高木ゼミ6回③ 「アメベノミックスと公平さ」 説明「量的緩和」と「インフレ」

 「児童相談所による拉致(保護)事件」の根底にあるのは、

①警察と検察、裁判所などが互いになれあっている。→裁判所が国民よりも警察の言うことを優先する
②日本国民が「お上=警察、検察、裁判所」のすることにノーチェックだった。
③「人権」、「虐待」、「体罰」などの言葉が出るとそれだけで「正しい」という価値判断を下してしまう。

 です。これは倫理の問題であり、哲学や生き方の問題です。もちろん法律問題もありますが、これは法改正で直ぐに解消される問題です。そして私は、カール・ポパーの哲学の基づき、「常に反証される可能性を探す必要がある」と考えています。もう少し具体的に言うと「公平さ:賛成側と反対側の両側から自分で考える必要がある」と考えています。もう少し具体例で学生の皆さんには考えてもらいました。何も事前説明なしで以下の文章を読んでもらいました。

 「世界に愛されるアベノミクス」 NEWSWEEK 2013.1.22 ,25-30P

 その上で話し合いに入りました。話し合いの前に少しだけ事前説明を。

 現在、日本ではアベノミクスが取り上げられ、日経平均株価が1万1000円(平成25年2月4日現在)を超えています。これは海外から、また投資家から何もしていないのに大いに期待されている証拠ですし、円安によって昨日シャープやパナソニックの業績が大幅に改善しました。日本国内の新聞やTVでは日銀法改正を色々と批判してきましたし、日本企業の業績悪化は日本企業の責任であるかのような論調がはびこっていました。もちろん、それはある側面として正しいのです。反対側からも考えてもらいたいと思います。その絶好の好機が来ました。つまり、日本の大手企業の業績が円安になったことで黒字に転換したのです。これは以下のことを示します。

1) 日銀の政策は15年以上に渡って失敗だった
2) 通貨政策に関して日本が政治的失敗を繰り返していた
3) 日本の企業を守るために政治力が重要な時代に入った

 新聞やTVは「安倍総理と日銀総裁が対等である」かのように、あるいは「日銀の独立性が大切」かのように論じます。しかし、日銀は日本政府が株価を持つ子会社なのです。もちろん、子会社の経営判断は尊重しなければなりませんが、親会社が子会社に数値目標(量的緩和などの)を設定したり、意見の述べるのは当然のことなのです。どうして新聞やTVはこのことを報じないのでしょうか。反対側から観てみると別の側面が見えてくるのではないでしょうか。もちろん、日銀は特殊性があり、法律によって規定されています。ただ、その特殊性を守って来て、15年以上失敗し続けているのですから改正を求められているのです。実はインフレ(成功)になりかけた時、日銀自身が潰した失敗も含まれます。
 国際情勢として見てみると、NEWSWEEKにもありますが、アメリカで成功しヨーロッパで成功した量的緩和などの政策を日本だけが導入していなかったのです。ですから、日本だけが突出して円高になったのです。各国と同じように成功している政策、その被害を被ってきたのが日本の企業なのです、を導入するのが、アベノミクスなのです。この視点からの報道が極めて少ないのが日本のマスコミの報道です。この辺りを調べるのが楽しかったです。時間も掛ってしまいました。

 学生の皆さんに、事前説明なしで「世界に愛されるアベノミクス」 NEWSWEEK 2013.1.22 ,25-30Pを読んでもらい感想を述べてもらいました。

・文章の構成が巧い。歌の話(ローリング・ストーンズ)などを最初と最後に出している処など。
・「アベノミクス」の「ミクス」が名誉なことだとは知らなかったが、これだけ株価が上がるなら当然かもしれない。
・どうして「アベノミクス」に期待しているか日本の報道ではわからなかったが、よく分かった。
・日銀の問題点がしっかり書かれていてよかった。特に結果責任を自己評価していまうのはおかしい。
・アメリカやEUなどで成功しているのを取り入れているのが「アベノミクス」なので、特別なことではないのが判った。
・日本が需要が弱い国、というのは実感として判る。買うより貯金しようという国民性がある。
・再生可能エネルギーの固定買取制度が経済の面から時代にあっていない、成長につながらないというのが分かった。
・公共投資が必要だというのは東日本大震災でも、高速道路落盤でもあるからしっかりやって欲しいし、安倍さんが目指していることだと知れて嬉しかった。

 などなどです。皆さん、よく理解してくれました。もちろん、「量的緩和」や「インフレ」などの意味がいまいちよくわからない、という点もありましたが、全体として理解してくれたのは国語力があり、文章全体の文脈の理解ができているからなのでしょう。私が説明した時もたった1回で理解してくれました。理解の速さにびっくりしてしまい「本当にわかった?」と聞いてしまい、「わかりましたよ、だいたいですが」と答えてくれました。

