(文意不明、言い回しミス、誤字脱字は沢山あると思います。何とかお読み下されば幸いです。)
スーツを着ても肌寒い霧雨の日でした。
来週21日は小満の節季、世の中のことが満ち溢れる、季節だそうです。お昼休みに直接、意見や疑問をくれる人がいました。学生の皆さんのコメントで、小沢裁判やバスの事故、アメリカとの関係など幅広く質問をくれました。学生の皆さんの意識が高まってきた証拠ではないか、と感じて、大変嬉しくなりました。小満のように今後も実り多き講義にしていきたいです。それは高木個人の実り、ではなく小満のいう世の中全体の実りであり、つまり、学生の皆さんの実りです。
今年の工夫として、昨年までの講義内容を削っています。1つの試みです。他の試みがないか、探していきます。
枕が長くなりました。
目標
:製造物責任法の特徴、厳格責任を理解する
:フォード・ピント事件について別の立場からの意見を知る
:倫理と法律に共通する意図を理解する
:倫理を意図で区分けした場合に3つに分けられることを理解する。
:3つの倫理、徳倫理、義務倫理、帰結倫理の簡単な区別を知る
:製造物責任法の「動産」のイメージをつかむ。
:「動産」に、コンピュータプログラムや電気などが入らないことを知る
:新聞等に書かれている内容から一歩深める方法を共有する
:科学的合理性から原発事故後の対応を考える
紹介した本
なし
配布プリント
1枚目(B4サイズ)
(表):講義録4の宿題「題1:日本の伝統的な幸福はあなたの幸福を保証しますか?」の記入例
:講義録4の宿題「題2:」の記入例1
(裏):講義録4の宿題「題2:なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?」の記入例2
:講義録4の宿題「題2:なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?」の記入例3
2枚目
(表):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』58,59P
(裏):藤本温(代表) 『技術者倫理の世界 第2版』60,61P
宿題
なし
-講義内容-
最初は、配布プリントの説明からです。
1枚目(表)「日本の伝統的な幸福はあなたの幸福を保証しますか?」の記入例を挙げました。読みあげながら素晴らしい点を挙げていきました。
「足るを知る」という老師の言葉を引用して、日本の農業国家であったこと、冬の厳しさと「わびさび」との共通点を挙げながら、日本の伝統的幸福を、明確に定義しています。この点が素晴らしいです。
私は、「足るを知る」とは、仏教の「小欲知足(しょうよくちそく)」仏遺教経[ぶつゆいぎょうきょう]から来た考えだと考えていますし、「わびさび」の解釈など全く違いますが、きちんと自分で定義した点が素晴らしいと考えます。その上で、自分がストイックになれないので、私の幸福を保証しない、という誠実さにも惹(ひ)かれました。自分の心を文章に表現できている点、文献から調べてきている点が立派です。他にも素晴らし内容がありました。
次は、3つの記入例を配布した「なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?」という問いです。
講義録5-4 宿題の総括 に全体の傾向が書いてあります。
まず、この講義は、半期1コマという担当時間です。その中で宿題を出して、きちんと調べてきてくれたのは十分な結果です。しかし、研究は上限がありません。「はやぶさ」の川口さんの本で引用した通りで、100点を目指す勉強は100点で終わりなのです。しかし、研究に100点という上限はありません。127点と244点の競い合いなのです。ですから、この講義でも最も出来た学生さんを引用します。3つの記入例を書いてくれた学生3人を便宜上、Aさん、Bさん、Cさんとします。
Aさん
素晴らしい所は、「新聞やTVなどの情報を肯定だけでなく、否定から見たこと」です。それが新しい結果を導き出した点です。
70%の人は「浜岡原発の今後30年の地震発生確率87%」という情報を肯定して書きました。
Aさんはその情報を否定しました。
というのも、データα「福島の地震発生確率0%、浜岡の地震発生確率87%、福井…%、北海道泊…% ・・・」というデータが発表されていた。
福島第1でマグニチュード6以上が起こる確率0.0%、福島第2で0.1%なのに、東北地方太平洋沖地震が起きたのだから、
データα「福島の地震発生確率0%、浜岡の地震発生確率87%、福井…%、北海道泊…% ・・・」
↓
間違い、とするのが自然科学的な説明である。
しかし、菅総理は、データαの「浜岡87%」だけを抜き出して、浜岡「だけ」停止要請をした。
さらに、福井などの確率は無視したのである。この点は明らかに自然科学的な説明ではない。データの扱いとしても中学生でもわかるミスをしている。
データを、詳しく知りたい方は、文部科学省地震調査研究推進本部をどうぞ。
http://www.jishin.go.jp/main/index.html
左から2番目「地震に関する評価」→「地震動予測地図」があります。
2011年7月版 :http://www.jishin.go.jp/main/chousa/09_yosokuchizu/b1_tohoku.pdf
2010年 :http://www.jishin.go.jp/main/chousa/10_yosokuchizu/t_kakuritsuron.pdf
ここで、Aさんは、菅総理の説明の科学的合理性の欠如を発見し、「ではなぜか?」と問い、青山繁晴氏の「アメリカの圧力に屈したからだ」という理由を挙げる。
浜岡原発が爆発すれば、世界最強のアメリカ第7艦隊の司令部が壊滅するから、という点を挙げる。「講義録5-4宿題の総括」にも書いたようにこの根拠は青山氏によることに留意が必要であるが、浜岡「だけ」というのを説明しうる。
青山繁晴氏は、昨年の講義でも取り上げている。安全保障の専門家で原子炉の核テロ対策などを担ってきた。また、日本の大手報道機関が福島原発構内に入ったのは、日本国政府の仕切りで、しかも1年弱経ってからであった。対して青山氏は、事故発生後約1カ月で構内に入り、原発構内を海側から撮影し、当時の吉田所長にも直接インタビューを取った。貴重な映像と証言で、福島原子力災害の主な原因の1つが地震ではなく、津波による、という情報を与えてくれた。
