講義録6 製造物責任法 意図の問題 3つの倫理 過失責任と厳格責任

(文意不明、言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。何とかお読み下されば幸いです。)

 スーツを着ても肌寒い霧雨の日でした。

 来週21日は小満の節季、世の中のことが満ち溢れる、季節だそうです。お昼休みに直接、意見や疑問をくれる人がいました。学生の皆さんのコメントで、小沢裁判やバスの事故、アメリカとの関係など幅広く質問をくれました。学生の皆さんの意識が高まってきた証拠ではないか、と感じて、大変嬉しくなりました。小満のように今後も実り多き講義にしていきたいです。それは高木個人の実り、ではなく小満のいう世の中全体の実りであり、つまり、学生の皆さんの実りです。
 今年の工夫として、昨年までの講義内容を削っています。1つの試みです。他の試みがないか、探していきます。

 枕が長くなりました。

目標
 
 :製造物責任法の特徴、厳格責任を理解する
 :フォード・ピント事件について別の立場からの意見を知る
 :倫理と法律に共通する意図を理解する
 :倫理を意図で区分けした場合に3つに分けられることを理解する。
 :3つの倫理、徳倫理、義務倫理、帰結倫理の簡単な区別を知る
 :製造物責任法の「動産」のイメージをつかむ。
 :「動産」に、コンピュータプログラムや電気などが入らないことを知る
 :新聞等に書かれている内容から一歩深める方法を共有する
 :科学的合理性から原発事故後の対応を考える

紹介した本
 なし

配布プリント
1枚目(B4サイズ)
 (表):講義録4の宿題「題1:日本の伝統的な幸福はあなたの幸福を保証しますか?」の記入例
   :講義録4の宿題「題2:」の記入例1
 (裏):講義録4の宿題「題2:なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?」の記入例2
   :講義録4の宿題「題2:なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?」の記入例3

2枚目
 (表):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』58,59P
 (裏):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』60,61P

宿題
 なし


 -講義内容-

 最初は、配布プリントの説明からです。

 1枚目(表)「日本の伝統的な幸福はあなたの幸福を保証しますか?」の記入例を挙げました。読みあげながら素晴らしい点を挙げていきました。
 「足るを知る」という老師の言葉を引用して、日本の農業国家であったこと、冬の厳しさと「わびさび」との共通点を挙げながら、日本の伝統的幸福を、明確に定義しています。この点が素晴らしいです。
 私は、「足るを知る」とは、仏教の「小欲知足(しょうよくちそく)」仏遺教経[ぶつゆいぎょうきょう]から来た考えだと考えていますし、「わびさび」の解釈など全く違いますが、きちんと自分で定義した点が素晴らしいと考えます。その上で、自分がストイックになれないので、私の幸福を保証しない、という誠実さにも惹(ひ)かれました。自分の心を文章に表現できている点、文献から調べてきている点が立派です。他にも素晴らし内容がありました。

 次は、3つの記入例を配布した「なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?」という問いです。

 講義録5-4 宿題の総括 に全体の傾向が書いてあります。

 まず、この講義は、半期1コマという担当時間です。その中で宿題を出して、きちんと調べてきてくれたのは十分な結果です。しかし、研究は上限がありません。「はやぶさ」の川口さんの本で引用した通りで、100点を目指す勉強は100点で終わりなのです。しかし、研究に100点という上限はありません。127点と244点の競い合いなのです。ですから、この講義でも最も出来た学生さんを引用します。3つの記入例を書いてくれた学生3人を便宜上、Aさん、Bさん、Cさんとします。

 Aさん 

 素晴らしい所は、「新聞やTVなどの情報を肯定だけでなく、否定から見たこと」です。それが新しい結果を導き出した点です。

 70%の人は「浜岡原発の今後30年の地震発生確率87%」という情報を肯定して書きました。

 Aさんはその情報を否定しました。

 というのも、データα「福島の地震発生確率0%、浜岡の地震発生確率87%、福井…%、北海道泊…% ・・・」というデータが発表されていた。

 福島第1でマグニチュード6以上が起こる確率0.0%、福島第2で0.1%なのに、東北地方太平洋沖地震が起きたのだから、

 データα「福島の地震発生確率0%、浜岡の地震発生確率87%、福井…%、北海道泊…% ・・・」
       ↓
      間違い、とするのが自然科学的な説明である。

