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講義録10-3 身の回りの宗教行動

 宗教に基づく労働観に入る前に、問いを出しました。

 問1 身の回りで宗教に基づく行動を5つ以上挙げなさい。

回答例:お盆、お正月、クリスマス、墓参り、お彼岸などです。

その他素晴らしい例としては、登山、祭り、七五三、食べる時に「頂きます」、西欧のレディーファーストなどです。

 各クラスで解説が異なりましたが、それぞれ挙げていきます。

・登山
 登山は神道が広がる前からある山岳信仰を指しています。静岡県には世界で最も美しい山、富士山があります。名前の由来の一説に「不死山」というものがあります。人は死んだ後、死体のそばにいて徐々に清きものになっていき、山の上に上がっていくという考え方です。ですから、美しい山には清きもの=神になった霊魂があつまる、という信仰がありました。有名なのは羽黒山などですが、日本の三大霊山は、青森県の恐山(おそれざん)、(山頂は)静岡県の富士山、そして鳥取県にある大山(だいせん)です。死後に恨みがあると身近に残っている、という考え方は、映画や小説、アニメの中に度々出て来ます。「トイレの花子さん」、「こっくりさん」などなど。そもそも、菅原道真の恨みを恐れて出来た天満宮の神社などもその典型例でしょう。学問の神様が、そもそも、死んだ後に恨みを持つのを恐れたから神様になった、というのです。面白いですね。ちなみに、この信仰がないので、ヨーロッパやアメリカやアジアには神社がありません。

・お盆お正月
 日本では死者が神様になります。死者とは血のつながったご先祖様のことです。世界の7割の人が信じているような宇宙を作った神様ではありません。おじいちゃんおばあちゃんにそんな力はありません。そのご先祖様がまとめて帰ってくるのがお正月です。死んだ後まだ清きものになっていない魂はお盆に帰ってきます。そうやって年に2回帰ってきたのです。仏教にはそもそもお彼岸はありませんでしたが、高木の考え方では、これらの習慣を真似て、春と秋にお彼岸を作りました。日本の仏教では死者を弔(とむら)うようになってしまいましたし、むしろ死んだ人しか相手にしていません。東日本大震災でも殆どの仏教教団は沈黙したままでした。実際に現地にいって炊き出しや住む場所の提供をしないという意味で沈黙でした。困った人を助ける、というのが仏陀の心です。これは、講義録10-1 社会背景と地球的視野
http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-148.html
で書いたように、宗教教団と宗教の違いです。そういうことにいちいち目くじらを立てずに、死者を、ご先祖様を日本人はずっと大切にしてきました。

・七五三
 七五三の前に初宮参りを述べます。初宮参りは、神社にいって「こんなに大きくなりました」とご先祖様に報告することです。日本の死生観は、この世で死ねばあの世に生まれ、あの世で死ねばこの世に生まれる、という死生観です。これは『古事記』に書いてあります。具体的に映画「千と千尋の神隠し」に描かれています。すると、この世で赤ん坊ということは、あの世で死んだばかりの人、ということになります。高木の考えでは、「ですから、赤ちゃんは頻繁(ひんぱん)に死ぬ事が多い」という説明を日本人はしたのではないでしょうか。昔は死んだと思った人が、あの世を見て帰ってきた、という例も多かったでしょうから。ですから、初宮参りは「ご先祖様への報告と共に、この子は名前もあるからあの世に取り返さないでね」という願いもこめられていた、と考えます。そして七五三も同じく子供の死にやすい区切りを経た後に行われますから、同じ考え方があったでしょう。ちなみに、七五三の形式になったのは比較的新しく各地方によって違いますが、根本精神は同じだと考えています。

・食べる時「頂きます」
 「頂きます」は、英語やその他の言葉に訳せない、訳しにくい言葉だと言われます。その理由は「あなたの命を頂きます。」という意味だからです。あなたの命とは、私たちと同じ命です。しかし、『聖書』では動物や鳥は人間(男)のために神様が作られました。ですから、感謝する必要もありませんし、ですから「神よ感謝します」と言います、動物の命と人間の命は同じではないのです。私たちの命と食べ物の命が同じ、という起源については諸説ありますが、高木は、死体と稲作に注目します。『古事記』には、死体から多くの神様が生まれたという話があります。
 昔、死体は家の側や山に捨てられました。そこに雨が降り、栄養と水が流れて来てお米がとれます。つまり、ご先祖様が居たから私たち日本人1人1人がいて、同時にお米も育っていくのです。ですから、同じ命がある、と考えられるのです。お米には沢山の神様がいる、と言いますが、それはご先祖様の死体があるから取れる、という意味だと考えています。
 さらに、例えば、日本では戦争で死んだ鳩(はと)や馬のお墓があります。静岡市では陸軍墓地に人間のお墓の横に同じ大きさで立っています。しかし、アメリカやヨーロッパでは鳩や馬のお墓がありません。それは同じ命として扱っているかいなかの明確な証拠です。

