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【隨筆】不思議な楽しい『論語』と図書館大会 

 静岡県図書館大会があった。平成三十年度で第二十六回を数え、十一月十九日(月)、東静岡駅前のグランシップで行われた。午前中は対談、午後は六つの分科会に分かれて、約千人が集まった。県大会では全国一の人数である。
 私は静岡県読書推進運動協議会の理事の立場で、第三分科会の運営委員となり数回、関わっている。最初は、冷や汗の連続であったが、本年度は大声を張り上げて汗をかいた。
 絵本「くまのがっこう」シリーズやNHKアニメワールド「がんばれ!ルルロロ」で有名な絵本作家あいはらひろゆき先生にご講演頂いた。講演後のサイン会にお集まりの方々が多く、運営委員の判断として、時間を延長し、グランシップをお借りしている時間の十五分前まで、ギリギリまでお願いしたのである。中には三歳、四歳のお子さんもおられ、なんとか、と思い、そして断腸の思いで、サイン会を閉めた。
 横では運営委員の参加しなければならない話し合いをし、どうも「早く終わらせろ~」というオーラ(気の迷い)を感じながらも、最後の最後まで通した。あいはらひろゆき先生が、一心にサインをし、応対されている姿がそこにはあった。

仕事で大切にしていること
 お並び頂いている方々や周りの方々を整理しながら、心の中で唱えていた言葉がある。

 「子、子夏に謂いて曰(のたま)わく、女(なんじ)、君子の儒と爲(な)れ、小人の儒と爲る無かれ。」  『仮名論語』 雍也第六 第十三章

 伊與田覺先生訳
 「〇先師が、子夏に向かって言われた。
 『お前は君子の儒となれ、小人の儒となるではないぞ』
 ※君子の儒、真実に道を求め学ぶ人。
 小人の儒、単に知識を究めて立身出世を求めるような人。」

 私がもし、図書館関係で立身出世を目指すなら、サイン会は時間通り終わることが最善である。私が静岡県読書推進運動協議会の理事について、その後、数々の図書館関係の要職を昇り詰めていき、県政や全国レベルの仕事をしたいと思うのなら最善を採るべきである。図書館大会は行政主催であり、そして行政は実務遂行が責務だからである。官僚制度の本質はそこにあり、それゆえに、国家運営に欠かすことができない。
 しかしながら、私が一歩間違えば違約金が発生してしまうと言われても、間際まで迫ったのは、君子の儒を目指したからである。
 サイン会にお集まり頂いた方々とあいはら先生との会話のやり取りをお聞きすると、心の底から先生にお逢いできて喜んでおられる。先生もまた、子供の世界の大切さをお伝えしようと、お一人お一人丁寧に、心を込めて対応されているのが伝わってくる。この想いをなるべく多くの方に感じて頂きたい、と感じたのである。
 君子の儒とは「真実に道を求めて学ぶ人」と伊與田先生や訳された。それは一般性を帯びた訳であり、私の眼前の状況に沿って訳されるならば、

 「仁愛の交わりを大切にする道を求め、そして学ぶ人。」

 と考えられないだろうか。
 サイン会にお集まりの方々と、あいはら先生の交わりはまさに仁愛の交わりである。子供を思いやり、そして子供達を大切にする気持ちで相通じているのである。そして私は、その仁愛の交わりから、自分が教師として学生達に、このような姿勢で接しているのか、ミニバスケットボールの監督として選手に、父として我が子に接しているのか、富士論語を楽しむ会で皆様に接しているのか、を省みた。帰り道、静岡駅を降りてから自宅までの自転車の上で、至らない点を幾つも見つけたのである。

 そしてサイン会にお集まりの方々と、あいはら先生の交わりを通して、静岡県の読書活動がさらに厚くなると思ったのである。それが静岡県図書館大会の本義であり、この本義に沿うことを運営委員の責務だと感じたのである。

 振り返ってみればサイン会が制限時間を大分超過したことについて、何も言われていない。有り難いことである。周りの方々が助けて下さったことに改めて気が付くことができた。感謝の一念である。

 十一月十九日の週末の二十三日(土・祝日)に静岡市立図書館に子供三人を連れて行った。あいはらひろゆき先生の「くまのがっこう」シリーズを借りるためである。あいはら先生の絵本が半分くらい借りられていた。娘二人であいはら先生の御本を二十冊前後の本を借り、カウンターに向かった。対応して下さった方に少しお話を聴いた。

 「あいはら先生、お好きなんですか?」
 「ええ、娘たちに一冊ずつ買ってあげたら、他のも見たいっていうんで。」
 「いい本ですよね。この前、講演聞きに行って、やっぱり、絵本ってそうだったよな~って思ったんですよ。」
 「あ! それって図書館大会ですか?」
 「そうなんですよ。図書館大会です。講演が良かったので、サインをもらおうと思ったんですけど、本を売っている人も並んでいたんですよ。」
 「それで、・・・サインはもらえたんですか?」
 「ええ、なんとか。ギリギリで。でももらえない人もいて、やっぱり先生は素敵でした。」
 「そうですか~良かったですね~。本お借りします。」
 「は~い。じゃあ楽しんでくださいね。」

 私達の後ろにお待ちの方がいなかったのでお話しできた。なんとも嬉しい体験ができた。『論語』は東アジアで最も読まれてきた本である。この本が私の心に入り、そして読書運動の推進力になっている。不思議な楽しい想いを抱いた。



 
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