講義録6-1 「製造物責任法と食品衛生法 補足込み」


(文意不明、文末の言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。ご了承下さいませ。また、講義内容に大分加筆しています。)


 「工学的安全から荒茶問題を捉える」
   ↓
 「製造物責任法の説明、荒茶問題を捉える」
 
 
 に行きましょう。
その前に、

 問2 なぜ要望書が出されたのですか?(3つ以上箇条書きで)

 これはこの福島原発をどのように観ているか、が判ってるので、なるべく沢山箇条書きで書いてください、と言いました。1つの物事に対して色んなアプローチが出来るのは、とっても良いことなのです。折角安全について6つも分けたのですから、是非とも沢山。また、学問の西欧的な元の意味は「分ける(アナリシス)」であるそうです。1つのことを分けることが学問の出発点である、というのです。例えば、人間を物質に分けて観る⇒化学、運動体として分けて観る⇒物理、動きの元=心で分けて観る⇒心理、となる訳です。

皆さんのを思い出せる範囲で書いてみましょう
・福島原発事故が起こったから
・お茶が外で育てられているから
・お茶を体に入れるから
・現段階での規制値では出荷できないから。
・生葉でよく加工段階で悪くなるのは可笑しいから
・お茶の基準値がなかったから
・他の農作物と違って何回も調べられるのが不満だった

 私が他に加えるとすれば
・放射性物質は危険だから
・原発は安全だと考えてきたから基準がない
・国の説明が今までと同じく根拠がなく行われているから

 私は、この問題を製造物の観点から観ました。
すると「葉」は原材料です。「荒茶」は加工段階になります。「製茶」は製品であり、飲料する時は、お客様が使用する時です。まず、製造物は結果責任ですから(後で触れます)、原材料が幾ら危険でも構いません。レアメタルや重金属の多くがたない摂取すると危険です。さらに加工段階で人間に危険な状態があるのは当然です。自動車の部品の一部はメッキを施しますが、そのメッキは基本的に人間にとって危険です。しかし、製品段階で人間に対する安全性が確保されていれば問題はありません。加工段階での危険で出荷停止になってしまえば、自動車はそもそも出荷できません。他の製造物も出荷できなくなるでしょう。したがって製品段階の安全性が担保されているか、が問題になります。
 お茶を飲料する時にお湯を加えない、かもしれない、という可能性が残りますから、その点については注意書きを加えることが必要です。しかし、幼児のおもちゃで誤った使い方をした場合で今のような注意安全や、誤った場合に危険度を減らしておくなどの設計上の対策がほどこされておれば、製造者に賠償責任は生じることは殆どありません。ですから、お茶を製造物と観た場合、出荷が出来る、と私は考えます。

 次に、お茶を「食品」として考えてみます。
すると一番の矛盾は、「食品」が加工段階があり得るのか、ということになります。トマトやリンゴのように採取から飲食の段階まで変わらないものとしての「食品」ではないことは明らかです。しかし、加工段階のある「お茶」に対して採取から飲食の段階まで変わらないという基準=500ベクレルを当てはめること自体が、事なのです。この点を考慮せず、説明しない国の対応策は可笑しいものなのです(この点は神奈川県黒岩祐治知事が鹿野道彦農林水産大臣に提出した要望書の骨子でもあります。
 http://www.pref.kanagawa.jp/prs/p309399.html)

 (以下講義の後に図書館で調べた補足です)

 食品衛生法(昭和22年法律第233号、最終改訂平成18年法律53号)には、放射性物質に関する規定はありません。「毒」という表現はあります。第6条二「有毒な、もしくは有毒な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いのあるもの。」は、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない、となっています。この有毒な、という箇所に放射性物質が含まれると考えて、規制された例があります。ご推察の通り、チェルノブイリ原発事故後、厚生省は輸入食品中のセシウム134とセシウム137の合計が370ベクレル以下という暫定基準を定めたのです。
 もう1つ。放射線緊急時における飲食物摂取制限に関する指標(「原子力施設等の防災対策について」;原子力安全委員会)での4核種群(放射性ヨウ素、放射線セシウム、プルトニュウムおよび超ウラン元素のアルファ核種、ウラン)に対する指標値が示されています。これによると、放射線セシウムは
 飲料水:200ベクレル以下
 その他:500ベクレル以下
となっているのです。

 しかし、指標には注意書きがあって

「ただしこの基準は、調理され食事に供される形のものに適用されるものとする。」

 とあります。つまり、「飲料の形」に適用されるのです。ですから、「荒茶」や「葉」の段階は500ベクレル以上であっても、200ベクレル以上であっても構わないのです。つまり、現在の政府の対策は法律に則っていません。法律に則っていないから中止すべきである、という主張ではありません。しかし、政府が法律に則らない以上、出荷停止の農作物は全て保障されなければなりませんし、心理的な被害としての賠償も払われるべきではないでしょうか。。