 しかし、菅総理は、データαの「浜岡87%」だけを抜き出して、浜岡「だけ」停止要請をした。

 さらに、福井などの確率は無視したのである。この点は明らかに自然科学的な説明ではない。データの扱いとしても中学生でもわかるミスをしている。

 データを、詳しく知りたい方は、文部科学省地震調査研究推進本部をどうぞ。
 http://www.jishin.go.jp/main/index.html
 左から2番目「地震に関する評価」→「地震動予測地図」があります。

 2011年7月版 :http://www.jishin.go.jp/main/chousa/09_yosokuchizu/b1_tohoku.pdf
 2010年    :http://www.jishin.go.jp/main/chousa/10_yosokuchizu/t_kakuritsuron.pdf

 ここで、Aさんは、菅総理の説明の科学的合理性の欠如を発見し、「ではなぜか?」と問い、青山繁晴氏の「アメリカの圧力に屈したからだ」という理由を挙げる。

 浜岡原発が爆発すれば、世界最強のアメリカ第7艦隊の司令部が壊滅するから、という点を挙げる。「講義録5-4宿題の総括」にも書いたようにこの根拠は青山氏によることに留意が必要であるが、浜岡「だけ」というのを説明しうる。

 青山繁晴氏は、昨年の講義でも取り上げている。安全保障の専門家で原子炉の核テロ対策などを担ってきた。また、日本の大手報道機関が福島原発構内に入ったのは、日本国政府の仕切りで、しかも1年弱経ってからであった。対して青山氏は、事故発生後約1カ月で構内に入り、原発構内を海側から撮影し、当時の吉田所長にも直接インタビューを取った。貴重な映像と証言で、福島原子力災害の主な原因の1つが地震ではなく、津波による、という情報を与えてくれた。
 
 このように「「新聞やTVなどの情報を肯定だけでなく、否定から見たこと」で新しい結果を導き出したのです。

 続いて、Bさんは、青山繁晴氏の出典を書いてくれました。2011年5月8日のテレビ朝日の番組です。出典をつけてくれた所が素晴らしいです。平成24年5月16日現在、インターネット上で番組内容を見れます。

(大前研一氏もSAPIO 2011年6月29日号で「菅直人首相の“英断” 浜岡原発停止理由を大前研一氏が明かす」で同じ内容を述べています
http://www.news-postseven.com/archives/20110621_23429.html)

 Bさんは、「何とも言えない気持ちになる」という自分の気持ちを書いてくれました。

 「日本国民は以前から停止を要請した人もおり、事故後は増えたのにアメリカ国防省の意見の方が力を持つ」

 という点にです。

 原発導入は国民の殆どの反対の声でしたが、アメリカの利益のために導入されました。原発そのものが国際政治の力学で導入されたのです。ですから、歴史的には何も新しくありません。しかし、この点に自分の声を受け止めて自分で考えて気づいていく、大切さが現れいます。高木が今後講義で伝える内容でした。しかし、それに自分で気づくことは、Bさんにとって何十倍もの実りをもたらしてくれたのです。とても嬉しくなりました。

 また、自分の声を入れることは、コミュニケーションの大切な点です。例えば、ビジネスの場で会社から与えられた情報だけを伝える人は、信頼されるでしょうか? 就職の面接会場で、事前に用意してきた暗記内容をを読みあげる人が印象に残るでしょうか? 採用したいと思うでしょうか? 自分の心の声だけではセリフィッシュな印象を与えますが、自分の心の声を言わない人は、むしろコミュニケーションの大切な点を落としていることになるのです。

