講義録7「荒茶の検査基準の検討 公益通報者保護法 日本と欧米の倫理」

(文意不明、文末の言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。ご了承下さいませ。また、講義内容に大分加筆しています。)

 作成投稿が講義録8の後です。
講義から10日が過ぎていますので、思い出しながら書いていきますが、思い出せない部分もあるかしれません。ご了承下さい。

 さてさて、チャートから行きましょう

 「荒茶の検査基準の検討」
  ↓
 「公益通報者保護法」
  ↓
 「日本と欧米の倫理」

 配ったプリント1枚表裏(B4)
講義録6-1で調べた内容をプリントして配布しました。そちらも参照下さい。

・「世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル」 Ver3.0 CODEX,FAOとWHO共同の合同食品規格委員会
・「食品衛生法(昭和22年法律第233号、最終改訂平成18年法律53号)には、放射性物質に関する規定はありません。「毒」という表現はあります。第6条二「有毒な、もしくは有毒な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いのあるもの。」の箇所
・小野宏・他・監修『食品安全性辞典 第2版』382P 「放射能汚染」の項目
・社団法人日本食品衛生協会『食品中の化学物質と安全性』102P 表 飲食物摂取制限に関する指標;原子力安全委員会

 回した本
・社団法人日本食品衛生協会『食品中の化学物質と安全性』 2009年7月 100Pに付箋をつけて -体内減衰70日や1ベクレルの説明-
・赤羽喜六 軸丸靖子著『告発は終わらない―ミ―トホープ事件の真相』 長崎出版 2010年 初版 内部告発者の実態について

 講義開始です。
もちろん、「おはよう御座います」か「こんにちは」(私は「こんにちわ(今日和:今日も平和で良いですね。と今日もやわらかく(和)いきましょう」の意味で)の挨拶から始まりました。

 前回は「荒茶の問題をインフォームドコンセント、製造物責任法、工学的安全から検討しました。結果は、消費者のインフォームドコンセントを満たさない、製造者への国のインフォームドコンセントは満たさない、製造物責任法で問題ない、工学的安全でも問題ない」でした。

 さて、今日は、では、製造物責任法と工学的安全を判断した、その「基準そのもの」を検討していきます。その検討には実は原発問題の大きな特徴が隠されています。それが公益通報者保護法に照らし合わせるとはっきりとしてきます。

 まず、配布プリントの「「世界もおどろく日本の基準値2000ベクレル」 Ver3.0」を見てもらいました。右半分は図入りでした。吹き出しには「乳児の基準が原発排水の2倍って?!」とあり、人が指をさして注意を促す声を出している絵と、そのよこに日本のマークがついた黒い人型が「OK OK」という吹き出しを出しています。その一番下には「正しくしって 子たちを守りましょう。」とあります。左側にデータが載っています。
 Bq/Lは、1リットル(L)当たりのベクレル(Bq)です。小さいほど放射能汚染が少ないです。

 のみものの基準値

アメリカの法令基準      0.111Bq/L
ドイツガス水道協会      0.5Bq/L
ウクライナ(セシウム137)   2Bq/L
WHO(ヨウ素131)       10Bq/L
WHO(セシウム137)      10Bq/L
ベラルーシ           10Bq/L
国際法 原発の排水基準値
    ヨウ素131       40Bq/L
    セシウム137      90Bq/L
日本の暫定基準値(乳児) 100Bq/L
日本の暫定基準値
    セシウム137     200Bq/L
    ヨウ素         300Bq/L