 以下は私の解釈に基づき、経済を単純化した説明です。詳しく知りたい方はきちんとした本を読んで下さい。

●「量的緩和」と「インフレ」について

 「量的緩和」とは、お金の量を沢山にすること、です。お金を沢山にすると、お金の価値が下がります。お金で買えるのは、物、ですから、お金の価値が下がると物の値段が上がります。「物の値段があがること=インフレ(ーション)」と言います。具体的に述べます。

・みかんが2個あります。お金は200円あります。すると、みかん1個=100円になります。
 「量的緩和」はお金を沢山にすること、でしたから、200円増やします。
 すると、
・みかんが2個あります。お金は400円あります。すると、みかん1個=200円になります。

 お金を沢山にすると物の値段があがります。つまり、「量的緩和」で「インフレ」になります。

●「円安」について

 円安、とは円の価値が下がることです。
 まず、円高から見てみましょう。
・米ドルが2ドルあります。日本円が200円あります。すると、1ドル=100円になります。
・米ドルを1ドル増やして3ドルにすると、日本円が200円ですから、1ドル=67円になります。

 逆に日本がお金を40円増やすと、米ドルは3ドル、日本円が240円なので、1ドル=80円になります。
 つまり、日本円を増やすと円安になるのです。

 ただし、日本ではお金を増やす前に円安になりました。それは市場が「安倍総理は必ずお金を増やす」と信頼(期待)したからです。市場はお金を先に儲けようとするのでこのようになります。
 
●「円安」と輸出企業の業績UPについて

 シャープは液晶が世界一ですが、10万円の液晶TVがあるとします。
 色々と作る費用を合わせて9万円とします。また、未来への研究投資などを2万円とします。

△「売値10万円 - 費用9万円 - その他2万円 = マイナス1万円」

 円が80円から100円になるとしましょう。

 液晶テレビは10万円で、80円=1ドルですから、10万円÷80円=1250ドル がシャープに入ってきます。
 では、この1250ドルを1ドル=100円で計算します。1250ドル×100円=12万5千円 がシャープに入ってきます。
 すると、シャープは同じ製品同じ品質、同じ販売店などなど全て同じなのに、10万円が12万5千円になるのです。それでだけではありません、

△「売値12万5千円 - 費用9万円 - その他2万円 = プラス1万5千円」

 つまり、赤字だった液晶TV部門が10%の利益を出す黒字部門になるのです。製造品の場合、費用が掛かりますから円安は非常に大きな効果を表します。

 実際、平成25年2月1日のニュースでシャープは、4000億円のマイナス(赤字)が、100億円以上の黒字になるようです。数々の理由があるでしょうが、円安が大きい、と報じられています。

●日本銀行と政策について

 日本銀行は、

「量的緩和(お金を沢山にする)」→「インフレ(お金の価値が下がる)」→「円安(円の価値が下がる)」→「輸出企業が儲かる」 

 をしてきませんでした。実に15年以上。1回はインフレになりかけましたが、それも潰してしまったのです。しかも、現在の「量的緩和」に強く反発し、マスコミもそれを支持しています。ただし、日本銀行の目的は、そのような「輸出企業のことを考えなさい」や「日本全体を豊かにしなさい」とされていないのです。

●実際の「円安」と日銀について

 実は、「量的緩和」はアメリカやEUなどで成功をおさめています。アメリカとEUが成功してドル安=円高、ユーロ安=円高だったのです。それに合わせてやっと日本が同じことをしたのですから、高すぎた円が元に戻っただけなのです。日銀法では、高すぎる円でもOK、と自分で自己評価出来るのです。ですから改正しなければなりませんし、「日本全体を豊かにするために数値目標を入れる」なども入れましょう、ということなのです。

 そもそも、(繰り返しになりますが)日銀は日本政府が株式を大量に持つ一種の子会社です。子会社ですから親会社が言う目標を聞くのは当たり前ではないでしょうか。目標数値は2%ですよ、と言えば聞くのはおかしいことでしょうか。目標数値を達成する手段は日銀に任せられているのです。しかも15年以上失敗続きの会社ですし、日本を豊かにするためにです。それに抵抗しているのが現在の日銀です。私は行政組織論や経済学の素人ですから、どうしてこのようなことが起こるのか、について、日本社会の組織が持つ病理=1度決めたことは、死者が数万人でても変えられない、ということくらいしか思い当たりません。また、日本人の中にも「お上が決めたことだから」とノーチェックにしてしまう体質が助長しているのではないか、と推測する程度です。詳しくは冒頭に述べた「高木ゼミ6回ゼミ内容 「児童相談所による拉致(保護)事件」」を。
http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-226.html

●「量的緩和」の国際事情とデメリット

 「量的緩和(お金を沢山にすること)」は、アメリカ、EUで成功を収めました。大韓民国では目標数値3.5%としてサムソンやLGなど輸出企業を大いに助けています。「アベノミクス」の目標数値は2.0%に過ぎません。つまり、同じ輸出企業で国を豊かにしている成功例があるのです。