 ちなみに、青山繁春氏は「アメリカ国防省だけでなく、あらゆるチャンネルで圧力を掛けてきた」と述べています。あらゆるチャンネルとは外務省やアメリカ国務省、アメリカ軍などを指していると思われます。

 Cさんは、上記の「アメリカ軍からの圧力」や「政権の支持回復」とするのが一般的、と書いています。

 Cさんの情報収集力は素晴らしいものです。決して一般的ではなかったのですから。こうした情報強者と情報弱者(情報を十分に吸収していない人)との差が、大きな社会問題になっています。この情報強者と情報弱者の問題は、福島原発事故でより一層鮮明になった、と考えています。というのも、放射性物質がどの程度、どの食品や水などに含まれているか、という情報は世間に溢れましたが、当初は偏っており、かつ放射性物質がどの程度危険か、も「絶対危険から殆ど安全」という論までが溢れていたからです。講義に引き寄せると、公平さを欠いていた、と考えられます。その中でどの情報を採用するか、は福島原発事故で大きく問われた問題ではないでしょうか。

 Cさんは、一般的とした後、それに自分の考えをつけたします。

 「浜岡の20km圏内に日本のパイプラインがあるから」という考えです。パイプラインとは東名高速道路や新幹線や東海道線という日本の大動脈のことです。

 このように、地図から浜岡原発を見て自らの考えを加えて行くのは素晴らしいです。

 出典がGoogleMap と産経新聞5月10日5面、首相“菅降ろし封じ”自信 でした。出典付きなのも素晴らしいです。

 まとめます。

 浜岡原発「だけ」の理由

①アメリカ第7艦隊を守るため

②日本の大動脈をまもるため

③菅政権の延命のため

 となります。

 ①について少し補足を加えます。

 日本の首相で5年以上続いたのは、小泉首相と中曽根首相です。2人ともアメリカと緊密な関係を持っていました。小泉首相は、まさに横須賀出身で、構造改革をしました。構造改革の結果、正社員が減りバイトやパートが当たり前になってきました。これは前回の『ルポ貧困大国アメリカ』で述べたように貧乏人が増えて行く政策でもあります。もちろん、それによって経済成長が加速するなどの長所もあります。ただ、問題はアメリカ政府の言う事を良く聞いていた、特に後半は、という点です。中曽根首相は原子力発電を日本に導入する際に中心的な役割を果たしました。「ロンとヤス」という愛称があったように親米でした。国鉄をJRにする、などの功績もありました。
 他方、反米的な行動をした総理大臣として田中角栄総理大臣がいます。
 アメリカと中華人民共和国が国交を回復をしようとしていたその矢先、田中首相は先に日中の国交正常化を果たします。そしてロッキード事件で逮捕されましたが、その根拠はアメリカ側から提出されたものでした。
 現在、小沢一郎氏が裁判を受けていますが、小沢氏は民主党が大勝ちした後、中国に大ぜいを連れて行ってぺコペコ頭を下げた、という批判があります。反米的な行動(反米主義者と言う訳ではない、のが複雑ですが)を取った後、軽微な罪状で身動きを捕われています。
 「アメリカに嫌われると日本の首相の首が飛ぶ」というのが、まことしやかに囁(ささや)かれているのもこうした例があるからです。ちなみに、鳩山首相や菅首相も、同じ、と考える人もいます。

 日本国政治全体の話は、高木の知識や見識が足りずに出来ませんが、原発を導入の民間で支えた人物(正力松太郎)は、「アメリカの力を背景に日本国の総理大臣を」と狙いました(実現しませんでしたが)。原発に限ると、大きくアメリカに決定権を握られていることが分かります。

 アメリカに政治の決定権を握られていること、が悪いことだけではありません。
 アメリカに政治の決定権を握られていること、が良いことだけではありません。

 今後の日本がどのように自立、独立して平和な国内、均衡した国際関係を作っていくかを考えて、どのようにしていくかを考えていきたいものです。

 福島原発事故の教訓を引き出すのは、この点でも必要だと考えています。

 
 次は、意図の問題、です。
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