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講義録8 内部告発の是非と条件 公益通報者保護法とその実態


 (文意不明、文末の言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。ご了承下さいませ。また、講義内容に大分加筆しています。)

 5月は「皐月(さつき)」。早苗(さなえ)の月、つまり、「苗を植える月」という意味です。日本人はヨーロッパの暦が来る前に、お米を生活の中心に考えてきた、ということが分かります。他方、英語の5月は「May(メイ)」。古代ローマの暦で豊穣の女神「Maia(マイア)」からです。6月は「水無月」とは田んぼに水を入れる月(水不足を気をつける月)、他方、ユピテルの妻「Juno(ユノ)」から「June(ジューン)」です。
 日本ではお米の自然のリズムを月の名前にし、古代ローマでは「特定の神様」を月の名前などにしました。日本の集団主義と古代ローマの英雄礼賛主義がはっきりと分かるのではないかなぁ、と思いました。そんなことを考えながら、静岡市中心部にある「谷津山(やつやま)」を、1歳10ヶ月の息子と登りました。標高100メートルほどですが、30分をかけて息子は登りきりました。学生の皆さんも5月、6月の自然の大らかな恵みを受け、学問の上でも芽吹き、伸びていってもらいたいです。

 今回も枕が長くなりました。


目標

 :内部告発と公益通報者保護法を技術者倫理から考える 
:日本国民の義務について認識する
 :日本国民の義務と内部告発を比べてみる
 :内部告発における問題、法律上OKでも倫理的にNOのケースを知る
 :内部告発に対する2つの立場の対立を知る
 :内部告発における成功とは何を意味するか考える
 :公益通報者保護法の特徴を知る
 :公益通報者保護法の実態を知る
 :内部告発と公益通報者保護法のすれ違う部分を考える

紹介した本

 なし

配布プリント

1枚目
 (表):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』92,93P
 (裏):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』94,95P

2枚目
 (表):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』96,97P
 (裏):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』98,99P

宿題

 なし


 -講義内容-

 来週からでしょうか、大学の公開講座が始まります。学生の皆さんに「是非ともご家族やご友人を誘って受けて下さい」と伝えました。昨年度は、合計10人以上の人が来てくれましたし、私のかみさんも1歳になる前の赤ちゃんを預けて聞きに来てくれました。また、普段の生活の中で原発事故について質問や意見があれば、ぶつけてもらいたいとの話もしました。丁度、講義前日、このブログに15年以上逢っていない大学時代の友人から他の人には見えないコメントをもらいました。他の人も多少見えないコメントをくれます。ですから、そのように質問や意見をぶつけて頂いても結構です、と伝えました。学生の皆さんも是非、ブログでも講義後でもコメントを下さい、と伝えました。

 次にプリントが、前回の教科書の続きであることを確認した後で、内部告発の是非に入りました。

まず、教科書と高木との違う点を挙げていきましょう。

 「一般に、匿名で出された秘密情報や内幕話が、多くの人の注意を喚起することはあまりないようです。」92Pと述べています。これは「形成外科の手術の事故隠し」の事例を挙げています。他方、高木は、匿名でも多くの人の注意を喚起する、と考えています。事例としては、「ミートホープ偽装事件」は最初匿名でしたし、「尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件」も最初匿名で大いに注目されました。また、現在騒がれている生活保護費の不正受給疑惑です。この疑惑は法律違反ではないですが反倫理であっても多くの人の関心を集め問題が動こうとしています。この事件は、匿名のリークによって政治家などに情報が漏れたようです。極めつけは、

「核燃サイクル原案:秘密会議で評価書き換え 再処理を有利」毎日新聞 2012年05月24日 02時30分(最終更新 05月24日 02時57分)の記事です。

「4月24日の秘密会議(勉強会)に配布された報告書の原案。表紙の右上には「取扱注意」と記載されている

 内閣府原子力委員会が原発の使用済み核燃料の再処理政策を論議してきた原子力委・小委員会の報告案を作成するため4月24日、経済産業省・資源エネルギー庁、電気事業者ら推進側だけを集め「勉強会」と称する秘密会議を開いていたことが分かった。表紙に「取扱注意」と記載された報告案の原案が配られ、再処理に有利になるよう求める事業者側の意向に沿って、結論部分に当たる「総合評価」が書き換えられ、小委員会に提出された。政府がゼロベースの見直しを強調する裏で、政策がゆがめられている実態が浮かんだ。

 小委員会は修正後の総合評価を踏襲して取りまとめ、23日、「新大綱策定会議」(議長・近藤駿介原子力委員長)に報告して事実上解散した。近く政府のエネルギー・環境会議に報告される。

 毎日新聞はA4判79ページの資料を入手した。表紙右上に「4/24勉強会用【取扱注意】」、表題は「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(第13回)」で、4月27日に論議される予定の報告案の原案だった。」

 この情報が出てきたのは、匿名によるリークだと推測されます。現在の原子力委員会の委員長のみならず、野田首相の首が飛んでも可笑しくない程の大事件です。また、こうしたことをやっている原子力委員会に基づいて原子力政策を進めてはならない、と判断できるほどの大きな事件でした。この事件が、発表されてスーッと流されていっていますが、この社会と内部告発の関係については、講義録8-3で述べていきます。問題は、匿名によるリークが世間の注目を集めて影響があるかないか、とう点です。

 次の対立点に行きます。
 教科書は内部告発について、理論上はYES(是)であるとしながらも、実際の現状を見て、はっきりとした答えを出していないように高木には読み取れます。他方、高木は理論上、消極的にNO(非)としながらも、実際の現状を見て、賞賛に値する行為という意味でYES(是)とします。対立を強調して書いてみます。板書の矢印は「→」と横方向でしたが、このブログでは「↑」と上下方向に直します。

