損害賠償が支払われる(1人50万円)など、倫理に適うニュースが聞かれるようになりました。以下は昨年度の講義録そのままですが、現在でも価値があると考えますので、そのまま掲載いたします。講義では口頭で簡単に触れる程度でした。

重要なポイントを先に書いておきます。

 「福島原発事故賠償を製造物責任法から考える」と、

A) 食品廃棄、風評被害、観光被害等は後2年で損害賠償請求できなくなる(最長3年なので)

B) ガンや白血病などは発症してから請求出来る

C) ガンや白血病になった場合、「ガンと関係ありません」と証明するのは東京電力である

D) ただし、「今度一切の賠償を放棄する」という文章に署名捺印した人は、賠償や証明の必要がなくなる

E) 東京電力が全電源喪失の危険性を「認識していない」のならば、製造物責任法の免責事項に該当し、賠償責任が生じない可能性があります

 さて、それでは順々に行きます。

 製造物責任法、通称PL法です。

 PLは、「プロダクト・ライアビリティー(product:製造 liability:義務)」です。

 製造物責任法の特徴は、3つの倫理で、②行為で判断⇒③結果で判断、になった点にあります。

 つまり、結果(欠陥)で判断する、のが特徴なのです。一般の法律は②行為で判断します。


 詳しく述べていくために、配布プリント 2枚目:藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』58~61Pを断続的に引用します。

 58Pにはフォード・ピント事件の別の解釈が書いてあります。「フォード社は人命と利益を天秤にかけて、利益を優先したという側面からこの事例を捉えない方がよいのではないか」、なぜなら、「衝突実験が当時新しい試みだった」や「実験をあまり考慮していなかった」などです。これは先ほど書いてきた「意図」の問題です。

 59Pには、全ての技術者がピントの危険性を信じていたわけではない、という主張もされています。これは「数」の問題です。

☆「意図」の問題だけや「数」の問題だけに「工学的安全」の問題を置き換えてはならない、と高木は考えます。

 これは工学的安全をすり替えて、事故対策へと結びつかない危険をはらんでいると考えます。視点を逆にして見ましょう。
 
 技術者が全員危険性を認識しなければ、事故対策を取らなくて良いのでしょうか?
 新しい実験なら実験結果を考えなくても良いのでしょうか?
 新しい実験の結果なら倫理責任を、法的責任を取らなくて良いのでしょうか?

 死者が出ていて、危険性を社会の中で指摘されていた、数少ない取締役が指摘をしていても。
 この結果は何が出てくるか、といえば経済性や、利便性や効率性です。それが事故対策を取らせなくします。本年度の講義の中で強く意識する点です。福島原発事故調査委員会の本を読んでいて、本年度の講義をしていて、強く感じています。

 さて、教科書には1971年のホンダ、1973年のトヨタの懲罰的賠償金(300万$、500万$)が書いてあります。もちろん、当時の技術の未熟さでつながりましたが、私はもう1つ別の視点も同時に持っています。記憶に新しいトヨタのブレーキ回路への訴えにアメリカ政府が介入しました。その結果、トヨタは自分で「故障の原因はありません」と証明しました。
 その後、訴えた人の不合理さが明らかになり、アメリカ政府は取り下げました。ちなみに、その時、日本国政府が強く抗議しなかったこと、アメリカ政府が謝罪しなかったこと、に強く憤りを持ちました。このような態度を繰り返していると日本車は不利な販売を、アメリカ国内のみならず世界中で強いられます。
 この点について、中原圭介氏は、「同じトヨタ車でもアメリカで作ったものは日本で作ったものとは違う」と述べています。興味深い視点です。また、日本国政府の国内の対応についても述べています。
 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0306&f=business_0306_009.shtml

 もう1点、フォードピント事件前後に日本メーカーが標的にされたことです。80年代以降の日本バッシングもアメリカの衰退と日本の隆盛が根本的な原因の1つです。トヨタ叩(たた)き、あえて叩き、と言いますが、はアメリカの三大自動車メーカーの衰退があったからではないでしょうか。現在、中華人民共和国がアメリカでバッシングされています。その材料は、チベット、ウイグルの侵攻と併合、尖閣諸島や南沙諸島への侵攻と併合の危険性、法輪功という気功を行う集団の投獄、死体の臓器販売、ノーベル賞受賞者などへの人権侵害等々です。もちろん、こうした行為は、民主主義から見ると大いに危険であり、許されない行為となります。
 しかし、少し離れてみると、アメリカは必ず潜在的な敵国を想定して、挑発行為を繰り返してきた国であること、が見えて来ます。当初はイギリス、スペイン、フランス等々へ変わり、日本、ロシアなどへ変わりました。現在は中華人民共和国です。全てアメリカの考え方が正しい、とするのは、中国が全て危険である、とするのと同質に危険です。
 高木の記憶が定かではありませんが、過去の新聞で、「トヨタはバッシングを受けないように、アメリカで儲けすぎないように販売台数を自習制限している」という記事を見たことがあります。アメリカの危険性を日本人が見抜いている、という証左でしょう。この智慧を原発、日本全体のエネルギー政策にも生かして欲しいものです。


 製造物責任法は、平成6年7月1日に公布され平成7年(1995年)7月1日から施行されました(法律第85号)。

 全文は全6条からなり、1300字弱と短い法律です。

 全文:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H06/H06HO085.html

●(目的)
第一条  この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 ポイントは後半部分、「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」です。これまでの言葉で言いかえると「公衆の福利」です。製造物の目的が「公衆の福利」にある、という技術者倫理の根本が、これまでのそれぞれの学会の倫理規則や倫理憲章だけでなく、法律に書いてある、という点です。

