第6回高木ゼミ① プリント

 皆様、1年で最も寒い節気、大寒になりました。風邪やインフルエンザが流行っておりますが、如何お過ごしでしょうか。

 学生の皆さんはセンター試験を終えて3日目でした。寒く、大きな山を越えて元気な笑顔を見ることが出来ました。もちろん、「センター試験に失敗した」という声は聞こえてきますが、失敗をしない人生など塩のない料理のようなものです。まったく味気がなく最後は病気になってしまいます。受験勉強の最終的な勝者は大蔵省(財務省)の事務次官です。その人以外は受験戦争の敗者になるのです。ですから、100万人以上の人は敗北をどのように受け止めるか、自分の特徴をどうつかむか、が受験勉強の大きな意味だと考えます。勉強が終わっても人生は続きます。そういうことも伝えられたらなぁ、と思いながら国語教室に向かいました。
 ゼミの最後にまとめ、未来に向けての手向(たむ)けの言葉として、「尊敬する人のいうことに素直でいて下さい」としました。勉強が終わっても人生を続けていく中で、私が実感している言葉です。

 学生の皆さん全員が笑顔であったことが嬉しかったです。

 第6回

日時:平成25年1月23日 午後6時25分から午後8時5分ごろまで。
人数:6名

最初に読んだ記事:「世界に愛されるアベノミクス」 NEWSWEEK 2013.1.22 ,25-30P
紹介した記事:「日本株「根拠なき熱狂」の根拠」 同上,32P(同上の反対意見が合わせて載っている好例として)
      :「長生きしたいならぽっちゃり体形が一番?」 同上,47P(メタボの反対意見として)

紹介した本:内海聡『児童相談所の怖い話』 ジャレド・ダイアモンド著 倉骨彰訳『銃・病原菌・鉄』 詳しくは講義内容で。

紹介できなかった(用意したが)本
:ハーバード・G・ポンティング著 長岡祥三訳『英国写真家の見た明治日本 この世の楽園・日本』
 南極大陸を撮影した写真家ポンティングは明治34~35年に日本を訪れ、数々の写真を残している。この世の楽園が日本にある、とまで述べた写真と内容は、その後欧米で大人気を博して講演され、上演された。特に、日本女性の素晴らしさ、例えば

「彼女(女性全員)は、自分が実際に(家庭を)支配しているように見えないところまで支配しているが、それを極めて巧妙に行っているので、夫は自分が手綱を握っていると思っている。そして、可愛らしい妻が実際にはしっかり方向を定めていて、彼女が導くままに従っているだけなのを知らないのだ。」238P

 がある。他方、西欧の気風が入り込み男女同権になることを憂いている。さらに、日本女性の献身や愛情の深さが日露戦争で発揮されたことなども書いている。他に京都の名工との交流や日本美術の素晴らしさへ名筆もある。敗戦を考える際、敗戦前の日本の客観的な事実、画像をこの本に見ることができる。写真を見ているだけでも感動する。

:西山俊彦『カトリック教会と奴隷貿易 -現代資本主義の興隆に関して-』
 カトリック教会は日本ではあまり意識されないが、西欧社会を考える際に根本の1つとして見逃せない。神父西山氏は、カトリック教会が奴隷制度を肯定したローマ・カトリック教会の問題を書いています。奴隷制がなければプランテーションがなく、プランテーションがなければ綿花がなく、産業革命もなく、全世界の植民地もなく、という風に辿っていきます。その出発点、ローマ・カトリック教会が「キリスト教徒以外の奴隷を公認したこと」を見るのです。現在のアフリカの貧困問題、人種差別などなどの出発点に教会がある、という強い反省の念は、よりキリスト教を洗練しようという意図でありながら、心打つ内容です。次のゼミで触れたいと思います。これを決定的に打ち破ったのは日本でしたから、イギリス、アメリカの背後にいたのがローマ・カトリック教会なのかもしれません。
 そこで浮かび上がってくるのが仁徳天皇の「民のかまど」や神武天皇の「神武不殺[:兄を殺された敵(かたき)でも降伏すれば殺さずに奈良(橿原宮:かしはらのみや)に入られたこと])です。ちなみに、武道の永遠の理想が「神武不殺」にある、と言われます。私のような未熟者が勝手に解釈すると、相手を恨まず憎まず、相手と一体になる、ということでしょうか。次の『銃・病原菌・鉄』で触れられば、と思っています。