このように「「新聞やTVなどの情報を肯定だけでなく、否定から見たこと」で新しい結果を導き出したのです。
続いて、Bさんは、青山繁晴氏の出典を書いてくれました。2011年5月8日のテレビ朝日の番組です。出典をつけてくれた所が素晴らしいです。平成24年5月16日現在、インターネット上で番組内容を見れます。
(大前研一氏もSAPIO 2011年6月29日号で「菅直人首相の“英断” 浜岡原発停止理由を大前研一氏が明かす」で同じ内容を述べています
http://www.news-postseven.com/archives/20110621_23429.html)
Bさんは、「何とも言えない気持ちになる」という自分の気持ちを書いてくれました。
「日本国民は以前から停止を要請した人もおり、事故後は増えたのにアメリカ国防省の意見の方が力を持つ」
という点にです。
原発導入は国民の殆どの反対の声でしたが、アメリカの利益のために導入されました。原発そのものが国際政治の力学で導入されたのです。ですから、歴史的には何も新しくありません。しかし、この点に自分の声を受け止めて自分で考えて気づいていく、大切さが現れいます。高木が今後講義で伝える内容でした。しかし、それに自分で気づくことは、Bさんにとって何十倍もの実りをもたらしてくれたのです。とても嬉しくなりました。
また、自分の声を入れることは、コミュニケーションの大切な点です。例えば、ビジネスの場で会社から与えられた情報だけを伝える人は、信頼されるでしょうか? 就職の面接会場で、事前に用意してきた暗記内容をを読みあげる人が印象に残るでしょうか? 採用したいと思うでしょうか? 自分の心の声だけではセリフィッシュな印象を与えますが、自分の心の声を言わない人は、むしろコミュニケーションの大切な点を落としていることになるのです。
ちなみに、青山繁春氏は「アメリカ国防省だけでなく、あらゆるチャンネルで圧力を掛けてきた」と述べています。あらゆるチャンネルとは外務省やアメリカ国務省、アメリカ軍などを指していると思われます。
Cさんは、上記の「アメリカ軍からの圧力」や「政権の支持回復」とするのが一般的、と書いています。
Cさんの情報収集力は素晴らしいものです。決して一般的ではなかったのですから。こうした情報強者と情報弱者(情報を十分に吸収していない人)との差が、大きな社会問題になっています。この情報強者と情報弱者の問題は、福島原発事故でより一層鮮明になった、と考えています。というのも、放射性物質がどの程度、どの食品や水などに含まれているか、という情報は世間に溢れましたが、当初は偏っており、かつ放射性物質がどの程度危険か、も「絶対危険から殆ど安全」という論までが溢れていたからです。講義に引き寄せると、公平さを欠いていた、と考えられます。その中でどの情報を採用するか、は福島原発事故で大きく問われた問題ではないでしょうか。
Cさんは、一般的とした後、それに自分の考えをつけたします。
「浜岡の20km圏内に日本のパイプラインがあるから」という考えです。パイプラインとは東名高速道路や新幹線や東海道線という日本の大動脈のことです。
このように、地図から浜岡原発を見て自らの考えを加えて行くのは素晴らしいです。
出典がGoogleMap と産経新聞5月10日5面、首相“菅降ろし封じ”自信 でした。出典付きなのも素晴らしいです。
まとめます。
浜岡原発「だけ」の理由
①アメリカ第7艦隊を守るため
②日本の大動脈をまもるため
③菅政権の延命のため
となります。
①について少し補足を加えます。
日本の首相で5年以上続いたのは、小泉首相と中曽根首相です。2人ともアメリカと緊密な関係を持っていました。小泉首相は、まさに横須賀出身で、構造改革をしました。構造改革の結果、正社員が減りバイトやパートが当たり前になってきました。これは前回の『ルポ貧困大国アメリカ』で述べたように貧乏人が増えて行く政策でもあります。もちろん、それによって経済成長が加速するなどの長所もあります。ただ、問題はアメリカ政府の言う事を良く聞いていた、特に後半は、という点です。中曽根首相は原子力発電を日本に導入する際に中心的な役割を果たしました。「ロンとヤス」という愛称があったように親米でした。国鉄をJRにする、などの功績もありました。
他方、反米的な行動をした総理大臣として田中角栄総理大臣がいます。
アメリカと中華人民共和国が国交を回復をしようとしていたその矢先、田中首相は先に日中の国交正常化を果たします。そしてロッキード事件で逮捕されましたが、その根拠はアメリカ側から提出されたものでした。
現在、小沢一郎氏が裁判を受けていますが、小沢氏は民主党が大勝ちした後、中国に大ぜいを連れて行ってぺコペコ頭を下げた、という批判があります。反米的な行動(反米主義者と言う訳ではない、のが複雑ですが)を取った後、軽微な罪状で身動きを捕われています。
「アメリカに嫌われると日本の首相の首が飛ぶ」というのが、まことしやかに囁(ささや)かれているのもこうした例があるからです。ちなみに、鳩山首相や菅首相も、同じ、と考える人もいます。
日本国政治全体の話は、高木の知識や見識が足りずに出来ませんが、原発を導入の民間で支えた人物(正力松太郎)は、「アメリカの力を背景に日本国の総理大臣を」と狙いました(実現しませんでしたが)。原発に限ると、大きくアメリカに決定権を握られていることが分かります。
アメリカに政治の決定権を握られていること、が悪いことだけではありません。
アメリカに政治の決定権を握られていること、が良いことだけではありません。
今後の日本がどのように自立、独立して平和な国内、均衡した国際関係を作っていくかを考えて、どのようにしていくかを考えていきたいものです。
福島原発事故の教訓を引き出すのは、この点でも必要だと考えています。
次は、意図の問題、です。
宿題の総括
宿題の全体の傾向と考察を書いていきます。
素晴らしいものは翌週、コピーして配布します。
宿題
題1:日本の伝統的な幸福はあなたの幸福を保証しますか?
題2:なぜ、浜岡原発だけ停止要請されたのですか?
