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【隨筆】日本のコンビニとアメリカの刑務所の共通点

 
はじめに
 前回の富士論語を楽しむ会でご希望を頂戴しました「日本のコンビニとアメリカの刑務所の共通点」について今回お話いたします。テキストは、堤未果著『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』です。これに幾つかの説を加えます。まず先に結論をポイントで書きます。

結論のポイント
 一 リスクゼロがビジネスの基本であり、(コンビニと刑務所の)共通点。
 二 先進国のサラリーマン(正社員)はリスクが高くなってきたので替わりを探した点。
 三 法律に基づく点と全員に対して公平な点。

日本のコンビニについて
 それでは日本のコンビニ、特にセブンイレブンが史上最高利益を更新している理由を書いていきます。これは前にご説明しましたので、簡単にします。
 セブンイレブンに代表されるコンビニ本部は最初、自ら運営する直営店を作っていきました。そしてその直営店をオーナーに売却するなどしてオーナー店を増やしていきました。
 そしてコンビニの成功の秘訣は、ロイヤリティー(セブンイレブンの名前やオリジナルブランド商品の購入、その他一切のサポート等を受ける権利)を、「売上」から引くことにしました。このことによって、セブンの本部は、オーナー店が黒字なら黒字を、赤字でも黒字を得ることが出来るようになりました。つまり、セブンの本部は「売上」があれば、必ず収益を上げることが出来るシステムにしたのです。
 そしてオーナーは、ロイヤリティーを引いた金額から費用である、バイト代、家賃、電気ガス水道代、さらには商品ロス(お弁当などの廃棄)なども引かなければなりません。ちなみに、千万円を超える収入を得ているオーナーは二割前後といいます。オーナーが収入を増やす方法は、商品ロスを少なくするか、バイト代を削るくらいしか方法がないのです。ですから、コンビニだけは、オーナー(店長を兼ねることが多い)がレジの前に立って働かなければならないのです。
 コンビニのオーナーは形式上経営者です。ですから、有給休暇も必要なく、最低時給にも縛られず、家族が無償で手伝ってもよい、という法律になっています。一日十二時間、三百六十日働いて年収三百万でも法律上は認められます。サラリーマンならば、有給、育休、病欠、最低時給等で守られているので許されません。
 コンビニは、先進国のサラリーマンのリスクが高くなってきたので、法律上対等な関係であるオーナー(経営者)というリスクの低い存在者をサラリーマンのように働かせるシステムを開発したのです。このシステムを開発したからでしょう、元々のアメリカのセブンイレブンは倒産しましたが、日本のセブンイレブンが購入するに至りました。

アメリカの刑務所
 アメリカは先進国のサラリーマンのリスクが高まると、最初は第三世界、中華人民共和国やフィリピンなどに外注するようになりました。しかし、これらの国々、製造業はよいのですが、サービスは外注がうまくいきませんでした。アメリカ国内の常識や文化理解などが異なったからです。
 そこでアメリカの金融界は、刑務所の囚人に目をつけたのです。彼らは人権がありません。さらには、健康保険代、雇用保険代等々の福利厚生費が一切必要ないのです。さらには、決して辞めることはありません。最低賃金も人権がないですから、保証されません。
 『ルポ貧困大国アメリカⅡ』に出てくる時給は十円から四十円、最も高くとも百四十五円です。当時のアメリカの最低賃金は千円を超えていましたから、十分の一から百分の一です。ちなみに、自動車業界のサラリーマンは時給三千円です。これに福利厚生費が掛かります。
 アメリカでは先進国のサラリーマンのリスクが高くなった替わりとして囚人に切り替えたのです。第三世界の労働者よりも使い勝手のよい存在者です。
 さらにアメリカでは、「テロとの戦争」という大義名分をその後に得て、ホームレス、低賃金労働者などを刑務所に放り込む法律をどんどん作っていきました。「スリーストライク法」は顕著です。三回有罪となれば、三回目の刑期にかかわらず、終身刑となります(百五十八頁)。
 ちなみにホームレスは、「交差点以外の道路横断」、「公共の場をうろうろすること」、「屋外で開封した酒類を所持すること」で逮捕され(有罪にされ)ます(百八十二頁)。さらには、ホームレスへの「炊き出し禁止令(二十五人以上)」も出されました。食料を絶たれたホームレスは、菓子パンなどの窃盗を行ってしまう状況を作り出しました。
 結果として『アメリカの総人口は世界の五%だが、囚人数は世界の二五%を占める「囚人大国」』(一七六頁)となりました。
 アルカイダのオサマ・ビン・ラディンが死亡しても、次のISISの影響力がなくなっても、今でも「テロとの戦い」を継続している理由の一つです。
 「テロとの戦い」を掲げて囚人を増やし、彼らを最低賃金以下で働かせ、しかも部屋代を取り、トイレットペーパーなどの生活用品を通常の一・五倍以上で売るのです。

まとめ
 以上が日本のコンビニとアメリカの刑務所の共通点です。両方ともビジネスの原則であるリスクゼロから眺めると、背景に先進国のサラリーマンのリスクが高くなってきたことがわかります。もう一度振り返ってみます。

 ①リスクゼロがビジネスの基本であり、(コンビニと刑務所の)共通点。
 ②先進国のサラリーマン(正社員)はリスクが高くなってきたので替わりを探した点。
 ③法律に基づく点と全員に対して公平な点。

 ③について説明します。二千十六年頃から中華人民共和国ではウイグル自治区(国)で監視カメラを導入して、百万人を超えるウイグル人が強制収容されています。これは法律に基づかず、同時に宗教や民族に基づく差別によって実行されています。監視カメラの導入によってホームレスの強制的な排除は、アメリカのニューヨーク市でジュリアーニ市長が千九九四年から行いました。そのアメリカが中華人民共和国を非難する根拠は、金融界が政治家に現金を払って法律を作り出すにしても、「法律に基づいていること」と、人種や宗教による差別を行っていないという意味で「公平である」という点です。
 アメリカは法律において一九六五年(あるいは六七年)に黒人への差別を廃止しました。しかし、国の構造として奴隷的存在者を求め続けました。その一つの結論が、囚人だと私は考えています。この囚人ビジネスは日本の歴史(国史)や文化になじまず、批判、非難することは容易です。しかし、アメリカの歴史と国の構造を的確に見つめるならば、非難の対象とすることは避けなければならない、とも考えます。
 これは、コンビニのオーナーを見て、東南アジアの学生が非難したことも同じです。いえ、むしろコンビニでアルバイトしている東南アジアの学生たちが、

 「どうしてコンビニのオーナーはあんなに働いているの?」
 と質問をくれ、説明したら、
 「絶対やりたくない。」
 という反応に違和感を持ったことで気が付かされました。ビジネスの本質から見ると、日本のコンビニとアメリカの刑務所は共通してることは以上です。もし時間がありましたら、どうしてこのように企業に国民が搾取されるのか、について「全米最高の教授」とプラトンからご説明したいと思っております。

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