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講義録3-1 「フール・プルーフ」と「フェイル・セイフ」と「冗長性」

 では本格的に講義に入ります。(昨年度の引用が多いです)

 初回は「倫理」とは何か?を幅広く、次に「倫理」とは何か?を幅狭く(法律やマナーと比べて)やってきましたので、本格的な内容に入っていきます。
 「技術倫理を達成するための手段」として、設計段階、実行段階、法律による規制段階があります。今回は製造物を作る際の設計段階です。

  設計段階で2つのことに留意が必要です。

①「フール・プルーフ(fool proof)」:人は愚かな行為をするから防止する設計

②「フェイル・セイフ(fail safe)」:物は壊れるからその際に被害を防止する設計

 です。ポイントは、「人の愚かな行為」や「物が壊れること」が予見可能かどうか、です。

 ポットは「ロック解除ボタン」→「出るボタン」でお湯が出ます。これは、人が寝ボケたり誤ってボタンを押すことが予見可能だから、2重にすることで被害を防止する設計なのです。同じことは、パソコンのゴミ箱、「ごみ箱を空にしていいですか?」などとメッセージが出ます。これも同じ「フール・プルーフ」です。
 「フェイル・セイフ」で有名な例は、ジャンボジェット機が片方のエンジンだけで飛べる、という例です。ジェットエンジンは可燃性の燃料を使い、かつ非常に高温です。高い空を飛ぶなど過酷な条件なので、ものが壊れるのは前提として設計してあります。この視点で見ると、原子力発電所の「安全神話」=絶対事故を起こさない、という神話が如何に事故予防の考え方に反していたかが理解できると思います。また、全電源喪失を「想定外」として考えなかったことも同様です。さらには、原子力発電所への核テロも同様です。

 原発は平和利用だけ考えていれば良いのだ、という「原発平和神話」

(原子力安全神話に対抗して作ってみました)が如何に安全工学に反しているかが理解できるでしょう。

 さて、ジェット機のように同じ機能を備えて事故に備える性質を、特に

「冗長性(redundancy):同一機能を択一的に遂行しうる2つ以上のシステムを備えていること」

 です。先の例でいえば、飛ぶ、という機能を左右どちらでも良い方を選(択)べるエンジン(システム)を備えている、ことです。この視点は、現在の大飯原発の再稼働を考える時も有効です。

 冷却水関連の装置が停止した場合、冷却水を川や海から取る、というのは一見、冗長性のように見えます。しかし、事故の場合の補完的なシステムなので冗長性、ということは出来ません。あくまでもう1つ同じ機能ではないのです。スイスの原発の安全対策は大分進んでいて、冗長性があるように見受けられました。今後講義で取り上げるかもしれません。

 また、さらに、福島原発事故で私たちに分かったのは、海水や川の水は濁りや瓦礫(がれき)などが入り混じる、ということです。大津波の際は、必ずそれらをろ過する装置が必要である、ということです。これは予見可能な事象です。これらのろ過装置が付いているのかどうか?を見て安全性を判断する必要があります。現在の安全基準に私が反対する理由の1つは、福島原発事故のこうした教訓がきちっと生かされていない(発表されていない)点にあります。
 
 次に同じ点について公平性を担保するために、正反対から論じてみましょう。
 福島原発事故前に、原子力安全白書等を見ますと、「フール・プルーフ」や「フェイル・セイフ」はきちっと歌われていました。5重の防護システム等々がしっかり挙げられていました。日本全国の原発では事故が沢山起こっていましたが、もちろんある時期までは「原発に事故はありません」という無茶苦茶な主張をしデータを改ざんしつづけていました、それでも過酷事故になったのは1回だけでした。実験炉などを含めて40年、現在50基の過酷事故が1回というのは、「フール・プルーフ」や「フェイル・セイフ」が通常時では有効であった証拠と考えられます。もちろん、過酷事故を「想定外」などにしましたが、それは比較的最近です。今後の再発防止策に福島原発事故で予見可能になった事象は取り込まなければなりませんが、通常運転時の「フール・プルーフ」や「フェイル・セイフ」が不十分であった、と論じることは出来ません。

 2センテンス前から補足です。講義の最後に、

 「この教室の中に、冗長性があふれています。さてなんでしょう?」

 と質問しました。挙手をお願いして何人かあげてくれました。まっ先に上がったのは「電灯」でした。「ドア」や「机」も出してくれました。

 私が上げたのは、「筆記用具」と「身体」です。

 「筆記用具」の中に書くためのシャープペンやペンなどが2本以上入っているでしょう。特に大切な試験の時などは。それは「ものが壊れる」というのを暗黙のうちに知っているからです。そして「冗長性」、つまり、書く、という機能をこなす2つ以上のシステム(ペン)を備えさせるのです。

 もう1つは「身体」です。右手にチョークをもって黒板に、ごにょごにょ、と書きました。左手にチョークをもってごにょごにょ、と書きました。書く、という機能をこなす2つ以上のシステムを身体は備えているのです。足も、眼も鼻も同じです。そして1つしかない脳や心臓や消化器系があります。特に脳や心臓は再生されない細胞で作られます。今まで人を見るときに「あの人話しやすい」とか「背が高いなぁ」などで見ていたでしょうか、冗長性から見ても面白いですね。
  
 また、帰りに大学のトイレに行ってみてください。入口にドアがありません。それは地震でドアが壊れるのは「予見可能」だからです。兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)でドアが壊れて出れなくなった人がいたからでしょうか。入口をいくつも作れないトイレは、ドアが最初っからない。さすが理工系の大学ですね。ちなみに女子トイレはどうなっているのか分りません。

 以上です。次は六本木ヒルズの安全対策です。
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