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中部電力の報告遅延について -平成6年の使用済み燃料ひび割れ問題を技術倫理から-

 昨日、11月26日のNHK静岡放送局ニュースで、「知事が中部電力に公開姿勢要望」が流れました。

以下転載です。
http://www.nhk.or.jp/shizuoka/lnews/3033666571.html?t=

「知事が中部電力に公開姿勢要望

川勝知事は26日の会見で中部電力が小さな穴が開いたとして平成6年から保管している使用済み燃料1体に実際はひびが入っていることを翌年に把握しながら県への連絡が今月になったことについて触れ中部電力に速やかに情報を公表していくよう改めて求めていく考えを示しました。
中部電力は浜岡原発1号機の使用済み燃料に小さな穴があく破損があったとして1体を平成6年にプールに移動して保管してましたが、翌年の調査で実際は3センチあまりのひびが入っていることがわかったということです。
しかし、中部電力では17年間、破損が穴でなくひびだったことを県に報告せず今月19日ようやく訂正を連絡しました。
これについて川勝知事は会見で、「県でも従来の説明との違いに困惑している」と述べた上で、「トラブルを過小評価することはあとで大きなしっぺ返しを食う。情報を速やかに公表する態度を貫いてほしい」と述べ、中部電力に今後も速やかに情報を公表していくよう改めて求めていく考えを示しました。
これについて中部電力では「当時は、今回のような燃料の破損は県への報告の対象項目でなかった。その後、県に連絡をするタイミングを逸したまま、今月になってしまった。今後、報告を徹底したい」としています。
11月26日 19時18分」

 このニュースは、同月19日に産経ニュースで報じられていました。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121119/crm12111912530008-n1.htm
以下転載です。

「中部電力が静岡県に18年間ひび割れ情報伝えず 浜岡原発1号機の放射能漏れ
2012.11.19 12:51 [放射能漏れ]
 中部電力は19日、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の1号機(廃炉措置中)で平成6年に発生した燃料集合体からの放射能漏れ事故をめぐり、破損した燃料の破損原因が、当初説明していた小さな穴ではなく、ひび割れだったと静岡県側に説明した。中部電はこの事実を、平成7年に把握。国には報告していたが、県や地元の御前崎市などには報告していなかった。

 県はこの日の中部電側の説明で、初めて破損の原因が亀裂だったことを把握。県の担当者は、「ゆゆしき事態だ。昨日まで小さな穴だと認識していた。小さな穴とひび割れとでは、私たちの認識も異なる」と苦言を呈した。

 中部電側は「燃料が破損した当時は穴だったが、その後拡大して亀裂になった。当時の公表基準では、県に公表する事象に当たらなかったが、現在だと県に説明する事案に該当すると考える。公表のタイミングを逸したことはおわびしたい」と話している。」

 19日の県担当者の抗議を受け、中部電力の謝罪、これについて静岡県知事が改めて触れた、という経過です。

 このニュースについて2つの点で述べます。

①報告遅延を技術倫理から観る
②使用済み燃料問題を技術倫理から観る

 まず、①報告遅延を技術倫理から観ると、「報告しない方が得をする」のです。

「講義録13-2」で述べたように、☆「 国や公共サービスは隠しても損をしない 」のです。中部電力から電気を買わなくなる、という行動が消費者に取って出来ない場合は、都合の悪い情報は隠した方が企業が得をする、という結論が出ています。今回の情報遅延の原因と言うことは出来ませんが、原子力発電で情報隠しが多発し、それでも直らないのは、こうした構造による圧力が中部電力に掛かっているからです。ですから、中部電力にはより高い技術倫理が求められるのです。

 他方、東京電力が経費削減をするためのトヨタ方式を諦めたり、関西電力が少しでも赤字が出ると利用者に転嫁して電気料気を値上げするなどの、一般企業では考えられない行動を取る原因の1つも、こうした「国や公共サービスは隠しても損をしない 」という構造があるからなのです。

 電力会社が一般企業とは違う構造の中で、異なる行動原理を持っているという点をしっかり認識しなければならないのです。
 今回の報告遅延についても一般企業であればどのようなペナルティーがあったでしょうか? 


 次に「②使用済み燃料問題を技術倫理から観る」を述べます。

 3年にも及ぶ民主党政権、特に福島原発事故以降、原子力事故災害の問題に対策を取ってきませんでした。その最たるのが、「使用済み核燃料問題」です。もし、「脱原発」を目指すならば「核燃料サイクル政策を放棄すること」になり、これまでの「使用済み核燃料」はそれぞれの原子力発電所に返送されます。すると、即座にほぼ全ての原発が使用できなくなります。これは現在青森県などに預かってもらっている「使用済み核燃料」が原発に戻るからです。そのために最終処分場の決定かもんじゅの再開に目処をつけなければならないのです。これを民主党政権では放棄しました。全く何も出来ていません。
 であるならば、中部電力は少しでも「使用済み核燃料」を現状のままにしておきたい、と考えるように圧力が掛かります。新規の施設の建設は現状無理でしょう。青森県などから「使用済み核燃料」が返還されれば、浜岡原発はほぼ即時停止に追い込まれるからです。これも①と同じですが、中部電力が意図して遅延したのではないでしょう。しかし、そのような圧力が日本の原子力政策全体から構造的に掛かっていること、福島原子力災害以降何も対策が講じられていないこと、も理解しなければなりません。

 今回の報告遅延で中部電力を非難し、はたまた否定することは簡単です。そしてこれまで通り中部電力は頭を下げるかもしれません。しかし、それでは解決しないのです。中部電力に掛かっている構造的圧力を理解し、必要な政策や提言、関わりをしなければ本当の意味での解決にはなりません。

 平成24年12月から始まる選挙で「脱原発」を掲げる少数政党は多くあります。しかし、「核燃料サイクル政策」を停止した時に起こりうることを理解しているでしょうか。私たち日本国民が理解しているでしょうか。
 もし、「脱原発」が起こり、「使用済み核燃料」が浜岡原発に返還されれば、予想される東海地震の際、放射性物質が静岡県内に飛散する確率が上がるのです。中部電力は使用済み核燃料を保管するプールの耐震基準や現状を中々公開しません。ですから、どの程度上がるのか、正確に上がるのか知ることは出来ません。しかし、しっかりとした最終処分場に入っていないことだけは確かです。

 物事を両面から、つまり「脱原発」と「原発推進」の両面から比較して公平に検討を重ねて、それぞれの立場の利益と損益の両面を見つめて欲しいものです。

 繰り返しますが、今回の事件で中部電力を非難するだけでは終わらないようにしたいものです。皆さんの考えるきっかけにしてもらいたいです。
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