講義録12 技術と社会背景から観た原子力発電と福島原発事故

(文意不明、文末の言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。ご了承下さいませ。また、講義内容に大分加筆しています。敬称は略させて頂きます。)

 7月に入りました。古い名前は「文月(ふみづき)」で、「穂を含む月=含み月=文月」という説があります。秋の実りを前にして、シュンシュンと伸びゆく月です。本来は7月下旬から9月上旬を指しました。講義もラスト4回となり、まとめとなってきました。これまで積み上げてきた知識や見識をさらに深めていく頃です。
 また、私事ですが娘が産まれました。これも1つの「文月」でしょう。自分の自由になる時間=遊ぶ時間がかなり減り、それに耐えながら、自分が成長していくのが分かります。これまで沢山の宿題を出してきましたが、それに耐えながら、学生の皆さんも成長してくれれば、と願っています。

 枕話は完全に講義に関わる話になってきました。

目標

:原子力政策の抱える矛盾を生み出す根本要因を知る
:福島原発事故の内容を、仲間の宿題で、さらに詳しく知る
:技術と社会背景の相補性を、具体的事例で知る
:学校教育で教えられてきたことと別の見方を知って考える
:敗戦後の既得権益が、原発推進側も原発停止側も両側に及ぶことを知る
:敗戦後の社会矛盾の根本原因と原発の根本原因の共通点を知る

紹介した本

 なし

紹介したプリント

 「関西電力様への多奈川第二発電所の問い合わせ内容」 高木の質問メールと関西電力様からの回答メール
 http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-156.html

 尚、高木のコメントは講義録11-5をご参考ください。
 http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-161.html

配布プリント

 :1枚目
 (表)、(裏)
 
 講義録10の宿題記入例-Aくん-

 題1:福島原発事故原因の技術的原因(なるべく6つの安全を挙げながら)を3つ挙げなさい。
 題2:現在、原発の安全基準が(6つの安全のどれかの)技術的安全を、満たしている、と論じなさい。
 題3:現在、原発の安全基準が(6つの安全のどれかの)技術的安全を、満たしていない、と論じなさい。
 題4:福島原発事故原因の根本(社会背景)の原因を挙げた上で、考えを述べなさい。

:2枚目
 (表)

 題1記入例-Bくん-
 題3記入例-Cくん-

 (裏)

 題4記入例-Dくん-
 題4記入例-Eくん-

宿題

 なし


 -講義内容-

 まず、前回で述べた関西電力の紹介した多奈川第二発電所について、の問い合わせのやり取りを説明しました。
「関西電力様への多奈川第二発電所の問い合わせ内容」 高木の質問メールと関西電力様からの回答メール です。紹介したプリントの項目にあるように、講義録としての考察は「講義録11-5 真夏の電力供給と経営的問題」にあります。要点は、説明責任と情報公開付不足であり、技術者倫理の「インフォームドコンセント」を欠いた状態にある、と言える、です。そしてそれは関西電力株式会社様の経営陣の判断ミスだと考えます。
 これらを口頭で説明しました。特に

 「2~3年程度の期間が必要であると見込んでおります」

 という文章です。どうして「2~3年」という1年も開きがあるのでしょうか? もう1つ、語尾が「見込んでおります」です。「~のように計画し、全力を挙げております」ではないのです。細かい指摘のようですが、こうしたきちんとした情報公開と説明責任は、最近年、企業に求められるようになってきました。地域独占と原発の検査管理独占があり、一般企業の説明責任や情報公開を果たさない姿勢になっているのかもしれません。

 次に、前回の宿題についての説明です。簡素化のため、記入例Aさん、記入例Bさん、という表記で述べていきます。

 記入例Aさん

 素晴らしい点は、文章を簡素にまとめていた点です。よく調べてきていることが判ります。例えば、問1は、
①非常用発電機の設置場所が高くなかった!!
②防潮堤が高くなかった!!
 ↓
このため交流電源を確保できなかった。
~水素爆発~
③排気管の設計ミス!!
 ↓
+α 水素爆発防止策が後手に回った事で水素爆発になって被害大!!

 のように流れがきちんと判り、しかも原因が簡素にまとめられています。全体像が判り易く、他の学生の皆さんに理解しやすい内容でした。

 他の点としては、重要な点を殆ど抑えていた点です。

・IAEAの5層の防護が、日本では3層しかなかった点
・オフサイトセンターはいまだ見直し作業の最中
・広域に放射線量を監視する体制が整っていない
・避難計画が硬直化して見直しがない
・大飯原発の直下には活断層と思われる「破砕(はさいたい)帯」がある

 です。講義では「ベントがない」や「非常用電源の冗長性がない」などを付け加えました。

 また、安全基準を満たす、という問3では、過去、現在、未来と分けて(引用文がそうだったのもあるかもしれませんが)、きちんと書いてあります。特に、<東京電力福島第1原発事故の技術的知見から得られた30の対策>を全て手書きで書いてくれました。肯定と否定の両側から見れる素晴らしいレポートです。出典が経済産業省であり、最後のまとめも素晴らしかったです。