-全体の傾向-
・「日本の伝統的な幸福」と「あなたの幸福」を言いきって書く人が増えている。事実の認識が高まっている。
・幸福とは何か?に深みがある人とない人の差がはっきりしている。
・「保証しますか」にひっかかる人が多く、自分でじっくり考えているのがよく伝わってきた。
・浜岡原発「だけ」の問いに対する答えが、70%くらい共通している。情報収集が出来ていないのが理解できた。
・同じインターネットの情報収集でも、「だけ」に深みを与えられる人も10人(5%)前後がいる。
・問1の幸福と問2の原発で答えが全体的に似ているのが大きな傾向である。
問1は純粋な倫理(宗教)問題であり、多くのパターンの回答があった。問2で共通した回答は以下の通りである。
①東南海地震が起こる可能性が80%以上だったから(87%)。
しかし、このデータでは「福島での地震の可能性を0%」と見積もっている。福島原発事故が起きた後、信頼できないデータを基にして、浜岡原発「だけ」の停止要請を行っている、という自然科学的説明ではない点を指摘した学生が数名いる。パッと回答を与えられた時、
「自然科学的説明として正しいのか?」
「本当なのか?」
「否定から見てみると?」(公平さ)
という視点は、倫理においても大切であるし、技術者になる上でも大切である。技術者倫理の目標の1つに「地球的視点を持つ」とあるが、これを私は以上のように解釈する。何故なら、自然科学的説明は国や地域を超えるからであり、倫理の絶対化によって独善的に、あるいはイデオロギーにならないから、と解釈するからである。ほぼ70%の学生の皆さんの意見でした。
②東名高速道路や東海道線という日本の生命線に近いから
福島原発事故でSPEEDI(スピーディ)が示したのは、「風向きによって、あるいは雨が降るタイミングによって放射線被曝が決まる」ということである。
SPEEDI:http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/030101.html
とするならば、福井県の大飯原発は風向きによって京阪神の飲み水を汚染する。名古屋(琵琶湖を渡って冬によく雪が降るので判るように)にも流れる。これも主要な原因の1つである。
③アメリカ第7艦隊の基地横須賀に被害が及ばないように、とアメリカ国防省の要請で
原発の核テロ対策を行ってきた青山繁晴氏が、2011年5月8日のテレビ朝日の番組等で述べた説である。これは浜岡「だけ」という根拠を説明するには十分な因果関係がある説である。ただし、事実関係は青山氏を信頼している点に留意が必要である。
④菅総理の保身のために、一番関心の高まった原発だけを犠牲にした
産経新聞2011年5月11日等にのった記事に基づく説である。これも浜岡「だけ」を説明するに十分な因果関係がある説である。
②~④の説明は設問に答えている。この深みを備えた指摘をした学生さんに敬意を表したい。
そして、宿題を調べながら、1つの点に気が付いて欲しかった。
「全国の原発の中でどの原発が『技術』から見て最も危険である」
↓
「稼働停止要請」
ではなかった、ということである。
自動車に例えれば、エアバックやシートベルトのついていない40年前の車と両方ついている自動車、という『技術』から見て最も危険な車を止めなかった、ということである。現在の原発再稼働もこの「技術」から見て安全?危険?という視点が抜け落ちている。これは講義で散々繰り返して伝えてきたことである。
まとめ
色々と述べて、多くの学生がきちんとレポートを書いてきてくれた。そこは本当に嬉しいし、次のやる気になる。教えられることも沢山あった。このような講義が出来、大学という場所を与えて下さったこと、学生の皆さんが向かい合ってくれること、周りのサポートに感謝する気持ちで一杯である。有り難う御座います。
次回も頑張ります。
学生コメント集と高木の返信です。
一部抜粋している場合があります。誤字脱字の変更、漢字への変換はありますが、本文変更はありません。タイプミスはあるかもしれません。
「○」は学生のコメント、「返信」は高木の記入コメント、「考察」は記入していないが高木の付け足したいこと、考えたこと、です。「考察」はない場合もあります。
-全体の傾向:記入例とした4人の学生への賛辞が多かった。「すごい」、「参考になる」など、「自分は努力します」も10人以上あった。「公平さ」の大切さの認識も大分書いてあった。-
○P.S. ノート(プリント)を毎回もしくは半分で1回返してもらうことは出来ないでしょうか? 復習がしにくいです。
返信:コメント有り難う。ハッとしました。半分で返せるように頑張ってみます。
考察:実は、250人を全部見て、チェックして返却には3時間掛かります。登録申請や修正が終わり最終的な受講者名簿もやっと出来たので、かみさんに手伝ってもらうOKをもらったので頑張ります。
○孝経の一部を読んだが、体を傷つけてはいけないということに賛同できない。自分からすると父母から頂いた体ではなく、勝手に生まれてきたものだと考える。だから傷をつけて良いか悪いかは自身が決めてよいと思う。
返信:○○(本名)くんはそれでOKですよ。ただ、日本社会全体がそうした基準を持っていること、過去の本に因っていることを知っておいて下さい。
考察:大阪市:入れ墨職員50人、橋下市長「消してもらう」 {毎日新聞 2012年05月14日 11時42分(最終更新 05月14日 11時54分)}
という記事がありました。これは橋下市長の独断でなく、2年前の2010年5月(前市長)から、内規で入れ墨を禁止したのです。これは倫理規定です。こうした倫理規定が成立し2年継続しているのは社会の同意があって出来ることです。橋下氏については毀誉褒貶(きよほうへん)がありすぎるので置いておいて、『孝経』が現在でも生きていることを認識してほしいです。
○『孝経』の考え方でメガネやコンタクトレンズの人は身体を大切にしていないことになるのではないだろうか。
返信:傷、はつけていないので良いと思います。服や靴など身体をサポートすると考えられると思います。どうでしょうか。
○原発事故当初、大丈夫を連呼していた学者さんばかりがTVに出ていて、原子力保安員(?)の人が一度だけ公式に原発の危険性を正確に発言していましたが、爆発までどこのメディアも取り上げず、公平という目線では報じてなかったのではないかと、今日振り返って思いました。
返信:「今日振り返って思いました」が◎です。同じ現実でも新しい視点を持つと全く別に見えてきます。それが学問の楽しさであり、奥深さでもあります。今は反原発ばかり。これも同じように偏っています。
考察:嬉しいです。
○(記入例のある人を挙げて) すごいと感じる反面、あせりのようなものを感じました。なので、ゆっくりでも良いので、しっかり三段論法をかけるようになりたいです。
返信:「あせり」に◎です。正直ですね。私も年を経てあせりを感じていました。教えてくれてました、じっくりやる大切さを。有り難う御座います。
考察:今読んでみたい本『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌―』小川 さやか著です。この本の記事を今朝(平成24年5月14日の静岡新聞)の朝刊でみて、あせりました。焦る必要もない、と自分に言い聞かせても焦りました。じっくりやる大切さ、身にしみます。
○「同じ事実から肯定」もできる。それを聞いて論理とはとても深いもので楽しいなと思いました。
返信:嬉しい言葉です。スポーツ、ゲーム、アニメも面白いですが、学問も楽しいですよ。
○低コストで不安があるものを取るか、安全だが高いものを取るか。どちらも、良い所と悪い所があり、一概にどちらの方が優れているとは言えないと感じた。どちらにせよ、公衆の福利の実現は難しいと思う。
返信:その通りです、難しいのです。だから、みんな、うーん、うーん、と考えるのですね。
考察:こういうコメントで次の情報に触れると劇的に変わる人だと感じた。少し講義内容を変更する。
○北朝鮮の全てが悪いわけではなく、日本よりも優れている所もあると言っていたけど、それと(を? て?)どうすれば知ることができるのか教えてほしいです。(国にとって都合の悪く(い?)ニュースなどで知ることが出来ない事など)
返信:『波』 新潮社の月刊誌に蓮池薫さんがノンフィクションの北朝鮮を書いてくれています。是非どうぞ。
考察:高木が現在、毎月読んでいる雑誌に『波』(新潮社)があります。この中で、北朝鮮に拉致された蓮池薫さんが北朝鮮の内情を書いてくれています。拉致されたから「北朝鮮=すべて悪」ではなく「良いところもある」というのを書いてくれています。公平さを持った内容です。「どうすれば知ることができるのか教えてほしいです。」とありますので、ここまでにしておきます。他にも似たコメントあり。
○換気装置を動かさない為に空気が悪い。
返信:自分で動かしていいですし、窓を開けるのも自由にして下さいね。次気を付けます。
○インフォームド・コンセントをしない方がいいと考えてる分野はいっていましたが、インフォームドコンセントをした方がいい、しなくてはいけないと考えている分野はありますか?
