講義録4 自分の心の声を聴く 公衆の福利 幸福とは

 (文意不明、言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。何とかお読み下されば幸いです。)

 大学までゆっくり、40分かけて歩きました。
 躑躅(つつじ)や、名も無き草たちのカラフルさが頭の中に入ってきて、色々な想いが感じられました。もう20年近くも前になる大学時代、科学哲学に進むことになる何ともない一言でした。

 前回の講義で「予見可能」のためには、気づきが大切です。そのためには、大学の周りの緑を見て色々と想いを深めてください、と言いました。「人に勧めておいて自分がしないのはなぁ~」と心に引っかかっていて、半分散歩が出来て良かったです。

目標
 :自分の心の声を聴く
 :自分の心の声を聴いて本を読むことを進める
 :疑問に関係ある本だけを読む、という方法を実行する
 :「公衆の福利」の位置を理解する
 :「公衆の福利」と費用便益分析の対比関係を理解する
 :幸福とは何か?自分で考えてみる
 :三段論法を用いて具体的に設問に答える

紹介した本
 :なし

配布プリント
1枚目
 (表):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』28,29P 
 (裏):同上書 52,53P

宿題
 題1:日本の伝統的な幸福はあなたの幸福を保証しますか?
 題2:なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?


 -講義内容-

 朝7時45分くらいについて8時25分まで、ゆっくりとした散歩のように登校してきました。前回(学生の)皆さんに勧めたので私自身もやってみました。そうすると色々と思いつきました。今日のテーマの1つは、
 
 「自分の心の声を聴く」

 です。今日も宿題を出すことにしたのは、やっぱり自分で身の回りの問題、浜岡原発再稼動の問題を考えてもらいたい、と心の声が言いました。一番最初の講義で前回の宿題をチェックして、よく調べてきてくれているので(驚くべきではないのでしょうがきちんとやって来てくれる学生が大変多いので、やる気をもらっています)、決心しました。もう1つは、私自身が今の科学哲学の進路を踏み出す第一歩が、学生の皆さんと同じ3年生の夏休み前でした。就職活動前になり、自分の人生設計を迷っていた時に「どうしたら私は良いんだろうか?」と思ったのでした。ですから、この問題も是非とも考えてもらいたいと決心しました。

 「自分の心の声を聴く」というのは簡単そうで、実は非常に難しいことです。30歳を過ぎれば、「自分の心の声を聴いていない人」がはっきりと分かってきます。それは、目先のお金ばっかり考えている人、周りから非難されたくない人、仕事をすれば良いと思っている人、自慢したい人、自分の老いを受け入れられない人、そして自分の保身ばかり考える人です。簡単に言うとこういう人は、欲望や、心地よさだけを基準に人生を生きています。欲望や快楽は、直ぐ隣の人も持っているのですから、「自分の心」の声を聴いていないのです。

 就職活動が、3年生はもう始まっています。SPI2の性格テストで、自分の心を聴いていないと毎回違う性格になりませんか? 何より、「どの業界が良いですか?」、「同じ業界のA社とB社のどっちが良いですか?」と聴かれた時に、目先のお金ばっかり、仕事なら何でもいい、良い会社と自慢できるから、居心地がよさそう、首にならなそうだけで決めてしまわないように、きちっと自分の心の声を聴いて下さい。
 
 自分の心の声を聴かないと聞こえなくなってしまうのです。
 「あの花」というアニメがあります。

公式HP 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」 :http://www.anohana.jp/

 このアニメは、幼馴染(おさななじみ)を亡くしてしまった主人公は不登校です。自分の心の声を聴かなくなってしまい周りと上手くいかなくなった日々、ある日突然、幽霊の幼馴染が出てきます。他の幼馴染とまたつながりあっていく中で、エリート学校に通う幼馴染も、ギャルっぽい幼馴染も、自分の道を生きていると思った幼馴染も、自分の心の声を上手に聴けなかったことが明らかになってきます。このアニメの大きなテーマは「自分の声を聴くことの大切さ」だと私は感じました。アニメではこうした精神的なテーマを題材にしたものが増えました。
 現在、長期病休者の最も高い割合は、「精神的なもの」でガンよりも高いのです(例えば、人事院 「平成18年度国家公務員長期病休者実態調査」)。社会の中でも明らかに増えています。

 対して、私がアニメ好きになった「宇宙戦艦ヤマト」は、現在再放送中で嬉しいのですが、如何に日本を守るか、でしたし、ガンダム(ファースト)は、如何に大人になるか、というテーマでした。自分の心の声を聴く、というテーマではなかったのです。詳しくは、拙論「なぜ、「千と千尋の神隠し」は大ヒットしたか」 -文化としての「千と千尋の神隠し」-を見てください。

「なぜ、「千と千尋の神隠し」は大ヒットしたか」 -文化としての「千と千尋の神隠し」-」:http://takagikenziro.blog.fc2.com/blog-entry-110.html

 このように「自分の声を聴くことの大切さ」は現代日本の大きな社会テーマの1つになっています。技術者倫理でも「予見可能」の点で、また根本的に倫理を大切にする上で欠かすことの出来ないテーマです。

 そして、この「自分の心の声を聴くこと」は、前回の皆さんのコメントに顕れていました。読み上げます。

○子供が挟まれたのは親も悪いのに内容が親に触れていないのが不愉快だった。(同様の意見が他の1件あり)

返信:この講義は技術者倫理なので製造物を見ていきます。「不愉快」と感じたのは1つのチャンスです。親がどこから悪く、どうして悪くなったのか、など調べてみてください。心のざわめきが新しい出発の第一歩になります。是非とも大学時代に沢山見つけてください。

