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講義録11-1 具体的に検討する際に大切なこと

 大飯原発再稼動の安全基準について踏み込む前に、具体的に検討する際に大切なこと、を述べていきます。

 重要な点は2点あります。

①主張の前提となる事実に客観性を求めること

②肯定側と否定側の両方の主張を取り入れること

 の2点です。それぞれ詳しく述べていきます。


 -①主張の前提となる事実に客観性を求めること-

 原子力発電については、特に「①主張の前提となる事実に客観性を求めること」が大切ですが、他の分野でも同じです。大学以上で求められるレポートや論文などでは、必ず、求められます。純粋に学術の向上だけを目指す大学界でも、データの偽装が後を絶ちません。最近有名になったのは、人間のIPS細胞です。
 IPS細胞とは、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)で万能細胞の一つです。京都大学山中伸弥教授が所長を務めるiPS細胞研究所があります。人類の医療を一気に変えてしまう可能性を持つ技術で、「はやぶさ」の宇宙技術と共に世界に日本が誇る技術の1つです。その研究が一時的に停滞を余儀なくされたのが、「ES細胞捏造(ねつぞう)事件(または論文不正事件)」として有名になったデータ捏造事件です。
 体細胞のクローニングは、結果的に製造物が出る、のですから、他の人文科学や社会科学のように結果的に製造物が出来ない分野よりも、捏造が判り易いのです。しかし、このようなデータ偽造が出てきてしまいます。この例が特別なのではなく、自然科学の分野や技術の分野では結果が判断しやすいために、データ偽造が明確になりやすいのです。
 大学界ではどの分野でも事実の客観性を求められます。穏やかに、ですが一般社会でも求められます。データ偽造が発覚すれば、企業としての信頼を失い、緩やかにその企業は社会の中から排除されていきます。そうした排除が日本では健全に働く社会です。他方、原発は、独占企業で誰でもが電気を使わなければ日常生活を送ることが出来ないので、これまで数々の発覚したデータ偽造があっても、社会の中から排除されないのです。
 原発再稼動の問題で、

 「そんなことを言ったって電気をみんな使っているだろう」

 という台詞は、電気の選択が出来た上で成り立つ言葉であります。その選択を失った状態で言葉を言う、電気関係者などの人たちは、「データ偽装がばれると社会的信用を失う」という当たり前の前提を受け入れられていない人なのです。つまり、①主張の前提となる事実に客観性を求めること、を放棄した発言なのです。技術者倫理から受け入れられない発言である、と高木は考えます。
 
 さて、具体的に述べていきましょう。

 -①-A)まず、1次データ(資料)と2次データの違い-

1次データ:当事者が出すデータ :原子力安全・保安院や関西電力など

2次データ:1次データを引用したデータ :新聞や本など

 ①主張の前提となる事実に客観性を求めること、の場合には、1次データが重要になります。ですから、今回も、原子力安全・保安院などのデータを使いました。新聞や本などのデータは、1次データの解釈が入ります。というのも、配布プリント1枚目(表)の

「添付 :関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(一次評価)に関する審査書(PDF形式:8,324KB)」 
http://www.meti.go.jp/press/2011/02/20120213001/20120213001-3.pdf

 は、全部で214頁あります。この1次データを読んだ上で、新聞記者は数十行の新聞記事にするのです。数十行にする際に、記者や編集者、特に日本では編集キャップや編集長の解釈が入ってきます。これではより客観的とは言えません。
 個人ブログでよくあるのが、新聞記事を元にして自分の解釈を書くものがあります。このブログでも同じことがありますが、その危険性は、1次データの解釈の上に、さらに解釈を加えていることです。この点は留意しておかなければなりません。さらに個人ブログでは、出典を明記しなかったり、新聞記事の一部だけを抜き出して、当人の個人の意見に合わせるように日記を書くこともあったりします。ですから、学生の皆さんへの宿題では、出典の明記と、個人ブログは不可の点を伝えています。

 さて、さらに上があります。

 -①-B) 1次データを読み取るためのデータ-

 1次データを文字のまま読み取ること、は実は非常に困難が付きまといます。というのも、1次データの解釈が、書いた人の解釈と読みとる人の解釈がずれることが、よくあるからです。それを防ぐためには、1次データを読み取るためのデータが必要になります。

 具体的に言いますと、原子力安全・保安院の添付資料は関西電力が書いています。ですから、この添付資料を書いた人に直接会って、どういう解釈で、どういう目的で、どういう発想で書かれたのか、と聞くことが大切になります。
 さらに、過去の関西電力のデータは信頼が置けるものかどうか、という過去のデータを検討するのも必要になります。
 また、添付資料が作られる元ととなるデータがある訳です。このデータは、表に公表されることはないでしょうが、原子力安全・保安院の事務局や経済産業省の方々なら内覧出来るのです。高木は残念ながらアクセスできませんので講義では取り上げられませんが、この点を踏まえる必要性があることは認識して欲しいのです。

