講義録22-1 学生からの質問 メタンハイドレートと東海村臨界事故

 ②-2メタンハイドレートの新しい燃料としての有用性と実用化された時の日本のエネルギー政策の変化の可能性

 を答えていきいます。

 メタンハイドレートについては、講義録11-6 日本海側のメタンハイドレート
http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-162.html
 で述べています。東京大学の松本良先生の発表を引用しています。また、共同研究体として挙げられている独立総合研究所所長青山繁晴氏がYouTubeやニコニコ動画で、「青山繁晴が答えて、答えて、答える!」という番組(チャンネル桜というインターネットの放送局)で現状などを話してくれていますので、是非見てみてください。高木も大好きで毎回必ず見ています。例えば以下のものを。

【青山繁晴】メタンハイドレート開発にのしかかる敗戦の桎梏[桜H24/5/25]
http://www.youtube.com/watch?v=Xu8XZOvvB24

【青山繁晴】メタンハイドレートの可能性と既得権益の壁[桜H23/6/24]
http://www.youtube.com/watch?v=t8Jb_7y3tEw

 少し詳しく解説します。
 現在の石油掘削技術は、圧縮された液体状の石油を採掘し吸い取る技術です。しかし、メタンハイドレートは海中にあり結晶状で地上に出てくると気化してしまいます。ですから、海中の圧力のまま取り出して液体、あるいは固体のまま取り出す技術が必要です。この点はまだまだです。しかし、地上に液体、または固体のまま取り出せれば精製して現在の火力発電所で直ぐに使えるそうです。また、火力発電は石油の高騰と天然ガスの値段の低下によって石油の割合は半分以下、4分の1程度にまで下がっているそうです。ですから、直ぐにでも使えます。さらに、発熱と蒸気で2回発電できるガスコンバインドサイクル方式は発電効率が50%以上で原発の倍近い効率なのです。ですから、メタンハイドレートは直ぐにでも使えるエネルギーです。日本海側は直ぐにでも使える状態にあるので、是非とも日本海側で、と思っていたら、幾つかの県が集まって推進するようです。日本政府が中国やソ連やアメリカなどの圧力に屈する中、県レベルでこうした動きが出てきたことに、今後の日本の希望を感じます。幾つかの県の集合なので圧力を受けにくいようです。

 また、日本のエネルギー政策の変更の可能性も質問をもらいました。日本のエネルギー政策は劇的に変るでしょう。そもそも大東亜戦争は日本の自主エネルギー確保から生まれた戦争という1面もあります。敗戦後もそれを書くとき出来なかったのですから、アメリカに支配され続けたので、大幅な変更となります。
 アメリカもEUも経済危機が起こる中、唯一世界の中で経済が健全で信用されているのが日本です。その日本のウィークポイントがエネルギーです。イギリスとアメリカのメジャーから石油を買い、原発はアメリカの言いなりでした。それが解き放たれるのですから、日本の政治力が格段に上がることはいうまでもありません。日本海側のメタンハイドレートは熱分解ですから、松本先生の発表にあるように、原理的に永遠に取ることが出来ます。
 石油は、化石を原料としていますから限界がありますが、熱分解は地震の元であるマグマを原料としますから、地球が冷えるまでの数千万~数億年の間利用可能なのです。人類にとってみれば永遠と言い換えられるほど気の永いエネルギーなのです。まだまだ原理の段階で他の要素で尽きることはあるかもしれませんが、それでも利用可能なエネルギーとしてはこれまでの、石炭や石油、ウランなどとは比較にならない可能性を秘めています。この点でもエネルギー政策は変るでしょう。


 次に、

 ②-3若干それるかもしれないが、東海村臨界事故について詳しく知りたい

 に答えていきます。

 まず、東海村は茨城県にあります。どうしてか、というと日本には偏西風があり西から東に風が吹くからです。天気も西から東に変っていきます。ですから、茨城県で大きな事故が起こっても太平洋に行くので人が死ににくいのです。同じく静岡県にある浜岡原発も、最初は三重県の南部で作られそうでした。どうしてかといえば、東が海だからです。しかし、それが反対運動で浜岡になります。浜岡になった理由は幾つかありますが、1つには電車の東海道線の設置計画受け入れに迷っている時に、現在の藤枝⇒菊川⇒掛川⇒磐田⇒浜松ルートになってしまった、という悔しい経験があったからです。ここで国の計画に反対すれば、また豊かさから遠ざかってしまう・・・という思いです。浜岡は強い風が吹く地域、伊豆は犠牲になるにしても浜松市や静岡市は被害を間逃れるかもしれない、という立地なのです。ちなみに日本一の原発銀座福井は、南部と東部に高い山脈があります。ですから、必然的に北側に向かうという立地です。

