講義録13 自動車と原発 失敗学から観た福島原発事故 原子力発電と公平性

(文意不明、文末の言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。ご了承下さいませ。また、講義内容に大分加筆しています。敬称は略させて頂きます。)

 降水確率が30%から60%を行き来しています。
気象庁の発表が夜60%から朝30%に変更されることがあります。降水地域も南北、東西へ行ったり来たり。自動車の免許を取らない、と決めた20歳から、梅雨の時期には振り回されてきました。

 そんな移り気な雨が始まった頃に植えられた苗は、シュンシュンと伸び始め、20センチ、30センチと凄い速度で成長しています。出ているかどうか分らない時もあるお日様と清涼な水、豊かな国土が育む姿が、日々、田んぼにあります。学生の皆さんも、大学という豊かな環境、食べ物や電気ガスや道路などの清潔で恵まれた環境を基にして、ためになっているかどうか分らないこの講義を役に立てて欲しいです。
 苗はそれぞれの個性や環境で伸びていきます。『古事記』では人は、「ひと草」、「ふた草」と数えました。人は草なのです。神様は「ひと柱(はしら)」、「ふた柱」と数えます。神様は木なのです。両者とも日本の国土に根差し、清涼な水を頂き、お日様によって成長します。大昔の人が、この環境を大切にしてくれたから、私たちがある、ということを心に留めておいて欲しいのです。それが、倫理の根本であり、福島原発事故後を考える上でもぶれない視点を与えてくれる、と考えます。そして、何よりも学生の皆さんが大きな稲穂を実らせて欲しいからです。
 それを忘れると、金と保身だけになってしまい、悲惨な事故、事件を招いてしまうのでしょう。敗戦後の教育のせいでしょうか、福島原発事故を始めとする日本の原子力政策の根幹にそれがある、と国会の事故調査委員会がまとめました。事実の詳細が判らずこれまでのニュースの印象になりますが、大津市の中学生自殺の事件でも、教育する側に金と保身だけがあるように感じられてなりません。
 
 枕話は昔の歌と古い人の嘆(なげ)きのような話になりました。

目標

:リスクトレード・オフなどで自動車の事例を考える
:同じ統計データ(事実)を使っても、正反対の説が出ることを知る
:技術における暗黙知とその重要性を、現在の技術者の状況で知る
:福島原発事故の情報を失敗学を通して整理する
:再発防止策の成功例をチャレンジャー事故で知る
:高木の説である株価を含めた長期信用による再発防止策、初期事故予防策が通じない「公共サービス」を知る
:原子力船「むつ」の失敗が日本の原子力政策の組織的問題「企画変更の不作為」の典型例であることを知る
:原子力発電の長所と短所を自らの視点で整理する

紹介した本

 『自動車事故の科学 こうすれば事故をなくすことができる』 林 洋著 大河出版 1994年(紹介したプリントで該当箇所)
 『失敗百選 : 41の原因から未来の失敗を予測する』 中尾 政之著 森北出版 2011年(大学所蔵は2005年:講義参考図書)

紹介したプリント

 『自動車事故の科学 こうすれば事故をなくすことができる』 林 洋著 大河出版 1994年 10,11P

配布プリント

 :1枚目 (表)

 『失敗百選 : 41の原因から未来の失敗を予測する』 まえがき ⅷ,ⅸ 14,15P

  1枚目 (裏)

 『失敗百選 : 41の原因から未来の失敗を予測する』 38,39,338,339P

 :2枚目 (表) 

 『失敗百選 : 41の原因から未来の失敗を予測する』 90~93P

 (裏)はなし。
 『自動車事故の科学 こうすれば事故をなくすことができる』 林 洋著 大河出版 1994年 10,11Pの予定でしたが、時間の都合上印刷出来ませんでした。

宿題

 なし

講義中の問一覧 

 問1 自動車はリスクトレードオフ出来ますか? 
 問2 配布プリント1枚目(表)、表Ⅰ.3 シナリオの共通要素 で福島原発事故の原因と考える箇所に丸をつけなさい
 問3 大飯原発再稼働が許容可能であると論じなさい
 問4 大飯原発再稼働が許容可能でないと論じなさい
 問5 原子力発電を「公衆の福利」から観た場合、日本国の良かった点、悪かった点、電力会社の良かった点、悪かった点、国民の良かった点、悪かった点をそれぞれ挙げなさい
 問6 感想


 -講義内容-

今回の講義は、これまで述べてきた技術者倫理の観点を、自動車と福島原発事故でさらに磨き上げたいという講義です。失敗学として有名な中尾政之先生の『失敗百選』を使います。その焦点は、これまで出てきたキーワード、リスクトレード・オフ、費用便益分析、許容可能、公衆の福利です。