返信:高木の考えでは、生命に直接関係する食べ物、飲み物、居住環境等はしなくてはいけない、と考えます。現在の食品表示では不十分、特に食品添加物について、と考えています。
考察:食品添加物については、ブログ内にも触れましたが、以下の農林水産省のアドレスと共に参考にして下さい。
http://www.maff.go.jp/j/jas/
○アメリカは世界で一番経済大国なのに、なぜそんなにも貧しい生活をしている人が多いのだろうと思いました。
返信:的確な疑問です。視点を逆にしてみましょう。「国内で貧しい人から沢山お金を取るからお金持ちがいる国=アメリカ」、「海外の人を貧しくしてお金を取るから経済大国=アメリカ」なのです。人は自分のお金を儲けるために、奔走するものなのです。
考察:人間の良心で世界が回っている、と信じているのは大切なことである。と同時にそうでない国が殆どという現実もある。
○(記入例が納得した) 自分も受けがいいように返事している気がする。
返信:正直に自分を見つめられたようで何よりです。そんな時、河合隼雄『心の処方箋』とってもお勧めです。1つが4ページと短く、読みやすい文章、深い内容です。
○公演を聞いているようで興味深かった。古着の良い所は大量生産による質の低下がやむおえない(止むを得ない)現代のほとんどの新品は長くはもたないが、何十年経っても現役で使えるアメリカの古着のクォリティーが高いからだと思います。僕も1960年代後半に作られたジーパンを履いています。またT写ルも現代はコットン100%ですが、80年代のものはコットン50%、ポリエステル50%のものが多く、何回洗っても伸びたりし難いです。
返信:そうだったのですね。1つ勉強になりました。クォリティーが高いものを着れない貧しい人々が多くいるアメリカの現状がありますが、今度はどうなっていくのでしょうね。新品やクォリティーの高い古着が着れるようになるのでしょうか。アイディアはエミネムの自伝的映画「8 Mile」などからきました。良ければどうぞ。
○ジャンクフードを食べる事によってゴミを食べていると思われるかもしれない。しかし、ゴミを食べていることによってゴミが減っていると私は思います。ゴミが減るのは良いことだから、これからも食べようと思います。
返信:Very good!! とっても良いです。自分の考えを表明してくれたこと、尊敬します。
○なかなか授業の内容が速くて理解するまでに時間がかかってしまいます。一般常識を知ることで理解する速さって速くなりますかね? という訳で、来週はもっと理解しやすく授業をお願いして下さい(します?)。
返信:(疑問に対して)知識を自分で考えて習得する速くなりますよ。例えば、本を読む時、単語の意味を分かっていると読むスピードが速くなるのです。他方、人間は全て理解しながら学習するのは効率が悪いのです。70%ぐらい分かった状態で、後から自分でもう1度まとめるのが最も良い、と言われています。ブログ、よければもう1度まとめる参考にして下さい。
○(記入例が読みやすい) 自分はまだ三段(論)法がうまく出来ないのですが、事・論・結以外にコツはありますか?
返信:事実は「~である」、「~と言われている」、「と書かれている」です。
論拠は「~と思う」、「~考える」です。
この違いを意識するのがコツの1つです。ブログもどうぞ。
○米国は自由と民主主義の国として独立したはずだが、実際は覇権と金儲けの国に成り下がっている。何とかならないだろうか。(関係ない話題ですいません)
返信:いい感想です。関係ありますよ。原発もその1つです。同時に国際関係は、むき出しの覇権で成り立っています。今後やっていきますね。
○どうもアメリカの医療費が高いのは、インフォームドコンセントだけのせいじゃないと思える。理不尽をなくすためにどうにか出来ないものか。
返信:とってもよい疑問(考え)です。是非調べてみて下さい。世界は理不尽に満ちていて、国によって異なります。知るのは面白いですよ。
○今日の話でアメリカのトップに居る黒人には白人のバックが居ると言っていましたが、オバマもそうなのですか。
また、ジャンクフードの話は日本のマクドナルドなどでも同じものが出されているのですか。
返信:(オバマについて)もちろんそうです。NEWSWEEKにばっちりでていました。前回、バラク・フセイン・オバマの「フセイン」を人種差別になるから放送してはならないと白人(ユダヤ系)が守りました。このバックが分かりやすく大きいものの1つです。
(マックについて) 正確に内容が表示されていませんが(しなくていいので)、「スーパーサイズミー」という映画にマックが「嘘」と抗議していないので同じと推測しています。
○世の中に公平さがあることはとてもいいことだが、すべて公平にしてしまうのは、果たして良いことなのだろうかと思った。
返信:素晴らしい着眼点です。結果の公平と機会の公平と思考の公平を分けるともっと深まっていくと思います。講義は思考の公平です。
考察:学問の視座として素晴らしい。
○今日の講義で説明された無意識に刷り込まれた倫理観を深く考えれば、考える程、苦しくなっていきます。
返信:自分の心の声ですね。大切にして下さい。悪戦苦闘を経た後に、ポッカリと明るい未来が見えてきます。河合隼雄『心の処方箋』をどうぞ。
○板書が長すぎると授業が止まってしまうので次回以降はある程度経ったら止めてほしい。
返信:参考にしますね。ただ、全ての内容は終わったので安心して下さい。他のクラスと同じですが、順番が前後しました。
○自分の身体を大切にしなさいと昔から、父、母、祖父母に言われてきた。大学に入ってからピアスをあけようか母に相談した所「やめなさい」とはっきり反対された。こういったことは『孝経』によって日本の中で根付いているもんなんだなぁと思った。だが、友人でピアスを10個以上あけている子がいるので日本でも『孝経』に書いてあることは段々薄れているのかなぁとも思った。
返信:素晴らしいお祖父様、お祖母様、お父様、お母様に恵まれているのですね。ピアスを開けるなど個人がすべて社会の倫理観に従わなくて良いと思います。同時に倫理観の無くなった社会の怖さも知ってほしいです。「ダーウィンの悪夢」という映画をどうぞ。
○無理に命(を)延ばそうとすること自体が、無理なのだから死んだらそこまでの命だった、で良くないですか。
返信:○○(本名)さんの倫理観、今、なんとか医療の現場に生かそうとしている人々がいます。内藤いづみ先生は在宅ホスピスの先駆けの人です。調べてみてください。
:http://www.naito-izumi.net/
以上となります。素晴らしい意見が本当に多かったです。今回は宿題があったので、続きます。
インフォームドコンセントは、そもそも医療の世界から出てきた概念です。
出発点は古代ギリシャの「ヒポクラテスの誓い」です。患者を中心とする誓いで、江戸時代に日本にも入ってきていました。
それが明確な形になるのが、①ナチスドイツのユダヤ人虐殺、②アメリカの女性、黒人、学生運動などの権利運動の2点です。
以下のように定義されています。白浜雅司先生 http://square.umin.ac.jp/masashi/IC.html
1)適切な情報の開示
2)情報の患者による理解
3)患者の自己決定能力(CompetenceとDecision-Making Capacity)
4)患者の自由意志・自発性
5)患者による同意
ポイントは、「5)患者による同意」が医療者のミスを免責にしないことです。手術のミス、投薬ミス等による重症化、死亡に関して責任があり、損害賠償を起こすことが出来ます。
さて、私は、医療の分野はインフォームドコンセントとパターナリズムの丁度せめぎ合っている、つまり境目の分野だと考えています。その理由は、最初にプリントを読みあげた『ルポ 貧困大国アメリカ』の手術費のデータに関係しています。数々のデータでアメリカの医療費は日本の医療費の10倍前後でした。もちろんそうではない分野も無くはないですが、全体として高額なのは否定出来ません。盲腸だけを取り出してみます。
盲腸の手術代
日本 6万4200円+入院費=10万弱
NY =243万円(日本の24倍!!)
