講義録5 原発の良い所 インフォームドコンセントとパターナリズム アメリカ医療の現状 自分の考えを作るための公平さ

(文意不明、言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。何とかお読み下されば幸いです。)

 5月5日の立夏を過ぎ、日差しは強くなり、春の残り香が嵐を巻き起こしています。

 梅雨前には不安定な天気が続く、と言われてきたように、北関東では竜巻が起こりニュースで騒がれています。静岡でも強い大雨や雹(ひょう)が降ってきました。自然の順々とした営みを感じると同時に、直接経験していないことでも心を揺れ動かされている人間世界の営みも感じられます。

 春の嵐を注目するような高い関心かつ沈着な心持を学生の皆さんに持ってもらいながら、沢山の実りを手に入れて欲しいと思いました。春の嵐の頃に八十八夜が来て、夏の終わりにお米を収穫するように、です。

 前置きが長くなりました。充実した講義が出来た、という実感の現れかもしれません。

目標
 :仲間の宿題やコメントを見て自分の考え方との違いに気づく
 :日本人の倫理は、2000年前以上の本との共通点があることを知る
 :倫理が単に個人や現在の社会に限ったものではない、という時間の広さに目を向ける
 :原発の良い所を知り、1つの物事を「肯定だけ」と「否定だけ」で捉えられないことを知る
 :「肯定だけ」と「否定だけ」は不公平であり、かつ、自分の意見ではない可能性が高いことを知る
 :インフォームドコンセントとパターナリズムを理解し、その対立点を知る
 :技術者の社会責任で問われるインフォームドコンセントを知り、肯定と否定の両面を考える
 :インフォームドコンセントを倫理絶対主義の解釈と倫理相対主義の解釈の違いを理解する
 :アメリカの医療の現状、特に高額な医療費の理由を知る
 :自己破産の理由が各国(日本とアメリカ)で異なるのを知る。

紹介した本
 :『孝経 〈全訳註〉』 加地伸行 講談社学術文庫 1824 2007年
 :『浜岡原発の選択』 静岡新聞社編 静岡新聞 平成23年10月
 :『ルポ 貧困大国アメリカ』 堤未果 岩波新書〈新赤版〉1112 2008年19版

配布プリント
1枚目
 (表):講義録3の宿題「題1: 原発の良い所を書きなさい。ただし、電力安定供給は除く」の解答例
   :講義録4の「問3 感想」の解答例
 (裏):講義録4の「問2 あなたの幸福は快ですか」の解答例2つ
   :『孝経』 26P 「開宗
2枚目
 (表):『浜岡原発の選択』 84,85P 「海の幸生む温排水」
 (裏):『ルポ 貧困大国アメリカ』 66,67P +高木記入文 以下①~③
    ①200万人自己破産。半分以上医療で 
    ②保険料1年間約130万円 1ヶ月10万円以上→企業が加入しなくなる→ますます個人負担が増える
    ③保険に入っていない人5000万人~1億人 

宿題
 なし

 -講義内容-

 いつものように挨拶から始めました。良い講義にしたい、という気持ちの現れです。
(余談ですが、講義5回目が終了後、届いていた『新版 オーケストラ指揮法 すべての心をひとつにするために』高木 善之著を一気に読みました。素晴らしい内容でしたが、最初に感服したのは、「指揮者は最初に入ってきた時の態度で決まる」というものでした。挨拶もそのように丁寧に出来ていたか、振り返りました。ある学生さんに教えてもらいました。ご紹介有り難う御座いました。別記で感想をまとめたいと思っています。)

 最初に講義3回目の宿題「題2: 「米の研究利用に1200人 死亡した被爆者赤ちゃん 日本から臓器やカルテ」を読んで、三段論法で感想を書きなさい。」の感想から入りました。
 まず、「必要であった」や「しかたがなかった」という感想が20%以上いて驚いたこと。その論拠を丁寧に観て行くと「医療の新薬」と同じ視点であること。そのままで良いこと。そうして他の前提があること、例えば、被験者の同意と不同意、人体実験後のデータ公開と非公開、学術的検討がオープンでされていないこと(今日の講義5回目のインフォームドコンセントに関係します)、カルテや臓器などが全て返却されていないこと、さらに秘密にされていたこと、などを補足しました。

