欧米のストレステスト、ほぼ全て不合格

 NEWSWEEK 2012年10月17日号(October 17,2012)に「EUほぼ全ての原発がストレステスト不合格」の記事がありました。(本文を長く引用し、改変するをお許しください。)

「 いまヨーロッパで稼働中の原発134基…(中略)…、ほぼすべての原発について安全性の改善が必要だとの評価が下された。費用は130億ドル(1兆円)~320億ドル(2兆5千億円)という。」

 以下はポイントを要約します。

①ストレステストに不合格だが、深刻な問題のある原発は1基もない。

②テストの範囲が地震や洪水だけである。

③テロやサイバー攻撃の審査は行われていない。

④原子力業界の圧力に屈してテストが甘い、との非難の声が上がっている。

⑤フランス最古の原発やベルギーなどの原発が稼働し停止している。

⑥テストの結果を対策に活かすかは各国政府の判断で、EUは関与しない。

 考察

⑦改善費用が1兆から2兆5千億円と、浜岡原発などの対策費(1000億円以下)と1桁違う。そもそも原子炉は3000億円前後。1桁多いのではないだろうか。NEWSWEEK日本語版に問合わせ中です(平成24年10月17日14時45分送信)

⑧「深刻である」とした結果は日本と全く異なる。日本ではストレステストの結果「安全である」としている。

EU:ほぼ全て安全ではない → しかし深刻ではない →稼働させる
日本:全て安全である   → 対策は出来ている  →再稼働させる

 同じストレステストでもどうしてこのように変わるのであろうか。高木の私見であるが、フランスなどには日本の原発よりも安全対策の進んだ、つまり「工学的安全(リスクが低い)」な原発が多いと考えている。しかし、これらがほぼ全て改善が必要である、としているのである。

⑨日本の原発の安全対策に、「テロやサイバー攻撃」対策が考慮されていないのが明確に判る。スパイ防止法がなく、中華人民共和国、ロシア連邦、北朝鮮などテロ行為を行いうる国家に挟まれている日本は、「テロやサイバー攻撃」を考える必要がある。原子炉は停止すればリスクがなくなる訳ではない。
 
⑩各国家レベルなら、緊密な関係の原子力産業との癒着で「ほぼ全て改善が必要」との結果が出なかったのかもしれない。日本にある「原子力ムラ」は特殊ではあるが、軍事機密がある原発には政官財の癒着構造が観られるからである。今回の結果は、EU(欧州委員会)という利害関係のない立場から発せられたからこその結果かもしれない。

 工学倫理から考えて、EUと日本のどちらが優れているかは述べるまでもない。これからの改善目標としてもらいたい。
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