ボストン =169万円(日本の16倍!!)
どうしてこのように同じ手術で高くなるのか。
原因A)人間が1人1人違うから
原因B)インフォームドコンセントが世界で一番進んでいるから
と高木は考えます。医療界では有名な話だそうですが、東大の名誉教授が誤診率を20%(17%前後)と発表して、会場から「えー」という声を受けました。それは
一般の人は「そんなに多いのか?!」の「えー」であり、
医療関係者は「そんなに少ないのか?!」の「えー」であったそうです
(昨年教え子の留学生に話したら低くて「えー」という人が実際にいました)。日本では医療ミスはない、という前提できましたから、医療ミスで亡くなられても表立ったことはありませんでした。これはパターナリズムです。しかし現在はインフォームドコンセントが進み、医療ミスが報道されるようになってきました。これは私たちの個人からすれば嬉しい傾向です。両親や友人の死への疑念が消えないというマイナスを解消してくれます。
しかしながら、物事には裏表があります。一方的に良い、ということは無いと私は考えています。だから公平さが大切である、と考えています(筆者のように善だからいい、訳ではありません)。さらにお医者さんになりたてのインターンの人は誤診率が60%~70%くらいだそうです。ということは半分以上は間違うのです。「お腹がちくちく痛いです」と言っても私が言うのと他の人が言うのでは内容が異なってしまうからですし、そもそも人間が1人1人違うからです。ここからチャート式にしてみましょう。
人間は1人1人違う
↓
誤った判断は20~70%で無くせない
↓
医者は必ずミスをする
↓
インフォームドコンセントでミスが分かる
↓
ミスで訴えられる
↓
訴えられた場合に備えて保険に入る
↓
保険代金が掛かる
↓
保険代金は患者が払う
↓
医療費高騰、特に手術などミスが分かる場合
人間は製造物のように殆ど同じに造られていません。だからミスが起こるのです。情報公開すればミスが分かるのは当然です。人間の値段は数千万から数億ですから保険に入りますし、その掛け金も莫大です。何故なら名医でも20%の誤診率なのですから。1日5人見れば1人間違えるのですから、掛け金は最低で数百万、上は億を超えると言います。例えば2000万円にしましょう、すると1日10万円の掛け金を患者さんからとらなければならない。1日10人なら1人1万円です。
インフォームドコンセントを完全に導入することで、保険代金のために1人1万円ぐらい上がってしまうのです。
『ルポ 貧困大国アメリカ』では「保険会社が病院を支配しているから中流階級を貧困層に落とし、貧困層から医療を受ける権利を奪っている」と批判します。
高木は「インフォームドコンセントを導入することで保険代金が上がり、それがアメリカの医療を狂わせた」と考えます。
具体的な例に行きます。
実際に妹がアメリカに留学していまして、留学生会館で留学生が倒れた場に居合わせた話をしました。周りの皆はその留学生の側に立ってオロオロしている。日本国出身の妹は「どうして救急車を呼ばないの?」と何気なく聞きました。すると周りから「え?!」という反応をもらったそうです。日本では横に座っている人が倒れたら救急車を呼びます。教室でも学生の皆さんに
「横の人が突然倒れて痙攣(けいれん)しだしたらどうする?」
と聞きました。
アメリカでは救急車を呼ぶとまず、
「社会保険の番号(ソーシャルID)は何番ですか?」
と聞かれます。
「患者さんの場所はどこですか? 患者さんはどんな症状ですか?」
とは聞かれないのです。他には貯金額などを聞かれるケースもあるようです(昨年の留学生たちは良く知っていました)。今、まさに目の前で人が苦しんで死にそうなのに、だから救急車を呼んだのに、「ソーシャルID」や「貯金額」を聞いてくるのです。なぜでしょうか?
アメリカ人が人間としての良心や良識がない、からではありません。むしろ良心や良識を発揮するアメリカ人は多いです。しかし、アメリカの医療の現状がそれを阻(はば)みます。
救急車に乗れば1万円を超えます。医者に問診「どこが痛いですか~?」などを聞かれて3万円、薬が大量に出ますから2~4万円などで、1回乗ると7万円前後かかると言われます。学生のみなさんは、あるいは普通の人は5~7万円、ポンと出せるでしょうか? ちなみにアメリカのバイトの最低賃金は500円、日本では800円くらいです。また、労働ビザがない人が沢山いますが、彼らは300円です。1日8時間、20日働くと、1か月4万8千円の収入です。これでは救急車に乗ることはできません。ですから、「無料で救急車に全員が乗れる」というのは世界の中でも大変恵まれたことなのです。
さらに、病院を保険会社が独占します。ですから、医者に「何人診なさい」や「何万円分薬を売りなさい」などの「ノルマ」が課されます。看護婦さんも同様ですし、これが出来ない医者は職を失います。日本では医者が失業する、というのは想像しにくいですが、アメリカでは普通にある話だそうです(『ルポ貧困大国アメリカ』をご参照ください)。ですから、患者さんの話をしっかり聞いたり、この人は病状が重いからもう少し丁寧に診たい、というのではなく、この人の病気は金になるかならないか、で診なさい、という圧力が掛かるのです。医者だけではありません。
公衆にとって問題なのは、高額な医療費が掛かる、公平な医療が行われていないなど、「公衆の福利」に反する結果を生み出していることなのです。「公衆の福利」を実現しようとしてインフォームドコンセントを導入した結果、「公衆の福利」に反する結果を生み出しているのです。もちろん、同じ結果であっても「公衆の福利」に適っているという考え方もあります。
ちなみに、サプリメントが流行っていますが、アメリカから来ました。それは、医者にかかると高額なお金が掛かるから、それなら薬ではなく健康を保つものを飲もう、としたからです。アメリカの食事は、貧しければ貧しいほど、ハンバーガーやハンバーグやグラタンなどの高カロリーでビタミン、ミネラルの殆どない食事になります。ジャンクフードとは「ジャンク=ゴミ」の「フード=飯」の意味であり、捨てるものを食べさせているのです。だから安く済みます。ビタミンがないのでお腹が一杯でも空腹感があり、肥満になります。
「貧しい人ほど肥満」
という現状がアメリカ人の現状です。60%以上の人が「太り気味以上」です。こうした現状で、足りないビタミンやミネラルを補給する必要性が出て来ました。ですから、サプリメントが大流行なのです。しかし、日本では日本食、ご飯、味噌汁(ミネラルの宝庫)、魚、お茶、みかんを食べればサプリメントは必要ないのです。アメリカでは1%の人が90%のお金を持っています。残りの99%が10%のお金を分け合っています。ですから、若者は貧乏で新品の服が買えず古着を着ます。それが日本に来ると「古着は格好いい」となります。ちなみに、女性の黒服が格好いい、というのはヨーロッパで強盗や誘拐が多発した時に流行ったものです。それが日本に来ると「モード」などと言って「黒い服はおしゃれ」になるのですから、面白いですね。そしてこのような導入の仕方を日本は昔からやってきています。この点に着目すると中々楽しいです。
問2 日本ではインフォームドコンセントをさらに進めるべきですか?