 内部告発の是非

教科書 :内部告発は「非」である =条件を考えたら無理だから
      ↑
     :義務になる内部告発はない =現実には会社がつぶれ、自分は解雇される
     :内部告発は「成功しない」
 ↑
:ディジョージの逆説 =内部告発の条件は、敢えて内部告発が無理なことを強調するためである

 ↓高木の解釈では

つまり、自分の利益と会社の利益 > 公衆の福利 


 VS

高木  :内部告発な「是」である =条件を考えたら無理だから(だから倫理的に善)
      ↑
     :義務になる内部告発はある =現実には会社がつぶれ、自分は解雇される
     :内部告発は「成功しうる」
      ↑
     :ディジョージの順説(言葉通り) =内部告発の条件は、内部告発で実際、倒産や解雇しても成功というためである

      ↓高木の解釈では

      つまり、自分の利益と会社の利益 < 公衆の福利

 ということです。この図式が書き終わると、

問1 あなたの義務は誰、どこから与えられていますか?

を出しました。回答例です。数多くの意見が、そして幅広い意見が出てきました。初回の回答をチェックしていますが、幅広くなっていることを実感しました。
親から大学にきちんと行く義務がある。義務はない。神道や仏教の宗教観から。小中学校で学ぶ。就職することは周りから。国民年金を払うことは国から。生きる義務。親や親戚から結婚する義務。納税は国から。授業は義務。

 などなどです。自分の言葉が多く色々な表現で書かれているのが良かったです。ただ、世界の70%以上の人が書く解答を、240名の内で1,2名だけしか書いていませんでした。その点は伝えました。「神から義務が与えられている」がなかったのです。
 この「神からの義務」は、教科書と高木の考えの決定的な違いを生み出します。技術者倫理ではJABEEの「地球規模の視野を持つ」とい点が大切にされますから、「神からの義務」は伝えておかなければならない、と考えます。同時に「神からの義務」を普段、日常生活で感じない、殆ど感じられない日本人が、地球規模の視野からすると少数派であることを知ってもらいたいです。また、福島原発事故の対応が酷かった点でも、この点があると昨年度の講義で結論付けました。そして、1年が経ち、現在、国会の事故調査委員会が参考人招致(なぜ、強制力のある証人喚問をしないのか理解できませんが)でも、「神からの義務」がない日本人の特徴が出てしまっている、と考えています。この点は後の講義で述べていきます。
 「神からの義務」に戻りましょう。
ユダヤ人の聖典である『聖書』(キリスト教は『旧約聖書』と言う)の出エジプト記20章と申命記5章に「モーセの十戒(じっかい)」があります。神から10の戒(いまし)めが与えられた、とユダヤ教、キリスト教、イスラム教で認められています。世界人口の70%の人がこれらの三大宗教に入っています。

 モーセの十戒

①あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。

②あなたは、自分のために、偶像を造ってはならない。・・・それらを拝んではならない。それらに仕えてはならない。

③あなたは、あなたの神、主の御名を、みだりに唱えてはならない。

④安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ。

⑤あなたの父と母を敬え。

⑥殺してはならない。

⑦姦淫してはならない。

⑧盗んではならない。

⑨あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない。

⑩あなたの隣人の家を欲しがってはならない。

 西ヨーロッパのローマ・カトリックはこれを多少変えました。
つまり、日本人以外の多くの人々は、国や集団という人間世界からの義務だけでなく、人間以外の世界からの義務がある、と考えているのです。また、日本人、と書きましたが現在の日本人、というべきかもしれません。明治時代になって日本人は豚や牛を食べるようになりましたが(沖縄はもう少し前)、それ以前は宗教によって戒められていました(実際は緩かったようです)。現在、食べ物に関する戒めは、ユダヤ教の一部とイスラム教ではしっかり守られています。イスラム教ではハラールという食事規定があり、有名な豚の他に犬やロバなど、殺し方などにも細かな規定があります。サウジアラビアなどは持ち込むことも禁止され販売すると犯罪になります。
 現在の日本人は、宗教的な戒律を殆ど気にしません。そのせいなのか、義務についてもあまり意識が行っていないようです。日本国憲法(国際法上違法の憲法ですが)では、「教育、納税、勤労」の三大義務があります。教育は義務教育というように、「親が子供に教育を受けさせる義務」です。納税は税金を納めること、勤労は働くことですがマルクス・レーニン主義的な考え方を持った人がGHQの中にいたのでしょうか。この主義では建前として「財産は全ての人で分け合う(あるいは共有する)ので、全員が働かないといけない」ことになります。そうでなければ怠けた人が得をすることになります。金銭を得るための労働をしなければならない、というのならば、勤労の義務を全うしていない人が沢山いることになります。学生結婚をして専業主婦になった人は勤労の義務を果たさないことになりますが、一向に非難されません。この点で現在の日本国憲法と実際の日常生活が乖離しています。ですから、大学卒業後、すぐに就職する義務は学生の皆さんに課されていないのです。ただし、社会全体からすると大学を卒業した優秀な人を遊ばせておくことは、損になってしまうので就職をするようにと圧力がかかります。しかし、その圧力は義務ではありません。
 この点について、エッセイを書きました。

「義務」の限界 民主主義と日本の伝統
http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-134.html

 他に、法律は罰を与えられる点で義務に近いものがあります。また、会社やバイト先の服務規程は金銭の対価として求められる義務に近いものです。
 これらの義務、あるいは義務に近いものが現代日本人の私たちに課せられています。

 次に、内部告発の2つの考え方に行きましょう。
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