 また、注目すべき点が2つあります。
①放射線セシウムは筋肉に溜まりやすいです。摂取した場合は胃洗浄や腸洗浄であり、セシウムは特に水に溶解したプルシアンブルーの摂取ならびに利尿剤投与と生理食塩水の点滴静注だそうです。

②セシウムの物理的半減期は30年ですが、有効半減期は70日で体内減衰するそうです。

以上は、社団法人日本食品衛生協会『食品中の化学物質と安全性』 2009年7月 と小野宏・他・監修『食品安全性辞典 第2版』の引用です。

 (以上図書館での補足終わり)

 
 さて、これまで製造物に関して、「公衆の福利」などの倫理から述べてきました。
倫理と法律の特長を上げましょう。

倫理:初期事故予防 再発防止
法律:明確な基準 罰則あり(が多い)

 倫理は最初の段階での事故の予防に役立ちます。法律は事故後に問題点がはっきりした後に対応策として作られますから、その点で必ず事後のものです。対して倫理は事前の対応が可能になります。これが倫理の良い点です。もう1つは、再発防止です。法的罰則の軽い重いではなく全ての人が持つ(であろう)良心に訴えることによって、軽い重いに関係なく事故の繰り返しを防止できます。対して欠点は明確な基準がないことです。今回の福島原発事故を起こした東京電力は悪いのでしょうか? あるいはそれを支持した日本国政府は? 原発を最終的に支配していたアメリカ政府は? どこまでが悪いのでしょう? あるいは全て悪くないのでしょうか? はっきりしません。個人個人の判断になってしまいます。また、罰則がはっきりしません。東京電力はイメージダウンや株価の急激な低下はありますが、所詮金銭的な問題です。社長やこれまでの社長は罰せられていません。あくまで「自主的な」報酬半額です。私見ですが福島原発を止めようとしていたのに、さらに継続して動かした時期から報酬の全額福島県に寄付する、というのが適当と考えています。
 このように倫理と法律はそれぞれ長所があります。

 製造物に関する法律は、ズバリ「製造物責任法(PL法)」です。1995年7月1日施行です。
特徴(今度は特長ではありません)は2点です。

  製造物責任法                   一般の法律
①厳格責任:「結果が悪ければ責任あり」  VS 過失主義「意図が悪ければ責任あり」

 一般の法律の基本は「疑わしきは罰せず」です。
犯罪行為がきちんと物的証拠などで証明(立証と言います)されなければ、罰しません、という意味です。これは民主主義の根幹を支える考え方です。つまり、「お前は国家に反逆した疑いがある!」として逮捕し監禁することが許されないからです。しかし、独裁国家では「疑い!」だけで逮捕監禁、死刑まで平気で行われます。私たちが犯罪行為を犯さないなら言論の自由や権利が保障されるのは、この「疑わしきは罰せず」があるからなのです。しかし、厳格責任ではそうではありません。
 少し身近な例を挙げましょう。
私が高校生の時、PSPやニンテンドー(3)DSのはしりがありました。それは電卓でカードを差し込むとゲームが出来たのです。音も出ない、今から見ればちゃちいものでしたが、クラスではやりました。私も欲しかったので「いいな~」と言ったら、友人が「じゃあ5000円で売ってあげるよ」と言ったのです。ゲームも入れて定価は2万5千円だったと記憶しています。私はマージャンゲームを買い、高校2年生の時に、授業中、ずーっとゲームをしていました。5段階評価で全ての科目で平均1.0くらい下がりました。平均4.2だったのに3.2に下がったのです。そのくらい、熱中してやりました。その後、友人が「あるお店で出入り禁止を食らった」と言ったので驚き余した。万引きが度々見つかったそうです。
 さて、このケース、私は盗品である電卓を持っている訳ですから、厳格責任「結果が悪ければ責任あり」とすれば、私は罪人になります。しかし、一般の法律は、過失主義「意図が悪ければ責任あり」ですから、私は無罪です。この問題は「故買(こばい)」と言われます。私が刑事罰を受けるのは「故意=盗品との認識があった場合のみ」なのです。そして「疑わしきは罰せず」ですから、「認識があったかなかったか分からない場合=疑わしい場合」は無罪になります。
 もう1つさらに分かりやすく行きましょう(多少講義と変えてあります)。皆さんはこれから結婚を考えている人が多いでしょう。その際、恋人と交渉を持つでしょう、もちろん肉体的な交渉もです。結婚前に肉体交渉を持つ人の方が多いと言われていますが、肉体交渉の後に「実は私・・・結婚しているの・・・」というケースも出てくるかもしれません。その際に、事前に知っていればもちろん罪になります。しかし、「事前に知っている」というのを証明しなければならないのは、肉体交渉相手の結婚相手(例えば私が不倫行為をした時は、その女性の夫)が、私が認識していた、と裁判で立証しなければなりません。これは中々難しいですが、実際は携帯メールなどの通信履歴で一発です。裁判所が要求すれば、各会社は直ぐに提出するでしょう。皆さんもくれぐれも気をつけて下さい。