という問いを出しました。インフォームドコンセントを善とするならばさらに進めるべきです。対して、高木は現在の状況で十分だと考えています。以下補足した具体例です。
私の個人的な体験です。先ほどの高校の物理教師だった時代、あるクラスで昼休みに数名とバスケットを週に1,2回していました。その中でバスケットをさらにしたいという人が出てきて、私の所属するチームは社会人のみのチームだったので他のチームで練習をした人がいました。ストレッチをしておくように、と言ったのですがどうも腰を痛めてしまったのです。彼がある整形外科に2カ月通いましたが一向に良くならず、相談に来ました。そこで私は、セカンドオピニオンという他のお医者さんの意見を聞く制度が出来たことを教えて、カルテやレントゲンをもらって他の医者を受信することを勧めました。彼は高校生でしたから中々出来なかったので「先生一緒にきてよ~」というので一緒にいきました。医院では最初戸惑っていましたが(多分少ないのでしょう。確認していました)、無事頂き他の名医と他の先生の教えてもらった医者にいきました。「先生、1回だけだけど2カ月通ったよりいい感じ。治りそう!」と言っていました。嬉しいことでした。彼はその後普通に歩けるようになりました。これもインフォームドコンセントが進んだ結果です。けれども、現在より先に進める必要があるのか、私には疑いがもたれてならないのです。
また、解答方法をしめした。論理性=言葉のつながり、ですから、解答は2方法しかありません。他の答え方、例えば「インフォームドコンセントはいいです」とか「日本の医療は素晴らしい」とか「アメリカは酷い国だ」というのは解答として論理的に間違いです。解答方法は
「だから、~なのでインフォームドコンセントを進めるべきです」 か
「だから、~なのでインフォームドコンセントを進めるべきではない」
しかありません。「インフォームドコンセントを進めるべきか?」につながらないと論理的ではないのです。答えを教員がしめしました。
肯定
事実:「医療は人々のためにある」
論拠:「医療のインフォームドコンセントは人々を幸せにすると私は考える」
結論:「だから、人々を幸せにするので、インフォームドコンセントを進めるべきである」
否定
事実:「医療は人々のためにある」
論拠:「医療のインフォームドコンセントは人々を不幸せにすると私は考える」
結論:「だから、人々を不幸せにするので、インフォームドコンセントを進めるべきである」
どうでしょうか。
肯定の「幸せ」とは「知る権利が守られる」、「医療の発展」、「安心」などでしょう。
否定の「不幸せ」とは「医療費高騰」、「加入差別」、「質の低下」などでしょう。
ただし、「幸福とは何か?」は聞かれていませんから、この解答で良いのです。引っかかる人はそこに引っ掛かります。
さて、講義として最も大切なポイントを示しましょう。
「肯定も否定も同じ事実から出発している」
「同じ事実から出発して肯定も否定も出来る」
と言い直しても良いでしょう。つまり、「論理的には同じ事実から肯定も否定も引き出せる」ということです。これが最も大切なポイントです。
福島原発事故がありました。この事実から「だから、原発は今度も推進すべきだ」も「だから、原発は今度も推進すべきでない」も論理的に成立します。ですから、原発賛成派の人が「どうしてこの事実を見ないんだ!」と原発停止派の人を避難することは論理的ではありません。同時に「こんなに客観的事実があるのだから原発推進なんて信じられない!」というのも論理的ではありません。その段階で留まっている段階と実は、技術的な議論が出来ないのです。そもそも建設的な議論ができません。それは論理的ではなく、感情や政治性やある特定の価値判断があるのに、それ以外を認めないからです。反対からみれば、自分は原発推進(あるいは停止)、という価値判断をしているのに、公平で中立で論理的だ、と言っていることになります。
そして、肯定的立論も出来、否定的立論も出来た後に、初めて「自分の考えが持てる」のです。
片方の立場しか認めない、というのは実はある特定の価値判断に支配されているのでしかないのです。そういうのは学問とは言えないのです。
福島原発事故前は、原発を肯定だけから見ていました。
「原発は安全」、「原発は地球環境問題に役立つ」、「原発は安い」、「原発は地域のためになる」、「原発がないとエネルギーが足りなくなり」
しかし、それはあなた自身で考えた「結果」ですか?
「誰かの意見をそのまま受け入れただけ」ではないでしょうか?
同じことが福島原発事故後、にも当てはまります。今は原発を否定だけから見ています。
「原発は危険」、「もう1度福島原発事故を起こしたらどうするんだ」、「原発は最終処分も入れると高い」、「原発は地域のためにならない」、「原発がなくても関西電力以外は殆ど足りている」
しかし、それはあなた自身で考えた「結果」ですか?
「誰かの意見をそのまま受け入れただけ」ではないでしょうか?
この講義で最も大切にするのは「公平さ」です。
「公平さ」とは、肯定的立論も否定的立論も立てた上で判断する、ということです。
ですから、宿題で「原発の良い所」を探してきてもらいました。「東電は悪だ!」という偏った報道にも共通点を感じています。
もう少し視点を広げ、人生で考えてみましょう。
皆さんが、自分の人生を生きていく時に、自分の足で立って判断する時にきっと役に立つと私は考えています。
・好きな人と結婚する時に、良いことばかりで判断して良いのですか?
・会社に就職することは、本当に良いことなのですか? それは「誰かの意見をそのまま受け入れただけ」ではないですか?