 前回のデータでは、飲料段階で静岡市(葵区)は、2ベクレル強、牧ノ原市は3ベクレル強でした。
ですから、「日本では」、製造物責任法でOK、工学的安全もOK
     「アメリカでは」、製造物責任法でNO、工学的安全もNO
      「ドイツでも」、 製造物責任法でNO、工学的安全もNO
 となるわけです。アメリカは世界一放射能汚染についてデータを持っていますから、この0.111Bq/Lが低い根拠となるデータを知りたいものです。静岡県で採れる全てのお茶は、日本の暫定基準値だからOKですが、アメリカなら20倍以上の危険である、と判断される訳です。ドイツでも4倍以上になります。国際的な基準に比較してみると日本は極めて高い、2000倍もの高い暫定基準値なのです。この「暫定」というのが公益通報者保護法にかかってきますから、覚えておいて下さい。
 また、プリントの吹き出し「乳児の基準が原発排水の2倍って?!」というのは、ヨウ素131が
 原発からの排水基準40Bq/L<日本の暫定基準値(乳児) 100Bq/L
を指しているのでしょう。日本では原発から出た汚染水を乳児に与えてもOKということがこの暫定基準値から判ります。良いか悪いかは別にして客観的事実が考える出発点です。しっかり捉えましょう。

 プリントに戻りましょう。

 たべものの基準値

ベラルーシ(子供)           37Bq/L
ウクライナ(野菜)セシウム137    40Bq/L
ベラルーシ(野菜)           100Bq/L
コーデックス(Sr90やヨウ素ウランなどの合計):国際基準と見なせます
                     100Bq/L
アメリカの法令基準         170Bq/L
これまでの日本の輸入品規制値  370Bq/L 
日本の暫定基準値
     (野菜)セシウム137     500Bq/L
     (野菜)ヨウ素131      2000Bq/L

 ベラルーシやウクライナはチェルノブイリ原発事故で汚染された地域です。京都大学原子炉実験所が現状調査報告をしています。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/etc/KUR0301.p...'ベラルーシ ウクライナ チェルノブイリ'

 食べ物に関しても、アメリカの約3倍~11倍です。ウクライナなどに比べると14倍~55倍になります。

 (以下補足です)
 実はこれを書いている6月10日に製茶の検査結果が出ています。すると静岡県のお茶は1か所のみ基準値を上回りました。しかしウクライナナ、や国際的な基準と考えられるコーデックス100Bq/Lでは静岡県内21ヵ所が全て出荷停止になります。アメリカの170Bq/Lを採用すると21か所中17か所が出荷停止になります。
 (以上補足でした)

 食べ物に関しても飲み物に関しても日本の暫定基準値は極めて高いのです。日本人がアメリカ人やヨーロッパ人よりも放射能汚染に10倍以上強いというデータがありませんから、これは問題です。ただし、「だから日本の原発は駄目だ」や「だから日本の原発は危険だ」と問題を一気に片付けるのは学問的ではありません。大切なのは、「どうしてそのようになったか?」と「どうしたら安全になるのか?」と「本当に間違っているのか?」という観点で観ていくことです。ですから問いを出しました。

 問1 どうして日本の暫定基準値は高いのですか?

 これは先週提出した原発事故に関する6枚のレポートを調べてきている、という前提で聞きました。自分で調べてみて観えてきたアイディア、想い、構造的理由などなどを、具体的な問題に向かい合ってみて書き出してみることです。そして次の週から始まる原発事故への問題に自分の考えを持って取り組む時、もっと学生自身のためになるでしょう。全く予備知識や自分のアイディアがなくて問題に取り組むのと、予備知識やアイディアがあって問題に取り組むのでは成果が格段に違うからです。

 何人かの解答を板書してもらい、クラスのみんなで共有しました。板書したものだけでなくレポート用紙に書かれたものから抜粋します。

・日本は海外よりも食糧不足であり、できるだけ解決したい。それを解決するには(海外よりも)暫定基準値を高くする方が良い。だから日本の暫定基準値は高い。
 (私:思いもよらなかった)

・(要約) 日本国内は狭いから事故が起こればかなりの影響が出る。だから暫定基準値が高い。(私:感心した)
・(要約) 国が推進してきたから「危険、ヤバい物」という印象を余り与えたくないから暫定基準値が低い(私:高い?)。