●(定義)
第二条  この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。

 「動産」とは、法律用語です。大辞泉には

 「土地およびその定着物をいう不動産以外の物。現金・商品・家財などのように形を変えずに移転できる財産。無記名債権は動産とみなされ、船舶は不動産に準じた扱いを受ける」

 とあります。教科書には「コンピュータのソフトは入らない」とあり、別の本には「電気も入らない」とあります。講義では「ガスも動産に入らない」と述べたと思いますが、訂正します。「ガスは動産」でした。
 消費者庁 製造物責任(PL)法について
 http://www.consumer.go.jp/kankeihourei/seizoubutsu/pl-j.html

 上記では「不動産,未加工農林畜水産物,電気,ソフトウェア」が対象外となっています。ですので、停電等の電気そのものへの製造物責任法の適用は出来ません。現在の福島原発事故賠償は、原子力関係の法律に基づいています。と同時に、原子力発電所そのものは電気ではありませんので、製造物責任法の対象となりうる、と高木は考える訳です。原子力関係の法律については今後検討する予定です。

●第二条  
2  この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう
 
 でポイントは、「予見される使用形態」と「安全性を欠いている」です。「予見される使用形態」は、これまで述べてきた「予見可能」の法律的な根拠です。「安全性を欠いている」は「欠陥」を指しています。3条に続きます。

●第三条  
製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

 ポイントは、「欠陥」です。欠陥、とは結果の判断です。ここがこれまでの法律とは異なる大きく点です。「欠陥」という結果だけで判断するのを厳格責任、と言います。ただし、「欠陥」の免責事項あり、これが争点となります。

●第四条  前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一  当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
二  当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。

 ポイントは「欠陥があることを認識することができなかったこと」と、部品や原材料を使った場合「欠陥が生じたことにつき過失がないこと」です。
 この「認識することが出来なかったこと」によって、先ほど述べた「意図」の問題と「数」の問題がこっそりと入り込んでくるのです。この点を強調すれば、厳格責任は一般の法律のように解釈が出来るようになるのではないでしょうか。つまり、

 「過失事故が起こっても、「認識できませんでした」と言えば、責任が免責される」

となるのです。福島原発事故で、この製造物責任法の免責事項から考えることは非常に大切だと考えます。そしてもし、「認識でいていた」とするのならば、昨年講義で行った荒茶等々を含め、放射能汚染によって風評被害、販売被害を受けた全ての農作物、観光被害や除染費用などを東京電力が払わなければならなくなります。現在、日本国政府から数兆円の資金が注入されますが、10兆円を超えることになるかもしれません。現実的な可能性があるかないか、は別においておいて、

☆ 東京電力が全電源喪失の危険性を「認識していた」のならば、製造物責任法の免責事項に該当せず、賠償責任が生じる

 と高木は考えます。

 さらに、

●(期間の制限)
第五条  第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。

 ポイントは「3年」です。福島原発事故が起こって1年が過ぎました。後2年が過ぎれば、損害賠償の請求権は消滅します。大きなポイントだと思います。さらに、

●第五条
2  前項後段の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

 ポイントは「身体の損害は生じた時から」です。福島原発事故でガンや白血病になった時、20年、30年が過ぎていてもその時に請求できる、ということです。この製造物責任法では、

☆東京電力が「あなたのガンと福島原発事故で出た放射性物質の関係はありません」と証明しなければ、賠償をしなければならない、

 のです。ですから、これは非常に大きなポイントになります。もちろん、高木の法律を読んだ上での考えです。もし、この解釈が成り立つならば、裁判で裁判官が採用するならば、法律の文章には多様な解釈があり、その中から裁判官が1つの解釈を採用する、先ほどの食品汚染、観光被害など以上に大きな賠償額を負担しなければならなくなります。ですから、これは推測ですが、現在行われている東京電力による賠償の文章の中に、

 「今後一切の賠償請求を放棄する」

との一文があるのではないでしょうか。これを入れておくと、数十年後にガンや白血病などになった場合でも、請求出来ないことになります。私は、賠償のことに関心が薄いので詳しく分かりません。ただ、製造物責任法を、文面のまま(高木の考えで)読んでいくと、数十兆円になるかもしれない、というのが推測されます。
 この問題は、今後、講義でもう1度やろうと思いました。

 長くなりました。一旦、ここで留めておいて、製造物責任法の特徴については次にいきます。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール
哲学(平成28年度)
科学技術者の倫理(平成28年度)
書いたもの(平成28年)
科学技術者の倫理(平成27年度)
哲学(平成27年度)
書いたもの(平成27年)
哲学(平成26年度)
「科学技術者の倫理(平成26年度)
講義録「哲学」
書いたもの(平成26年)
書いたもの(平成25年)
論文(高木健治郎の)
講義録「科学技術者の倫理」(平成25年度)
高木ゼミ『銃・病原菌・鉄』
高木ゼミ全6回『ぼくらの祖国』
教養講座6回分(平成24年度)   講義録21~
講義録「科学技術者の倫理」(平成24年度)     講義録1~15
最新記事
講義録「科学技術者の倫理」(平成23年度)
石上国語教室で行われた講演のレジュメです。哲学が足りなかったのが、福島原発事故の原因の1つではないか、と考えています。

「哲学のススメ2」レジュメ

最新コメント
カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。