・大学に進学して本当に良かったですか? 振り返ってみると良いことだけ、でもなく、悪いことだけでもないのではないですか?
・あなたの友人は、素晴らしい点があるから、自分にとって有益だから、友達なのですか?
自分の心の声を聞くために、肯定と否定の両方を見ていってほしいと思っています。
最後に、金言を1つ
「友人になるコツは、弱点を許し受け入れることです」
次は、学生コメント集です。
前回は、「公衆の福利」の語彙1つ1つについて述べました。
「利」→「利益」:経済や効率など
「福」→「幸福」:幸福や安心など
今回は「公衆の福利」の具体的な内容について述べて行きたいです。
まず、問いを考えてもらいました。
問1 「公衆の福利」はどのようにすれば実践できるでしょうか?
繰り返しますが、「公衆の福利」は非常に曖昧な概念です。数値化できませんし、統一的説明もできません。他方、だからこそ、新しい事象に対応できる、という利点もあります。その対応は、幾つかの手段が認められています。
まず、技術者は、技術者自身責任として「6つの安全」を目指さなければなりません。
連日報道されている関越自動車道のバス事故を具体例とすれば、バス車体の強化や道路のガードレールの見直しなどです。
次に、技術者の社会責任として、「インフォームドコンセント」があります。
同じバス事故を具体例とすれば、バス事故の事故原因の情報公開やどのような対策を取っていくか、という説明責任を果たしていく、ということです。
「インフォームドコンセント」:「情報公開と説明責任を果たした上で、公衆に同意を得ること」
とされています。
この視点からすると、関越自動車道のバス事故は、インフォームドコンセントを満たしていこうという方向性が感じられます。他方、福島原発事故は、事故原因の情報公開と、事故を安全基準に入れた上で事故対策を取っているという説明責任を果たしていません。事故が起こった後、インフォームドコンセントを満たしているかどうか、を判断基準の1つなのです。
このインフォームドコンセントは、事故以外でも製造物に見て取れます。
例えば、ペットボトルの飲料には、品名(名称)、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、販売者などが書いてあります。このように情報公開がされています。ちなみに原材料名について穴があることも知っておいて欲しいのです。添加物の情報公開が必要である、ということです。
安部 司『食品の裏側―みんな大好きな食品添加物』で述べられています。この本は食品添加物の毒性について述べてあまり述べていませんが、食品表示が「香料」の時、何十種類の食品添加物が入っていても良いこと、が書かれています。この本を否定する人もいますので、そちらも参考にして欲しいです。と、同時に私の実体験を加えさせてもらいます。私は、ラーメンが大好きで、1日3食ラーメンでもOKです。しかし、この本を読み「たんぱく加水分解物」の入っていないラーメンに変えました。それから数年が経っています。
現在「たんぱく加水分解物」等の食品添加物(厳密には「たんぱく加水分解物」は添加物ではありません)の沢山入っている市販の商品を食べると、舌の上がぬるぬるします。そして便秘や吐き気などをもよおすことが多いです。他方、主に塩酸をタンパク質に掛けて作られる「たんぱく加水分解物」は、安全である、と専門書の中には書いてあります。そもそも危険なものは市販されていません。その根拠を良く見て見ると、毒性の高い物質について安全である、ということなのです。しかし、
「毒性の確認されていない物質が、人体に影響を与えた可能性」
については書かれていません。当然ですが専門家は
「毒性の既に知られている物質の安全性『しか』確認しない」
のです。しかし、人間の肉体は1回しか与えられません。問題になるのは、
「毒性の『いまだ』に知られてない物質の安全性の確認」
なのです。これは「放射性物質の内部被曝」の問題と共通します。ここでの判断は個人個人レベルになります。きちんと専門家が「分かっていること」と「分かっていないこと」を公開すべきである、と述べたのは私の研究しているカール・ポパーという人です。反証可能性として述べています。私は自分の肉体の体感から今度も食品添加物のなるべく少ない食べ物を食べて行こうと考えています。同時に、実はめちゃめちゃ旨いんですよね。ご参考になればと思います。
戻ります。インフォームドコンセントからすると、数十種類の食品添加物を1つの表示にするのは問題だと考えます。他方、全ての食品添加物の把握は、多すぎるので困難である、と本に書いてありました。書くスペースも沢山になるそうです。それでも必要かどうか、あるいはインターネット上には公開する義務を課すかどうか、などは「公衆の福利」から判断していくべき、というのを学んでもらいたいです。
さらに、インフォームドコンセントに踏み込みます。そこで大きく判断が分かれます。
教科書:全ての分野でインフォームドコンセントが行われるべきである。(何故なら、倫理絶対主義だからである)
VS
高木 :ある分野ではパターナリズムで行われるべきである。(何故なら、倫理相対主義だからである)
私は基本的にはインフォームドコンセントが行われるべきである、と考えていますが、特定のある分野ではパターナリズムで行われるべきである、と考えています。
私は倫理相対主義を取っていて、経済や効率や文化などなどと倫理は同じに考える立場です。ですから、ある分野ではインフォームドコンセントよりも、経済や効率が優位になることを認めます。その場合は、インフォームドコンセントよりもパターナリズムを取ることが、「公衆の福利」に適う、と考えます。
パターナリズムは「paternalism」と書きます。「pater」とはパパの意味で一般的に「父権主義」や「家族温情主義」と訳されます。しかし私は、この「pater」はもっと強い意味だと考えています。なぜなら、キリスト教の神様のことを英語では「ファーザー」と言います。また、ローマ・カトリックの説教師のことを「神父」と言い「父」が付きます。そしてファーザーや神父は、私たちの日常生活の善悪、生活習慣の指導から、死後の世界に天国に行けるか地獄になるか、を左右できるのです。つまり、日本の父親(明治時代の大日本帝国憲法下でも家長は家族に対して裁判権を持っていませんでした。実態としてそのようなことはありましたが、全てではなく思い込みがかなりあると思います。余話)よりももっともっと強い存在だと考えるのです。日本人は「死んだ後どうなるか」が不安になるのは死が近づいてからでしょう。
しかし、それは無意識のうちに日本人的宗教観に染まっているのです。日本人的宗教観では全員が同じ場所に行きます。今とあまり変わらない世界です。ですから不安にもなりません。さらに、お盆やお彼岸に返ってくるしお正月にも帰ってこれる。だから「死んだ後どうなるか」が不安になりません。世界の7,8割の人は天国に行くかは大きな問題です。それを決定するのがローマ・カトリックでは神父様なのです。
あるクラスでしか言いませんでしたが、筆者は「日本も欧米もイスラムも同じ倫理である」と思っていますし、そのように論理を組み立てていますし、教員は「日本と欧米とイスラムは同じ場所もあるけれど違う部分もある」という風に組み立てています。これは後の講義で触れます。先ほどのインフォームドコンセントにならって定式化してみましょう。