・日曜日
 日曜日は、キリスト教のお休みの日です。『聖書』では、神様が6日で天地を創造した後、1日休みます。ですから、ユダヤ教は土曜日がお休み、その後で来たキリスト教は日曜日、その後のイスラム教は金曜日です。明治維新の時にキリスト教が国際基準だったので日曜日を合わせてお休みにしたのです。これも明確に宗教に基づく行動です。

金曜日:イスラム教(最後)
土曜日:ユダヤ教 (最初)
日曜日:キリスト教(2番目)

 となります。江戸時代まで日本ではお盆とお正月(盆暮れ正月)だけがお休みでした。他にお祭りの日などもお休みでしたが、基本的にはずっと働いていました。では、江戸時代の人は働きものだったのでしょうか?
 いえいえ、そんなことはありません。大工さんの日記が残っていますが、雨の日はお休み、年間80日くらい、そして働いても、午前中2時間、午後3時間くらいでした。これで子供2人と夫婦が暮らしていけました。ですから、現代日本人の方がよっぽど働き者です。朝8時くらいに出て8時くらいまで働く人が多いのではないでしょうか。有給休暇も実態として取る人は数少ないのではないでしょうか。

・レディーファースト
 西欧では明確な女性差別が存在します。それは『聖書』に「人間(男)のアバラからつくられた女」、「男(アダム)をだましてリンゴを食べさせた女(エバ)」と書いてあるからです。ローマ・カトリックなどでは現在でも女性が神父(神の代理)になることが出来ません。「女性は男の支配を受けなければならない」とも書いてあります。ですから、「女性を大切にする」が出てくるのです。対等ではないから、優先するのです。日本ではレディーファーストはあまり見られませんが、家庭内暴力はアメリカなどに比べて10倍~40倍以上も低いのです。これは次の『聖書』と『古事記』で述べます。

 さて、最後に具体的な事実を挙げましょう。

 日本にはコンビニが4万強あります。お寺は7万、神社も7万です。神社は選任で管理する人がいない場合も多いですが、単純にコンビニの3倍以上です。これらのお寺や神社を、日本人が目に見える形、見えない形で支えて来ました。どれだけ多くのお金をつぎ込んでいるのでしょう。お守り、おみくじ、お札などなどもどれほどあるでしょうか。さらに、各家庭に仏壇や神棚もあります。これを入れると世界でダントツの宗教施設がある国が日本国になります。
 さらには、お正月には日本人の殆どの人がお参りにいきます。これほど国民が一体になる宗教イベントは、イスラム教のメッカ巡礼くらいではないでしょうか。ちなみに、メッカ巡礼は100万人規模で、明治神宮は300万人規模です。イスラム教は20億人規模ですが日本人はその20分の1の1億人強です。どれほど、宗教的行動をとっているかが分かります。
 付記として、この話をインドのある留学生にしたら、「インドのディワリ」も大きなお祭りですよ、と教えてくれました。

 平成24年度講義録の下に、「なぜ、「千と千尋の神隠し」は大ヒットしたか」 -文化としての「千と千尋の神隠し」-」を載せましたが、これに書いてあるように、お土産に食べ物を買っていく、のも日本人の宗教的行動になります。こうした例は、数限りなくあるのではないでしょうか。

 まとめますと、現代日本人は「宗教はちょっと・・・」と言っていますが、それは意識の上だけのことだと考えます。実際にしている行動を見れば、世界で最も宗教的な行動をしているのが日本人、と言えるくらい行動しているのです。あるいは、宗教が多く行動の根本である、とも言えるでしょう。

 次に、それらの中から労働観を取り上げ、古典を比べてみたいと思います。『聖書』と『古事記』に見る労働観です。
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