 次に「題2」となります。
配布プリント1枚目 (表):講義録3の宿題「題1: 原発の良い所を書きなさい。ただし、電力安定供給は除く」の解答例を見てもらいました。後で「宿題の考察2」としてまとめる予定ですが、素晴らしい点は、出典をきちんと書いてあり、参考資料もきちんとあったことです。良い点3点は、
 ①原子力は水力や火力よりも安全である(人命にとって安全) 発電方法別の死亡者数から、また、香港の化学燃料からでる放射線量(0.14μシーベルト)の方が福島原発の事故後の東京の放射線量(0.07μシーベルト)より明らかに少ない。
 ②原発なしでは電気自動車は普及出来ない(CO2:2は小文字 排出量)
 ③原発のことを知れ、失敗を生かしてもっと安全な原発が出来る。高望みしてはいけない(おろかな人間に取って)。

 を読みあげました。30%以上出典を書いていない人がいたことへの注意と、③が面白ので採用したことを述べました。ちなみに、引用した4人について悪く書くコメントはなく、素晴らしい、見習いたいなどの称賛のメッセージが沢山ありました。後にコメント集にまとめます。
 原発があることでもっと勉強していくことが出来る、学ぶべきである、という視点は面白いと感じました。

 前回は3段論法が難しい、分からない、という人と判ってきた、という人の半々でした。まだ15回の内の4回、そして3段論法を本格的に始めてまだ2回です。あせらず行きましょう、と伝えつつ、同じ仲間が書いている文章をみて参考にして欲しい、と伝えました。

 次の引用は、前回の問3の解答例です。幸福について書いてくれました。意訳すると、親に生んでもらった体にシリコンを入れて幸福を感じるのはなぞ、というコメントでした。これは、紹介した本『孝経』の中に同じ文章があります。『孝経』は2000年以上前に書かれた本です。配布プリント2枚目に現代語訳を挙げたので読みました。

 「人の身体は、毛髪や皮膚に至るまで、すべて父母からいただいたものである。」

世界の中では「父母からもらっていない」と考える人の方が多いのですが、もらってない、と考える人は?と聞きました。5人以下でした。殆どの日本人が共通して持つ認識が2000年以上前の本の通りです。さらに続けます。

 「これを大切に扱い、たやすく損なったり傷つけたりなどしてはならない。それが考の実践の出発である。そのように考を第一として実践するならば、りっぱな人という評判を得、その名を後世に伝えることができ、父母の誉(ほま)れとなる。」

 これと同じことが身の回りにあります。皆さんが今後直面していきます。分かりますか? と挙手を求めました。ただ1人正解を述べてくれた人がいます。

 「就職活動の時、ピアスは悪い評判を持たれる」

 のです。これは2000年前の本の考え方が、私たち日本人の中に無意識に入っているからです。つまり、ピアスは父母からもらった体に傷=穴を開けた、ということです。入れ墨も同じですが、儒教の『孝経』の考えが浸透するまでは、日本では結構入れ墨の人がいました。また、荒々しい人々の中では入れ墨が流行っていることもありました。もう20年近く前ですが、浅草のお祭りに行き、全身入れ墨の荒々しい江戸っ子風のおじさん達を見たことがあります。他には

 「茶髪はダメ」

 というのもあります。これも父母にもらった黒髪を傷つける、という行為と解釈されます。しかし、アメリカでは多くのアメリカ人が、茶色(ブロンド)ですが金髪にしています。それを悪いと考える人は殆どいません。大学の先生もジーパン、Tシャツでする人もいますが、「服装が気持ちを表す」と考える『孝経』がないからなのです。しかし、日本では就職活動の時、皆と同じスーツを着ます。その意味は「みんなと同じルール、ビジネスの時はきちんとしたルールに従えます」という「服装で気持ちを表す」と考えるからです。仕事が出来るかどうかは分かりませんし、大学を出た程度の仕事が出来る、では実際の厳しいビジネスの仕事が出来る、とは言えないので、「きちっとルールを守れる」と示した上で、将来の可能性に賭けて採用する訳です。日本では新卒を大切にするのもそうした『孝経』の考え方が影響しているのかもしれません。ここは高木の推測です。
 
 理解してもらいたいのは、2000年以上前の本が日本人の倫理観を支えていることです。そして無意識で持っているくらい浸透しています。

 アメリカは違う理由は『孝経』が倫理観を支えていないからですが、大韓民国も整形大国として有名です。若者が憧れるメインストリートには整形病院が沢山あります(Youtubeで見ただけですが)。現在大韓民国は、80%以上がキリスト教に改宗してしまいました。一説によると2000年前に、あるいは数百年の伝統ある儒教を捨て、キリスト教に帰依してしまったのです。ですので、儒教の身体を大切にする、という考えを捨ててしまったのでしょう。私たち日本人が持っている倫理観も同じように、将来に渡ってずっと続いていくものではないのも理解できるでしょう。

