講義録2 技術倫理の最初 「はやぶさ」から「福島原発事故」を観る みんなのルール4つ チャレンジャー事故 公平な見方の大切さ

 皆様、こんにちは。

 今回は大分遅れてしまいました。先週の講義では8度を超える熱と喉風邪がありましたが、週末にやっと喉を休め、十分な睡眠を取ることが出来ました。やっと回復してきました。昨年の講義録を見ても、その前の書いていたブログを観ても、どうもこの時期は体調を崩すようです。年老いて肉体は弱くなっていきますので、益々気をつけたいと想います。そういえば最近「太りました?」や「白髪増えました?」を良く言われます。

 今回の講義録の目玉は、講義全体の目玉の1つです。
 「はやぶさ」の成功の秘密を、「福島原子力災害」の再発防止に使おう、というのです。

 「はやぶさ」も「原子力発電所」も同じ巨大製造物プロジェクトであり、軍事利用の側面の強い業界であり、官僚の権限が大きく、アメリカの影響を無視してプロジェクトが実行できない分野という共通点があります。
 と同時に、「はやぶさ」の宇宙開発プロジェクトでは失敗続きでしたが、「原子力発電所」は過酷な災害は50年間で1回だけでした。しかも100年、1000年に1回の自然災害で引き起こされたのです。一方的に「原子力発電所が失敗した」という訳ではありません。
 しかしながら、再発防止という観点に立つと、あるいはプロジェクトの進め方から見ると、両プロジェクトには大きな開きがあり、その開きが過酷な災害の一因と私は考えるのです。この点を認識することは、今後人類が益々巨大な製造物に生存を依存していく中で、重要な点であると考え、活かしていってもらいたいです。是非とも学生の皆さん、ブログをご覧になっている方々に御考え頂きたいです。

 それでは本文に入ります。

 講義録1にも述べましたように、昨年の講義録2~2-2を土台にしており、掲載されている箇所はほぼ省略致します。先に昨年の講義録をご覧ください。

講義録2 技術者の倫理 
講義録2-1「はやぶさ」と「福島原発」
講義録2-2「倫理の立ち位置」とチャレンジャー事故

 講義録は、最初に紹介した資料、宿題など、次に講義録と学生コメント集を載せていきます。

紹介(回覧)した資料:川口淳一郎著『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』
         :藤本温編著『技術者倫理の世界 第2版』

配布したプリント:B4 1枚
        :藤本温編著『技術者倫理の世界 第2版』 2,3P
        :川口淳一郎著『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』12-15,42-43P

宿題:なし

 --講義内容--

 前回の学生コメント集の冒頭を読み上げ、10名以上の感想があった意見を述べました。
 次に、配布プリントの確認と資料となる本を2冊学生の皆さんの間に回しました。藤本先生の『技術者倫理の世界』は私(教員)との考えと正反対の部分が多いので採用したこと、「はやぶさ」が同じ巨大プロジェクトで大成功した例として考えることなどを説明しました。詳しくはこの記事の上部をご覧ください。

 次に前回好評であった「科学」と「技術」と比較した「倫理」について復習し、さらに踏み込むこととしました。「科学」や「技術」は別分野の単語です。次に比較する方法として、同じ分野の単語と比較できます。「倫理」とは「みんな(倫)のルール(理)」でしたので、「法律」、「気遣い」、「マナー」と比較しました。こういう同じ分野の単語と比較する際は、要素分析が基本となります。
 学生の皆さんが就職活動をするとき「自分のしたいこと」とか「自分とは?」とか「自分の特徴とは?」と考えるとしましょう。「おばさん」や「おじいさん」のように異分野の人と比較すると「若い」とか「元気」などが出てきます。あるいは「石や木」と比較しても「人間」などが出てきます。他方、同じ就職を目指す人と比べると自分の中の要素が問題になってきます。「学校の出席率がいい」とか「最後までやる」とかです。

 以下は昨年の2-2からの抜粋です。

倫理は、「倫」=みんな、「理」=ルールや基準、でしたから、社会の中のみんなのルール、という意味です。同じ意味を含む言葉として、法律、気づかい、マナーがあります。これら3つと比較して立ち位置を考えてみましょう。

 問1 マナー、倫理、きづかい、道徳の4つを範囲の狭い順に書きなさい。
(学生さんに黒板に3人くらい書いてもらいました。その後で、同じ考えの人、と挙手してもらいました。)

 例として挙げたのは、私は毎朝電車に乗ってきます。優先席は体の不自由な方などに譲る、というのがマナーです。ただ、成人男性でも顔色が悪いのに気がつけば、席を譲ることもあります。この「気がつく」というのがポイントで、マナーでは譲る必要はありません。しかし、譲ることは、気づかい、です。ですから、マナーに当てはまらず、きづかいに当てはまる例がある。とすると、マナー<気づかい となります。
 こんな風に具体的な例で考えながらその理由を述べていってください。