「パターナリズム」:「情報公開と説明責任を果たさず、専門家が判断すること」
「インフォームドコンセント」:「情報公開と説明責任を果たした上で、公衆に同意を得ること」
となります。
次に、それでは先ほど私が、「ある分野ではパターナリズムで行われるべきである」という理由を書いていきます。
具体的に核開発を見て行きましょう。現在、日本の原子力発電所に外国のスパイ(北朝鮮)が作業員などで入りこんでいます。日本国の公安が示唆していますが、こうした作業員を「スパイだから」と捕まえる法律がありません。実際にスパイ行為を働かないと捕まえられないのです。スパイ防止法が先進国の中で唯一ない日本国では、軍事利用される核開発の情報を、インフォームドコンセントで情報公開し説明責任を果たしたら、「公衆の福利」に反する、と考えます。北朝鮮の原子炉と日本のある原子炉が大変似ていましたが、それも核技術の流出を示す1つの傍証です。北朝鮮の核開発とミサイル技術がイランに渡り、イスラエルとの緊張関係を高め、原油が高くなっています。
「スパイ防止法がない」という社会背景、核技術が軍事利用と切り離せない点がある原子力発電では、インフォームドコンセントを行うことは正しくない、と考えます。
もう1つ軍事技術の例を挙げます。
石原東京都知事が、「尖閣諸島を東京都が購入する」というワシントンでの会見が世間の注目を集めました。マスコミがあまり取り上げませんが皆さん寄付を集めているのを御存知でしょうか。約10日間で
入金は計3億1459万9779円。件数も2万3402件と、2万件を突破した。
そうです(msn産経ニュース「寄付金3億円を突破 8日時点 1日で9千万円増
2012.5.9 14:14」http://sankei.jp.msn.com/region/news/120509/tky12050915010006-n1.htm
この会見の中で「アメリカの戦闘機のコクピットは日本製である」と述べています。
とするならば、アメリカの戦闘機が世界中の人々を苦しめているのだから、情報公開をすべきである、と考えた場合、公開すべきでしょうか? 私は、アメリカの戦闘機のコクピットの技術を情報公開すれば、軍事費を毎年20%以上膨張させている中華人民共和国、強硬派に転じた(北方領土発言で)プーチン大統領のロシアなどに囲まれた社会背景を考えると、軍事バランスが崩れます。アメリカが在外米軍を縮小させていく現状を考えると、非常に危険です。尖閣諸島はわが領土である、とはっきりと主張する中国は、沖縄も得ようと発言しています。インフォームドコンセントは軍事技術に関して、私は情報公開をせず、同時に専門家の中で決めるべきであると考えます。
その分野を認めた上で、重大な問題があった場合、全体を継続するかどうかを、公衆(国民)が選挙で選択すべきである、という民主主義の原則を支持します。
また、軍事技術ではなく民間技術が中国に流出しています。これが日本国の発展を阻害している、とするならば、諸説あります、軍事技術のみならず民間技術もインフォームドコンセントで情報公開すべき、というに疑問をもたざるを得ません。この点は詳細に検討する必要があるでしょう。
また、インフォームドコンセントは、「公衆の同意を得る」としています。
私はこの点に、大いに疑問を感じます。というのも、「公衆の同意を得る」というのならば、それは公衆が、つまり私たちがその問題について知識を吸収する、というのを前提としているからです。しかし、多くの国民が原子力発電所の安全性について、果たして詳しい知識を吸収しているでしょうか?
福島原発事故という最大級の国民の関心を集めました。1年を経っても新聞のトップになることもしばしばあります。マスコミの報じ方は偏っています。しかし、多くの人々が、大飯原発所と福島原発所の技術的違いを理解しているでしょうか? 福島原発所と同じ浜岡原発1号機と反対派が最も危惧する4号機(の燃料プール)の違いを理解してるでしょうか? 原子力発電と火力発電の原理的な違いを理解しているでしょうか?
最大級の国民の関心を集めて、知識は深まったでしょうか?
20世紀は戦争の世紀でしたが、その根本に共産主義(マルクスレーニン主義)と資本主義の対立がありました。そして挫折したのは共産主義です。その挫折の根本を語るエピソードを聞いたことがあります。
共産主義とは「皆同じ財産を持つ、共有の財産を持つ」という意味です。
差別や区別をなくしていくために行うのです。そういう理想に燃えたソ連の若者たちが、農村に行き農民たちに知識を伝え勉強をしてもらおうとします。知識の差や能力の差が結果として現れるのを肯定するのが資本主義、ならば知識の差や能力の差をなくそうとしたのです。しかし、農民たちは、何かご褒美をもらえる時は形の上で勉強したり協力しますが、それがないと協力しません。そしてしまいには農民達に煙たがられ、こう言われます。
「じゃあ、お前さんたちは、金を持って来てくれ。あるいは工場などを持って来てくれ」
と。原発誘致の大きなプラスとして挙げてくれた理由、地元の利益優先と同じことを言うのです。ここから共産主義の理想は瓦解していきます。次第に「国家は絶対であるから従え」となり「計画経済が始まる」のです。皆財産も権利も義務も平等、という社会は実際には成り立たない、というのが20世紀の大きな学びの1つだと私は考えています。と同時に行きすぎた資本主義も失敗をする、というのが2007年のサブプライムローン以降の学びの1つではないか、とも思っています。
さて、戻りましょう。
外国人参政権、TPP、自民党が出した「憲法改正草案」について勉強しましたか? 「たちあがれ日本」も出しています。日本国にあって最も大切な憲法について勉強して知識を得ていますか? ネット上に公開してあります。最低限の勉強をしているでしょうか?
自民党案:http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/116666.html
たちあがれ日本案:http://www.tachiagare.jp/data/pdf/newsrelease_120425.pdf
私は、インフォームドコンセントの「公衆の同意を得る」という時、知識の習得も含意していると考えます。専門家ではない公衆は、全ての分野について知識の習得し判断(同意、拒否)をする必要が無い、と考えます。再三述べていますが私が最も大切としているのは、「当たり前の日常生活」です。日本国政府や専門家などの究極の目標だと考えています。国民にこうした重たい義務を課していくのは適当ではないと考え、重大な問題が起こった場合、そして専門家で修正できない場合に判断(同意、拒否)すべきであると考えています。
以上の理由で、私は、インフォームドコンセントの有効性を認めつつ、全ての分野でインフォームドコンセントが必要ない、ある分野ではパターナリズムでよい、と考えています。ただし、パターナリズムの分野が行き詰った時、全体を国民の判断に仰ぐ必要がある(もちろん衆愚性にさらされますが)、と考えます。
次は、インフォームドコンセントとパターナリズムの境にある「アメリカの医療」について述べて行きます。