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【随筆】「コーチだ」と思わず声が出そうになった文章


 「(これは、コーチのことだ!)」

 声にならない大声が出てしまいました。

 藤田先生と共に『仮名論語』を、音読している時でした。コーチの偉大さを再確認して感動して、そのままの気持ちを「富士論語を楽しむ会」で発言しました。

 「この文章は、息子のミニバスケットのコーチのことのようです。感動しました。」

 藤田先生が、

 「素晴らしい方がいるのですね。」

 と感想を下さいました。
 
 文章は、伊與田覺著『仮名論語』二百九十五頁の、子張第十九、第九章です。

 「子夏(しか:人の名前)曰(い)わく、君子に三變(さんぺん)有り。之を望めば儼然たり。之を即(つ)けば温なり。其の言を聽(き)けば厲(はげ)し。」

 伊與田先生訳文

 『子夏がいった。
 「君子に三つの変化がある。はなれてみるとおごそかである。近づいて見ると温か味がある。その言葉を聞くときびしくておかしがたい。」』

 さらに、柔らかくしてみます(高木意訳)。

 「子夏先生が言われました。
 立派な人(君子)には、見え方が三つに変化します。遠くから見ると、礼儀正しく威厳があります。近づいていくと、温かく人情味があります。実際に話を聞いてみますと、言葉に力があり、納得できる重みがあります。」

 ミニバスのコーチは、体育館に入ってくると、小学生の部員が急いで走って集合します。親である私も走って集合します。コーチの周りに半円を作ります。凛々しい姿に触れると、練習が引き締まります。キャプテンが、

 「気をつけ、お願いします。」

 と声を掛け、全員が大声で、

 「お願いします!!」

 とご挨拶します。コーチが、

 「お願いします。」

 と返されます。そして親には笑顔も返されます。「さあ、練習本番だ!」と気持ちが引き締まるのです。

 練習中、コーチは厳しい一言、一言が飛びます。けれども、きちんと理由、考えるべき点を示しながらであり、人格否定はなされません。遠くから見ると、礼儀正しく威厳があります。そして言葉に力があり、納得できる重みがあるのです。
 練習が終わった後、親同士で話をするのですが、

 「コーチのお話が、私たち親の人生も振り返るきっかけになります。」

 という言葉を何回も聞いてきました。私自身、コーチのお話を聞いて、仕事で迷いをふっ切ったことが、五回以上あります。

 練習が終わると、コーチは途端に笑顔になります。厳しい言葉はなくなります。身の回りの話や、たわいのない話にも広がります。もちろん練習中は厳禁です。練習中は、子供達をどうやって伸ばしていくか、それは小学校時代の勝利や上達だけを目的にしておりません。生きていく上で大切なことを伝えようとされています。

 「技術が巧い選手ではなく、気持ちの強い選手になって欲しい。」

 「どうしても取り返しのつかない失敗以外は失敗ではないですし、小学校の時に失敗した方がいいとさえ思っています。」

 私の心に残っている言葉を二つだけ書き出しました。

 説治郎(七歳二カ月)はコーチにほれ込みました。コーチの愛情深さと言葉の強さにほれ込んだと私は考えています。私はコーチに接することで理解できましたが、説治郎は、子供ですから直感したのではないでしょうか。その直感は、大きな力を与えてくれました。六年生の公式戦はパホームカップが終わるまで、一度も練習も試合も休みませんでした。菌が入って八度以上出すまで、本日(平成二十九年十月十六日)まで一度も練習を休みませんでした。昨日は朝八時から十二時半までの練習中に、初めて練習を中断しました。十分もしない内に戻りましたが、「気持ち悪い」という理由です。帰宅すると三十八度を超える熱を出し、咳き込んでいました。未熟児ギリギリで誕生し、三人のわが子の中で一番熱を出していたのです。保育園も一番休んでいます。小学校に入っても、クラスで一番、二番目の小ささです。
 その説治郎は、「今日はコーチくるかな」と言うのです。大きな力を与えて下さいました。

 「とくちゃん、とくちゃん。」

 とコーチは説治郎に呼びかけて下さいます。

 一昨日、コーチを支える父親三人が飲みに行きました。そこで説治郎が入るまでのコーチのお話も聞きました。

 「コーチは、子供達をよく見ています。どこまで言えるかを見ながら厳しいことばを掛けてくれる。言い過ぎた時はきちんとフォローもしてくれるし、だから、コーチしかないと思っている。」

 そして昨年は、子供が実質四人しかいない時期があったことも聞きました。ミニバスケットは十人が試合に出場しないといけないという規定があります。それでも、コーチは子供達を愛して下さったのです。コーチが、試合に勝つためのご指導でないことが伝わってきました。

 『子夏がいった。
 「君子に三つの変化がある。はなれてみるとおごそかである。近づいて見ると温か味がある。その言葉を聞くときびしくておかしがたい。」』
 
 私が「コーチのことだ!」と確信した理由です。まだまだ書きたいのですが、最後に一つだけを選んで筆を置きます。

 先ほどの引用文の前、子張第十九、第八章を挙げます。

 「子夏曰わく、小人の過(あやま)つや、必ず文(かざ)る。」

 伊與田覺先生訳文

 『子夏が言った。
 「つまらない人間は、過つと、言葉巧みに言い逃れをしようとする」

 さらに、柔らかくしてみます(高木意訳)

 「子夏先生が言われました。
 普通の人は、間違いをすると誠実に反省せずに、誰かのせいに、何かのせいにしようとしてしまう。」

 入部当初、コーチに対する尊敬の念が強く、あまり話をしていませんでした。しっかりと話をしたのは、ある小学校の試合会場でした。指導のこと、現在の小学生の状況などの話をしていると、

 「私は小学生は基本、嘘つきだと思っています。」

 と言われました。

 「その嘘がよい方向になることもありますが、その嘘が次の嘘を呼び、自分の身に、周りに被害を及ぼすことが判っていないんですよ。」

 と理由を説明されました。先ほどの引用文の「小人」が「小学生」と思える言葉でした。

 「コーチが言われました。
 小学生は、間違いをすると失敗に向かい合わずに、誰かのせいに、何かのせいにしようとする。(それが嘘である)」

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