 次に事故自体ですが、実はバイトが勝手に放射性物質を混ぜてしまって臨界に達してしまった、という事故です。役所に出されるマニュアル、電力会社のマニュアル、現場のマニュアル、作業員のマニュアルなどのように、名目上の作業手順と実際の作業手順が違ったことで起こりました。また、作業員本人たちが楽をするために、手抜きをして行ったのが原因の1つです。
 
 臨界事故は、世界に3例しか報告されていませんでした、福島原発事故までは。1つはチェルノブイリ(ソ連)、1つはスリーマイル島(アメリカ)、最後は東海村(日本)です。問題は、これらの事故から教訓を得なかったことです。チェルノブイリはソ連だから、つまりずさんな管理体制だから起こった、アメリカのはまあ小規模だったから平気、東海村も作業員のミス、で片付けてしまいました。後に少しは罰せられましたが、主に責任を取らされたのは、現場のリーダーです。
 分かりやすくいうと、コンビニ店員が手違いで事故を起こしてしまった。そして死んでしまった。責任は店長だけ、ということです。しかし、東海村の作業員の数人は放射性物質の危険性を教えてもらっていませんでした。しかも、マニュアルが使い分けられているというのを知らなかったから責任を取らなかった、のです。これでは、事故の反省が真剣に行われる訳がありません。これも他人任せなのではないでしょうか。強い憤りを感じていました。

 ただ、ここでもう1回、私たちに身の回りを振り返って見ましょう。
バイト先でマニュアル通りに行動しているでしょうか? ある静岡の地元の銀行では、店舗事に会計処理が違うと聴いたことがあります。役所にはどのように会計処理をするかのマニュアルが提出してあるはずです。しかし、店舗ごとにやり方があって転勤になるたびに覚えなければならないのです。こうしたマニュアルと実際の作業との違いです。
 さらに、私がすかいらーくというファミレスでウェイターをしていた時、「入り作業と上がり作業」というのがありました。バイトに入る前にゴミ捨てとか、在庫チェックとかの作業をするのです。タイムカードを押す前です。押した後、上がり作業がありました。これは労働基準法違反の行為です。労働の対価として金銭を貰うのですから、対価のない労働は求めてはならないのです。しかし実際にはありました。一時、サービス残業、という言葉が流行りましたが、これも同じです。現在も、何人かの友人はサービス残業をしている、と聴いたことがあります。「そうしないと会社がつぶれるんだよ」と言うのです。
 続けますと、他の大学の講義で書いたように、レジ打ちのバイトで、最後に金額が合わないとバイト代から引かれることがあったそうです。これは経理上の誤りと労働基準法の違反という二重の点で許されない行為です。しかし、実際にはそれがあります。
 挙げだせば切が無いでしょう。マニュアルや理論そのまま、法律そのままではない、という行為が日常生活に溢れています。よく「空気よめ」や「KY」などと言いますが、これもその1つでしょう。それらを私たち日本国民が受け入れているのです。
 
 もちろん、東海村の原発事故に関しては重大な違反であること、重要な教訓を引き出せなかったこと、講義では述べませんでしたが、事故調査に事故を起こした側の人間が入ったことなどがあります。しかし、その遠因は日本人全員にあるのではないか、と考えます。

 最後に事故後の話をします。

 『朽ちていった命 -被曝治療83日間の記録-』 NHK「東海村臨界事故」調査班 新潮文庫

 に詳しく載っています。この本によると、原発を稼動していながら、臨界した場合の被曝者を想定していなかったことが分かります。被爆者は病院で受け入れてもらえず、たらいまわしにされます。対策も事故後となってやっと動き出すものが多く、最後には東大病院に引き取られます。そこでまるで人体実験者のような扱いを受けた、と高木には読めましたが、そうではないと考える人もいるかもしれません。最後は、皮膚や組織が再生しないので、放射線を受けて遺伝子が傷ついて細胞の再生が出来ないのです、ボロボロになって亡くなって行きます。
 放射線の恐ろしさを認識する名著です。是非とも読んでみてください。

 以上が3つの質問への返答です。
 
 
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