 1枚目の裏に行きます。
 講義録4の「問2 あなたの幸福は快ですか」の解答例2つ、です。解答例の1つ目の素晴らしい点は、
 
 「結論→事実→論拠→結論1→結論2→事実→論拠→結論(結論1+結論2)」

 と理路整然と書いてあるところです。身近な例を挙げている点も素晴らしかったです。
 解答例の2つ目の素晴らしい点は、

 「結論→事実(例えば・・・として)→論拠→論拠(逆のパターン・・・として)→事実→結論」

 という構成になっている点です。具体的な例も分かりやすかったですし、逆のパターンを考えてある点も素晴らしかったです。

 また、このように三段論法で、新聞記事などの文章を見て行くと、つながりが分かるようになりますし、最も大切な結論も素早く発見できるようになります。私が高校生の論文指導をしていた時、この三段論法を使っていました。

 2枚目にいきます。

 (表):『浜岡原発の選択』 84,85P 「海の幸生む温排水」

 は前回参考資料として是非とも、と薦めたのでその理由を提示しました。案外、というか数名だけが温排水について書いていて少なかったのは驚きでした。さて、文章を読んでいきましたが、結論は以下のようになります。

 「原発の温排水で稚魚などを育てるので、静岡県の栽培漁業マダイ、トラフグ、国内初のクエが成立している」

 「原発ができたから今の静岡県の栽培漁業があるといっていい」と本文に書いてあります。静岡県は日本一、あるいは世界一のメロン、みかん、いちごなどの栽培農業もしており、製造業なども素晴らしい県です。その漁業の一部を支えているのが原発なのです。原発の良い点、素晴らしい点です。

 反対派は、「温排水でエネルギーの60%以上で海水を温めているのだから地球温暖化だ」と言いますが、石油高騰時には副産物としての利益があるのも事実です。私が考える原発の良い所はまだまだありますが、1点の指摘としました。

 (裏):『ルポ 貧困大国アメリカ』 66,67P +高木記入文 以下①~③
    ①200万人自己破産。半分以上医療で 
    ②保険料1年間約130万円 1ヶ月10万円以上→企業が加入しなくなる→ますます個人負担が増える
    ③保険に入っていない人5000万人~1億人 

 に行きます。まず、①ですが、アメリカでは100万人以上の自己破産者がいます。日本ではパチンコやその他のギャンブル、酒や女など「自己管理が出来ていない人が自己破産する」というイメージがありますし、実際、サラ金の貸出基準を強めるとパチンコの売り上げが減ることがありました。
 しかし、アメリカでは「病気になった人が自己破産する」のが半分なのです。日本の現状とは全く異なります。具体的な数字は②です。月に10万円以上の医療保険の掛け金を掛けています。私は日本の国民皆健康保険証をもっていますが、確か月に1万円強くらいでした。アメリカは10倍以上です。こうなると企業は、正社員よりも保険が必要ないパートやバイトを増やしていきます。そうすると会社が利益を挙げて株主が儲かるので、日本に同じようにしろ!しろ!と言ってきて、日本でもパートやバイトが増えました。ワーキングプアの根本的な原因はアメリカの真似をしなさい!、という圧力に屈したからなのです。日本の戦後の成功は、全員正社員、年功序列、終身雇用でしたが、ここ20年で大きく崩れました。それと日本経済が疲弊しているのが同じなのです。私は原因となっていると考えていますし、そうではないという人もいます。
 さて、本文には、「虫垂炎で1日入院したら132万円で、妻の出産(平均150万円)が重なって自己破産した」と書いてあります。日本では虫垂炎は入院等も含めて10万円弱、出産の最低金額42万円が国が負担してくれるので、余分なお金は10万円くらいでしょうか。本文では、盲腸の手術6万4200円+入院費用1日=10万円弱(本文では30万円弱)が、
 ニューヨーク243万円、ロサンゼルス194万円、サンフランシスコ193万円、香港152万円(4日)、ロンドン114万円。
が挙げられている。次の文をアンダーラインを引いてもらった「一般の初診料は1万5千円~3万円(150~300$)」、「入院の部屋代20万~30万円(2000~3000$)」

 このように高くなった根本的な原因は後に言うとして、この数字を覚えておいて欲しいです、と伝えました。
こうした日本の10倍以上の高い医療費が原因で自己破産する人が多い、のです。


 次は、インフォームドコンセントです。
 
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