 それでは『失敗百選』について軽く説明します。
この本は、この分野で大変素晴らしい本で、情報がまとまっているし、データベース化しています。失敗の類型が41に分けられていて判りやすいです。実は、教科書にしようか、と迷ったくらいの本でした。ただ、ネックは3500円+税、という高値、もう1点は、学生の自発性が倫理の出発点である、と考える高木とのズレでした。大学の講義で扱うには膨大な情報量と事故事例であり、学生の皆さんが、高校の教科書のようにして読むことを懸念しました。つまり、この講義をより深めるために是非読んで欲しい本なので、オススメしました。

 それでは、この本の「まえがき」に書いてある自動車事故について取り上げていきます。今回は、教科書VS高木の構図のように、中尾『失敗百選』VS 林洋『自動車事故の科学 こうすれば事故をなくすことができる』の構図にします。

 自動車事故によって年間1万人の死亡、100万人の負傷者の事故があります。

     事実                   →論拠
 
中尾先生 1970年から2000年までの交通事故のデータ  →1980年には下げ止まっている
                          →事故が増えているのは事件を隠さなくなったから
                          →事故を隠さなくなったからリコールが増えた
                          →医療過誤も同じ類型である

林洋先生 1960年頃から2000年までの交通事故のデータ →下げ止まっているが、その後の事故対策をしても減っていない
                          →だから、現在の事故対策は誤った事故対策である
                          →事故対策は自動車(メーカー)の対策であり、事故対策は自動車と歩行者の接点を減らすことである

 となっています。
 同じ客観的事実を見ても、そこから導き出される筆者の考え方(論拠)が全く異なってきます。ちなみに、データを探すと以下のようなものありました。
:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/6820.html
 2つの筆者の引用文にないのは、「高齢者65歳以上」が増加し「若者」が人口比よりも低下していくのは、平成5年前後という点です。また、「歩行中」の死亡率低下が殆どなく、「運転者」の低下が顕著であることが挙げられます。

 林洋先生は『自動車事故の科学 こうすれば事故をなくすことができる』で、事故対策は歩行者と自動車の接点を減らすことが大切であるのに、現在の自動車の安全対策は、日本国政府(運輸省)、企業、大学が「原子力ムラ」のように「自動車ムラ」を作っていて、本来すべき安全対策が取られていない、と警鐘を鳴らしています。

 高木が補足したのは、シートベルトの義務化は高速道路で昭和60年(1985年)、一般道で翌年の昭和61年(1986年)
です。先ほどの統計データを見ると、丁度その頃から2次ピークがやってくるのです。つまり、シートベルトの義務化は死亡者数、負傷者数を減らしていないのです。社会科学では相関関係が一義的に定まりませんが、増えています。さらに、エアバックやチャイルドシートなどの導入も極めて高い効果を挙げているとは言い難いものです。ただし、15歳以下の死者数は長期的に下がっており、さらに年間で300人を切っておりチャイルドシートの効果は明確になりません。10倍前後の極めて高い死者数となっている「高齢者」対策が遅れています。
 こうした数々の事故対策や法律による規制が、「高齢者」対策でない点は、林先生の主張に説得力を与えています。高木の個人的な体験からすると、自動車業界は確かに「自動車ムラ」という体質が感じられます。例えば、車検制度です。新車で3年後に車検を受けなければならないそうですが、「メイドインジャパン」の代名詞になるような自動車が果たして3年後に必要なのでしょうか? もちろん、チェックは必要でしょう。しかし、何時でも必要なのです。事故の統計学として3年後にすることがどれほどの事故予防につながっているのでしょうか。例えば、アメリカでは車検制度はありません。排気ガス検査はあるようですが6000円程度のようです。対して日本の車検は5万円以上かかるようです。その他、自動車に関わる数々の無駄が民主党政権になって明らかになったのもありました(その後が続きませんでしたが)。林先生の本によると事故対策を理論的に基礎づける大学の先生が、そうした外郭団体に入る実例が載っていました。
 こうした視点は、「国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」の報告書と共通するものがあります。
 7月5日に国会の両院議長に提出されたものが、ダウンロード出来ます。
:http://naiic.go.jp/

 対して、中尾先生は、事故が増えているような印象があるがマスコミの宣伝によってあるが、実際には下がっていると捉え、「インターネットのよって内部告発も簡単になったので「隠すと損する」と皆が感じるようになったのも確かである。その結果、事件は隠さないから急上昇した」(ⅸ)と述べている。

 ここで両者の主張を事故対策に絞ってみると

中尾先生:事故対策は十分である。事故が増えたのは隠さなくなったからだ
 VS
林洋先生:事故対策は不十分である。事故が減らないのは根本的な考え方が間違っているからだ

 となります。
 ポイントは、同じ統計データ(事実)を用いても、正反対の説が出る、ということです。自動車という正確で広い範囲に渡る事象であっても、このようなことが起こります。もし、さらに狭い範囲の事象、例えば宇宙ロケットやプリンターや配管など、であれば不正確なデータや長期的ではないデータなどの制約が出てくるでしょう。さて、こうした事故対策から、自動車そのものを技術者倫理で考えてみましょう。

次に、リスクトレード・オフと自動車についてです。
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