 また、中華人民共和国は「量的緩和」を最も行った国です。市場にあるお金は100兆円と言われ、アメリカのGDPの1/3に過ぎないのにお金の額は4倍、実質12倍のお金を沢山にしました。お金が沢山になること物の価値があがります。具体的に行きます。

 先ほどの例です。
 みかんが2個あります。お金が200円ならば、1個100円で買えますが、お金を沢山にして400円にすると1個200円になるのです。つまり、「量的緩和」で「インフレ」が起こると、物の価値が上がる、のです。

 時給1000円で1時間働いた場合、みかん1個100円なら、10個買えます。
 インフレが起こり、物の値段が上がると、1個200円になりますから、買えるみかんは5個に減ります。

 つまり、「インフレ」だけですと給料をもらっている多くの人は、実質貧乏になるのです。食料品の値段が2倍になって食事の量が半分になると考えられます。

 中国ではお金を沢山にしました。増えたお金は共産党や人民解放軍などのお金持ちに配られましたから、お金持ちはますますお金持ちになり、貧乏な人はますます貧乏になりました。最初の頃は、インフレだけでなく貧乏な人も時給が上がっていたので生活は豊かになりましたが、昨年くらいからインフレが給料の上がる率を大きく上回るようになりました。現在、上海や北京などでは、地下で暮らす「モグラ族」や大学卒業したのに地下で暮らす「あり族」などが出てきたのも、貧富の差が拡大した証左の1つです。

 中国は独裁政権ですから、法律に基づかず、人民のための政治ではないので「量的緩和」も一部の人々のために行われています。このように「国民のため」や「法律に基づく」などがないと、「量的緩和」は貧富の差を拡大させるマイナス面があります。
 ちなみに、大韓民国の大統領選挙で「貧富の差」が問題になったのも、この「量的緩和」によって一部の大企業だけが儲かり、普通のサラリーマンがどんどん物が買えなくなる=貧しくなるのを止めなかったからです。
 
●日経平均株価上昇について

 「円安」によって、今後、日本の輸出企業が潤っていくでしょう。その潤いは直ぐには国内に効果が現れないでしょうが、現代の高校3年生が就職する4年後(活動開始の3年後)には効果があるかもしれません。ちなみに、安倍総理が選挙で勝つ前から、日本の株式は「輸出関連企業」が中心に値上がりし、平成25年2月1日現在1万1千円を超えています。20%も上がり、50兆円以上のお金が増えました。日本国民1人当たり50万円です。安倍総理が誕生して具体的に殆ど始めていないのにこれほど資金が増えたのです。ちょっと信じられないですね。ちなみに、国内総生産は550兆円です。

 以上で簡単な解説を終わります。詳しく知りたい方は「浜田宏一」先生など経済学の大家の御本をどうぞ。

 現在のマスコミの報道は1つに偏っています。それを公平に戻すためにも、別の経済の立場を説明しました。引用したNEWSWEEKでは、記事の後に別の立場からの記事が書いてあります。公平ですね。

「日本株「根拠なき熱狂」の根拠」 同上,32P

 主に以下の点が挙げられています。

A)多くの外国人投資家は日本のリスクを知らない
B)アメリカ人は外国もアメリカと同じだと思っている
C)日本の株はもう底値だと期待されている

 「アベノミクス」は美しき誤解にすぎない、という記事がきちんと載っているのが、公平さからすると素晴らしい記事です。日本ではどの新聞も大体同じ論調で1つに偏っています。それは日本の新聞の習慣で、発刊前に他の新聞社の論調をチェックして、自分たちで勝手に合わせるようにしているからです。私は日本以外の新聞でこのような習慣を持っている国を、知見が狭いだけですが、知りません。
 本来は、沢山の視点があり、だからこそ事実が伝えられるのではないでしょうか。人間も同じです。沢山の違う価値観があるから、面白いのですし新しいものが生み出せるのです。それを肯定する民主主義、特に西欧の民主主義ではなく日本の民主主義の素晴らしい点だと私は考えます。

 他の記事も面白かったので補足しました。
  
 「長生きしたいならぽっちゃり体形が一番?」 同上,47P

 アメリカ人300万人を統計的に調査したら、

A)標準よりも少し太り気味の方が、8%も死亡率が「低い」
B)標準よりも大分太った人の方が、15%死亡率が高い

 つまり、「少し太った方が死亡しにくい」、というのです。日本でも「コレステロールが『高い』方が死亡しにくい」という統計的な調査がありました。今検索したら、「日本脂質栄養学会(理事長=浜崎智仁・富山大学和漢医薬学総合研究所教授」のお名前が出てきました。前に読んだ記事と一致するかもしれません。
 
 大切なのは、学問の出発点として1つの立場に偏らず、肯定側と否定側の両側から考えましょう、という点です。これは大学での勉強の出発点として大切にしてもらいたい、と学生の皆さんにお伝えしました。まだまだ続きますが、一旦区切ります。

 (続きます)

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