 「不愉快」というのは間違いなく、自分の心の声です。楽しいだけではなく、心がざわめいた場合も自分の心の声です。続けます。

○問題の出し方が少し分かりにくい所があり、少し悩んだ所があった。あと問3は教育上不適切な問題だと思う。

返信:(問3は「人が死ぬ。私は人である。だから私は死ぬ。」です。)
   どうしてでしょうか? 少し驚きました。何故なら意味の問題ではなく論理性(つながり)の例として出したからです。さらに人の死は大いに語るべきだ、と言う古代ギリシャの考えがあったからです。けれども現代日本は死や汚いものに蓋をする考えがあるのも思い出しました。良いコメントを有り難う。そして、○○(本名)くんが、引っかかったのなら、それは自分の問題として大切にして下さい。私も大学でひっかかって躓いて今があります。是非ともそういうものを大学時代に沢山見つけてください。

 同じですね。不適切、と感じた、のです。ですから、「まーいいか」で流すと心の声が聞こえなくなります。是非とも調べてみてください。
 
 実は、私が科学哲学の分野に進んだ第一歩は、3年生の夏休みに「教員免許」を取ることに決めたことでした。就職に悩んでいた私は、どうも理系の仕事は一生できなさそうだな、と感じていました。興味が感じられなかったのです。周りの人に相談して留年になりますが「教員」の目指すことになりました。余った時間で、ディベート学会に行ったり、1回8000円で学生には辛かったですが何回か行きました、人文系の講義を取りました。その中で酒井健先生のバタイユ(フランスの現代思想家)の講義が大変面白く、「面白いです」と言い「良ければ何か書いて下さい」と軽く言われました。数ヵ月後にレポートを勝手に書いて持って行きました。丁寧に見て下さり、本当に恥ずかしい稚拙な殴り書きでしたが、嬉しかったのです。それが、今の道に進む第一歩でした。そこで自分の声を聴きました。今も貧乏です。でも、それで良いのだ、と言えます。自分の心の声を聴いたから自己洗脳出来るのです。まあ、10年はかかりましたが。
 ですから、学生の皆さんも、是非とも自分の声を聴いて欲しいのです。そしてそれをゆっくり時間を掛けて調べられる時間は大学時代にあります。現在私は結婚し、赤ちゃんに恵まれています。家に帰れば夫として父親としての責任があります。年を取れば社会的責任が増加します。ですから、自分の声を聴いても、中々調べられないし、ゆっくりじっくり聴くことが出来ません。是非とも、と思います。続けましょう。

○安全の確率は立場によって違って、その確率が高いか低いかの感じ方が異なる。自分、知人など身近な人に安全ではない事態になる可能性があるとき、もっと安全にして欲しいと考える。また世間が注目すると安全対策が進むチャンスだと言っていたが本当は事故などがおころ前にそういった安全対策をしっかり考えるべきなのに、人はなぜ気がつかないのだろう。
 
返信:深いですね。人間が抱え込むこと、業(ごう)に目が行くのは、○○(本名)さんの鋭い感性があるからでしょう。そうした疑問を持ちながら本を読むと、とっても深く読めると思います。是非とも本を読んでください。

 自分の心の声を調べるために本を読んで下さい。小さい頃から「本を読め、本を読め」と言われてきましたが、自分の心の声が無い時に本を読んでも面白くないものです。それは強要でしかありません。私も大学時代まで殆ど本を読みませんでしたが、自分の心の声が発する疑問を解くために本を読みました。そうすると楽しいです。
 まず、関係ない本は読みません。疑問に答えてくれない本も読みません。ですから、10冊か20冊の内の1冊くらいで良いのです。また、疑問を答えてくれる箇所だけでも良いのです。論文を作るとき、はじめにや終わりにで全体像をつかんで関係する箇所を集中して読みます。そういう読み方をしていきます。それも自分の疑問を解くための読み方です。そうやって自分の心の声に答えてくれた本は一生忘れませんし、そういう読み方をすると読んだ本人が成長できると思います。

 本を読む出発は「自分の声を聴くこと」だと思います。

 宿題の「題2:なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?」は、関係する箇所を集中して読む訓練の1つです。三段論法ですから短い3文だけで済みます。だらだらと長く書く必要はありません。疑問で探して欲しいのです。

 同じく宿題の「題1:日本の伝統的な幸福はあなたの幸福を保証しますか?」は、まず、「日本の伝統的な幸福」と「あなたの幸福」を事実として書く必要があります。「日本の伝統的な幸福」は出来れば本を引用して欲しいです。「あなたの幸福」は講義の最後に「幸福とは?」をやりますから参考にしてください。論拠は「保証するかどうか」のあなたなりの考え方を述べてください。最後に、結論は、「だから、~なので、保証します」か「だから、~なので、保証しません」となります。例文を書いてみます。

事実1:日本の伝統的な幸福とは、恥の文化に支えられた祖先からの結びつきを確認することである。
事実2:私の幸福とは、現在かみさんと赤ちゃんに恵まれて一緒に暮らすことである。

論拠:私は、祖先からの結びつきをかみさんとの間に産まれた赤ちゃんの中に見出せる、と考える。

結論:だから、日本の伝統的な幸福と私の幸福とはつながっており支えてくれるものなので、保証してくれます。

・事実2を「お正月」や「お盆」で家族が集まること、家族と一緒に過ごすこと、などで置き換えても良いと思います。
・「恥の文化」は、ルース・ベネディクト『菊と刀』が有名です。イザヤ・ベンダサン(山本七平訳)『日本人とユダヤ人』もお奨めです。

 講義をより深めていく上で、人生を生きていく上で、自分の声を聴くことは大切だと考えます。

 
 次は「公衆の福利」です。

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