 例えを出しましょう。

 「ふじ(富士)は日本一の山」

 という言葉があります。「富士山」という文部省唱歌の1番の歌詞です。

 あたまを雲の上に出し
 四方(しほう)の山を見おろして
 かみなりさまを下にきく
 ふじは日本一の山

http://www.youtube.com/watch?v=3TeSL7WRTWo&feature=related
 
 この「ふじは日本一の山」という歌詞の意味は、単に「3776メートルで高さが単純に日本で一番高い山だよ」という意味でしょうか? 文字だけを見ると「あたまを雲の上に出して、山を見下ろすから高い」とだけ言っています。1次データだけを見ると、この解釈もあります。むしろ、文字をそのまま読み取った解釈として成り立ちます。外国からの留学生に接していて富士山にこめる日本人の心を説明することが多いのですが、「ああ、綺麗だね。高いんだね」というだけの留学生も多いのです。

 しかし、日本人が「ふじは日本一の山」という歌(言葉)を聴くときに、単に高さが高い、とか周りの山より高い、だけではなく、そこに深い美しさをこめているのです。これは、昔から富士山を特別に歌った歌が多いこと、富士山を見るために旅行する人がいたこと、例えば織田信長、さらに関東甲信越に「富士見」という地名があること、江戸末期に富士山にお参りするための富士講が出来、隆盛を誇ったので禁教となったこと(その後も続きました)、「三大霊山の1つが富士山であること」などなど数々あります。
 これらの1次データの解釈は、当事者に聞き取り調査などをしないと判明しません。
 
 このように、①-B)1次データを読み取るためのデータ-が重要なのです。繰り返しますが、今回の講義録ではこの点が欠けていることを付け加えておきます。ただし、それを補うために、講義録11の最後で述べたように、関西電力様にメールで問い合わせをさせて頂きました。少しでも当事者にお話を伺うためです。

 
 -②肯定側と否定側の両方の主張を取り入れることー

 これは、これまでの講義録で度々書いてきました。ですので今回は、直ぐに具体的な例に行きたいと思います。

 ②ーA) 肯定が決定されている場合に否定側からの検討をすること

 大飯原発再稼動は現在の日本国政府の中で決定されました。つまり肯定されたことになります。原子力安全委員会が疑問を呈している点もありますが、再稼動についてはOKを出しています。これから、肯定否定を決めるのではなく、既に肯定が決定されている場合、その肯定のデータを検討して否定側に立つことが「公平さ」につながると考えます。
 ですから、「敢(あ)えて」、否定的な立場に立って今後の検討を重ねていきます。学生の皆さんの中には、この「敢えて」という点を聞き漏らしてしまった人もいるようでした。残念ながら私の伝達不足でした。
 
 ②-B) 肯定側の1次データを使って、否定的な検討をすること
 
 つまり、原子力安全・保安院や関西電力側の①次データを使って否定的な検討を加えていくことです。全否定のための検討ではなく、あくまで工学的安全という観点からに限ります。その際に大切なのは、「リスクがゼロ」は工学的安全ではない、という点です。この点にも留意しながら、検討をしていきます。

 ②-C) 過去の事故が活かされているか検討すること

 言うまでもなく、福島原発事故と、事故後の教訓が大飯原発再稼動の安全基準に入っているかどうか、を検討していきます。これは否定側に限らず検討していきたいです。ただし、注意点があります。それは原子炉の中の状態がはっきりしていないので、あくまで福島原発事故の原因については、原子炉の外に限る、という点です。再三繰り返してきましたが、付け加えておきます。

 以上の②-A)~②-C)が、②肯定側と否定側の両方の主張を取り入れること、の具体的な手法です。この講義の最も重要なテーマは「公平さ」です。「公平さ」の具体化が、①と②になります。

 次は、大飯原発再稼動の安全基準についてです。
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No title

ご出産おめでとうございます(●^o^●)
家族円満お過ごしください(^^)

有り難う御座います

理工科生さま

お祝いのコメントをどうも有り難う御座います。
家庭円満を目指して、頑張ります。

出産後、女性はノイローゼやウツ症になる人が多いです。しかも、2,3時間で起こされますから、それがずーっと続くので大変です。乳がでないので変ってあげられないので、家庭円満を目指して、頑張ります。
プロフィール

    名前:高木健治郎

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