 「原発だけではなくあらゆる所でこのような安全基準の見直しをして、今後このようなことが起きないように国の誇りを持って行ってもらいたい」

 記入例Bさんに行きます。

 優秀な点は、水素爆発までの経過を丁寧に書いてくれた点です。

・事故原因は原子炉を冷やすことが出来なかった。
・海水を最初使用していたが塩が溜まったので淡水に切り替えた。(→塩が溜まると原子炉が使えなくなる)
・冷却水が減少し燃料棒が露出した。
・燃料棒の露出によってジリコニウムが溶けて冷却水の落ち、水と化学反応を起こし水素発生
・原子炉内(燃料棒の外側の)が高熱になっているので水蒸気が水素と酸素に分解された
・原因不明だが格納容器に亀裂が入り、水素が漏れ出して水素爆発が起こった。

 以上の流れをもっと丁寧に説明してくれました。この説明によって、本質安全を目指す事故対策が考えられます。
☆格納容器の耐震をもっと上げる必要がある
 :原因不明ですが格納容器は地震で壊れたのかもしれません。とすると津波による爆発ではなく、地震により格納容器が傷つけられたことも爆発の原因となります。ただし、再三述べているように原子炉内に入れないので現時点では判っていません。後
☆ジリコニウムを別の素材に変える。
☆原子炉内が高温になった場合の排熱システム(ヒートシンク)を別の構造のものを取り付ける
 などなどです。

 記入例Cさん

 素晴らしいのは、IAEAの「五重の防護」と日本の「五重の壁」を丁寧に説明してくれたことです。

日本の「五重の壁」は、 ①ペレット(材料) ②被覆菅  ③原子炉圧力容器 ④格納容器   ⑤原子炉建屋
IAEAの「五重の防護」は、①異常の発生防止 ②異常の拡大防止 ③影響緩和 ④過酷事故対策 ⑤防災対策
                                    
 ④と⑤がありません。日本はただ、覆っていますよ、だけです。IAEAはチェルノブイリ事故を受けて④と⑤を追加しました。日本では無視しました。この点を言わなかった専門家がいない訳ではありません。毀誉褒貶相半(きよほうへんあいなか)ばする武田邦彦先生は、④過酷事故対策としてヨウ素の配布とオートバイの設置を訴えました。しかし、その試みは結果として無視されました。高木も福島原発事故以前にこの④と⑤の欠陥を訴え続けてきましたが、チェルノブイリ事故の再発防止を考えると、④と⑤は考えざるを得ません。この点がCさんの説明で判りやすく学生の皆さんに伝わったと思います。
 ちなみに、大飯原発付近の各家庭にヨウ素剤が配布された、と聞いたことはありません。オフサイトセンターや免震重要棟もなく④と⑤は大飯原発再稼働でも無視されています。

 Aさん、Bさん、Cさんは色々な所からデータを引っ張って来てくれそれぞれ素晴らしい説明をしてくれました。

 続いて記入例Dさん、Eさんは「問4 福島原発事故の原因の根本(社会背景)の原因を挙げた上で考えを述べなさい」が素晴らしかったです。
 
 Dさんは、1号機約8時間、3号機約32時間、2号機約63時間は原子炉が制御可能であった事実を挙げ(多少違う説もありますが)、海水注入をためらった点を指摘します。その上で、

 「東電経営陣が「廃炉による巨大な経済的損失を恐れ、惜しんだ」

と結論付けます。そして「「根拠のない安全」と「企業の欲望」の2つを思い知った」と続けます。高木も同感です。講義の当初から「福島原発が大災害になったのは人災である」とはっきり言いきってきましたが、このような指摘に同感するからです。また、海水注入を中止させようとした菅首相や斑目原子力安全委員会委員長などなどの人々にも重大な責任がある、と考えています。そして斑目委員長は原子炉の専門家ではありません。そうした文句を言わない、文句を言えない人を委員長に推薦して実質的に決定した東京電力や経済産業省や各大学の先生などの「原子力ムラ」の人々が人災を引き起こした、と考えています。これは、『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』や「国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」とも共通する考えです。
 表に出てきている情報だけで、このような結論に達することができることは素晴らしいです。

 Eさんは、蒸気系の冷却システムが8年前に安全装置が外されていたから、という事実を指摘します。つまり、現在ある安全対策も外してしまった訳です。そうした根本の対策不足を指摘した上で、「危機管理体制の甘さ」を述べます。それを「不条理な人間の怠惰という欲望」と見つめます。大変深い考察です。
 高木は、福島原発事故の根本要因として、今回の講義録12で指摘するように国際政治と敗戦後の既得権益化して排他的になった組織風土を挙げます。しかし、その奥に潜むもの、うごめく得体のしれないものを感じています。それは、「学歴が高ければ偉い」や「テストの点が取れれば出世できる」などの基準で社会を回してきた敗戦後日本とそれに結び付く(日本)人のうごめくものです。正体は私の中にも学生の皆さんの中にもあるのでしょう。それは何なのか、を考えてきました。Eさんは、それを「不条理な人間の怠惰という欲望」と見つめます。何と深い慧眼(けいがん)なのでしょうか。素晴らしいです。

 以上の5人のレポートが素晴らしかったので、全員に配布して読み上げながら解説しました。
 学生の皆さんが講義をよりよいものにしていってくれています。先生は楽をさせてもらっています。有り難う御座います。

 次は、敗戦後の国際政治と原子力発電です。
 
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