・急性の症状が出ない値の最大値であるということを予想した値のため
 (私:鋭い)

・安全神話があったので基準値は高いまま(でも)疑問を抱くことはなかった。

・暫定であるため、法律で決められている訳ではない。基準値を上げなくてはなくなってしまう産業があるため、基準値を高く設定している。
 (私:鋭いなぁ~)

・日本は原発が多いからだと思う。今更基準を厳しくしたら原発を止めなければならなくなってしまう可能性も出てくるし、食品の出荷にも影響が出てきてしまう。だから暫定基準が高いのだと思う。
 (私:現在から見ているが、原発が多い、というのは、原発付近では常に、セシウムやヨウ素が観測されていることを事実として調べたのだろうか)

・日本は資源が少ないため、原子量発電を頼らないと電気をまかなえない。
・WW2で原発(私:原爆?)を2発投下されているために危険認識が下がっている。

 とても鋭い直観が書かれていてびっくりした。これらは全て正解である。具体的には次回の講義録8で学生の皆さんに体験してもらうこととなった。
びっくりした、と同時に学生の皆さんが自分で調べてきてくれたことを実感した。そして今後の講義をするのが大変楽しみになった。実り多くなるように頑張りたいと感じた。

 私の解答は以下の通りである。

事実:人間は一人では公平さを保つのは難しい
    (あるいは、「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する(専制権力は徹底的に腐敗する)」)

事実:日本だけが原発推進の原子力委員会と原発チェックの原子力安全委員会が1人の大臣の元にある

論拠:私は一人の人間は推進とチェックの両方が出来ないと考える

結論:だから、日本だけが原発推進の原子力委員会と原発チェックの原子力安全委員会が一人の大臣の下にあるので公平さを保つのが難しく、日本は暫定基準値が高い

 今書き出してみると、穴がありますが、講義の通りに書きました。
私の伝えたかったことは、日本の原子力行政の構造に腐敗や不公平さを生み出す原因がある、と言いたかった訳です。私は個人的な見解として日本の原子力技術は世界トップ(レベル)にあると考えています。しかし、その技術をトップレベルの安全に結び付けられていない、とも考えています。その幾つかの原因の1つが、この原子力行政の構造的な原因です。原発推進する経済産業大臣の下に原発の通常のチェックを行う原子力安全・保安院があります。これも推進とチェックが1人の大臣の下にあるのです。

 さて、私はいつもクラスを回っています。個人での質問や疑問、寝ている人を起こす、うるさい人を注意する、良い意見を黒板に書いてもらうなど色々ありますが、今回は、

 「では、原子力委員会と原子力安全委員会を統括している大臣は誰でしょう?」

と聞きました。一人一人の目を見ながら、指しながら。
なかなか答えが出なかったりしましたが、「海江田」という声がどのクラスでも一番に出てきました。他には「枝野」という声も少しだけ。呼び捨てなのは学生のそのままの言葉ですのでご容赦ください。国民感情が良く表れているとも受け取れます。「菅」という声は一人だけでした。「そう!」と答えました。
 「ただし、答え方はどの大臣?と聞いているので内閣総理大臣、が正解でしょうね」
 とも。今回の原発事故の最大の責任者は菅内閣総理大臣なのです。尖閣諸島の問題の時もそうでしたが、最大の責任者です。しかし、TVや新聞の論調に流されているのか、私たちはそれを見失いがちです。また、原発の問題を構造的に理解してい学生が少ないことに気が付かされました。来週からの講義ではこうした構造的な問題へのコメントを多くしていきたい、説明していきたいと感じました。

 さて、次は問1の間に質問を受けた「ベクレルってなに?どういうこと?」から入りたいと思います。
  長くなりそうです。10日前でも殆ど覚えています。一生懸命やったお陰でしょうね。一生懸命やらないと何事でも残らないものです。
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