 たくさんの回答があり、説得力もある説明が多かった。この問題は、いろいろな見方で回答の順番が変わってくる。それでよい。まず、似たような言葉と比較することで自分なりの言葉の定義を明確にしていく作業だからだ。その上で私の考えを。

 1法律 2倫理 3マナー 4気づかい

 法律は「罰あり」、倫理、マナー、気づかいは「罰なし」。
 倫理に「善悪あり」で、マナー、きづかい、に「善悪なし」。法律は「罰=悪」であり。
 マナーは「国ごとで違う」が、気づかいは「人で違う」。

 マナーの例は、スープのすくい方。イギリスのように手前から奥も正解、フランスのように奥から手前も正解と正解が国によって全く正反対になる。そのマナーが出来た上で、きづかい、が出てくる。それは個人個人である。
 
 4月に2つの飲み会があった。私が世代を超えた飲み会に行くとビールやお酒を注ぐのは、特に誰でもなかった。しかし、中学校の時の友人たちと飲むと、焼酎のお茶割を作るのが何と無く女性の役割になっている。大学時代、バスケットボール部に入っていたが、後輩である私は先輩のグラスが空いているとビールを注ぐ、というきづかいをした。そうしたきづかいが出来ないと「使えないやつだなぁ~」と人格否定になった。これは倫理の範疇である。つまり、日本では、全てではないが、きづかい→倫理、となることがよくある。静岡県でコンサルティング会社の社長さんのお話を聞いたら、
 「まず、外部の人間が来た時にしっかり挨拶してくれる会社は大丈夫ですよ。人が育っているということですし、業績もいい。」
 というのを言われた。日本では新人採用の時、「テストの点や大学名よりも人柄」という話をよく聞く。少しだけ就職活動に関わっている。それは気づかいを人柄として見る、ことを意味するし、日本社会のビジネスルールには能力主義よりもコミュニケーションで判断する、という風土があるということである。教えている留学生の何人もが日本に来て驚いたことの1つに、「働いている人とさぼっている人の給料が同じ」であった。一生懸命働いてもバイトで殆ど昇給せず、しても時給で500円も差がつかない、さぼりがちな人と同じ、というのはびっくりするそうである。さらに、さぼりがちな人を中々辞めさせないというのも驚きだそうである。そういえば、あの人は「空気読めないから(気がきかないから)、飲み会に呼ぶのやめようよ」というのもあ同じである。気づかいと倫理を混同するのである。気づかいが出来ない人はまるで悪人の如く排除されてしまことがある。
 この発展として、マナーを法律とする問題もある。今はやりの「セクハラ」、「パワハラ」などは、被害を受けた当人の気持ちで決まるそうである。男性が女性の人格を否定するような行為は許されない。しかし、どこまでが許されるかは各国によるマナーの問題であった。会社の上司などに相談して(ほぼ)処理されてきた問題が、法律という一律の網に入った。しかもその基準が被害者の心だけである。ある大学の教員は、
 「高木くん、私はね、ゼミで女子学生1人の時は、必ずドアを開けることにしているんだよ。だってね、ドアが閉まっていて抑圧的な空間でした、と言われちゃかなわんからね」
 という話を聞いた。どこからセクハラなのか、明確な行為の基準がなく混乱していた初期にはこうした声が聞こえた。これは「マナー」であった男性による女性への関わりが、「法律」に置き換えられたことによる事例の1つである。これも戦後日本の大きな問題を含んでいるのではないか、と考えている。つまり、「弱者の心」が絶対正義で、社会的合意とルールを作らずに、強者を一方的に罰することができる、という問題点である。この形は色々な分野に広がっている。これ以上は述べないが、身の回りを見渡して欲しい。原発の被害者は絶対的正義であろうか?

 以上抜粋です。全てを説明した訳ではありませんが、倫理はより明確になったのではないでしょうか。
 本年度は、静岡市から来るときに乗る電車に「ざんねん大図鑑 乗車マナー編」という列車内の中吊り広告を具体例としてあげました。また、オタクの人々が飲み会などに参加しないのは、「人と話さないといけない」という気遣いを、しなくてもいいのに、「人と話さないと嫌われる。嫌がられる。」と倫理(善悪)の問題に置き換えているからではないでしょうか?と述べました。日本は、気遣いが倫理に置き換えられることが良くあります。昔は「(正論を言って)水を差す」という行為がありましたが、現在はそれがなくなり、ますます息苦しくなっているのではないでしょうか。

 次に「はやぶさ」に見る「福島原発事故」ですが、大切なので次に、別記します。
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