 大切なのは、「私が知っていたのを立証するのが、訴えた夫(原告)」という点です。

 一般の法律では立証責任(証明責任、挙証責任とも)は、訴えた原告にあります。
しかし、製造物責任法では、立証責任は被告(私)にあります。つまり「私は不倫とは知りませんでしたよ」と証明しなければならないのです。これはかなり難しいのは想像がつくでしょうか。

 (補足)
 ちなみに欧米でもこの立証責任が被告にあった有名な裁判があります。魔女裁判です。「私は魔女ではありません」と証明しなければ魔女として火あぶりになった裁判です。しかし、「私が魔女ではない」とどう証明するのでしょうか? 実は誰も「私は魔女ではない」と証明できないのです。何故なら「魔女」そのものが目に見えないからです。「魔女」そのものが良く分らないもの(『聖書』に載っているそうですが)だからです。するとどうなるか。魔女なら火あぶりの死刑です。一説によると10万人~1000万人が魔女として殺されたそうです(火あぶりだけではなく戦争でも)。それが悪名高い「宗教戦争」です。ローマ・カトリックとプロテスタントは互いを「悪魔」とののしり合い、殺し合っていました。この魔女裁判がはやった理由は、西欧が貧しかったからです(今からは想像できないと思いますが、西欧が豊かになったのはアフリカやアメリカ、インドの富を収奪したからです。また当時の農業生産から推定されています)。魔女裁判の最も特徴的なのは、「あの人は魔女だ!」と訴えた人が、お金の半分(全てのケースもあります)がもらえたのです。もう半分は国です。ですから、お金にこまったら誰かを訴えて「お金をもらえばよい」という構図になってしまいました。なのでお金持ちは「魔女だ!」と訴えられるのを恐れて外に出なかった、という記録も残っています。もちろん、これはアメリカ合衆(州)国でも頻発しています。映画「クルーシブル」を見るとその雰囲気が伝わってきます。
 (以上補足)

 ですから、製造物責任法の特徴の2つ目

 製造物責任法            一般の法律
②立証責任:「被告(企業)」  VS 立証責任「原告(住民や消費者)」

 どうしてこんなに製造物責任法は厳しいのでしょうか。それは製造物の変化とこれまでの歴史的反省が込められいるのです。製造物の変化とは、複雑化です。現在製造されている自動車は、一般人がエンジンをいじれなくなっています。それはICチップが入り、そのICチップを動かすプログラミングがあるからです。ポットや電気炊飯器、洗濯機も同じくICチップが入っていますから、一般の人は修理できません。私が子供の頃の電化製品は単純でしたから、ちょっとした人なら修理できたものです。自動車も同じで修理するのが趣味のような人がいました。しかし、今はエンジンは直せず、タイヤを変えたり表面を変えたりがせいぜいです。これは製造物が複雑化してきたことを意味しています。
 すると、裁判になった場合を考えてみましょう。例えば自動車の根本的な不備が原因で事故が起こった場合です。立証責任が原告(住民や消費者)にあると、自動車のICチップの構造やプログラミングが何かという知識が必要になります。すると、裁判に訴えることが事実上不可能になります。ここから消費者保護の動きが出てきました。
 次にこれまでの歴史的反省に触れましょう。これは世界各国に実例があります。日本ではカネミ油事件(1968年⇒2004年認定基準の見直し)や水俣病(1956年⇒2010年救済措置の方針を閣議決定)があります。これらのケースでは、立証責任が原告(住民)にあり、科学的知識や検査データなどを被告(企業)が持っていることから、長期化しています。このようなケースが度々起こると国民が安心して製造物を購入し使用できないという歴史的反省が出てきました。製造物は技術者がほぼ検査データや科学的知識を持っているのですから、立証責任を被告(企業)に負わせよう、という訳です。

 2007年に「トヨタ車のアクセルペダルの効きが悪い」という苦情が寄せられ、その後大規模リコールが起きました。米国運輸省 、2010年1月のリコールについて、「エンジンの電子スロットル制御システムが原因の可能性がある」と声明を発表しました。この場合、「安全性に問題はない」という検査データをトヨタは提出し、立証責任を果たしました。もし、このケースで立証責任を果たさなければ、トヨタは訴えられた賠償金を全て払わなければならなくなかったのです。最終的には米国運輸省は「原因はトヨタにありませんでした」と発表しました(私は日本政府が抗議すべきだと思いますが)。

 以上のような2点が製造物責任法の特徴です。

ここで、問3 誰が「荒茶」検査で補償すべきですか?

 一旦ここで終わります。


 製造物責任法の点から福島原発事故でまき散らされたセシウムが付着したお茶について考えてみましょう。神奈川県や静岡県のお茶業者は国に要望書を提出するのも大切ですが、セシウムが付着したお茶の損害賠償を東京電力に起こすのも1つの手です。
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