 まず、最初に「第6回プリント」を掲載し、次に講義内容をザッと書いていきます。
 今回で最終回ですから、まとめのレポートの題を記したプリントのみ配りました。提出は来来週です。ちなみに来来週からのゼミも継続となりました。本を『銃・病原菌・鉄』(上)にしました。技術史から世界の発展の歴史を捉える面白い内容です。『ぼくらの祖国』と連続していないように見受けられますが、根底ではつながっていると考えています。
 『ぼくらの祖国』では「敗戦後、祖国を失ってしまった」ことが書かれて未来へと目を向けています。現在の日本を良くするために敗戦が巻き起こす数々の問題を解決しなければならないのです。そのためには、日本を愛し、かつ日本を客観的に見つめる目の2つが必要です。「なぜ日本は負ける戦争をしたのか?」を客観的に見つめなければ祖国は甦(よみがえ)りません。日本人として心の奥底からの誇りが取り戻せません。『銃・病原菌・鉄』は、客観的に見つめる目を与えてくれます。そこから日本を愛することへと繋がっていきます。
 このように観ると、『ぼくらの祖国』は「日本を愛し→客観的に見る」の方向ですが、『銃・病原菌・鉄』は「客観的に見る→日本を愛す」なので、逆方向になります。
 「科学技術者の倫理」の講義などで私が学生の皆さんにまとめとして伝えているのは、「学問とは自己肯定である」ということです。論文は自分のアイディアから出発します。この根本は自己肯定です。しかし、その自己肯定がエゴイズムが傲慢さが加わると他人に受け入れられないだけでなく、深い自己肯定には至らないのです。何度も何度も否定を受けながら、それでもアイディアにしがみ付き、最後に残ったものを発表します。アイディアにしがみつく時に多くの(過去の)人が知識や智慧で手助けをしてくれます。そうすることで「ああ、私は孤独ではない」という連続性を感じ、また別の自己肯定を得られると考えます。「学問とは自己肯定である」を今後も伝えていければいいなぁ、と思っています。ゼミ前の余談が長くなりました。
 それでは第6回のプリントです。

 ○プリント


平成25年1月23日
第6回高木ゼミプリント

 お正月が終わり、20日の大寒を迎えました。朝晩がますます冷え込む中、最終回を迎えます。第5回の最後の感想に詳しく書きましたが、最終回を迎え感じたのは希望でした。寒く厳しい環境の中に春への活動は始まっています。それは大寒の気候のみならず、現在の日本が春への活動を始めているように感じられたからです。学生の皆さんは全体から見れば一掬(いっきく)かもしれませんが、その中に輝かしい希望が感じられました。春に向かう中で三寒四温の厳しい気候がまっているように、日本も紆余曲折しつつも、春の穏やかな国になっていって欲しいものです。

 -第5回レポート 「希望とは」- A4で手書き、パソコンOK。各800字以上

問1 青山さんの主張によれば現在の日本の現状は厳しいですが、希望もあります。あなたの考える希望を3つ挙げ、挙げた理由を説明しなさい。その上で、日本が今後、世界全体に対してどのような理念を持ち行動をすべきかを述べなさい。抽象的な内容ですので他の内容などを参考にして構いません。例えば、「小さくでもキラリと光る国」や「アジアの民主主義の代表となる国」が理念です。

問2 敗戦後の偏った教育や数々の制度は、現在疑いの目を向けられていません。あなたは「今後どのようになっていくべきか」を論じなさい。それに基づいて、あなた自身の行動はどのようにすべきである、と考えるかを書きなさい。

問3 『ぼくらの祖国』の中で最も心に残った個所を挙げ、その理由を説明しなさい。

問4 レポートを書き終わっての感想を




 長くなったので「○講義内容」は次回です。
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